潜水溶接技師とは?仕事内容や必要な資格を詳しく解説
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潜水溶接技師とは?仕事内容や必要な資格を詳しく解説

2021年4月2日

溶接とは、金属同士を結合させるために熱を加えて溶かす作業を指します。この溶接を専門職としている溶接工は、工事現場や工場などの様々な現場で活躍しています。
溶接工は技術によって多くの仕事がありますが、その中でも一際特殊なのが、水中で作業を行う「潜水溶接」です。潜水溶接を行う職人は溶接の技術と潜水スキルが求められるため、多くの企業から重宝されています。

そこで当記事では「潜水溶接技師」に着目し、仕事内容や必要な資格などを解説します。溶接工として、キャリアアップを検討されている方は必見です。

 

潜水溶接とは

潜水溶接とは、水中で行う溶接作業のことで、海や川にある橋や下水・ダム・プール・水族館などの水辺で必要とされる技術です。
通常、溶接工の作業は陸で行いますが、潜水溶接技師の作業場所は水中になります。そのため溶接技術はもちろんのこと、潜水スキルも必要となり、その両方を持ち合わせた人のみが「潜水溶接技師」となることができます。

潜水溶接(水中溶接)は、「アーク溶接」という方法を用いて作業を行います。アーク溶接とは、アーク放電という電気的現象を利用して金属同士をつなぎ合わせる方法で、陸上でもよく使用されている施工手段です。ただし水中溶接の場合、陸上よりも溶接強度が落ちやすく、強度を確保するため様々な工夫が必要になります。そのため溶接技師としての知識を基に、現場の状況に合わせた臨機応変な対応が求められます。
上記のことから、通常の溶接工の中でも特殊な職種のため職人数も少なく、希少価値の高い職種と言えるでしょう。

 

潜水溶接技師の仕事内容や危険性について

まずは「潜水溶接技師」について、仕事内容や通常の溶接工との違い、向いている人の特徴を解説していきます。また、必要な資格や仕事の危険度などもあわせて確認しましょう。

潜水溶接技師の仕事内容

潜水溶接技師の仕事内容は、主に水中での溶接作業になります。先ほど記載した通り、水辺の建設事業は多岐にわたるため、多くの建設企業で潜水溶接技師が必要とされています。
潜水溶接技師が行う水中溶接は、「湿式水中溶接」「乾式水中溶接(局所乾式水中溶接)」の2種類の工法を用いて作業を行います。以下では、水中溶接の2種類の工法について解説していきます。

湿式水中溶接とは

湿式水中溶接とは、溶接する場所が水中に露出した状態で溶接を行う工法です。溶接箇所が水中にあるため、作業員はダイビング器具を身につけ、防水被覆した溶接棒を使用して作業を行います。水中が濁っていて視界が悪い場合もあり、かつ水中での作業となるため難易度の高い作業になります。
この工法は劣化や破損に伴う「応急処置」として使用されることが多く、潜水溶接技師には必要なスキルとなりますので、技術だけでなく水中で作業を行う体力も重要となるでしょう。

 

乾式水中溶接(局所乾式水中溶接)とは

乾式水中溶接(局所乾式水中溶接)とは、溶接部に水が触れないよう局所をシールドで覆い溶接を行う工法です。接合面が水中に露出している「湿式水中溶接」とは異なり、乾式水中溶接は溶接箇所が水に触れないように施工するため十分な強度を保つことができ、陸と変わらない溶接品質を確保できる施工法になります。
しかし、施工のためのシールド準備はコストがかかるため、求められる品質にあわせて工法を使い分けるようにしましょう。

 

潜水溶接技師に必要な資格

潜水溶接技師は、下記の資格が必要になります。
・アーク溶接作業者
・潜水士

 
アーク溶接作業者とは、労働安全衛生法に基づく「アーク溶接特別教育」を受講し、その修了証の交付を受けた者を指します。
アーク溶接は、操作を誤ると危険が発生する作業であるため、正しい知識や作業方法をおさえる必要があります。満18歳以上であれば、業界経験年数などを問わずに受講可能なので、溶接工としてのスキルアップには必須の資格と言えるでしょう。

また、潜水溶接技師は「潜水士」という国家資格が必要になります。潜水士の受験要件の規定はないためどなたでも受験が可能ですが、免許の交付は18歳以上と定められています。そのため、潜水溶接技師として潜水士の資格を取る場合は、アーク溶接作業者と同じく18歳を超えてから受験することをおすすめします。

しかし、これらの資格を取得したからといって、必ずしも潜水溶接技師になれるとは限りません。冒頭にも述べたように、水中溶接は溶接工の中でも難易度が非常に高い施工方法のため、資格取得後はスキルを得るために下積みが必要ですので、資格取得後は出来るだけ経験が積めるような建設会社へ就職すると良いでしょう。

 

潜水溶接の危険性

潜水溶接だけでなく、溶接作業には「危険」がつきものです。
たとえば溶接作業中の煙を日常的に吸い込むと「肺炎」や「溶接工肺」などの病気を患う危険性があります。さらに溶接時の火花などで火傷を追ってしまうケースも少なくないでしょう。

潜水溶接の場合は作業が水中であることから、上記のような危険性は限りなく少ないと言えますが、通常の溶接工とは異なる危険性があることを覚えておきましょう。
潜水溶接技師の危険性としては「高気圧障害」などの危険性があります。これは陸上と水中の気圧差から起こる障害であり、潜水士として正しい知識を有していないと。危険が生じてしまいます。
また、空気を送るボンベなどの備品トラブルや施工中の感電など、道具の小さな不良も大きな事故につながりかねません。潜水溶接技師の場合は、通常の溶接工とは異なる危険があることを念頭に入れておきましょう。

 

潜水溶接技師に向いている人の特徴

通常の溶接工よりも特殊なスキルが必要となる、潜水溶接技師。以下では潜水溶接技師に向いている人の3つの特徴を解説します。

手先が器用でものづくりが好きな人

まず一つ目は、「手先が器用でものづくりが好きな人」です。潜水溶接技師は水辺に関する様々なものづくりを行う仕事であるため、たくさんの人々と一緒にものを制作することに楽しさを感じられる人は潜水溶接技師に向いています。
また、溶接は金属同士をつなぐ細かな作業なので、手先の器用さも大切です。

 

物事に根気強く取り組める人

次に二つ目は「物事に根気強く取り組める人」です。潜水溶接技師は資格取得後がスタートであり、スキルアップのためには様々な現場で経験を積まなければなりません。一人前の潜水溶接技師になるための道のりは長く、どんな仕事も前向きに取り組む忍耐力は重要です。

 

人とは違うスキルを身につけたい人

溶接工の需要は高いため、アーク溶接作業者の資格を取得しているだけでも数多くの仕事があります。だからこそ「人とは違うスキルで、ステップアップしたい」と考えている方には向いている仕事です。
また、潜水溶接技師は他の溶接工よりも収入が高いので、年収をあげたい方にも最適と言えるでしょう。

 

まとめ

溶接工の中でも水中作業に特化した「潜水溶接技師」は、多くの建設会社から需要のある職種です。
「アーク溶接作業者」や「潜水士」の資格は必須になりますが、どちらの資格も難易度はそこまで高くないので、溶接工としてステップアップをしたい方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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