2021年8月6日
都市開発が進む近年、「デベロッパー」という言葉を耳にすることも多いのではないでしょうか。
しかし、建物関連に関わる仕事とは理解されているものの、残念ながらその実態はあまりよく知られていません。とくに最近では建設業者を指す「ゼネコン」と混同されることが多く「デベロッパーはどんな仕事だろう?」と疑問に感じる方も多いでしょう。
そこで当記事では「デベロッパーとは」と題し、ゼネコンとの違いや役割について解説します。不動産業界に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
デベロッパー(Developer)とは、マンションやビル、さらに街全体の不動産を開発する専門業者のことを指します。
土地や建物を扱う不動産業は、主に「企画・開発」「販売」「管理」「賃貸」といった様々な事業があります。その中でもデベロッパーは「企画・開発」といったプロジェクトの川上を担当する仕事になります。
街の再開発だけでなく、リゾートや商業施設の開発、さらにはマンションや大規模宅地の開発なども含まれ、企画を実行するために建設会社や行政をはじめ、様々な企業を束ねていくことが大きな役割となります。
たとえば「商業施設の開発」の場合、まずどんなコンセプトの商業施設をどの場所にどのくらいの規模で作るか…といった大枠の構想が必要です。そして実際にどんなテナントに入ってもらい、どんな空間にするかといった施設の狙いを検討します。
デベロッパーは地域や住民の特性を理解し、これらの提案を担います。何もないところからカタチにしていく仕事なので、ものづくりやコミュニティ形成に興味のある方にぴったりの仕事と言えるでしょう。
土地や建物を扱う業種という点で見ると、デベロッパーとゼネコンは同じカテゴリーになりますが、各特徴を見てみると、これらの業種には決定的な違いがあります。
デベロッパーの仕事の特徴は、下記の3点が挙げられます。
– 建物の企画・開発を行う
– 宅地建物取引士資格が必要
– 地域の特性を知り活性化を目指す
冒頭でも紹介した通り、デベロッパーの仕事は建物の「企画・開発」であるため、クライアントの要望と地域の特性を考慮し、どんな建物・施設があったら良いかを考えます。
そのためデベロッパーには「宅地建物取引士資格(宅建)」が必要になります。宅建は宅地建物取引業法に基づいた国家資格なので、建物などの不動産売買や貸借の仲介を行うために欠かせない資格となります。もちろん就職後に取得することもできますが、就職活動までに取得すると有利に働きますので、デベロッパーを目指す方はまず宅建取得を目指しましょう。
一方でゼネコンの特徴は、下記の3点が挙げられます。
– 建物の設計・施工を行う
– 建築士もしくは施工管理技士の資格が必要
– 機能的かつ心地のよい空間づくりを目指す
ゼネコンはゼネラルコンストラクターの略称で、「総合建設業者」を指します。
クライアントもしくはデベロッパーの依頼に対し「どのような設計にすると効果的か」を考え、その設計をカタチにします。
そのためゼネコンには「建築士」もしくは「施工管理技士」の資格が必要になりますので、設計チームに所属している人は建築士の資格を、施工チームに所属している人は施工管理技士の資格を取得しましょう。
しかし、これらの資格はある一定の実務経験がないと受験できない仕組みになっているため、まずは現場で経験を積み、受験資格に到達したときには受験をオススメします。
資格を取得すると自身のスキルアップはもちろんのこと、昇給・昇進のチャンスもあるでしょう。
上記で解説した通り、不動産の「企画・開発」に関わるデベロッパーに対し、ゼネコンは「総合建設業者」になります。つまり、デベロッパーが企画したビルや施設を実際につくることがゼネコンの仕事になります。
スーパーゼネコンや大手ゼネコンの場合、デベロッパーの業務である企画に携わることもゼロではありませんが、都市開発の多くはデベロッパーがゼネコンに工事を依頼するといったスキームが主流となります。
デベロッパーとゼネコンの違いを理解したところで、以下ではデベロッパーの具体的な仕事内容について紹介します。
デベロッパーになるとどのような業務が発生するかを把握していきましょう。デベロッパーの仕事の流れは、大きくわけて5つあります。
一つ目は「用地取得」です。これは建物を建設するための土地を取得する手続き関連を指します。
不動産業者や行政と連携をとりながら目的に合った土地を選定し、取得に至るまでの交渉を行います。土地の候補が見つかった際には、大まかなプランや建設費を算出し事業計画を提案しなければなりません。
そのため、デベロッパーは最新情報を集める情報収集能力や各仕事に対するレスポンスの早さが大切になります。
二つ目は「設計・施工管理」です。上記で説明した通り、企画を考案するデベロッパーに対し、実際の設計・施工はゼネコンが行います。
そのため、デベロッパーはパートナーとしてゼネコンのプランをチェックし、クライアントが予定しているスケジュールや予算と合致するように管理しなければなりません。
設計・施工に関する細かな知識は不要ですが、打ち合わせで使う専門用語などは押さえておくと良いでしょう。
三つ目は「マーケティング」です。とくに商業施設やマンションは、どのような価格帯にしてテナントや一般顧客を誘致するかというポイントが重要になります。
それに加え商業施設の場合、メインとするターゲット層にあわせてテナントを募集しなければなりません。そのため、テナントの誘致や出店区画の場所決めなどはデベロッパーの大切な仕事のひとつなのです。
四つ目は「営業販売」です。マーケティング戦略をもとに、Webサイトやパンフレットなどを制作し、顧客や一般利用者へ打ち出します。
デベロッパーのメイン業務は不動産の企画になりますが、このような営業もデベロッパーの仕事になります。
五つ目は「法務・総務管理」です。不動産業や建設業では数多くの書類を作成します。これらの書類作成や手続き対応も仕事のひとつです。
大手デベロッパー企業の場合は担当を分けて行うことも多いですが、小規模の会社であれば自分で担当しなければならない場合もあるでしょう。
不動産にとって紙の書類は非常に重要な意味を持っているので、内容を理解した上で作業することをオススメします。
最後にデベロッパーが「どのような事業をしているのか」について紹介します。デベロッパーの事業は多岐にわたりますが、今回は以下の2つに焦点を当てて解説します。
再開発事業とは、ある街のインフラや住宅、商業施設などを新たに建築し「街づくり」をする事業を指します。
渋谷の再開発を例に挙げると、2027年までに以下の工事が計画・実施されています。
– 渋谷スクランブルスクエア2019年11月東棟開業済(2027年度中央棟西棟開業予定)
– 渋谷フクラス 2019年11月開業済
– 渋谷駅桜丘口地区 2023年度竣工予定
– 渋谷二丁目17地区 2024年度竣工・開業予定
– 渋谷ソラスタ 2019年3月竣工
– 渋谷ストリーム 2018年9月開業済
– 渋谷ブリッジ 2018年9月開業済
– 渋谷キャスト 2017年4月開業済
– 渋谷ヒカリエ 2012年4月開業済
このように、渋谷の街にシンボルとなる商業施設やビルを長い年月をかけて企画・建設しています。
マンション開発事業とは、再開発事業やインフラ事業に合わせてマンション開発を提案する事業を指します。たとえば、豊洲のマンション開発などが例にあります。
しかし、大規模のマンション開発を行うときには広大な土地が必要になるため、該当エリアにあるお店の立ち退きや住人との交渉など、数多くのやりとりが発生します。
そのため、ときにはその場所に住んでいる住人への説明会などの開催も必要になるでしょう。
ゼネコンと混同されがちな「デベロッパー」は、不動産の企画・開発に関わる仕事を担っていることがご理解頂けたかと思います。
建設案件のプランやコンセプトを考える仕事なので、ゼロから何かを作りたい方や地域づくりに興味のある方に最適の仕事と言えるでしょう。