工事主任とは?主任技術者との違いを解説
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役割
主任技術者
仕事内容

工事主任とは?主任技術者との違いを解説

2021年4月7日

工事現場にリーダーや責任者が不在の場合、工事が停滞してしまい工期通りに進まず納期に間に合わないということが少なくありません。また、判断を誤ってしまうと、施工ミスや重大事故を引き起こす可能性が非常に高くなります。
工事現場にはさまざまな役割を持った責任者がおり、法律によって必ず配置しておかねばならない役職も存在します。

そこで当記事では、工事現場に配置されている「工事主任」と「工事技術者」について解説します。また、類似するこの二つの役職の違いについても解説しています。

 

工事主任とは

「工事主任」とは、工事現場の監督業務を行う、いわゆる「現場監督」と呼ばれる立場になります。工事主任には資格取得の必要はなく、現場での業務経験の長い作業員の中から選ばれる場合がほとんどです。
主に工事における工程管理や品質管理、作業員に対する指導や監督といった業務にあたりますが、規模の小さい工事現場などでは現場の総責任者として工事現場を取り仕切る場合もあります。

 

工事主任の業務内容と役割

工事主任は現場での工事を監督する立場にあるため、作業者への指示や工事の進み具合といった、実働的な管理業務が主な業務になります。
以下では、工事主任の仕事内容についてさらに詳しく解説していきます。

❏工程管理

工事現場での工程管理では、工期までに施工物を完成させるため各種工事ごとに決められた手順通りに工事が行われているかの検査や管理を行います。
また、職人など多くの作業者が工事に携わるため、作業ごとの日程調整や全体のスケジュール管理なども業務の一環です。

 

❏品質管理

品質管理では、工事に使われる資材が適切な品質をクリアしているかのチェックや管理、完成した施工物の性能検査やデータ管理を行います。
記録する書類や画像データは膨大な量になるため、工事主任はこれらのデータを写真やファイルに収めて、トラブルや確認があった時にはすぐに提出できるように管理しておかなければなりません。

 

❏安全管理

工事現場は非常に危険な作業環境です。そのため、工事主任は現場内のパトロールを行って危険箇所を把握し、作業員に対して注意喚起やその危険箇所の排除・隔離を行います。
また、作業員に対しての安全教育やKY活動の奨励、さらに定期的な安全大会の参加や発注者の行う安全パトロールの対応といった業務なども行います。
工事主任は現場に常駐していることがほとんどなので、作業員と危険箇所や問題点を共有して安全な作業環境づくりを主導的に行う必要があるのです。

 

❏原価管理

原価管理は、施工計画などに基づき算出した「実行予算」と、建設現場での実際の工事において発生する「原価」を管理して、利益を計上できるように管理を行います。
実行予算よりも原価が増え、利益を計上することができなくなってしまうことなどを防ぐため、現場責任者は施工計画の見直しや下請工事業者の変更などを行い、実行予算と原価を調整しながら利益を計上できるように管理を行います。

 

❏環境管理

工事現場を運営するにあたっては、周辺環境への配慮は大変重要です。工事現場から出る騒音や振動、さらに粉塵の飛散や河川・地下水の水質汚染といったトラブルが起こらないようにしなくてはなりません。
工事によって出る産業廃棄物の徹底管理とマニフェストの管理、また、工事が周辺環境に及ぼす影響を考え、工事前の環境対策や汚染防止策などを実行していくのも工事主任の業務になります。

 

現場作業の効率化と技術の向上

工事主任はこれまでの管理業務の他にも、工事が安全かつスムーズに進むように作業効率を考え強いリーダーシップを持って工事を遂行していきます。
問題点があれば作業員と話し合い、最も安全で効率の良い作業を選択していく必要があります。そのため、常に現場作業の創意工夫や新しい機械の導入などを考えなくてはなりません。
また、作業技術はどんどん新しい技術が開発されているため、以前の技術にこだわることなく、最新の技術を現場に取り入れて作業効率の向上と作業負担の低減に努めなくてはなりません。ゆえに、工事主任は常に先端の技術を学び、現場に取り入れていく取り組みも重要な任務の一つと言えるでしょう。

 

主任技術者とは

工事現場には工事主任の他にも、「主任技術者」という立場の役職があります。主任技術者は、工事現場における施工技術上の管理を行うほか、現場作業者の指導や監督、工事の施工計画の作成や工程管理などを行います。
工事現場では建設業法により、工事の下請契約の請負金額が4000万円未満(建築一式工事では6000万円未満)場合、主任技術者を必ず現場に配置しなくてはなりません。
※主任技術者は、2020年10月1日に施行された「改正建設業法」において、一定の要件を満たした場合には配置の省略ができるようになりました。(限られる工事業種あり)

主任技術者の資格

主任技術者になるには、国家資格である「施行管理技士」や「建築士」の1級資格や2級資格が必要となります。
なお、このような資格を持っていなくても主任技術者に就くことは可能ですが、以下の要件を満たした者でないと主任技術者として配置することはできません。

  1. 高等学校の指定学科卒業後5年以上
  2. 高等専門学校の指定学科卒業後3年以上
  3. 大学の指定学科卒業後3年以上
  4. 上記1~3以外の学歴の場合10年以上

土木や建築など、各工事業種によって指定学科は異なります。指定学科を卒業後した場合、その工事の実務経験が3年から5年ほど必要となり、指定学科以外を卒業した場合は10年以上の実務経験が必要となります。

 

主任技術者の仕事内容

主任技術者とは、請負金額の他にも公的な工事などでも必ず配置しなくてならない役職になります。主任技術者の業務は「工程管理」「品質管理」「安全管理」などを基本とし、その他の業務内容も多くあります。その中でも、主任技術者の仕事は3つに集約されます。

✓ 工事計画の作成と工程管理の実施

主任技術者は、工事の開始から完成予定に基づいて施工計画の作成を行います。
施工計画書は、安全かつ迅速に工事が進むように作成されますが、他業種の調整や天候、事故によって計画の変更が必要になることは多くあります。そのため、作業者との確認作業や話し合いを綿密に行うことで現場の進み具合や遅れを把握し、その時の事態に対応して柔軟に施工計画を変更していくことが求められます。

 

✓ 施工手順や施工物の品質管理

主任技術者は、工事の施工手順の確認や工事手順書通りに機材や建材が間違いなく使用されているかの管理を行います。これは工事の品質にもつながるため、厳格なチェックが重要となります。
万が一間違いを発見した場合はすみやかに作業を中断し、現場責任者の確認の元、工程の再確認や施工手順の再検討などの処置を行います。

 

✓ 作業者の指導と監督

現場作業者への施工方法の指導やアドバイスを行うことも、主任技術者の重要な業務のひとつです。
新しい技術を導入する際はその技術を積極的に現場に導入して作業者に指導したり、作業が施工手順通りに進んでいるかを確認し、万が一間違いがあった場合には作業者への指導を行います。

 

主任技術者と監理技術者の違い

また、工事現場には主任技術者以外にも「監理技術者」という役職があります。監理技術者とは、工事請負金額が4000万円以上(建築一式工事は6000万円)の現場に配置される技術者のことで、1級等の国家資格を保有し、監理技術者講習修了者がその業務を担当します。

業務内容は、施工計画の作成や工程管理、現場作業者への指導監督といった内容で、主任技術者とほぼ同じ業務になります。
しかし監理技術者はその現場に配置されると専任及び常駐義務があり、その工事が終了するまでは他の工事を兼任できないという特徴があります。監理技術者が配置される現場は大規模な工事や公共性の高い重要な工事が多いので、このような法的な義務が生じるのです。
なお、2020年10月の法改正により主任技術者と同様に法律が緩和され、専任補佐を置けば2つ現場を兼任する事ができるようになりました。

 

工事主任と主任技術者の違い

これまで解説してきた工事主任と主任技術者は、共に工事の施工管理を行い、仕事の内容も非常に類似していますが、この2つの役職には以下の違いがあります。ここではその違いについて詳しく解説します。

業務内容の違い

工事主任の業務は、工事現場全体を管理して工事の品質や作業現場での安全管理、そして、工事現場やその周辺の環境に悪影響を及ぼさないようにする環境管理などの業務をメインとしています。

一方で主任技術者の業務は、工事の施工計画の作成や工程管理、現場作業者を取りまとめて指導や監督業務をメインに行います。他にも関係各所との打ち合わせや調整なども行い、各工事の責任者として業務に携わります。

以上のことから、作業現場での直接的な管理・監督業務を行うのが工事主任となり、これらの業務に加え工事計画の作成や現場作業者への指導・監督、関係各所との打ち合わせや調整といったデスクワークを多く含む業務が多いのが主任技術者となります。

業務内容が重複している部分があるため、工事主任者と主任技術者を混同してしまいがちですが、現場における役目は異なりますので違いをしっかり把握しておくと良いでしょう。

 

配置条件の違い

工事主任は現場管理を行う者として現場に配置されますが、必ず配置しなくてはならない訳ではありませんが、主任技術者は工事請負金額が4000万円未満の工事や、公共性の高い工事の場合には必ず配置しなければならないという違いがあります。
また、主任技術者を配置する場合は直接雇用の人員でなくてはなりません。主任技術者は、工事を請け負った工事業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある技術者に限られるため、アルバイトや派遣社員の場合は有資格者であっても主任技術者にはなれないため注意が必要です。

 

まとめ

工事主任と主任技術者には以上で解説した違いがあることが分かったのではないでしょうか。
どちらの責務も重要ですが、主任技術者のほうがより重い責務を担っています。
また、元請け下請けに関わらず、主任技術者は直接的な雇用者でなくてはならず、企業側としてもより大きな工事を受注するため主任技術者の育成に力を入れています。
なお、工事主任から資格を取得し、主任技術者へスキルアップすることも可能ですので、工事主任を担う方はぜひ資格取得を目指すことをオススメします。

工事主任と主任技術者の違いをよく確認して、適切な現場配置と業務に支障が出ないように工事を進めていきましょう。

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