2021年2月26日
現場代理人とは、所属する建設会社の代理人として建設現場を担う責任者を言います。
似通った用語として、「現場監督」や「監理技術者」、「主任技術者」などがあります。
現場代理人とそれらとの違いが何なのか?と、分かりにくいと思われる方も多いと思いますが、大きな違いは「建設現場全般の取締りと工事代金の取り扱い」になります。
この記事では、現場代理人の概要や現場監督との違い、現場代理人になった際の注意点について解説します。
現場代理人は、建設業法に基づき工事請負契約により建設現場に配置され、工事の請負人である建設会社が工事の一切を取り仕切る責任を担う代理人として専任させる者を指します。現場代理人の主な仕事内容は、工程管理と安全管理になります。
一般的な工事の場合、法的規制はなく、建設現場ごとに現場代理人を配置する義務はありませんが、公共工事の場合は現場代理人の配置が必須となります。
また、専門的な施工技術や資格などがなくても問題ありません。言い換えれば、現場代理人は誰でも担うことができるのです。
現場代理人は、建設工事に関わる職人などに指示を出し、工事全体の工程管理を担うとともに、安全管理を徹底し、建設工事を事故無く完了させる必要があります。つまり、工事の進行管理を行う上で、建設工事の知識・ノウハウなどが要求されるため、建設工事に対する知識・経験・熱意を有し、関係者との良好な関係を築ける人が、現場代理人として相応しいと言えるでしょう。
小規模な建設工事の場合、現場代理人を配置しなくても建設工事の進捗を図ることができる場合もありますが、大規模な建設工事の場合は関わる関係者が多数となり、建設工事の内容も複雑化し難易度も上がるため、現場代理人の配置は必須となります。
現場代理人の主な仕事内容としては、
・建設工事の手順・段取りがスムーズに流れる工程表作成・無駄のない職人配置などの工程管理
・工事における細かな情報収集や関係者などへの周知徹底
・建設機械・建材などの適切な配置の確認や関係者の安全管理の徹底
などがあり、これらを兼ね備えて管理できる現場代理人を配置すると、スムーズに工事の進捗を図ることができます。
現場代理人は法的規制上、取得必須となる資格はありません。ただし、建設工事によっては請負人と直接的で恒久的な雇用関係にあることを必須にしている場合が多くなるため、請負人である建設会社の正社員を、現場代理人として任命する場合が大半となります。
現場代理人に任命されると、建設現場での工程管理や工事施工などを任されます。
建設業法第19条の2では、
・現場代理人の権限に関する事項
・現場代理人の行為についての注文者の請負人に対する意見の申出方法
を、請負者は注文者に書面で通知が必要とあります。
その通知内容には主に以下の内容が記載されています。
・現場代理人の権限の種類・範囲
・工事管理上、不測の事態が生じた場合、意見の具申方法
・契約内容の変更が生じた場合、意見の具申方法
これは、現場代理人の権限の範囲が明確にされていないことが理由となり、現場代理人の行為が後ほどトラブルになることを防ぐため記載されています。
現場代理人は建設現場に常駐し、工程管理・安全管理などを行います。建設工事の発注者が認める場合を除き、他の建設工事との兼務はできません。つまり、一つの建設工事に対して一人の現場代理人を配置となるのが一般的です。
ただし、同一の建設現場であれば、同一人物による現場代理人、現場監督、主任技術者の兼務が可能です。また工事期間中であっても、条件を満たす者であれば事前に届け出をすることにより、途中で現場代理人を変更することができます。
現場代理人は、建設現場において工事全般にわたる指示や安全管理を行いながら、職人などの工事関係者と綿密にコミュニケーションを取ることが重要です。工事に関する知識やノウハウ、安全管理以外でも工事関係者との良好なコミュニケーションを取れることが、現場代理人を選考するにあたり考慮すべき点と言えるでしょう。
現場代理人と現場監督とは、業務上被る部分が多くありますが、決定的な違いを以下で解説します。
現場代理人と現場監督との違いを下表にまとめます。
一般建設業 | 現場代理人 | 現場監督 |
---|---|---|
立ち位置 | 請負人の代理人 | 建設現場の工事責任者 |
業務内容 |
|
|
法令上の規定 | 資格、要件、義務などの規定無し | 一定の実務経験や資格が必要 |
その他 |
|
|
現場代理人と現場監督の決定的な違いは上表の通りですが、「工事現場の取締り」は現場監督よりも厳しい業務内容となります。
また、請負代金額のやり取りなどもあり、建設会社の代理人として経営者に近い存在となるため、建設現場によっては現場監督の上に現場代理人が立つ場合もあります。
以下の要件を満たす場合、現場代理人と現場監督の2つの役職を兼務することができます。
・発注者が現場代理人と現場監督を兼務しても支障が無いと判断した場合
・発注者と現場代理人兼現場監督との連絡体制が確保される場合
これは、インターネットを通しての通信環境が飛躍的に進歩し、いつでもどこでも連絡ができるIoTやICTなどの環境整備ができたため兼務が可能になったと言えます。
IoT:Internet of Things
ICT:Information Communication Technology
現場代理人になった場合、建設現場の理解や工事関係者とのコミュニケーションなどに特に注意し、熱意を持って業務に携わることが重要です。主に以下の内容を心がけると良いでしょう。
現場代理人は工程管理を行う上で、工事施工内容・工程・建設機械・設備・建材などについて詳しく理解しておく必要があります。
万が一不測の事態が生じた場合、現場代理人が問題解決のために率先して対応し指示を出すため、その際に建設現場の全般をよく理解していないと、問題解決の対応が遅れる原因となります。
現場代理人は、建設現場にいる工事関係者とのコミュニケーションを積極的に図り、連携を強めることが重要となります。
建設工事は多くの工事関係者とのチームワークにより成立します。日頃から意思疎通を図り、工事関係者一人一人の性格や向き不向きなどを把握し良好な関係を築くことで信頼関係が生まれ、的確に指示を出せるようになります。
現場代理人は率先して建設現場に立ち、日々の工事施工の細部まで把握する姿勢が大切です。工事関係者から質問などがあれば即座に応答し、指示を出す必要があります。
また、工事の問題個所や遅れている工程などを素早く把握し、改善策を立てなければなりません。そのような工事への熱意ある行動が工事関係者から支持されるようになることが、スムーズな現場管理につながります。
以上、現場代理人の概要や現場監督との違い、現場代理人になった際の注意点について解説しました。
現場代理人は、工事の進捗具合、建設機械・設備の搬入・搬出、建材の搬入、工事関係者の手配、安全管理、請負代金の入出金など多くの業務に関わります。それだけに、発注者や請負者(建設会社)、現場監督・職人といった工事関係者とのコミュニケーションが頻繁に生じるため、建設工事に関する知識や経験・熱意以外にも、コミュニケーション能力が特に必要になってきます。
よって、建設現場の理解を深め柔軟な対応ができ、工事関係者と積極的にコミュニケーションを取り良好な関係を築ける人が、現場代理人として実力を大いに発揮することができると言えるでしょう。