施工図とは?設計図との違いや必要性を解説
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施工図とは?設計図との違いや必要性を解説

2021年8月6日

施工図とは、建物や什器を制作する際に欠かすことのできない大切な図面です。
施工図はデザインを決める設計図とは異なり、構造や細部の作り方まで指示されています。そのため設計図と施工図では必要な情報や図面の目的が大きく異なるのですが、物作りに関わっている方でないと、このような違いはあまりピンとこないのではないでしょうか。

そこで今回は、施工図と設計図の違いや、施工図の必要性について詳しく解説します。物作りに興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

 


 

施工図とは

そもそも「施工図」とは、名前の通り「施工するために必要な図面」のことを指します。
建設現場は1mmの誤差も許されない厳しい世界で、ましてや建築物の施工不良は人の命を左右するほどの影響力を持っているため制作する前に綿密な計画が必要になります。
そのため、施工図には実際に制作する形状や寸法、さらには使用部材などが細かく記載されているので、実際に制作する前に検証しやすくなります。

ものづくりの流れは、建築プランやデザインなどの大枠が決定した後、最終的にどのように作るかを考えます。この流れでいうと施工図は制作物の最後の資料であり、実際に制作する際には外すことのできない重要な資料となっています。

 

設計図とは

ものづくりに必要な図面には「設計図」という図面もあります。設計図は施工図とは異なり「デザインを設計する図面」を指します。
建物などの設計に携わる方は設計士の資格取得者がほとんどなので、施工に関する基礎知識も有しています。
しかし、「施工性」まで設計段階で考慮してしまうと、ありきたりなデザインになってしまい創造活動に制限がかかってしまうため、設計図では詳細な施工までは詰めずに、デザインの全容がわかる図面を作成します。
同じ図面ではありますが、施工図とは意味が異なることを覚えておきましょう。

 

施工図と設計図の違い

施工図と設計図の違いは、大きく2つあります。このポイントを押さえると、それぞれの図面の意味が理解できるはずです。

書く人が違う

まず一つ目の違いは、図面を「書く人」です。施工図は、施工管理者もしくは協力業者といった「施工者」が書く図面です。その一方で設計図は、建築士やデザイナーのような「設計者」が書きます。
メンテナンスや小規模工事の場合はこれらの垣根を越えることもありますが、基本的には施工者と設計者で役割分担がされています。

 

使う目的が違う

二つ目の違いは、図面を使う「目的」です。施工図は、管理者が実際に作業する職人と意思疎通を図るために使用する図面のため、使用ボルトのサイズやビスの長さなど細かく指示が書かれています。
その一方で設計図は、設計者が施工者やクライアントに向けてデザインを提案するための図面になります。そのためディティールよりも全体のデザイン概要やコンセプトがわかるように書かれています。
施工図と設計図では「読む人」が異なるので「誰に向けて書かれた図面なのか」によって、施工図か設計図かに分けることができます。

 

施工図の必要性

「簡単な施工なら施工図がなくても問題ないのでは?」と考える方も少なくはないはずです。そこで施工図の必要性について、改めて紹介します。

施工前に検証ができる

まず一つ目のポイントは「施工前に検証ができる」ことです。設計図上では問題なさそうな部分であっても、改めて考えてみると修正が必要なことはよくあります。
とくに造作に関わる下地工事などを施工図に書くと、施工に無理がある部分や補強すべき箇所などが明らかになるので、必ず実施しましょう。
施工方法を事前に検証しておくことで、当日の負担を減らすことができます。

 

現場でのトラブルが減る

二つ目のポイントは「現場でのトラブルが減る」ことです。現場は常に時間との戦いで、作業当日のミスは許されません。必要なパーツや重要なポイントを図面に書いておくことで事前準備の質が高まり、現場でのトラブルが減るでしょう。
難しい施工の場合は、施工図作成後に現場で打ち合わせをすると、問題がよりクリアになります。

 

竣工後のメンテナンスがしやすくなる

そして三つ目のポイントは「竣工後のメンテナンスがしやすくなる」ことです。施工図には使用する部材の品番やサイズを正確に記入しています。そのため数年後にメンテナンスの相談があったとしても、施工図を見返すだけで必要な材料をチェックすることが可能です。
また、天井内や壁内の状況は竣工後に確認はできませんが、該当箇所の施工図があればどんな状況かを把握することができます。
このように、施工図があることで無駄な解体作業や調査を減らせるので、作業効率化につなげることができます。

 

施工図は誰が書くのか

図面を書く仕事と聞くと、つい設計者の業務に感じてしまう方も多いと思われますが、施工図は施工管理者や協力会社が作成するものであり、双方の合意のもとに進めます。
– 協力会社が主導で作成し、施工管理者に承認を得る
– 施工管理者が主導で作成し、協力会社に指示を出す

施工図の内容が一つの工種(もしくは一業者)で完結する場合は、基本的に協力会社が作成して管理側がチェックすることが多いです。
その一方で、複数の業者が関わる工事や難易度の高い工事の場合は、施工管理者が作成し協力会社に指示を出すこともあります。
これらは各業者によってやり方が異なるため、施工図を実際に書く人については都度打ち合わせで確認すると良いでしょう。

企業によっては施工図を書く部門や、施工図が書ける人を管理者として配置することもあります。しかし深刻な人手不足によって、社内で施工図が対応できない場合も少なくはありません。
そのため最近では施工図作成を外注するという、図面作成を外部ブレーンにお願いするパターンが増えてきました。
その際は管理者と作図者が打ち合わせを行い、管理者の考えを作図者が図面に落としていくという流れになりますので、施工に関する詳細は必ず施工管理者が決定することを念頭に入れておきましょう。

 

まとめ

施工図は工事現場には欠かせない図面であり、建設業界では必ず目にする資料です。
建設現場に携わる職種でない限り直接関わることは少ないかもしれませんが、「これから作るものがどんな風に作られているか」を知りたいときはチェックすると良いでしょう。

 

 


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