2021年3月3日
建設業界において、主任技術者や監理技術者、専任と非専任といった専門用語が頻繁に使用されており、その違いについて明確に理解することは建設現場において重要と言えるでしょう。
この記事では、主任技術者の概要や専任と非専任の違い、主任技術者と監理技術者の違いについて解説します。
今後、益々需要が増加する主任技術者について、建設業界の環境変化に伴うことによる非専任の増加が見込まれることについても触れていきます。
主任技術者は、建設業法第26条第1項により規定されています。
建設業法第26条第1項 建設業者は、その請け負った建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し、第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者で、当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。 |
また建設業者は、建設業法第7条によりにより、主任技術者を建設現場に専任で配置しなければなりません。
主任技術者の特徴は、以下の通りです。
・公共性のある施設もしくは工作物、又は多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な建設工事の場合主任技術者は専任でその工事を担う
・元請工事1件当たりの下請け業者への発注額が4,000万円未満(建築一式工事:6,000万円未満)の場合に担う
主任技術者の業務内容は、建設業法第26条の4第1項により規定されており、主に以下の通りです。
・施工計画の作成
・工程管理
・品質管理
・その他技術上の管理
・当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督
したがって、主任技術者は建設工事の計画・管理・指導・監督を行う必要があります。
専任と非専任は、建設業法第26条第3項により規定されています。
建設業法第26条第3項 公共性のある施設若しくは工作物、又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で、政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに専任の者でなければならない。 |
「専任」と「非専任」の意味は、担当する建設工事の数の違いになります。簡単に言うと以下の通りです。
・専任の主任技術者:1つの建設現場だけを担当する主任技術者
・非専任の主任技術者:複数の建設現場を担当する主任技術者
「専任」は、他の建設現場と兼務せず、常時該当する建設現場に従事することを意味するため、必ずしも該当する建設現場に常駐することではありません。
※参考元:平成30年12月3日国土建第309号国土交通省土地・建設産業局建設業課長通達
建設業法第26条第3項の「公共性のある施設若しくは工作物、又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事」の内容については、下表による工事請負金額の違いにより「専任」「非専任」が決まります。
専任と非専任の工事規模 | 土木一式工事などの工事請負金額 | 建築一式工事の工事請負金額 |
---|---|---|
専任の主任技術者が必要な工事規模 | 3,500万円以上 | 7,000万円以上 |
非専任の主任技術者でも可能な工事規模 | 3,500万円未満 | 7,000万円未満 |
請負金額が1,500万円の工事が2箇所あった場合、請負金額の合計が3,000万円になる。
請負金額が3,500万円未満のため、主任技術者を2箇所の建設現場に配置することが可能(非専任可能)
上表の規定にも例外はあります。工事請負金額が3,500万円(建築一式:7,000万円)以上の場合でも、密接に関連する2つ以上の工事を同一の場所もしくは近接した場所において、同一の建設会社が施工する際には主任技術者を非専任にすることが可能です。
監理技術者は、建設業法第26条第2項により規定されています。
建設業法第26条第2項 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額が、第3条第1項第2号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第15条第2号イ、ロ又はハに該当する者で、当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。 |
監理技術者の業務内容は主任技術者の業務内容とほぼ一致し、主に以下の業務を担います。
・施工計画の作成
・工程管理
・品質管理
・その他技術上の管理
・当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督
主任技術者と監理技術者の違いは下表の通りです。
比較項目 | 主任技術者 | 監理技術者 | |
---|---|---|---|
資格 | 2級土木施工管理技士 2級建築施工管理技士 二級建築士 等 (一般建設業許可の専任技術者要件と同一) |
1級土木施工管理技士 1級建築施工管理技士 一級建築士 監理技術者講習修了者 等 (特定建設業許可の専任技術者要件と同一) |
|
工事1件当たりの発注額 | 土木一式工事など | 4,000万円未満 | 4,000万円以上 |
建築一式工事 | 6,000万円未満 | 6,000万円以上 | |
資格証の携帯・提示義務 | 携帯・提示義務無 | 公共工事において専任で配置すべき工事の場合、携帯・提示義務有 |
表2において出てきた一般建設業と特定建設業の違いを下表にまとめます。
建設業の種類 | 下請会社との契約金額 |
---|---|
特定建設業 | 発注者から直接請け負った1件の工事金額において、4,000万円(建築一式工事:6,000万円)以上の下請契約を締結する場合の建設業(元請) |
一般建設業 | 上記金額未満の建設業 |
主任技術者の概要や専任と非専任の違い、主任技術者と監理技術者の違いについて解説しました。
社会インフラの整備や維持・管理などの需要が増加する中、主任技術者に対する需要も増加しています。
また、通信技術の発達により、いつでもどこでも連絡が取れる環境整備も進んでいますが、その一方で建設業界の就労者数は横ばい傾向にあります。そのような状況下において、非専任の主任技術者の割合が増加する傾向にありますので、建設業界における最新動向を把握されることをおすすめします。