杭打ち工事とは?工事の目的や流れを解説
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杭打ち工事とは?工事の目的や流れを解説

2021年9月7日

「基礎杭打ち工事」は、重量のある構造物を支えるために行う工事です。私たちの暮らす日本は、地震や台風などの災害が多い国であるため、やはり建物を建てる際には地震や地盤の弱さに負けない基礎が必要です。
基礎杭打ち工事には、目的に合わせて様々な工法や種類があります。そこで今回は「基礎杭打ち工事」について、工事の目的や流れを詳しく解説します。土木関係者や建設業界の希望者はぜひ最後までご覧ください。

 

基礎杭打ち工事とは

「基礎杭打ち工事」とは、構造物を建築するときの「基礎工事」のひとつです。構造物をつくる際、構造物からの力を地盤に伝え、構造物を安全に支える機能が必要になります。
基礎杭打ち工事では、主にやわらかい地盤の上に建てられる構造物に対して使われることが多いです。この基礎杭打ち工事を行うと、地震や台風などの災害時に建物が倒壊しにくくなり、また、構造物の耐久性が向上する効果も期待できます。

基礎杭打ち工事の他に「直接基礎工事」という基礎工事があります。軟弱地盤の際に行われる杭打ちとは異なり、直接基礎工事は地盤が安定している際に行われる工事です。杭打ちの工程がない分、安価かつ短い工期で基礎工事を進めることができます。
また、基礎工事には他にも、ベタ基礎・フーチング基礎・独立基礎など様々な工法がありますので、建設工事に携わる方は合わせて覚えておくと良いでしょう。

 

杭打ち工事の目的

杭打ち工事は、構造物を安全に支える目的で行われます。地盤がやわらかい場合、通常よりも強固な土台がないと、災害で建物が倒壊する恐れがあります。そのため杭打ち工事を行い、建物基礎を強くする必要があるのです。

基本的に日本は軟弱な地盤が多く、杭の施工が必要なケースが多々あります。実は日本の主要都市の大半が河川下流に存在しており、土地の水分量が比較的高い傾向にあるため、その他の地域の地盤と比べると極めて軟弱な地盤と言えるでしょう。
それに加えて日本は災害の多い国です。全世界の20%の地震は、日本で発生していると言われています。日本は複数の大陸プレートの狭間にあるので、外国と比較して地震が発生しやすいのです。

これらの理由から、構造物を支える「基礎工事」には様々な種類があります。
そして「杭打ち」にもいろいろな工法があり、工事環境に合わせて用いられます。構造物の立地や地盤の状況を踏まえて、適切な方法を選びましょう。

 

杭の種類

そもそも「杭」は構造物の基礎であり、構造物を支えるために必要な円形の柱を指します。
この柱を地中内にある堅い地層に差し込むことで、軟弱な土地でも構造物が建設できるようになるのです。この杭は、支持の取り方や製造方法、素材によって様々な名称がつけられています。
そこで以下では、様々な杭の種類を解説します。

支持の取り方による種類

– 先端支持杭
– 摩擦杭

「先端支持杭」とは、杭先端を支持層まで到達させ、その杭の先端に働く反力(先端支持力)で支える杭です。
その一方で「摩擦杭」は、杭先端を支持層まで到達させず、主に杭側面の摩擦(周面摩擦力)で支える杭となります。
つまり、杭先端が支持層に到達する先端支持杭の方が、摩擦杭よりも支持力の高い杭と言えます。

 

素材による種類

– 木杭
– 鋼杭
– コンクリート杭

「木杭」とは、木で作られた杭です。木材を腐食する細菌は、酸素の少ない地下などでは腐食が進みません。耐久性を長く維持できる素材で、昔は住居の基礎にも使用されていました。
次に「鋼杭」とは、鋼材で作られた杭です。垂直方向にも水平方向にも強い耐久力を有しており、地滑りの防止などにも使用されています。
そして「コンクリート杭」は、コンクリートで作られた杭です。工場だけでなく現場でも生成ができるため、状況に合わせて準備ができます。

 

製造方法による種類

– 既製杭
– 場所打ち杭

「既製杭」とは、工場であらかじめ工場で製作した杭です。建設現場まで運搬の手間が発生しますが、品質が高いメリットがあります。
また、現場では杭を設置するだけで済むため、工期短縮も図れます。
その一方で「場所打ち杭」は、現場で製作される杭を指します。運搬方法を気にする必要がなくなるため、長さや量などが現場で自在に調整できます。
この2種類に関しては、以下で詳しく解説します。

 

杭打ち工法

基礎杭打ち工事には、「既製杭工法」と「場所杭打ち工法」の大きく2種類の工法があります。以下ではそれぞれの工法について解説していきます。

既製杭工法

– 使用する杭:あらかじめ工場製作された杭
– メリット:施工が簡単・工期が短縮できる
– デメリット:制作できる杭の長さに限界がある

「既製杭工法」とは、あらかじめ工場製作された杭を現場で打設する工法です。穴にコンクリートを流し込むのではなく、あらかじめ用意した杭を穴に挿入していきます。
また、穴を掘らずに直接杭を地面に入れていく工法もあるので、状況に応じて工法が選択できます。
既製杭工法のメリットは、工期短縮かつ施工を簡素化できる点です。後ほど解説する「場所杭打ち工法」では、様々な工程が発生するため時間とコストがかかりますが、既製杭工法は省略できる工程も多いので、比較的短期間で施工が可能です。
その一方で、制作できる杭の長さに限界があるというデメリットがあります。工場で杭を生成後、運搬しなければいけないため、車両サイズや搬入条件を加味するとあまり長い杭は使用できないのです。このような場合は、次に紹介する「場所杭打ち工法」を選びましょう。

 

場所杭打ち工法

– 使用する杭:現場で造成する鉄筋コンクリートの杭
– メリット:既製杭では実現できないサイズが可能・運搬手間の削減・支持力が高い
– デメリット:既製杭より工期・費用がかかる

「場所杭打ち工法」は、現場で鉄筋コンクリート造の杭を造成する工法です。現場に合わせて杭を生成するため、既製杭よりも臨機応変な対応ができます。
また、既製杭工法では工場で生成した杭を運搬する手間がありますが、場所杭打ち工法はそのような手間が発生しないため、材料のみの搬入で作業が始められます。
さらに、既製杭工法よりも大きな支持力が期待できることも大きなメリットと言えるでしょう。
その一方でデメリットは、既製杭工法よりも工期がかかるということです。場所杭打ち工法は、地盤の掘削・鉄筋かごの配筋、建て込み・コンクリート打設といった工程が発生します。工程が増える分、費用と時間がかかってしまうのです。
それぞれの工法にメリットとデメリットがあるので、施工場所の状況を考えて判断すると良いでしょう。

 

既製杭工法における3つの工法

既製杭工法は、さらに「打込み工法」「埋込み工法」「回転杭工法」の工法に分けられます。以下では3つの工法について、さらに解説します。

打込み杭工法

打込み杭工法とは、杭を地盤に打ち込んで施工する方法です。重機を使い、杭を地面へと打ち込みます。杭を打撃するため騒音と振動が発生しますが、埋め込み杭に比べ支持力が高い特徴があります。
この打込み杭工法は、さらに「打撃工法」と「バイブロハンマ」に分けられます。

 

埋込み杭工法

埋込み杭工法とは、中空部を通じて土を掘りながら設置する方法です。打ち込みよりも騒音や振動が少ない分、周囲の状況に配慮しながら施工ができますが、打込み杭工法よりも支持力が少ないデメリットがあるため注意しましょう。
この埋込み杭工法は、さらに「中堀り杭工法」「プレボーリング杭工法」「鋼管ソイルセメント杭工法」に分けられます。

 

回転杭工法

回転杭工法とは、先端部に羽根を有する鋼管杭に回転力を付与することで地盤に貫入させる方法です。無騒音・無振動で施工できるメリットがある一方で、地中に硬い石や異物が多く入っている地盤では、回転羽が破損するデメリットがあります。

 

場所杭打ち工法における3つの工法

場所杭打ち工法は、さらに「オールケーシング工法」「リバース工法」「アースドリル工法」の工法に分けられます。以下では3つの工法について、さらに解説します。

オールケーシング工法

オールケーシング工法は、ケーシングチューブという筒型の機械を地面に深く差し込み、それを壁としながら内部の土砂を掻き出して穴を掘り、最後にコンクリートを打ち込む工法です。フランスのベノト社が開発したことからベノト工法とも呼ばれています。
穴の壁を保護しながら掘削するため、穴の内壁の崩れ防止が可能です。

 

リバース工法

リバース工法は、最初にパイプを建込み、その後回転ビットを用いて掘削する工法です。リバースサーキュレーション工法とも呼ばれています。
孔内を水で満たすことで孔壁の崩壊を防止します。また、深くて大きな穴を掘ることが可能です。

 

アースドリル工法

アースドリル工法は、土の種類に応じた安定液を注入しながら地面を掘削し、掘った穴にコンクリートを打ち込む工法です。上記の工法よりも工事費が安く施工が早いメリットがあるため、多くのシーンで使用される工法です。

 

基礎杭打ち工事の流れ

基礎杭打ち工事は、工法によって工程が異なります。以下では利用頻度の高い「既製杭」を使った工事の流れを基に解説します。

準備

まずは工事前の準備として、以下を実施します。これは工法に限らず作業前までに終わらせておく必要があります。
– 安全ミーティングの実施:作業における危険予知の洗い出し・対策
– 有資格者等の確認:資格証の確認・控えの保管
– 作業開始前点検:重機や工具の点検
– 運行経路の確認:搬出入経路の点検・確保
– 作業場所の点検:作業区画の準備

基礎杭打ち工事では、大型重機を使用します。危険な作業を伴うため、作業場所の点検では作業ヤードへの立入禁止措置を用意しましょう。一般の方はもちろんのこと、現場入りしている他の作業員も立ち入りは禁止しましょう。
また、障害物(地中、架空、隣接)・埋設物及び離隔距離を確認し、十分な作業環境を整えなければなりません。

 

資材搬入

準備が完了したら、杭などの資材や重機を搬入します。
– 杭打ち機本体の荷降ろし
– 荷降ろし用クレーン設置
– 付属品の荷降ろし

作業区画には関係者以外は立ち入らないように監視役を配置しましょう。
また、吊荷の下に入らないように注意し、荷振れにより接触、交錯、衝突、挟まれに目を配らなければなりませんので、実際の作業員だけでなく管理者の注意も必要です。

 

組み立て

資材搬入が完了したら、使用機械の組み立てに移ります。組み立てる機械は以下の通りです。
– 杭打ち機本体
– クローラークレーン
– 付属機器類

 

本作業

作業前の準備が完了したら、本作業に移ります。施工要領や指示書を確認し、以下の作業を行います。
– 機械、工具の点検
– 杭打ち機の据付け
– 掘削用ビットの杭心への設置
– 掘削・攪拌治具のセット
– 注入液の作液
– アースオーガの接続
– 下杭の吊込み及び建込み
– 下杭と中杭(上杭)の接続(溶接継手)
– ヤットコの引抜き・ヤットコの穴埋め戻し

本作業では現場状況に合わせて、様々な工法が用いられます。実際の流れの詳細は、現場状況を踏まえた上で確認しましょう。

 

解体

本作業完了後は、現場で組み立てた以下機械の解体に移ります。
– 杭打ち機本体
– クローラークレーン
– 付属機器類

 

搬出・後片付け

解体完了後は、機材の搬出と後片付けを行います。
– 重機の搬出
– 現場エリアの巡回

作業手順に関しては搬入時同様、周辺環境に注意し進めなければなりません。また、最後は現場巡回をしてゴミの清掃や忘れ物チェックを行います。

 

まとめ

基礎杭打ち工事は、軟弱な地盤にも構造物を建築できるようにするための基礎工事です。そして地震大国の日本にとっては、極めて重要な施工方法となります。
今回紹介したように数多くの工法や杭がありますので、土木関係者や土木業界を目指す方は「基礎杭打ち工事」について、理解を深めておくと良いでしょう。

 

 


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