工事監理者とは?業務内容や必要な資格を解説
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工事監理者とは?業務内容や必要な資格を解説

2021年4月6日

ある条件以上の建築物を建てる場合、建築主は工事監理者を定めなければなりません。
工事監理者の役割や業務内容などを理解し上手く活用することで、建築物に欠陥や不具合などを生じさせないようにすることができ、万が一生じた場合においても、手だてを講じやすくすることができます。

そこでこの記事では、工事監理者の概要や役割、必要な資格、工事監理できる建築物の規模について解説します。

 

工事監理者とは

工事監理者は、建築基準法第2条、建築士法第2条にそれぞれ規定されています。

建築基準法第2条第1項の11
工事監理者 建築士法第2条第8項に規定する工事監理をする者をいう。

建築士法第2条第1項の8
この法律で「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。

※参照元:「建築基準法」「建築士法」e-GOV法令検索

 

また、建築基準法第5条において、特定の建築物を工事監理する場合、建築主は、一級建築士・二級建築士・木造建築士を工事監理者として定めなければならないと規定されています。

建築基準法第5条の6第4項
建築主は、第1項に規定する工事をする場合において、それぞれ建築士法第3条第1項、第3条の2第1項もしくは第3条の3第1項に規定する建築士または同法第3条の2第3項の規定に基づく条例に規定する建築士である工事監理者を定めなければならない。

※参照元:「建築基準法」e-GOV法令検索

 
ただし、構造一級建築士・設備一級建築士を必要とする建築物の場合でも、一級建築士であれば工事監理者として定めることができます。

 

工事監理者の役割

次に、工事監理者の役割と業務内容について解説します。

工事監理者の役割

工事監理者は、建築士法第2条第1項、また、建築士法第18条・第20条にもあるように以下の役割を担います。
・工事を設計図書と照合
・工事が設計図書のとおりに実施されているかを確認
・工事が設計図書のとおりに実施されていなければ、工事施工者に指摘・改善を指示
 ※工事施工者が従わないときは、その旨を建築主に報告
・工事監理を終了した時は、その結果を文書で建築主に報告

建築士法第2条第1項の8
この法律で「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。

建築士法第18条第3項
建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に対して、その旨を指摘し、当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、当該工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。

建築士法第20条第3項
建築士は、工事監理を終了したときは、直ちに、国土交通省令で定めるところにより、その結果を文書で建築主に報告しなければならない。

※参照元:「建築士法」e-GOV法令検索

 

工事監理者の業務内容

設計図書には、建設工事に伴う建築材料や建築物の寸法、適用する仕様などが記載されています。
工事監理者はその数量や寸法、仕様通りに工事が進捗しているか否かを工事現場において照合・確認をします。
万が一欠陥や不具合を見つけた場合は即座に現場監督者に連絡し、修繕をさせるなどの処置を施す必要があります。

下表に、主な工事項目ごとの工事監理内容をまとめます。

工事項目 工事監理内容
1 着工 施工図・施工計画(工程表など)の点検・確認など
工事管理者(現場監督など)とのコミュニケーションを図り、工事情報収集
2 地業工事 土質試験データなどの書類点検・確認、掘削範囲・深さなどを立会確認
杭基礎の場合、杭の口径・長さなどの確認、地盤への到達有無の点検・確認
3 基礎工事 鉄筋などの仕様確認、鉄筋の配筋位置・数量点検・確認など
コンクリート(セメント・骨材・水・混和材)仕様・品質などの立会確認
コンクリート打設時の立会確認、施工記録などの書類確認
4 構造躯体工事 鉄筋・鉄骨材・木材などの仕様確認、鉄筋の配筋位置・数量などの立会確認
コンクリート(セメント・骨材・水・混和材)仕様・品質などの立会確認
コンクリート打設時の立会確認・施工記録などの書類確認
ボルト孔の口径・位置、溶接個所など目視・計測による立会確認
接合箇所・つなぎ目などの目視・計測による立会確認、施工記録などの書類確認
5 防水工事 アスファルト防水工事・塗装防水・シーリングなどの目視による立会確認
自主検査記録・材料搬入報告書・工事写真などの書類確認
6 仕上げ工事 左官工事・建具工事・塗装工事などの目視による立会確認
外装工事(タイル工事など)・内装工事などの目視による立会確認
自主検査記録・材料搬入報告書・工事写真などの書類確認
7 設備工事 電力設備工事などの規格・材質・寸法・容量の目視・計測による立会確認
情報通信設備工事などの規格・種類の目視・計測による立会確認
法令に適合している旨の資料などによる書類確認
8 竣工 建築確認の完了検査での立会
消防の完了検査での立会
工事監理報告書を建築主へ提出・報告
建築主が行政機関(指定確認検査機関)へ提出する完了検査申請書をサポート

※参照元:「工事監理ガイドラインの策定について」国土交通省

 
工事監理者は、鉄筋の配筋検査やコンクリート打設時などの要所となる工事に立会い、施工会社からのヒアリングや材料品質証明書・検査結果報告書などの書類確認、写真確認などを行います。
工事監理者の判断により現場での立会確認などの頻度は決めますが、工事の難易度や施工会社の工事能力などにより左右されることもあります。
また、工事監理者は、建設会社からの工事変更要望などに対して、建築主との調整や工期の調整なども行います。建築主・建設会社・工事監理者が参加する定例会議などで、工事の問題点や工期調整などを解決しながら、工事の円滑化を図るのです。

 

工事監理者に必要な資格

上記においても解説しましたが、建築基準法第5条において特定の建築物を工事監理する場合、建築主は、一級建築士・二級建築士・木造建築士を工事監理者として定めなければならないと規定されています。
そこで、それぞれの建築士が工事監理できる建築物の条件を解説していきます。

一級建築士でなければできない工事監理

建築士法第3条第1項に規定する、一級建築士でなければできない工事監理の建築物を下表にまとめます。

建築物の構造 建築物の延床面積・高さ
木造 延床面積:500㎡超
高さ:13m超
軒の高さ:9m超
鉄筋コンクリート造・鉄骨造・石造・煉瓦造・
コンクリートブロック造・無筋コンクリート造
延床面積:300㎡超
高さ:13m超
軒の高さ:9m超
上記以外の建築物 延床面積:1,000㎡超かつ
階数:2階以上

 

一級建築士または二級建築士でなければできない工事監理

建築士法第3条の2第1項に規定する、一級建築士または二級建築士でなければできない工事監理の建築物を下表にまとめます。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
木造 延床面積:300㎡超
階数:3階以上
鉄筋コンクリート造・鉄骨造・石造・煉瓦造・
コンクリートブロック造・無筋コンクリート造
延床面積:30㎡超
上記以外の建築物 延床面積:1,00㎡超
階数:3階以上

 

一級建築士、二級建築士または木造建築士でなければできない工事監理

建築士法第3条の3第1項に規定する、一級建築士、二級建築士または木造建築士でなければできない工事監理の建築物を下表にまとめます。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
木造 延床面積:100㎡超
階数:2階以下
鉄筋コンクリート造・鉄骨造・石造・煉瓦造・
コンクリートブロック造・無筋コンクリート造
延床面積:30㎡以下
階数:2階以下

 

建築士でなくてもできる工事監理

建築士の資格を有していなくてもできる工事監理の建築物を下表にまとめます。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
木造 延床面積:100㎡以下
階数:2階以下
鉄筋コンクリート造・鉄骨造・石造・煉瓦造・
コンクリートブロック造・無筋コンクリート造
延床面積:30㎡以下
階数:2階以下

 

まとめ

以上、工事監理者の概要や役割、必要な資格、工事監理できる建築物の規模について解説しました。
工事監理者は、建築士の資格を有することにより業務を行うことができ、建築主に代わり、設計図書のとおりに建築物が建てられるように、工事現場などで監理を行います。
上記で解説した工事監理者の役割や業務内容などを理解し上手く活用することで、建築物における欠陥や不具合などの防止につなげることができるでしょう。

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