【建設業界】建設業における経営事項審査(経審)とは?
経営事項審査
法律

【建設業界】建設業における経営事項審査(経審)とは?

2021年2月19日

公共工事を元請けとして受注したい場合、必須の審査となるのが経審(経営事項審査)となります。
平成6年に建設業法の改正がありましたが、それから公共工事の入札参加には経審を受けることが必須となりました。

そこでこの記事では、経審の概要や仕組み、申請の流れなどについて解説します。将来、公共工事受注を目指す建設業者にとっては、良き道標となるでしょう。

 

建設業における経審とは?

経審の概要(法的根拠)や登録経営状況分析機関、対象となる公共工事・対象から外れる公共工事について解説します。

 

経審(経営事項審査)とは?

経審(経営事項審査)は、「建設業法第27条の23」に規定されており、国・地方公共団体などが発注する公共工事を直接受注する場合、受けなければならない審査となります。

 

建設業法第27条の23(経営事項審査)

  1. 公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で、政令で定めるものを発注者から直接請負うとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。
  2. 前項の審査(以下「経営事項審査」という。)は、次に掲げる事項について、数値による評価をすることにより行うものとする。
    1. 経営状況
    2. 経営規模、技術的能力その他の前号に掲げる事項以外の客観的事項

 
公共工事の発注者は、競争入札に参加する建設業者に対して、資格審査を行うものとされています。
資格審査には、建設業法第8条に規定する欠格要件に該当しないことを審査し、「客観的事項」や「発注者別評価」の審査結果を点数化して格付けが成されます。この「客観的事項」の審査が経審(経営事項審査)となります。
経審は、「建設業法第27条の24」や「建設業法第27条の26」により、登録経営状況分析機関や建設業許可に関わる許可行政庁(国土交通大臣、都道府県知事)が審査を実施することとなります。

 

建設業法第27条の24(経営状況分析)

  1. 前条第2項第一号に掲げる事項の分析(以下「経営状況分析」という。)については、第27条の31及び第27条の32において準用する第26条の5の規定により、国土交通大臣の登録を受けた者(以下「登録経営状況分析機関」という。)が行うものとする。
  2. 経営状況分析の申請は、国土交通省令で定める事項を記載した申請書を登録経営状況分析機関に提出しなければならない。


建設業法第27条の26(経営規模等評価)

  1. 第27条の23第2項第2号に掲げる事項の評価(以下「経営規模等評価」という。)については、国土交通大臣または都道府県知事が行うものとする。

 

 

登録経営状況分析機関

登録経営状況分析機関は、下記の10機関となります。

 

登録順 機関名称 事務所所在地 電話番号
1 一般財団法人 建設業情報管理センター 東京都中央区築地2-11-24 03-5565-6131
2 ㈱マネージメント・データ・リサーチ 熊本県熊本市中央区京町2-2-37 096-278-8330
3 ワイズ公共データシステム㈱ 長野県長野市田町2120-1 026-232-1145
4 ㈱九州経営状況分析センター 長崎県長崎市今博多町22 095-811-1477
5 ㈱北海道経営情報センター 北海道札幌市白石区東札幌一条4-8-1 011-820-6111
6 ㈱ネットコア 栃木県宇都宮市鶴田町2-5-24 028-649-0111
7 ㈱経営状況分析センター 東京都大田区大森西3-31-8 03-5753-1588
8 経営状況分析センター西日本㈱ 山口県宇部市北琴柴1-6-10 0836-38-3781
9 ㈱NKB 福岡県北九州市小倉北区重住3-2-12 093-982-3800
10 ㈱建設業経営状況分析センター 東京都立川市柴崎町2-17-6 042-505-7533

 

対象となる公共工事、対象から外れる公共工事は?

経審の対象となる公共工事と、経審の対象から外れる公共工事について解説します。

経審の対象となる公共工事

下記に挙げる発注者が発注する施設もしくは工作物に関する建設工事で、建設工事1件の受注金額が、500万円以上(建築一式工事の場合は、1,500万円以上)のものが対象となります。
① 国
② 地方公共団体
③ 法人税別表第一に掲げる公共法人(地方公共団体を除く)
④ 上記に準ずるものとして国土交通省令で定める法人
(例)関西国際空港株式会社、首都高速道路株式会社、東京地下鉄株式会社、など

 

経審の対象から外れる公共工事

下記に挙げる工事は、経審の対象から外れます。
① 「建設業法施行令第27条の13」及び法人税法別表第一に規定する団体以外が発注する工事
② 軽微な工事(建築一式工事:1,500万円未満、その他建設工事:500万円未満)
③ 物理的・経済的に影響の大きい災害などにより、必要を生じた応急の建設工事
(例)堤防決壊、道路埋没、電気設備の故障など

 

建設業における経審の仕組み

経審の仕組みや総合評定値の計算方法、審査基準日と有効期間について解説します。

 

経審(経営事項審査)の仕組み

「建設業法第27条の23第2項」(上記)により、経審は「経営状況」と「経営規模等」の事項において、数値による評価を行います。
国土交通大臣もしくは都道府県知事は、建設業者が申請した「経営規模等」に関わる評価について請求があった場合、「経営状況」に関する分析結果に関わる数値(Y)と「経営規模等」に関する分析結果の数値(X・Z・W)を利用して、「客観的事項」全体について、評定結果に関わる数値を通知しなければなりません。この「客観的事項」全体に関わる数値を「総合評定値」(P)といいます。

 

「総合評定値」(P)=「経営状況」分析結果(Y)+「経営規模等」評価結果(X・Z・W)

 

総合評定値(P)の計算方法

「客観的事項」全体に関わる「総合評定値」(P)の計算式や各審査項目のウェイトなどをまとめると下表の通りです。

 

項目区分 審査項目 最高点 最低点 ウェイト 審査機関
経営規模等 経営規模 X1 ・完成工事高(業種別) 2,309 397 0.25 許可行政庁
X2 ・自己資本額
・利払前税引前償却前利益額
2,280 454 0.15
技術力 Z ・技術職員数(業種別)
・元請完成工事高(業種別)
2,441 456 0.25
その他の審査項目(社会性等) W ・労働福祉の状況
・建設業の営業継続の状況
・防災活動への貢献の状況
・法令遵守の状況
・建設業の経理の状況
・研究開発の状況
・建設機械の保有状況
・国際標準化機構が定めた規格による登録の状況
・若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況
1,966 -1,995 0.15
経営状況 Y ・負債抵抗力
・収益性・効率性
・財務健全性
・絶対的力量
1,595 0 0.20 登録経営状況分析機関
総合評価値(P) P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W 2,143 -18 1.00

 

審査基準日と有効期間

審査基準日は、経審の申請をする日の直前の事業年度終了日(直前の決算日)となります。
また経審の有効期間は、経審の結果通知書を受領した後、その経審の審査基準日から1年7カ月となります。

 

 

建設業における経審の申請の流れ

経審は、「経営状況」(Y)と「経営規模等」(X・Z・W)に分かれるため、それぞれ審査を申請する必要があります。
「経営状況」(Y)については上記の登録経営状況分析機関に対して申請を行い、「経営規模等」(X・Z・W)については許可行政庁に対して申請を行います。
また、総合評定値(P)の取得は「経営状況」と「経営規模等」の審査結果を得た後に、許可行政庁へ請求します。

 

「経営状況」分析(Y)

経審に必要な「経営状況分析」(Y)は、建設業法第27条の24(上記)に基づき、国土交通省の登録を受けた「登録経営状況分析機関」が行います。

 

「経営規模等」評価(X・Z・W)

経審に必要な「経営規模等評価」(X・Z・W)は、許可行政庁が行います。

建設業許可 許可行政庁
大臣許可
  • 北海道開発局長
  • 地方整備局長(関東地方整備局長など)
  • 沖縄総合事務局長
知事許可
  • 都道府県知事

 

申請の流れ

経審の申請の流れは、下表の通りです。

申請順 「経営状況分析」
「経営規模等評価」
申請行為
(登録経営状況分析機関もしくは許可行政庁)
1 「経営状況分析(Y)」
  • 「経営状況分析」(Y)の申請
    建設業者→登録経営状況分析機関
2
  • 「経営状況分析」結果通知書(Y)
    登録経営状況分析機関→建設業者
3 「経営規模等評価」(X・Z・W)
  • 「経営規模等評価」(X・Z・W)の申請
  • 「総合評価値」(P)の請求
    建設業者→許可行政庁
    *「経営規模等評価」の申請と「総合評価値」の請求は同時に同一の様式で行なえます。
4
  • 「経営規模等評価」結果通知書(X・Z・W)
  • 「総合評価値」通知書(P)(経営事項審査結果通知書)
    許可行政庁→建設業者
    *「経営規模等評価」の申請と「総合評価値」の請求を同時に行った場合、同一の様式にて通知されます。

 

まとめ

以上、経審の概要や仕組み、申請の流れなどについて解説しました。
経審は、公共工事を受注する場合、元請会社が受ける必要があります。その元請会社が下請会社に対して、建設業者としての力量を見計うために、経審を受けることを勧める場合もあります。下請会社も将来的に建設業者としての力量が備わってくれば、公共工事の受注を目指す可能性が高まります。その下準備として、客観的に現状を見計うためにも有効となりますので、経審を受けられることをおすすめします。

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