2021年8月6日
工事現場で必要とされる「作業工程表」は、施工管理技士や現場監督にとって現場の良し悪しを左右するほどの重要な要素になります。
しかし、作業工程表はふだん目にするものではないため「何をどのくらい書いたらよいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、「作業工程表」について種類や書き方などを詳しく解説します。建設系の業界を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
作業工程表とは、現場を進行するためのスケジュール表です。
多くの現場では、クライアントや施設からの要望で工事を始める日(着工日)と工事が完了する日(竣工日)を決めています。この着工日と竣工日の間に「どのような作業をいつ行うか」を計画して記したものが、作業工程表になります。
実際の工事現場では、様々な工種の職人さんが毎日現場を出入りしています。
工事現場で最も重要なのは「決められた日数で完了させること」です。もちろん適切な日に必要な工種を配置しなければ、作業が進まないことも十分に考えられます。
つまり、作業工程表は作業を完了させるための「手順」や「ステップ」をまとめた表であり、工事全体の指揮に関係する重要な鍵なのです。
細かな工事の取り合いや現場で起こりうるトラブルを想定しながら、各作業の締め切りを設けることが大切であるため、作業工程表は全体指揮に関わる「現場監督」や「施工管理技士」によって作成されます。
作業工程表にはいろいろな種類があります。業種や目的によってツールが使い分けられており、ExcelやWord、その他制作ツールなど様々です。このツールはそれぞれ特徴が異なるので、作成内容に合ったツールを選択すると良いでしょう。
バーチャート工程表は最も有名なもので、一般的に「工程表」と呼ぶ場合にはこのバーチャート形式を使用します。
この工程表の特徴は、横軸が「日時」を表している点です。日付や時間によって各工程の「始まり」と「終わり」が明確にされ、必要日数が瞬時に把握できます。
さらに、バーチャート工程表は実際の現場の進捗を見比べやすいので、状況把握がしやすくなります。
多くのメンバーが関わるプロジェクトの場合は、このバーチャート工程表がオススメです。
この工程表を制作する際には、Excelやグラフの描画機能のあるツールを選ぶのが良いですが、ガントチャートの作成機能がついたプロジェクト管理ツールも複数あります。その中でも共同編集ができるツールは工程表のアップデートがしやすいので、管理者が複数いる大規模プロジェクトでは共同編集できるツールがオススメです。
ガントチャート工程表は、作業の進行・進捗状況の把握に特化した工程表です。先ほど紹介したバーチャート工程表は、作業における「日数」を重視した工程表でしたが、ガントチャート工程表の場合「進捗率」を重視します。
つまり「工事に対してどのくらい日数が必要か」ということよりも、「全体の工程に対しAという作業はどのくらいの進捗か」ということが重要になるため、たくさんの作業を同時並行で実施しなければいけない場面で効果を発揮します。
そのため、複数の作業が並行して行われる現場にピッタリの工程表と言えるでしょう。
ガントチャート工程表を作成するときも、上記同様Excelやグラフの描画機能のあるツールを選びましょう。管理者が複数人いるチームは、共同編集できるようにオンラインツールを使用することをオススメします。
ネットワーク工程表とは、各工事に対し前後の工事と関連付けて作成する工程表を指します。連続した全体工程においての流れを明確にするだけでなく、工期の見直しにも役立ちます。
内装仕上げ系の工種をはじめ、多くの工種は工事の途中から現場に参加します。
ネットワーク工程表は、ある工事に取り掛かるために「前工程において、どこまでの工事を完了していないといけないか」が明確になる工程表なので、工事のポイントが簡単に把握できます。
ネットワーク工程表を見れば「終わらせなければならないポイント」がわかるため、職人と目的の共有がしやすくなるのです。
この工程表もExcelもしくはグラフの描画機能のあるツールで制作できます。しかし、この工程表は数多くの工種によって複雑化された工事をシンプルに捉え直す目的があるため、制作するには様々な現場経験や知識が必要になります。
上記で紹介した3つの工程表は、Excelフォーマットが便利です。書き方にルールはありませんが、基本的に縦軸を「作業」、横軸を「時間」とするとわかりやすくなります。
具体的な書き方は以下を参考に、自分なりにアレンジしてみてください。
工程表で記載する内容は、以下の4点です。
– 日時(作業日数)
– 工種内容
– 作業内容
– 伝達事項
– 工程表の作成日
まず一つ目は「日時」です。作業する日だけでなく、連日作業が続く日は作業日数も明記しましょう。
二つ目は「工種内容」です。金物工事や木工事、電気工事や内装仕上げ工事などの工種を書くと、何業者が出入りするか把握しやすくなります。
三つ目は「作業内容」です。たとえば金物工事であれば、下地工事なのか造作工事なのか、といったように細部の情報を明記するようにしましょう。
そして四つ目は「伝達事項」です。「夜間の作業禁止」や「搬出入あり」といった現場状況がわかる情報を書きましょう。
基本的に上記の情報があれば作業工程表は完成しますが、「工程表の作成日」も必ず明記するようにしましょう。工程表はたびたび更新するものなので、作成日が書かれていないとどれが最新版か判断できなくなってしまいます。
これらの情報は必須項目として押さえておくと良いでしょう。
工程表は基本A3サイズで作成することをおすすめします。A4サイズだと現場で掲示する際に視認性が悪くなるためです。
また、白黒よりもカラーで「見やすさ」を意識しましょう。重要なポイントは色を使って記すことで、作業員ひとりひとりに周知できます。
とくに解体工事や複数の業者が出入りする日などの危険な作業日は伝達するだけで作業員の意識が変わるので、工程表を使い前もって告知しましょう。
Excelの工程表はいくつかフォーマットがあるので、使いやすいタイプを探してみてください。
作業工程表は「現場を進めるためのスケジュール表」ですが、作業日を単にまとめるだけではありません。綿密な計画がたてられていると、管理者の信頼も高くなり現場がスムーズに進みます。そこで以下では、作業工程表を作るメリットを解説します。
まず一つ目は「全体の流れが把握できること」です。管理者が自分の頭の中だけでスケジュールを組んでいると、実際に作業する職人は全体の流れが把握できません。そのため作業完了のイメージが想像しにくく、誤った作業をしてしまう可能性があるのです。
しかし、作業工程表として全体スケジュールがまとまっていると、次にどんな作業が発生するかを想像しやすくなります。「次はこの工種が作業をするなら、ここまで終わらせないといけない」という意識ひとつで、現場の進捗がスムーズになります。
次に二つ目は「他業種との調整がしやすくなること」です。新築案件などの場合、建築・内装・設備など様々な工事業者と協力して作業を行います。そのため自分の担当工事の全体工程が把握できていると他業者との連携も取りやすくなり、希望通りに工事を進めることができます。
工程表がないと、他業者との連携が取れずに作業の出戻りが多発してしまう可能性が高いため、正確な作業工程表があるのとないのでは施工管理者としての信頼においても大きく変わります。
そして三つ目は「ムダを排除できること」です。とくにネットワーク工程表の場合、作業の効率化を重視し工程を計画するため、作業日数の見直しや人員の削減に効果的です。
「いつどのように作業したらムダがないか」という発想は、施工管理者にとって非常に重要な能力になるため、この力を養うためにも作業工程表の検討は綿密に行うと良いでしょう。
現場のイメージができる作業工程表が作成できると、管理者としての信頼も高くなります。それだけに作業工程表の作成は難易度も高くなりますが、常に現場は時間との戦いだからこそ効率化が意識された工程表は重要ですので、まずは作業工程表を作る練習から始めてみることをオススメします。