施工管理技士の合格難易度はどれくらい?合格率を解説
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施工管理技士の合格難易度はどれくらい?合格率を解説

2021年7月6日

建設工事現場に携わっている方にとって、施工管理技士の資格取得は自身のキャリアアップやスキルアップにとって欠かせないものです。また、勤務している建設会社にとっても施工管理技士の有資格者は、公共工事などを受注する際に評価点がプラスとなりますので貴重な存在となります。
施工管理技士に対する需要は高い状況にありますので、資格取得に向けてチャレンジする良い機会であると思われます。

そこで今回は、施工管理技士の概要や施工管理技士試験の合格率、特徴、勉強方法、受験資格の緩和措置について解説します。
施工管理技士試験に合格するために、効率の良い学習方法のコツについて知ることができます。

 


 

施工管理技士とは

施工管理技士とは、建築や土木現場などで施工計画を作成し、施工管理(工程管理・品質管理・安全管理・原価管理・環境管理)を担う国家資格保有者です。
施工管理技士は、建築工事や土木工事、設備工事などの設計図・施工図などを確認して、工事の全体像を把握し、各管理を行いながら工事の完成を目指します。

施工管理技士の種類

施工管理技士には、建設業法で規定された7種類の資格があります。どの資格も国家資格となり、それぞれに1級・2級があります。
7種類の施工管理技士の内容を下表にまとめます。

施工管理技士 内容
建築施工管理技士 オフィス・マンション・学校などの教育施設などの建築工事現場において、主任技術者・監理技術者になるための資格です。大工工事や左官工事などの建築工事全般に対する知識・技術が求められます。
土木施工管理技士 道路・鉄道・港湾・河川・海岸・上下水道など、土木工事の建設現場において、主任技術者・監理技術者になるための資格です。
管工事施工管理技士 上下水道の配管や空調ダクト、冷暖房設備、浄化槽などの管工事に関する工事現場において、計画・管理・指導を行える資格です。
電気工事施工管理技士 電気工事の計画・管理・指導などが行える資格です。電気工事を伴う現場において、電気工学の知識や電気法規、施工管理法を把握していることが必要です。
電気通信工事施工管理技士 インターネットや携帯電話のアンテナ基地などの電気通信工事において、主任技術者・監理技術者になるための資格です。インターネット・モバイルネットワークの拡大により、2019年に新設された資格です。
造園施工管理技士 公園や庭園、建物の屋上緑化、道路の緑化工事などの建設現場において、主任技術者・監理技術者になるための資格です。
建設機械施工技士 ブルドーザーや油圧ショベル(バックホウ)、モータ・グレーダ、ロードローラなどといった建設現場で稼働する機械を操作するスペシャリストです。また、施工管理技士の中では最も古い資格です。

 

施工管理技士の1級と2級の違い

業務内容は、1級と2級との間に大きな差はありませんが、扱う工事現場の規模に差があります。
1級施工管理技士は工事規模の上限がなく、高層マンションや大型店舗、公共施設、大型設備工事などを施工管理することができます。一方2級施工管理技士は、中小規模の工事現場のみ担うことができます。

 

施工管理技士試験の合格率

ここで各施工管理技士の10年間の合格率を見てみます。

建築施工管理技士

1級・2級建築施工管理技士の2011年~2020年までの学科・実地試験合格率を下表にまとめます。

試験開催年 1級建築施工管理技士 2級建築施工管理技士
学科試験 実地試験 学科試験のみ・前期 学科試験のみ・後期 学科試験 実地試験
2011年 37.3% 40.4% 47.7% 34.6%
2012年 51.0% 34.4% 56.1% 34.1%
2013年 47.0% 41.4% 40.2% 30.1%
2014年 41.6% 40.2% 47.9% 33.5%
2015年 43.6% 37.8% 48.5% 32.7%
2016年 49.4% 45.6% 51.9% 38.9%
2017年 39.7% 33.5% 42.5% 40.0% 38.7% 28.9%
2018年 36.6% 37.1% 39.7% 20.6% 25.9% 25.2%
2019年 42.7% 46.5% 33.3% 25.3% 34.7% 27.1%
2020年 51.1% 不明 不明 35.9% 不明 不明
Δ1級・2級建築施工管理技士の学科・実地試験合格率(2011年~2020年)

 

土木施工管理技士

1級・2級土木施工管理技士の2011年~2020年までの学科・実地試験合格率を下表にまとめます。

試験開催年 1級土木施工管理技士 2級土木施工管理技士
学科試験 実地試験 学科試験のみ・前期 学科試験のみ・後期 学科試験 実地試験
2011年 40.8% 20.8% 40.4% 22.3%
2012年 54.8% 34.6% 53.2% 23.9%
2013年 60.0% 35.3% 54.9% 40.0%
2014年 58.5% 39.5% 53.4% 33.5%
2015年 54.6% 37.3% 66.5% 35.7%
2016年 55.0% 36.7% 48.3% 29.9%
2017年 66.2% 30.0% 57.7% 58.4% 71.6% 34.3%
2018年 56.5% 34.5% 50.3% 58.8% 63.4% 35.0%
2019年 54.7% 45.3% 61.9% 56.6% 67.1% 39.7%
2020年 不明 不明 中止 67.0% 72.6% 42.2%
Δ1級・2級土木施工管理技士の学科・実地試験合格率(2011年~2020年)

 

管工事施工管理技士

1級・2級管工事施工管理技士の2011年~2020年までの学科・実地試験合格率を下表にまとめます。

試験開催年 1級管工事施工管理技士 2級管工事施工管理技士
学科試験 実地試験 学科試験のみ・前期 学科試験のみ・後期 学科試験 実地試験
2011年 43.2% 46.1% 47.3% 32.4%
2012年 36.4% 49.2% 50.7% 37.1%
2013年 38.9% 67.8% 50.1% 37.9%
2014年 43.4% 60.3% 59.8% 36.4%
2015年 51.2% 50.1% 57.9% 45.9%
2016年 49.0% 61.0% 66.2% 44.5%
2017年 44.2% 63.2% 59.1% 40.9%
2018年 33.2% 33.2% 61.7% 57.1% 57.0% 40.4%
2019年 52.1% 52.7% 55.4% 63.6% 69.3% 44.1%
2020年 35.0% 61.1% 不明 57.6% 63.6% 43.5%
Δ1級・2級管工事施工管理技士の学科・実地試験合格率(2011年~2020年)

 

電気工事施工管理技士

1級・2級電気工事施工管理技士の2011年~2020年までの学科・実地試験合格率を下表にまとめます。

試験開催年 1級電気工事施工管理技士 2級電気工事施工管理技士
学科試験 実地試験 学科試験のみ・前期 学科試験のみ・後期 学科試験 実地試験
2011年 42.5% 64.6% 55.1% 47.9%
2012年 45.9% 62.6% 60.4% 41.6%
2013年 41.6% 58.4% 67.1% 67.1%
2014年 35.6% 63.1% 54.4% 39.0%
2015年 45.1% 63.4% 55.2% 40.4%
2016年 46.0% 69.1% 59.7% 41.6%
2017年 48.0% 62.5% 62.8% 40.0%
2018年 56.1% 73.7% 65.3% 61.6% 62.8% 43.2%
2019年 40.7% 66.3% 56.3% 58.7% 56.1% 45.4%
2020年 45.4% 不明 不明 不明 58.5% 45.0%
Δ1級・2級電気工事施工管理技士の学科・実地試験合格率(2011年~2020年)

 

電気通信工事施工管理技士

2019年に新設された1級・2級電気通信工事施工管理技士の2019年~2020年までの学科・実地試験合格率を下表にまとめます。

試験開催年 1級電気通信工事施工管理技士 2級電気通信工事施工管理技士
学科試験 実地試験 学科試験のみ・前期 学科試験のみ・後期 学科試験 実地試験
2019年 43.1% 49.5% 50.5% 57.7% 57.7% 57.1%
2020年 49.1% 49.3% 不明 不明 63.9% 42.9%
Δ1級・2級電気通信工事施工管理技士の学科・実地試験合格率(2019年~2020年)

 

造園施工管理技士

1級・2級造園施工管理技士の2011年~2020年までの学科・実地試験合格率を下表にまとめます。

試験開催年 1級造園施工管理技士 2級造園施工管理技士
学科試験 実地試験 学科試験のみ・前期 学科試験のみ・後期 学科試験 実地試験
2011年 26.2% 26.3% 42.2% 16.4%
2012年 23.4% 38.6% 44.9% 21.7%
2013年 26.1% 26.4% 51.3% 39.7%
2014年 40.0% 33.8% 55.8% 44.1%
2015年 48.1% 36.8% 59.8% 39.5%
2016年 53.2% 32.5% 50.4% 39.5%
2017年 46.6% 37.5% 不明 55.5% 61.0% 36.7%
2018年 41.2% 35.9% 不明 不明 62.7% 38.0%
2019年 37.0% 39.6% 不明 不明 50.9% 37.6%
2020年 39.6% 41.0% 不明 不明 58.3% 43.0%
Δ1級・2級造園施工管理技士の学科・実地試験合格率(2011年~2020年)

 

建設機械施工技士

1級・2級建設機械施工技士の2011年~2020年までの学科・実地試験合格率を下表にまとめます。

試験開催年 1級建設機械施工技士 2級建設機械施工技士
学科試験 実地試験 学科試験 実地試験
2011年 不明 不明 54.1% 88.4%
2012年 36.8% 86.2% 52.0% 86.2%
2013年 35.9% 87.0% 57.9% 87.6%
2014年 39.8% 89.7% 66.5% 90.0%
2015年 34.1% 88.4% 50.5% 87.8%
2016年 31.2% 86.8% 56.8% 87.9%
2017年 44.2% 84.2% 58.5% 84.4%
2018年 28.0% 63.3% 58.5% 84.0%
2019年 25.1% 63.8% 42.4% 83.9%
2020年 20.3% 80.2% 39.5% 39.5%
Δ1級・2級建設機械施工技士の学科・実地試験合格率(2011年~2020年)

 

施工管理技士試験の特徴

施工管理技士試験の特徴は、
・第一次検定(学科試験)
・第二次検定(実地試験)

があることです。
7種類の施工管理技士試験は、どれを取っても出題範囲は広く、多方面の知識が要求されます。

第一次検定(学科試験)

四肢択一マークシート方式の試験となります。現場施工の知識だけではなく、以下のような現場監督として必要な知識も広く求められます。
・建設機器・建設設備・建設材料に関する一般知識
・専門的な工事に関する技術的知識・ノウハウ
・遵守する必要のある法律の知識
・マネジメント(工程管理・原価管理・品質管理・安全管理)の知識

 

第二次検定(実地試験)

自身が、工事現場においてこれまで経験してきた施工管理の内容を文書記述方式により評価される試験となります。担当した工事の名称や内容、課題・問題点、解決方法などを明確にし、試験採点者にわかりやすく伝えることが大切です。
問題の意図に沿った記述が必要となるため、意図にそぐわない記述はしないように注意しましょう。

 

施工管理技士試験の勉強方法

施工管理技士試験の勉強方法には、主に以下などがあります。
・通信(WEB)講座を受講する方法
・講座へ通学する方法
・独学する方法

ここでは、業務をこなしながら独学で勉強する方法について、第一次検定(学科試験)と第二次検定(実地試験)とに分けて解説します。

第一次検定(学科試験)

いずれの勉強方法にしても、過去に出題された問題(以下、過去問)を活用して繰り返し解き、出題傾向や難易度を把握することが大切です。個人差はありますが、3か月~半年間コツコツ勉強すれば取得できる資格となります。合格する手順としては、以下の通りです。

❑ 解説書・過去問題集を準備

解説書・過去問題集の書籍を購入してもよいですし、WEBサイト上のブログ記事を収集してもよいでしょう。
また、YouTubeなどで無料動画解説なども豊富に配信されていますので、同時に活用することで理解をさらに深めることができます。過去問については、少なくとも10年分を準備しておくと良いでしょう。

 

❑ 基礎知識の勉強・演習

準備した解説書やブログ記事、YouTube動画などにより、基礎知識を勉強してインプットしていきます。ある程度の基礎知識をインプットした後は、過去問を解き演習を行いながら理解度を確認し、知識を深めていきます。
基礎知識全般を身に付けた後は、過去問10年分を全問正解するまで繰り返し解くようにしましょう。

 

❑ 模擬試験を受験

本番に臨む前に模擬試験を受験して、試験会場の雰囲気や問題を解く時間配分などを実戦形式で体験しておきましょう。
模擬試験の出題問題は、試験主催者が本番の試験問題を想定・分析した問題を出題していますので、間違った問題などを丁寧に復習しながら新たな知識を身に付けます。それらを丁寧に行うことにより、試験本番に余裕を持って臨むことができ、実力を発揮し易くなります。

 

第二次検定(実地試験)

第二次検定の勉強についても、過去問を分析して出題傾向を把握することが大切です。
文書記述力が試される試験でもありますので、日常的に文書を書いていない場合は箇条書きからでも良いので、とにかく書き始めることが大切です。その際、添削などの受講が可能であれば積極的に活用することで、効率的に文書記述力を伸ばすことができます。
この検定の対策は、どれだけ自身の工事経験の内容を試験採点者に明確に分かりやすく伝えるかにありますので、ある程度の文書量を書くことが必要です。過去問の模範解答を参照・吟味しながら、真似て書いてみるのも良策と言えるでしょう。

 

施工管理技士試験が緩和される?

2021年度の4月から、1級施工管理技士の受験資格が緩和されました。

試験名称変更

まず、試験の名称が以下のように変更となりました。
・学科試験 → 第一次検定
・実地試験 → 第二次検定

 

受験資格緩和

また、1級施工管理技士の第一次検定(学科試験)の受験資格が緩和されました。緩和後は、2級施工管理技士合格者は1級の受験資格となる5年間の実務経験が不要となり、翌年に1級の第一次検定を受験することができるようになりました。
ただし、1級の第二次検定の受験資格は、2級の第二次検定合格後から5年以上の実務経験が必要になりますので、注意が必要です。

 

新たな資格である「技士補」が新設

さらに、第一次検定合格者は「技士補」となることができます。
・第一次検定合格者 → 1級施工管理技士補、2級施工管理技士補
・第二次検定合格者 → 1級施工管理技士、2級施工管理技士

技士補になることで第一次検定は免除され、第二次検定を何度でも受験できるというメリットがありますので、まずは第一次検定の合格を目指しましょう。

 

まとめ

以上、施工管理技士の概要や施工管理技士試験の合格率、特徴、勉強方法、受験資格の緩和措置について解説しました。
冒頭にもあったように、施工管理技士の資格取得は自身のキャリアアップやスキルアップにプラスにはたらくだけでなく、勤務している建設会社にとっても、施工管理技士の有資格者が在籍していることで、公共工事などを受注する際に評価点がプラスとなるため貴重な存在となります。
個人差はありますが、施工管理技士の資格は3か月~半年間コツコツ勉強することにより、取得できる資格となります。これを機会に、施工管理技士の資格取得に向けてチャレンジされることをオススメします。

 

 


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