2021年5月6日
建設現場において重要な役割を担う施工管理の業務は、責任のある仕事だからこそ、非常にハードではありますが、それだけに大きなやりがいもあります。
中には20年~30年という長期間に亘り、施工管理一筋で業務をされてこられた方もいます。
そこで当記事では、施工管理の業務内容や身に付くスキル、そしてやりがいについて解説します。
施工管理の業務内容としては、「5大管理」といわれる工程管理、品質管理、安全管理、原価管理、環境管理があります。
工程管理は、建設工事の決められた工期を守るためにスケジュール管理を行うことです。
建設工事には、「工期」と呼ばれる建築物の完成期限が設けられており、発注者と受注者との間で工期内に建築物を完成させる契約が交わされます。そのため、各工事の工期を調整しながら全体の工期を守り、工事を完成させる必要があるのです。
数多くの職人などの作業員が建設工事に関わるため、効率良く工事を進めるために各工事の作業ごとに日程調整を行う能力が施工管理者として求められます。
品質管理は、建築物が設計図書や仕様書通りに造られているかの管理を行うことです。
具体的には以下の点に注意して点検や確認をします。
・設計図書に記載されている寸法通りに建築物が造られているか
・仕様書に記載されている強度や機能・材質通りに建築物が造られているか
点検・確認する手段として、評価対象ごとに決められた試験方法や点検方法などで確認を行い、品質を確保します。
また、品質保持を証明するために、施工写真を撮影して記録に残すなどの施工記録の作成も行います。
安全管理は、建設現場において安全な環境で工事を行えるように整備し、事故を起こさないように管理することです。
その対策として、主に以下を進めます。
・KYK:危険予知活動
・5S運動:整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)
・ヒヤリハット運動
また、下請業者や職人などの作業員を集め、安全対策としての知識や意識向上のために、準備・点検・確認を毎日行います。
原価管理は、施工計画などに基づき算出した「実行予算」と、建設現場での実際の工事において発生する「原価」とを比較し、利益を計上できるように管理を行うことです。
実行予算よりも原価が増える傾向にある場合、利益を計上することができなくなります。施工管理者は、施工計画の見直しや下請工事業者の変更などを行い、実行予算と原価を調整しながら、利益を計上できるように管理を行います。
環境管理は、工事によって出る産業廃棄物の徹底管理や工事が周辺環境に及ぼす影響を考え、工事前の環境対策や汚染防止策などを実行することです。
工事現場を運営するにあたっては、周辺環境への配慮は大変重要です。工事現場から出る騒音や振動、さらには粉塵の飛散や河川・地下水の水質汚染といったトラブルが起こらないようにしなくてはなりません。
施工管理で身につくスキルとして、スケジュール管理能力やコミュニケーション能力などがあります。
施工管理者は、様々な専門工事を同時並行で進行させる管理能力が必要になります。
日常的に工事全体の進捗度合いの点検・確認を行いますので、スケジュール管理能力が格段にアップするでしょう。
施工管理者は、職人などの作業者や専門工事業者、施主などの関係各所と協議や連絡などを行うため、コミュニケーション能力は必須となります。
工事現場での問題点や要望などをくみ取った上で社内調整を行い解決を図り、施主の了解を取り付けるなどの作業が日常的に必要です。
このような業務を日頃から行うことで調整力や問題解決力などが日々醸成されますので、コミュニケーション能力が格段にアップすると言えるでしょう。
施工管理のやりがいとしては、主に以下が挙げられます。
・建築物が自身の作品・実績として残ること
・工事を工程通りに進捗させたときの達成感
・コミュニケーションによる信頼関係構築
これらを達成することが、施工管理者にとって大きなやりがいへとつながっていきます。
建設業務は、建築物を後世に残す仕事でもあります。また、建築物は自身の施工管理による作品となり、実績ともなります。
住宅の場合、建築主や購入者にとって、大半の方が一生に一度の買い物となります。そのため、建築主や購入者などのお客様の要望通りに提供できたときの喜びが、施工管理者にとってのやりがいにもつながります。
工事現場の大小によっても異なりますが、各種専門工事における様々な問題などを解決しながら工程通りに進捗させ、工期に間に合わせた建築物の完成に対して、大きな達成感や充実感を感じることができます。
工事現場には、職人などの作業員をはじめとした多数の作業者が関わっています。そのような中で、コミュニケーションを図りながら全体をまとめ上げ、信頼関係を構築した上での建築物の完成は、施工管理者にとって大きなやりがいの一つとなります。
建設業界は、人口減少や少子高齢化により担い手が不足しており、特に施工管理者の人手不足は深刻化しているため、建設現場の生産性向上に向けた働き方改革の推進は緊急度の高い課題となっています。
内容としては主に以下の2つに関する対策が必要です。
①建設労働者の給与確保
②週休2日の実現
そこで国土交通省は、平成28年に建設現場の生産性向上を図る「i-Construction」を公表しました。
「i-Construction」は、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の活用による生産性の向上が大きな柱となっています。ICTにより建設現場から得られるビッグデータを効果的に活用し、業務の効率化・生産性向上を図ることにより、上記①②の解決を図ります。
今後は、施工管理者に対しても①②の充足が図られますので、安心して働くことのできる現場環境となっていくと言えるでしょう。
以上、施工管理の業務内容や身に付くスキル、やりがいについて解説しました。
施工管理において、やりがいを感じることができる前提条件として、
①コミュニケーション能力
②スケジュール管理能力
などのスキルが必要となりますが、毎日の施工管理業務において①②のスキルは十分鍛えていけると言えるでしょう。
今後は「i-Construction」の推進により施工管理の職場環境も改善されますので、施工管理の業務を担おうと検討されている方は、ぜひ前向きにチャレンジされますことをおすすめいたします。