2020年12月15日
建設業界は、人口減少に伴う労働人口の減少が今後顕著に表れる業界であり、他の業界と比較するとDX(Digital Transformation)が遅れていると言われています。
その様な状況下において、国土交通省は「i-Construction」を公表し、一人当たりの生産性向上が喫緊の課題として取り上げました。その解決の鍵の一つが、業務の短縮・効率化を図るアプリの開発です。
この記事では、建設業界におけるアプリ普及の背景や「i-Construction」、便利なアプリ5選について解説します。
利用者からの評判の良いアプリを建設現場において上手く活用することにより、大幅な業務改善に寄与することができるでしょう。
建設業界におけるアプリ普及の背景には、主に4つの現状と3つの課題があります。それらを以下で解説していきます。
日本経済全体の中で、建設業界が占める割合は10%前後と大市場を築いています。1990年代初頭のバブル経済崩壊後の下落から、建設市場は徐々に回復へと推移してきましたが、建設労働力はさほど回復していないのが現状です。
建設投資額は、平成4年度の約84兆円をピークとして減少し、平成22年度には、平成4年度の半分程度である約42兆円まで落ち込みました。その後、東日本大震災の復興需要により回復基調となり、令和元年度の建設投資額は、約63兆円となりました。
平成9年に技能労働者は約455万人いましたが、平成22年には331万人まで減少し、その後はわずかしか増加していません。
以上のことから、建設投資額が平成22年度に底を打つ前後の低迷期において、建設業界の業者数・労働者数ともに減少し、その後の回復基調においても、業者数・労働者数ともにさほど回復していないことが分かります。
現在の技能労働者約340万人の中で、60歳以上の層が最も大きな割合を占めています。また、55歳以上の割合が約34%であり、29歳以下の割合は約11%となっています。
今後10年間で技能労働者は約110万人減少する見通しとなっており、新規の参入者数の増加はさほど見込めない状況です。
道路や橋梁、トンネル、河川の堤防・ダム、海岸の堤防、上下水道などの社会インフラの老朽化が深刻化しており、それに伴う崩落事故などもマスコミで報道されています。老朽化対策に伴う建設ニーズが益々高まる状況下において、技能労働者の人手不足が深刻化すると想定されます。
技能労働者の人手不足に対応するため、生産性の向上が必要となります。しかし、建設業界特有の現場の課題があるため、生産性の向上を阻んできた背景があります。その課題は主に「単品受注生産」「現地生産」「労働集約型生産」の3点の生産体制にあります。
建設業界の生産体制は、発注者から受けた建造物建設依頼を受けて決められた土地に単品ごとに生産する仕組みとなっており、大量生産をすることができません。
生産活動は現地屋外の土地であるため土地条件が一様ではなく、土地形状・土地高低差・土質・気象条件などが現地ごとに異なるため、建設工事実績をそのまま活用することができません。
建設現場には多様な建設機械や多種大量の建材の搬入、また多様な施工方法を導入する必要があるため、多種多様な業者・労働者を建設現場に集約する必要があります。
国土交通省は、建設業界の現状・課題を解決し、生産性を大幅に向上することを目的として、「i-Construction」を提唱しました。
「i-Construction」は、平成28年1月4日の国土交通大臣会見において発表されたプロジェクトです。その概要は、国土交通省生産性革命本部において公表されました。
具体的には、人口減少時代を迎え労働者が減少しても、
・トラックの積載率が41%に低下
・道路移動時間の約4割が渋滞損失
などという状況を改善することにより、労働者の減少を上回る生産性の向上を目指すというものです。そこで、「社会のベース」、「産業別」、「未来型」という3つの切り口でプロジェクトを立ち上げました。
「社会のベース」「産業別」「未来型」の3つの分野における13のプロジェクトを以下に挙げます。
国土交通省は、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスでICTなどを活用する「i-Construction」を推進し、建設現場の生産性を2025年までに2割向上を目指すとしています。
「i-Construction」により、建設業界において生産性向上の要請に応えることのできるアプリが必要となります。その要請に応え、業務改善に役立つアプリを5つ紹介します。
建設現場での野帳作成に特化し、多くの技能労働者に使用されているアプリです。機能・特徴や利用企業は下表の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
機能・特徴 |
|
利用企業 |
|
図面のリアルタイム更新や図面の編集・閲覧をスマホやタブレット上で行うことができるアプリです。機能・特徴は下表の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
機能・特徴 |
使用し易いインタフェース、DWGTM図面の確認、アップロード、作成、編集を行えるツールを完備
|
利用企業 |
|
スマホで正確に様々な向きの水平・傾きの角度を計測することができるアプリです。機能・特徴は下表の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
機能・特徴 |
|
利用企業 |
|
建設現場の効率化から経営改善まで一元管理できるクラウド施工管理アプリです。機能・特徴や知用企業は下表の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
機能・特徴 |
|
利用企業 |
|
工事写真だけでなく、図面や書類なども一元管理できるアプリです。機能・特徴と利用企業は下表の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
機能・特徴 |
|
利用企業 |
|
建設業界におけるアプリ普及の背景や「i-Construction」、業務改善に寄与する便利なアプリ5選について解説しました。
スーパーゼネコンを中心として、建設現場において様々なアプリが導入され、建設工事のDXが進んでいます。
上記で紹介したアプリはその代表的なものですが、スマホやタブレットにて、必要な建設情報の収集・配信・連絡などが可能になってきています。それに伴い、無駄な時間や労力の削減に効果を上げ、生産性向上に大きく貢献しています。
建設業者や建設現場で携わる方々にとって、建設工事の効率化(労働時間の短縮、品質向上など)を図るためにも、上記アプリなどの導入を検討されることをおすすめします。