監理技術者にはどうすればなれる?要件や難易度、年収を解説
違い
メリット
難易度
監理技術者
主任技術者
収入

監理技術者にはどうすればなれる?要件や難易度、年収を解説

2021年7月6日

建設現場において、ある程度の経験やスキルを身に付けると将来性の高い監理技術者を目指したくなりますが、監理技術者は誰でもすぐになれる訳ではなく、1級国家資格の取得か実務経験年数のいずれか一方の要件を満たす必要があります。

そこで本記事では、監理技術者の概要や要件、監理技術者になるための流れ、年収、メリットについて解説します。
監理技術者は、自身にとっても勤務する建設会社にとってもメリットが大きく、キャリアアップやスキルアップに大きく貢献する資格であることがわかります。

 


 

監理技術者とは

監理技術者は、建設業法第26条第2項により、規定されています。

建設業法第26条第2項
発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額が、第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者で、当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。
※参考元:「建設業法」 e-GOV法令検索

監理技術者の業務内容

監理技術者の業務内容は、担当する建設工事において主に以下の内容になります。
・施工計画の作成
・施工管理(工程管理・品質管理・原価管理・安全管理)
・その他の技術上の管理
・当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督

 

監理技術者と主任技術者との違い

主任技術者と監理技術者の違いを下表にまとめます。

比較項目 監理技術者 主任技術者
必要な国家資格 1級土木施工管理技士
1級建築施工管理技士
一級建築士 等の有資格者
監理技術者講習修了者
(特定建設業許可の専任技術者要件と同一)
2級土木施工管理技士
2級建築施工管理技士
二級建築士 等の有資格者
(一般建設業許可の専任技術者要件と同一)
発注者からの工事
1件あたりの下請への発注額
土木一式工事等 4,000万円以上(税込) 4,000万円未満(税込)
建築一式工事 6,000万円以上(税込) 6,000万円未満(税込)
資格証の携帯・提示義務 公共工事において専任で配置すべき工事の場合、携帯・提示義務有 携帯・提示義務有

 

監理技術者の要件

監理技術者になるための要件は2種類の方法があり、以下のいずれか一方となります。
・1級国家資格等を保有することにより、監理技術者になる方法
・実務経験の条件を満たすことにより、監理技術者になる方法

1級国家資格等を取得することにより、監理技術者になる方法

指定建設業7業種の場合、1級国家資格等を保有することが監理技術者になるための要件となります。
指定建設業7業種は、「土木工事業」「建築工事業」「電気工事業」「管工事業」「鋼構造物工事業」「舗装工事業」「造園工事業」となります。
また、それぞれの業種において監理技術者になるために必要な1級国家資格等を下表にまとめます。

指定建設業(7業種) 業種ごとに必要な1級国家資格等
土木工事業 1級土木施工管理技士、1級建設機械施工技士、技術士
建築工事業 1級建築施工管理技士、一級建築士
電気工事業 1級電気工事施工管理技士、第1種電気工事士、1級計装士、技術士
管工事業 1級管工事施工管理技士、1級計装士、技術士
鋼構造物工事業 1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士、一級建築士、技術士
舗装工事業 1級土木施工管理技士、1級建設機械施工技士、技術士
造園工事業 1級造園施工管理技士、技能検定造園技能士、技術士
※参考元:「1級国家資格等による監理技術者の資格要件」一般財団法人建設業技術者センター

 
ただし、指定建設業7業種は実務経験による監理技術者の資格取得が認められていません。

 

実務経験の条件を満たすことにより、監理技術者になる方法

以下22業種の場合、実務経験の条件を満たすことが監理技術者になるための要件となります。

大工工事業 左官工事業 とび・土木工事業
石工事業 屋根工事業 タイル・れんが・ブロック工事業
鉄筋工事業 しゅんせつ工事業 板金工事業
ガラス工事業 塗装工事業 防水工事業
内装仕上工事業 機械機器設置工事業 熱断縁工事業
電気通信工事業 さく井工事業 建具工事業
水道施設工事業 消防施設工事業 清掃施設工事業
解体工事業
※参考元:「実務経験による監理技術者の資格要件」一般財団法人建設業技術者センター

 
実務経験の条件を満たす必要年数は、下表の通りです。

学歴または資格 必要な実務経験年数
実務経験 指導監督的実務経験
学校教育法による大学・短期大学・高等専門学校(5年制)・専修学校の専門課程※1を卒業し、指定学科を履修した者 指定学科卒業後
3年以上
2年以上
(左記年数と重複可)
学校教育法による高等学校・専修学校の専門課程を卒業し、かつ、指定学科を履修した者 指定学科卒業後
5年以上
2年以上
(左記年数と重複可)
国家資格等を有している者
①技能検定2級または技能検定1級等※2を有している者 2年以上
②平成16年3月31日以前に技能検定2級等※3を有している者 合格後1年以上 2年以上
(左記年数と重複可)
③平成16年4月1日以降に技能検定2級等※3を有している者 合格後3年以上
④電気通信主任技術者資格者証を有している者 交付後5年以上
上記イ・ロ以外の者 10年以上 2年以上
※参考元:「実務経験による監理技術者の資格要件」一般財団法人建設業技術者センター

 
※1:高度専門士、専門士の称号を持つ者
※2:二級建築士、木造建築士、消防設備士(甲種乙種)、登録基礎ぐい工事試験合格者、登録解体工事試験合格者(旧 解体工事施工技士)を含む
※3:地すべり防止工事試験合格者、地すべり防止工事士を含む

 

監理技術者になるための流れ

監理技術者になるための流れは、主に以下になります。

① 資格要件をクリア

上記の「監理技術者の要件」において解説しましたが、以下のどちらか一方の要件を満たすことにより、監理技術者の資格要件をクリアできます。
・指定建設業7業種において、1級国家資格保有者
・建設業22業種において、実務経験の必要年数を満足

 

② 一般社団法人建設業技術者センターに申請

上記の資格要件をクリアできている人が、一般社団法人建設業技術者センターに資格者証交付申請を行います。
申請費用は7,600円(非課税)です。資格者証の申請は、監理技術者講習の受講の有無に関わらず申請することができ、申請手続きはインターネット申請・書面申請の2種類から選択できます。

1級国家資格保有者による資格者証交付申請の必要書類を下表にまとめます。

No 書類 必要な方 注意事項
1 資格者証交付申請書 全員
  • 1~2枚目を提出
  • カラー写真1枚を交付申請書の1枚目に添付
2 カラー写真1枚 全員
  • 縦3.0cm×横2.4cm
  • 無帽、正面、上三分身、無背景、画像が鮮明なもの
  • 交付申請の前6ヶ月以内のもの
  • 写真の裏面に氏名を記入
3 建設業許可通知書のコピー 建設業者に所属している方
4 健康保険被保険者証等のコピー
  • 会社名の記述があるもののみ
5 交付等手数料払込受付証明書 全員
  • 払込受付証明書(お客様用)もしくは振込受付証明書(どちらも1番右のもの)のみ
6 資格者証送付用封筒 全員
  • 表面に資格者証の送付先を記入
7 運転免許証、パスポート
住民基本台帳カード(写真入)
個人番号カード(写真入・裏面不要)
特別永住者証明書、在留カード
のいずれかのコピー
全員
8 戸籍謄本もしくは戸籍抄本
(コピー不可)
新たに旧姓併記を希望される方
※参考元:「新規申請(一級国家資格等)」一般財団法人建設業技術者センター

 

③ 「監理技術者資格者証」の交付

一般財団法人建設業技術者センターにおいて、提出をした資格者交付申請書類の点検・確認を受け、問題がなければ「監理技術者資格者証」が交付されます。

 

④ 監理技術者講習を受講・修了

「監理技術者資格証」を保有するだけでは、建設業法で規定される建設工事現場での専任の監理技術者になることはできません。「監理技術者資格者証」所持者が、監理技術者講習を受講・修了する必要があります。
監理技術者講習では、以下の内容などを学びます。
・建設業の現状
・建設工事の技術者制度・法律制度
・建設工事における安全衛生管理
・建設技術の動向

 

⑤ 監理技術者として業務

監理技術者講習を受講・修了後、「監理技術者講習修了証」が交付されます。建設工事現場において「監理技術者資格者証」と「監理技術者講習修了証」を所持することにより、専任の監理技術者として業務を行うことができるようになります。

 

監理技術者の年収

建設業界の大手企業の場合、監理技術者の年収は約600万円~800万円となります。

特定建設業者が発注者から直接工事を請け負った元請人の場合、合計4,000万円(建築一式工事は6,000万円)以上の下請発注をした際には、監理技術者の設置が義務付けされています。
大手建設会社の場合該当する建設工事の現場数が多数存在するため、監理技術者の確保は必至といえます。その上監理技術者の数は少なく、大手建設会社が競合して監理技術者の確保に努めるため、年収は高くなる傾向にあるのです。

 

監理技術者になるメリット

監理技術者になることで、自身にとっても勤務する建設会社にとっても大きなメリットがあります。

✓ 昇給・昇進が期待

建設工事は大型化している傾向もあり、専任の監理技術者の配置を要する工事現場は増加しています。また、監理技術者は、指定建設業7業種においては1級国家資格保有者となるため高いスキル・キャリアを兼ね備えています。それだけに、所属する会社にとっても貴重な人材となるため、大手建設会社であれば昇給・昇進は十分に期待できると言えるでしょう。

 

✓ 転職に有利

「監理技術者資格者証」所持者は少ない上に団塊世代が定年退職を迎えることにより、益々減少傾向にあります。その一方で、建設工事現場は災害復旧工事などの増加に伴い、年々工事案件は増加傾向にあります。こういった格差が広がりつつあり監理技術者に対する求人数は増加しているため、将来性は非常に明るいということもメリットの一つです。

 

✓ 経審で加点

経審(経営事項審査)は、国・地方公共団体などが発注する公共工事を直接受注する場合に受けなければならない審査となります。
経審の審査の技術力評価において、「監理技術者資格者証」所持者は1人当たり5点が追加されるため評価が上がります。
また、「監理技術者講習修了証」所持者はさらに1点追加されるシステムとなっているため、公共工事を受注する建設会社にとっても、監理技術者の存在は大きなメリットとなるのです。

 

まとめ

以上、監理技術者の概要や要件、監理技術者になるための流れ、年収、メリットについて解説しました。
監理技術者になるための要件はいずれも決して容易な方法ではなく、相当な努力が必要になりますが、資格を取得したメリットは非常に大きく、キャリアアップ・スキルアップ・年収アップにつなげることができます。
また、勤務する建設会社にとっても貴重な存在となり、昇進も早くなる可能性が高くなるので、将来性の高い監理技術者になるためにチャレンジすることをオススメします。

 

 


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