2021年2月25日
建設業を営業する場合、軽微な建設工事を除いて、建設業許可を取得する必要があります。
建設業は29業種の工事に分類され、その業種の工事を行う場合には、その業種ごとに許可を取得する必要があります。建設業許可を取得するためには、許可の区分を把握し、5つの要件を満たす必要があります。
建設業許可を取得することで、信用力向上などの様々なメリットを得ることができます。
建設業許可の概要や区分、有効期間について解説します。
建設工事を受注するには、民間工事・公共工事に関わらず、建設業法3条に規定する建設業許可を取得する必要があります。ただし下表に示す「軽微な建設工事」のみを受注する場合には、建設業の許可を取得する必要はありません。
下記金額には、消費税及び地方消費税を含みます。
工事種類 | 請負金額・規模の上限 |
---|---|
建築一式工事 |
|
建築一式工事以外の建設工事 | 工事1件の請負金額が500万円未満の工事 |
建設業許可の区分には、「大臣許可と知事許可」や「一般建設業と特定建設業」、「業種別許可制」があり、それぞれについて許可を取得する必要があります。
建設業許可は、国土交通大臣もしくは都道府県知事が下表の区分により行います。
許可権者 | 区分 |
---|---|
国土交通大臣 | 2以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合 *本店の所在地を管轄する地方整備局長などが許可します。 |
都道府県知事 | 1の都道府県の区域内のみに営業所を設けて営業しようとする場合 *営業所の所在地を管轄する都道府県知事が許可します。 |
大臣許可と知事許可の違いは、営業所の所在地で区分されます。営業区域もしくは建設工事の施工区域に制限はありません。
建設業許可は、下請契約の金額などにより、「一般建設業」や「特定建設業」に区分されます。
下請会社との契約金額 | |
---|---|
特定建設業許可 | 発注者(行政庁など)から、直接請け負った1件あたりの工事金額において、4,000万円(建築工事業:6,000万円)以上の下請契約を元請が締結する場合 |
一般建設業許可 | 上記以外 |
なお、特定建設業は元請会社が許可を取得する必要があり、下請会社には必要ありません。
建設業許可は、建設工事の業種別に行います。建設工事は、2つの一式工事と27の専門工事の計29種類の工事に分類され、工事の種類ごとに許可を取得する必要があります。
許可を取得する場合、2つ以上の業種の工事を同時に取得することができます。また、現在取得している業種とは別の業種を追加して取得することも可能です。
工事内容 | |
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一式工事(2業種) | 土木一式工事、建築一式工事 |
専門工事(27業種) | 大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事、解体工事 |
平成28年6月1日から解体工事が新たな業種として新設されました。
建設業許可の有効期間は、5年となり、5年経過ごとに更新を受ける必要があります。更新を受けなければ、失効となるため注意しましょう。
また、更新申請は有効期間が満了する30日前までに申請する必要があります。
建設業許可を取得するには、建設業法第7条に規定する4項目の許可要件に該当し、同時に建設業法第8条に規定する欠格要件に該当しないことが必要になります。
建設業法 | 要件の内容 | |
---|---|---|
要件1:第7条第1号 | 許可要件 | 経営業務の管理責任者としての経験を有する者が必要 |
要件2:第7条第2号 | 専任技術者の設置 | |
要件3:第7条第3号 | 誠実性 | |
要件4:第7条第4号 | 財産的基礎もしくは金銭的信用 | |
要件5:第8条 | 欠格要件 | 欠格要件に該当しないこと |
経営業務の管理責任者や専任技術者の設置、誠実性、財産的基礎もしくは金銭的信用の4つの要件を満たすことが必要です。
建設業の経営業務について、一定期間の経験を有する者が最低でも1人は必要であると規定されています。具体的には、法人である場合には常勤の役員の中で1人、個人の場合には本人もしくは支配人の中で1人が下記のいずれかに該当する必要があります。
要件 | 詳細 |
---|---|
①許可を受けようとする建設業に関し、5年以上の経営業務管理責任者としての経験を有すること。 | - |
②許可を受けようとする建設業に関し、経営業務管理責任者に順ずる地位にあり、右記のいずれかの経験を有すること。 |
|
③許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し、6年以上の右記のいずれかの経験を有すること。 |
|
営業所ごとに、一定の資格もしくは経験を有する者の設置が必要です。また、一般建設業か特定建設業かによっても、必要な資格などが異なります。
下表のいずれかに該当する者が、専任技術者になることができます。
要件 | 資格 |
---|---|
①許可を受けようとする業種において法律で定められた資格・免許を有する者。 | 二級建築士、2級建築施工管理技士、2級土木施工管理技士など |
②学歴、資格の有無に関わらず、許可を受けようとする業種において10年以上の実務経験を有する者。 | - |
③大学(高等専門学校、旧専門学校を含む)所定学科卒業後、建設業許可を受けようとする業種について3年以上の実務経験を有する者。 高校(旧実業高校を含む)所定学科卒業後、5年以上の実務経験を有する者。 |
- |
下表のいずれかに該当する者が、専任技術者になることができます。
要件 | 資格 |
---|---|
①許可を受けようとする業種において法律で定められた資格・免許を有する者。 | 一級建築士、1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士など |
②一般建設業許可の専任技術者の要件に該当し、かつ元請として4,500万円以上の工事について、2年以上の指導監督する立場の実務経験を有する者。 | - |
③国土交通大臣が上記に挙げる者と同等以上の能力を有すると認めた者。 | - |
建設業許可を受けようとする法人、役員、個人事業主、建設業法施行令第3条の使用人などが、請負契約において、不正もしくは不誠実な行為をする恐れがないことを指します。
これは、建設業許可を受けようとする法人、もしくは個人事業主が、請負契約を行うに足りる財産的基礎もしくは金銭的信用を有することを意味します。これも一般建設業か特定建設業かによって異なります。
一般建設業 | 特定建設業 |
---|---|
①自己資本額が500万円以上であること。 ②500万円以上の資金を調達する能力があること。 |
①欠損額が資本金額の20%を超えていないこと。 ②流動比率が75%以上であること。 ③資本金が2,000万円以上であること。 ④自己資本が4,000万円以上であること。 |
建設業法第8条に規定する14項目の欠格要件に該当しないことが必要です。1つでも該当した場合、許可は行われません。
建設業許可を取得することで会社の信用向上に繋がり、大きな受注金額の工事を行うことができるため、金融機関の融資にも有利に働きます。
建設業許可を取得することで行政から認定された建設会社となり、元請会社や個人の顧客などとの取引もスムーズに行うことができます。
また、自社のWebサイトや社員の名刺などに建設業許可番号を記載することができるため、より信用性をアピールすることができます。
建設業許可を取得することで受注金額の上限が無くなるため、大規模な工事の受注をすることができます。
建設業許可を取得していない場合、工事受注金額の上限は500万円(建築一式工事:1,500万円)未満と規定されており、その規定を違反した場合、懲役刑・罰金刑の対象となり、取引先の元請会社も監督処分となります。
建設業許可を取得することで金融機関からの融資を受ける可能性が大きくなります。
金融機関が建設会社に対して融資を行う場合、審査項目の一つに建設業許可の取得が挙げられます。そのため、取得しておくことで融資に有利に働くと言えます。
以上、建設業許可区分や5つの要件、メリットについて解説しました。
500万円以上の建設工事を受注するためには、建設業の許可が必要になります。許可を取得することにより、受注額の上限は無くなり信用力向上にも繋げることができます。また建設会社の規模を拡大し、いずれは公共事業を受注するための足掛りとすることもできるでしょう。
都市基盤整備や防災などのインフラ整備の充実が叫ばれる中、建設業は重要性を帯び続けています。建設業の許可を取得する場合、事業承継なども見据えながら、長期展望に立って臨まれることをおすすめします。