設備保全とは?業務内容やスキルを解説
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設備保全とは?業務内容やスキルを解説

2021年9月7日

生産設備を長い間使っていると、様々な箇所で故障が発生します。故障した際に修理をすると、場合によっては生産ラインを停止させなければならず大損害を与えてしまうことがあるため、工場が滞りなく稼働するためには設備の保全は欠かせません。
そこで当記事では、工場を守る職種のひとつである「設備保全」について詳しく解説します。設備保全に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

設備保全とは

「設備保全」とは、工場で行われている生産ラインを安定させる上で欠かせない活動です。
生産には「4M」と言われる4つの構成要素Man(作業者)、Material(原材料・部品)、Method(方法)、Machine(機械・設備)があり、設備保全はこの中の「Machine(機械)」に該当する仕事になります。
そもそも保全には「安全を守る」という意味があります。生産ラインの機械トラブルを防ぐためには、定期的な点検や修理は欠かせません。それを担う仕事こそが「設備保全」なのです。
設備保全は普段あまり耳にしない言葉であるものの、私たちの暮らしに密接な関わりがあります。私たちが安心して工場製品を購入できるのも、生産ラインがきちんと保全されているからといっても過言ではありません。生産設備の性能の低下や停止を未然に防ぐことで、不良品や納期遅延といったトラブルを回避しているのです。
また、作業中に設備トラブルが起きたときも、設備保全は素早く対応しなければなりませんので、設備保全はスキルや経験に加えて、現場判断力が問われる仕事でもあります。

 

設備保全の種類

工場の設備保全には、「予防保全」「事後保全」「予知保全」の3つの種類があります。いずれも設備の点検・修理作業になり、作業のタイミングや方法が異なります。
以下では3つの種類について詳しく解説します。

予防保全

まず「予防保全」は、工場で導入した設備に不具合が発生しないよう、定期的に点検やメンテナンスを行う活動です。
機械トラブルが起きていない状態でも、問題がないかどうかチェックを行います。チェックの時期は機械によって異なりますが、大体半年〜1年のペースで実施されることが多いでしょう。
予防保全にはさらに、一定期間経った部品を交換する「時間基準保全」と、劣化の進み具合に応じて交換する「状態基準保全」の2種類があります。このように問題が起こる前に対処することで、安定的な稼働が実現できるのです。
その一方で、まだ使える可能性の高い部品を交換することも多く、無駄なコストが発生する点がデメリットといえるでしょう。ランニングコスト的に予防保全が難しい場合は、後ほど紹介する「事後保全」や「予知保全」が適しています。

 

事後保全

次に「事後保全」は、機械や設備の故障や不具合が生じてから行う活動です。基本的に不具合が生じてから対応するため、迅速かつ的確な状況判断が求められます。保全の頻度は要請がきたときだけのため不定期です。従来は、この「事後保全」が中心に行われていました。
事後保全のメリットは、点検費のコストが削減できる点にあります。予防保全を行う場合、機械に異常がなくても専門業者に点検費を支払わなければなりませんが、事後保全であれば壊れたときに呼ぶため、点検費が削減できます。
しかし、故障後の修理となると必要以上に時間がかかり、場合によっては工場をストップさせなければならない場合もあります。また、修理が効かず本体交換となると大幅なコストが予想できますので、このようなリスクとコストを考えると、故障を未然に防いだ方が得策と言えるでしょう。そのため定期的な保全をした上で、緊急時のみ事後保全を行う場合が多いです。

 

予知保全

そして「予知保全」は、設備の性能低下など状況に応じて行う保全活動です。
先ほど「予防保全」では保全コストがかかること、さらに「事後保全」は生産ラインの停止などのデメリットを紹介しました。この予知保全は、これらのデメリットを補うための方法となります。
予知保全は事後保全や予防保全と異なり、不具合が発生する直前で修理や部品交換を行います。問題が起こりそうな場合のみ対応するため、無駄を最小限に抑えることができるのです。この予知保全は「状態監視保全」とも呼ばれており、IoT化が進む近年では注目されています。
設備の状態を定常的に監視して不具合の兆しが見られたときに対応することで、事後保全や予防保全のデメリット部分を補っています。

 

設備保全の目的

設備保全には、以下3つの目的があります。いずれも安定的な生産ラインを確保する上で重要なポイントです。

機械の破損やトラブルの防止

まず一つ目は「機械の破損やトラブルの防止」です。工場では様々な機械を複数使い、稼働させています。その中でたった一台に破損が生じると、それに関わる全てのラインが停止してしまいます。効率的な生産ラインを有していても、設備が故障していると売り上げが低減してしまいます。
また、機械のトラブルは様々な危険を伴います。例えば検品部分の機械に不具合があり、正常な検品ができていなければ、出荷した商品を自主回収しなければなりません。つまり、機械トラブルは企業への信頼を損ねる場合があるほど重大なのです。
それだけでなく、機械の誤作動で作業員に危険が及ぶこともあります。このようなリスクを起こさないためには、機械が故障する前の対策が不可欠なのです。企業が成長し続けるために、設備保全は必須と言えるでしょう。

 

停止時間の減少

次に二つ目は「停止時間の減少」です。先ほどもお伝えした通り、たった一台のトラブルが生産ライン全体の問題になります。つまり、一台の設備に不具合が生じた場合はその工程に関わる設備を停止させなければなりません。工場が停止せざるを得ない状況となれば、取引先や関係者への報告も必要となるため、工場の停止時間はできる限り減らし、取引に支障が出ないようにしなければならないのです。
定期的にメンテナンスをしておくことで、万が一トラブルが生じた際にも即座に対処ができるため、工場の稼働を安定させるためにも定期的な設備保全が必要不可欠です。

 

コスト削減

そして三つ目は「コストの削減」です。定期的に設備保全をすると、やはりコストがかかります。しかし設備保全をせずにトラブルが発生した場合、より大きなコストが必要となるでしょう。
機械部品は使用し続けると劣化し、いずれ故障します。その部品が故障してしまうと、最悪の場合は機械が動かなくなることも考えられます。定期的なメンテナンスを行っていれば故障する前に対処できますが、メンテナンスを行わないと故障後の対応になります。つまり、工場の停止や修理費の高騰など大きな問題へと変化してしまうのです。
また、部品が故障すると機械の性能低下や誤作動にもつながりかねません。不良品を出荷してしまった際には、回収コストや再検品コストなどの費用も発生してしまうため、設備保全をする必要があるのです。
機械を点検・修理することで部品の破損を防ぎ、その結果として様々なコストを削減することができます。

 

設備保全に役立つ資格

設備保全は担当する機械によって必要な知識やスキルは異なりますが、共通して役立つ資格があります。そこで、設備保全に役立つ3つの資格を紹介します。

機械保全技能士

まず一つ目は「機械保全技能士」です。これは、機械保全技能検定に合格することで得ることができる国家資格です。
機械保全技能検定は、機械の修理やメンテナンスなど、工場の機械が正常に稼働するよう保全を行う職種が対象となります。つまり、この資格を有していると、機械の保全に必要な技能や知識を有した専門家として認識されるのです。
この資格は機械保全に関する技能や知識を客観的に証明できるメリットがあります。また、企業によっては資格手当の支給や、昇給や昇進に有利になるなどキャリアアップにも役立つ資格ですので、機械保全の仕事に携わる方は必ず取得すべき資格のひとつです。

 

電気工事士

次に二つ目は「電気工事士」です。これは、電気工事の作業に従事するために、電気工作物の工事に関する専門的な知識と技能を有する者に与えられる国家資格です。
設備保全と電気設備工事は密に関係しています。しかし電気設備工事は資格取得者でなければ作業できない範囲が多く、無資格者はサポート業務が主となります。そのため、電気工事士免許を取得しておくことで作業可能な分野が一気に広がり、作業員としての価値が高まるのです。
設備保全の仕事でステップアップしたい方は、機械保全技能士と合わせて取得することをオススメです。

電気工事士の資格は、第1種と第2種の2種類があります。第2種は一般住宅や店舗などの600ボルト以下で受電する設備の工事に対応することが可能です。
また、第1種ではさらに最大電力500キロワット未満の工場やビルなどの工事が対応できます。最終学歴や経験年数で受験資格が異なるため、ご自身の受験資格を調べてみるとよいでしょう。

 

電気主任技術者

そして三つ目は「電気主任技術者」です。これは電気設備の保安に関する知識・技術の習得を証明できる国家資格です。発電所や変電所、工場やビルなどに設置されている電気設備の保守・監督を行うために必要となります。
電気設備は、正しく作業しなければ大きな事故が生じる危険性があります。施工不良が原因で周囲の地域を停電させてしまうことも十分に考えられるでしょう。そのため、電気主任技術者が電気設備を適切に運用するよう、法律で定められているのです。
この電気主任技術者は第一種・第二種・第三種の3つに区分されており、それぞれ取り扱える電圧が異なります。必要に応じて取得するとよいでしょう。

 

設備保全に向いている人の4つの特徴

以下では設備保全に向いている人の特徴を4つ紹介します。

機械好きな人

まず一つ目は「機械好きな人」です。設備保全では様々な機械と向き合い、メンテナンスをしていきます。そのため機械操作が好きな方や、機械の知識が豊富な方にはオススメです。
毎日機械を触っていても飽きないという方は、設備保全の仕事に向いているでしょう。

 

手先が器用な人

二つ目は「手先が器用な人」です。機械メンテナンスは、常に細かな調整を問われる仕事です。部品の交換など作業のクオリティが手先で決まることも多々あるでしょう。
ものづくりが好きな方や、手先が器用な方にはオススメです。

 

常に冷静な人

三つ目は「常に冷静な人」です。現場では様々なトラブルが起こりますが、工場を停止させている作業をしている場合、限られた時間内で必ず終えなければなりません。焦って手が止まってしまわないように、冷静に作業ができる方は向いているでしょう。

 

最後まで諦めない人

そして4つ目は「最後まで諦めない人」です。とくに事後保全では、トラブルを見つけるところからスタートするため、原因が特定できないことも稀にあるでしょう。
しかし、問題箇所が見つかるまで対応し続けなければなりません。プロとして、最後まで責任を持って行動できる方は、設備保全に向いている方と言えるでしょう。

 

まとめ

設備保全は、工場で行われている生産ラインを安定させる上で欠かせない活動です。保全する機械によって必要なスキルが異なるので、この職種を目指す方はどんなスキルが必要か調べてみるとよいでしょう。

 

 


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