2021年9月7日
建設業と聞くと、建設工事現場での施工管理や、大工工事・鉄筋工事・左官工事などの職人などをイメージされる方が多いと思われますが、建設業には他にも様々な職種があり、建設会社の運営を支えています。
そこで今回は、建設業の概要や各部門の業務について解説します。
施工管理の業務内容以外にも、各部門の業務内容について概要を知ることができますので、ぜひ最後までご覧ください。
建設業は、人々が生活するために必要なものや便利な暮らしを可能とするものを造る事業でいわゆる社会インフラを支える業界になります。その具体的な対象としては、主に以下になります。
また、建設業を支える主な職種には、施工管理部門以外にも、設計部門、営業部門、技術部門、事務管理部門、安全部門などがあります。
施工管理は、建設工事現場において、工程管理・品質管理・原価管理・安全管理・環境管理などを中心として施工管理を行う職種です。
主な業務内容は以下の通りです。
・工事現場に出入りする多種多様な専門工事業者の作業進捗状況
・基礎工事・躯体工事などの各工事の工程管理
・工事現場への建材・資材の手配や搬入・搬出の管理
・実行予算に対する現場経費の管理
・施主や建設コンサルタント・建築設計事務所などとの打合せ
・工事現場における労働災害の防止や安全に工事が進捗できるために、現場環境の改善・管理
また、主な施工管理には以下の7種類があります。
・建築工事の施工管理:住宅・オフィス・商業施設などの施工管理
・土木工事の施工管理:道路工事・河川工事・海岸工事などの施工管理
・電気工事の施工管理:電気配線工事などの施工管理
・配管工事の施工管理:水道管工事・空調設備の配管などの施工管理
・造園工事の施工管理:庭園・公園・緑化施設などの施工管理
・電気通信工事の施工管理:電気通信設備工事などの施工管理
・建設機械の施工管理:ショベルカー・クレーンなどの大型建設機械の施工管理
工事業種としては、建築・土木・設備と大きく3分野に分類されます。
施工管理の対象としては、マンション・オフィスビル・ホテル・学校などの教育文化施設・病院などの医療福祉施設・商業施設などの建築物となります。
それらの建築物の設計段階から携わり、建築物の施工管理・竣工・メンテナンスにわたるまで多岐にわたります。
最近では、建設現場においてもAI※1やIoT※2、ICT※3などを活用しながら業務の効率化を図る動きとなっています。
また、BIM※4といわれる3次元立体モデルを活用し、設計管理・施工管理・維持管理までを一貫して同じシステムで管理を行う手法が一般的になりつつあります。
※1 AI:人工知能:Artificial Intelligenceの略
※2 IoT:モノのインターネット:Internet of Thingsの略
※3 ICT:情報通信技術:Information and Communication Technologyの略
※4 BIM:Building Information Modelingの略
施工管理の対象としては、公共インフラである道路・鉄道・空港・港湾・河川・海岸・上下水道などの土木構造物となります。それらの整備に関する多種多様な工事の施工管理を行います。
・道路工事の場合:橋梁工事、トンネル工事、擁壁工事、法面工事、舗装工事など
・河川工事の場合:堤防工事、ダム工事、水門工事など
・海岸工事の場合:防潮堤工事、護岸工事など
地域の人々の利便性や安全性の向上を図り、豊かな国土を構築する業務となります。
土木工事現場においても、AIやIoT、ICTなどを活用しながら、業務の効率化を図る動きとなっています。
また、CIM※5といわれる3次元立体モデルを活用し、設計管理・施工管理・維持管理までを一貫して同じシステムで管理を行う手法が一般的になりつつあります。
※5 CIM:Construction Information Modelingの略
建築物には、電気設備・ガス設備・給排水設備・空調設備などが必要で、施主の要望や立地に最適となる設備の選定が必要になります。
設備ごとのメーカー・専門工事会社と協議を行い、工程管理・品質管理などを行い、建築物を利用する人々が快適に安心して生活や業務を行える環境の提供を目指します。
20歳代~40歳代の施工管理職の平均年収を下表にまとめます。
20代 | 30代 | 40代 | |
---|---|---|---|
施工管理職の年収 | 473万円 | 584万円 | 650万円 |
施工管理職の平均年収 | 630万円 | ||
建設業界の平均年収 | 509万円 |
平均年収は、建設会社の規模によって大きく異なります。低いケースは300万円から高いケースは1,000万円まで、格差が大きくなるのが実情です。
設計は、施主の要望を様々な技術とアイデアにより、図面に反映させていく業務が設計の業務内容となります。設計の種類としては、「意匠設計」「構造設計」「設備設計」に分類されます。
また、設計の職種としては、以下の2種類があります。
・設計士★:企画・アイデアをまとめる人
・CADオペレーター:設計士の企画・アイデアを図面化する人
★建築の場合:建築士、土木の場合:建設コンサルタント
意匠設計は、建築物などを構造・施工・維持管理・工事価格などに配慮しながらデザインする業務です。
外観・室内空間・間取りなど、建築物を利用する人の利便性・快適性・安全性などを考慮して、細部まで詳細に決めます。
よく考え抜かれた意匠設計は施工性も良く、工期短縮にも繋がり、技術やデザイン工事金額のバランスが良い建築物を創造します。
構造設計は、建築物・土木構造物がそれ自体の自重や地震・風力などの外力に対して、倒壊・損傷しないように建材・資材などの数量を算出し図面・計算書に反映していく業務です。
以下のような各種法令に準拠した設計を行い、安全・安心を反映させる設計となります。
・建築物の場合:建築基準法
・道路構造物の場合:道路構造令
設備設計は、建築物の利用者が快適に生活や業務を行えるように、電気設備・ガス設備・給排水設備・空調設備などの適正配置を計画する業務です。
CO2などの排出削減など、自然環境や省エネルギーに配慮した建築物のエネルギーを最適化可能な設備設計が重要になります。
建設業界では近年、建設DX※6の一環として、BIMやCIMの導入が加速化しています。
これまで、CADや3DCADを使用していた設計業務が、BIM(建築設計)やCIM(土木設計)の使用に移行しています。その理由としては、現在問題となっている人材不足の解消や、設計ミス・施工ミスを大幅に軽減することにあります。
※6 建設DX:建設 Digital Transformationの略、建設業務のデジタル化
主に建築分野の設計に使用されます。BIMのメリットは、以下の通りです。
・設計者・施工業者・施主の意思共有が可能であり、業務の効率化やコスト削減などが可能
・設計ミスをソフトが教示するため、設計ミスの防止
・設計変更が容易にでき、時間短縮可能
・設計図に仮想の人を入力して動かすことが可能であり、動線や使い勝手のシミュレーション可能
・建物の完成形を3Dで表示でき、施主にわかりやすく提示可能となり、合意形成のスピード化
・設計・施工・維持管理まで一気通貫で情報管理が可能
・施工コスト情報をBIM内で共有可能
・維持管理・点検・保守管理などの数値化・見える化が可能
主に土木分野の設計に使用されます。CIMのメリットは、BIMのメリットとほぼ同じです。
営業は、官公庁や民間企業といった施主の多様なニーズに応えるべく、自社技術を提案・説明しながら工事の受注に繋げる業務となります。
自社の各部門とのコミュニケーションを図り施主のニーズを反映させ、建築物や土木構造物などの完成を工事現場外にて後方支援する役割も担います。
官公庁営業は、自治体や独立行政法人が発注する公共工事を受注するための営業です。
公共工事は、入札やコンペ、プロポーザル方式などで落札する形式で発注されるため、自治体などへの情報収集が欠かせません。
また、競合他社の動向も把握し、有利に落札できるように調査・分析の作業も大事な業務となります。
民間営業は、一般企業や個人からの依頼工事を受注するための営業です。
例えば、土地を所有する企業や個人に対して土地有効活用を提案し、マンションやオフィス、商業施設などの建築計画を提案・受注します。
技術部門は、建設業の土台を支える部門であり、職人と技術開発で構成されます。
職人は、建設業界においてなくてはならない存在です。職人の主な職種を以下に挙げます。
・トンネル掘削技術を有する職人
・高所作業を行う「とび」などの職人
・鉄筋コンクリートの骨組みである鉄筋を組む鉄筋工
・建物の骨組みや造作などを行う大工
・電気配線工事を行う電気工事士
・大型建設重機を操作する運転士
建設業界では、建設労働者の高齢化問題や就労者減少問題、安全問題などに対応するべく、AI・IoT・ICTなどの発展により、各建設会社は建設DXなどを図っています。
具体的には、以下のような技術開発・導入が進み、業務改善・迅速化に貢献しています。
・ドローンによる高所点検:ビル・橋梁などの高所部分の点検・写真撮影など
・建築設計におけるBIM、土木設計におけるCIMの導入・普及(建設DXの象徴)
・リモート建機運転:ショベルカー・ダンプカーなど
・作業・運搬ロボット:溶接ロボット・建材運搬ロボットなど
・ペーパーレス化を図ったタブレットの利用:図面などの必要書類をタブレット上にて閲覧
技術部門は、これらの最新技術情報の収集や技術開発、技術導入を図る業務となります。
事務管理は、会社運営に伴う経理や人事・総務・法務など工事以外の事務的業務を担い、設計や営業、その他の部門全てと連係を取る必要があります。
また、事務管理は本社以外に支社・工事現場にも必要な職種となります。
安全部門は、建設工事現場において、安全・安心・快適に工事を行えるように職場環境の改善や管理を行う業務です。
具体的な業務内容は、以下の通りです。
・工事現場における労働災害の防止
・安全に対する社員教育
・下請け会社・協力会社・職人との安全面での連携
以上、建設業の概要や各部門の業務内容などについて解説しました。
建設業においてもDX(デジタル・トランスフォーメーション)の流れは止められず、積極的に導入を図る必要性に迫られています。そのことは、上記に揚げた6つの業務部門全てに共通して言えることです。
国土交通省は、全ての詳細設計・工事でBIMやCIMを令和5年度までに原則適用するとの公表をしましたので、地方自治体においても追随する動向になることは間違いありません。
今後は、全ての業務がデジタル化に移行します。建設DXに象徴されるBIMやCIMの導入を積極的に図り、業務の効率化・透明化・収益化を図ることをオススメします。