2021年4月5日
工事現場には、その工事を請け負った元請けや下請け業者が働いており、それぞれの工事で施工管理業務を行っている「主任技術者」が配置されています。主任技術者は、建設業許可を受けている企業が必ず配置しなくてはならない役職です。
しかし、工事現場によっては主任技術者が常に配置されている現場と、常に配置されていない現場が存在しています。本来、工事現場にいなければならないはずの主任技術者がいなくても良いのでしょうか?
そこで当記事では、主任技術者の役目と仕事の内容について解説しています。
また、主任技術者が現場にいなければならない理由と、現場に常にいなくても良いその法的根拠、さらに、主任技術者の「常駐」と「専任」の違いに関しても詳しく解説していきます。
主任技術者は、工事の元請け及び下請け業者が、現場に必ず配置しなければならない技術者のことです。
施工管理技士の国家資格を持っている有資格者のほかに、建築や土木といった専門的な指定学科を卒業し、一定年数以上の実務経験があれば主任技術者として活躍することができます。
主任技術者の仕事は、工事を予定通りに進めていくための「施工計画の作成」や「工程管理」、完成した施設や構造物の精度に関わる「品質管理」、工事現場の危険や作業員の安全に関わる「安全管理」などの施工管理業務を行っています。
また、施工に関わる作業員の技術上の指導監督も業務のひとつとなっています。
これまで、元請け下請け問わずに建設業許可を受けた業者は必ず一現場に主任技術者を配置しなければいけませんでしたが、2020年の「建設業法改正」により一定の要件を満たした「特定専門工事」の下請け業者※1については、主任技術者の配置が任意となりました。
※1:主任技術者の不要の条件は、下請け代金が3,500万円未満の「鉄筋工事」と「型枠工事」に限定されています。また、元請人との書面による合意と、元請け人が工事の注文者からあらかじめ書面による承諾を受けていることが条件になります。さらに、この制度を利用して主任技術者を置かない場合、その工事を再下請けに出すことは禁じられています。
各工事の監督として工事現場の指揮を執る役目を担う主任技術者は、公共性の高い工事や大勢の人が利用するような施設工事の場合には、主任技術者は「専任の者ではならない」と建設業法により規定されています。(建設業法第26条)
ここで出てくる「常駐」と「専任」という言葉。文字だけを見ると同じ内容に見えますが、実際はどのような定義になっているのでしょうか?
常駐とは「常に駐在していること」という意味があり、専任とは「ある一つの任務だけを担当すること」という意味があります。
上記より、建設現場における「常駐」とは、その工事現場に駐在はするが、他の工事現場の仕事も兼任することができる主任技術者を意味し、「専任」とは、その工事現場の仕事以外は兼任できない主任技術者の事を意味しています。
なお、「専任」とはあくまで業務に対して指す言葉であり、研修や講習、休暇取得などの合理的な理由で現場を離れても差支えは無く、工事現場への常駐が必要とされている訳ではありません。
主任技術者を専任として配置することを定める建設業法第26条では、公共性のある重要な工事については主任技術者に現場ごとの専任義務があるとして、元請け下請けに関わらず、工事1件の請負代金が3,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円)の場合は専任として配置させなければならないとしています。
これは反対に、工事の請負金額が3,500万円未満(建築一式工事の場合は7,000万円未満)の工事ならば、工事現場に兼任の主任技術者を立てても良いという事になります。
これが、主任技術者を配置する時に「常駐」にするのか「専任」にするのかの法的根拠となっています。
建設業界は長年の人手不足の上、人員の老齢化や退職により慢性的な技術者不足が深刻化しているのが現状です。
建設業許可を受けている建設業者は、工事請負金額の大きさに関わらず、原則として主任技術者を配置しなければなりませんが、このような状況で全ての公共工事や重要な構造物、施設工事などで主任技術者を専任で配置すると人件費が高くなり、企業側の負担は大きくなってしまうことが想定できるため、企業側としては1人の主任技術者を常駐として3,500万円未満の工事現場を複数管理するように配置することで、コストを抑えつつ工事件数を増やすといった対策をとることも有効といえるのではないでしょうか。
以上のことから、主任技術者が常駐配置される現場と専任配置される現場は、工事請負金額の違いによって分かれていることがお分かりになったのではないでしょうか。
建設業界の人手不足の解消と人材の効率的な活用のために、建設現場ではこのような施工体制が組まれているのです。