プロポーザル方式とは?コンペや入札との違いを解説
注意点
特徴
違い
メリット

プロポーザル方式とは?コンペや入札との違いを解説

2021年9月7日

事業などを委託する場合に、最も適した提案書(プロポーザル)を提示した提案者を選定する方式が、プロポーザル方式です。
この記事では、プロポーザル方式の概要や特徴・メリット・注意点、種類、コンペや入札との違いについて解説します。
公共機関をはじめ民間の発注者が以下を把握することができますので、ぜひ最後までご覧ください。
・プロポーザル方式を採用する機会が増加傾向にあること
・プロポーザル方式がコンペに近くなる傾向
・プロポーザル方式と入札を合わせた総合評価落札方式を採用

 


プロポーザル方式とは

プロポーザル方式は、業務を委託する上で最も適した提案者を選定する方式です。製品やサービス、事業などについて、提案内容以外にも以下のような内容を含めたプロポーザル(提案書)の提出を求め、提案者を総合的に評価して選定する方式となります。
・事業実施方針
・事業実施体制
・技術力
・事業実績
・地域貢献度

採用される分野は、建設コンサルタント業務・システムコンサルタント業務・アドバイザリー業務・建築設計・デザイン・マーケティング・プロモーション・研修・教育などです。
下表の29種類の業種が、建設工事の完成を請負う場合に適用される法律です。

 

プロポーザル方式の特徴やメリット、注意点

プロポーザル方式には、下記のような特徴やメリットがあります。

プロポーザル方式の特徴

プロポーザル方式の特徴としては、主に以下の通りです。
1.公平性・透明性・客観性を備えた選定が可能
2.質の高い提案を可能にする選定方式
3.提案者(人)を選定する方式

特徴1:公平性・透明性・客観性を備えた選定が可能

プロポーザル方式が適正に運用されることで、客観的な評価基準により公正な審査が実施され、選定プロセスも透明性を確保することができ、時代が要請する公平性、透明性、客観性を備えた提案者の選定が可能となります。

 

特徴2:質の高い提案を可能にする選定方式

建築設計の場合、あらかじめ内容や結果が目に見えるものではないため、設計料の大小だけで選定することは適切とは言えません。
プロポーザル方式は、プロジェクトに適した高い技術力や経験を持つ設計者を選定することができ、完成する建築物の質の高さに重点を置くことが可能となります。

 

特徴3:提案者(人)を選定する方式

プロポーザル方式の他に、「提案内容」そのものの良否を評価・検討して選定される「コンペ方式」があります。
設計競技であるコンペ方式に対し、プロポーザル方式は「提案内容」ではなくプロジェクトを委託すべき適任者(提案者)となる人を選定する点が特徴といえます。

 

プロポーザル方式のメリット

プロポーザル方式のメリットとしては、主に以下が挙げられます。
1.選定までの時間・費用・労力の負担を軽減
2.発注者と提案者との共同作業
3.発注者の要望を反映
4.利益が大きい

メリット1:選定までの時間・費用・労力の負担を軽減

プロポーザル方式は、提案内容のみを作成するのではなく、「具体的な実施方針」、「設計体制」、「実績の照会」、「提案に対する技術力」などに関する提案書類を作成することが中心です。
コンペ方式と比較して、発注者側も提出者側も簡易に対応できることが大きなメリットになります。

 

メリット2:発注者と提案者との共同作業

プロポーザル方式は、提案者を選定し、その後具体的な業務が発注者との共同作業により進捗します。
メリットとしては、発注者と提案者との密接なコラボレーションによる質の高い成果が可能な点です。

 

メリット3:発注者の要望を反映

プロポーザル方式は、発注者と提案者とのコラボレーションでプロジェクトを進捗させますので、発注者の意見や要望が反映しやすい点もメリットと言えるでしょう。

 

メリット4:利益が大きい

プロポーザル方式は、価格で選定される入札と比較すると利益が大きくなる方式です。

 

プロポーザル方式の注意点

プロポーザル方式の注意点としては、主に以下が挙げられます。
1.評価基準を把握
2.仕様書をしっかり把握
3.競合他社の点検
4.プロポーザル方式は、コンペ方式に近くなる傾向

注意点1:評価基準を把握

プロポーザル方式での注意点は、提案内容だけが評価されるものではないということです。あくまでも提案者の選定となりますので、企業実績、事業実施方針、事業実施体制、技術力なども評価されます。
ある自治体におけるCM事業のプロポーザル方式での入札を例に挙げると、評価項目並びに評価点は下表の通りです。

評価項目 評価点
企業実績 10点
管理技術者:技術力 22点
担当技術者:技術力 13点
事業実施方針 20点
テーマに対する提案内容 40点
ヒアリング 20点
合計 125点

 
合計125点満点中、提案内容の評価点は40点となり、3分の1以下のウェイトでしかありません。
企業実績・管理技術者や担当技術者の技術力は長い期間にわたり形成されるものですから、実績の少ない企業では太刀打ちできない可能性があります。
しかし、事業実施方針やヒアリングのウェイトが40点と約3分の1ありますので、この部分の強化対策を施せば、落札の可能性は出てきます。
このように、発注者の評価基準を把握し望むことが重要です。

 

注意点2:仕様書をしっかり把握

事業の公募の際は発注者が作成する公募仕様書などをしっかり把握し、細かい規定まで確認・理解しておくことが大切です。不明点があれば発注者に問い合わせを行い、確認することが重要です。

 

注意点3:競合他社の点検

受注するためには、競合他社の状況を把握してプロポーザル方式に臨む必要があります。競合他社の事業実績や過去の落札結果などの情報収集を行い、勝てる見込みの有無を判断します。
自治体が実施するプロポーザル方式の入札では過去の実績を重視する判断基準もあり、初めての参加企業の場合、良い提案内容を提示できたとしても落札が困難になる場合もあります。

 

注意点4:プロポーザル方式はコンペ方式に近くなる傾向

プロポーザル方式でもコンペ方式と同様に、より具体的な提案書を求める傾向にあるため、その分プロポーザル方式での入札準備に要する手間や費用が大きくなります。
また、受注できない場合は手間や費用が無駄になり、その負担も大きくなりますので注意しましょう。

 

プロポーザル方式の種類

地方自治体や国などの公共機関が実施するプロポーザル方式には、「公募型プロポーザル方式」「環境配慮型プロポーザル方式」とがあります。

公募型プロポーザル方式

公募型プロポーザル方式は、地方自治体などが応募者の中から最も相応しい民間事業者を選定する方式の一つです。
応募希望者は、地方公共団体が作成する仕様書(「事業目的」「事業実施場所」「応募期間」などの条件が記載)に基づき、期日までに提案書を提出します。
地方公共団体は、提出された提案書の中から規定された評価に基づき採点を行い、受注者を決定します。
1994年(平成6年)より、一定金額以上の事案については「公募型プロポーザル方式」が採用されています。

 

環境配慮型プロポーザル方式

環境配慮型プロポーザル方式は、国や独立行政法人などが建築工事や大規模な改修工事を行う場合、設計業務を発注する際に採用される方式です。
応募者に対して、温室効果ガスなどの排出削減に配慮する内容(自然エネルギーなどの積極的な利用を含む)を含む技術提案を求め、総合的に勘案して最も優れた提案者を特定します。
2007年(平成19年)11月に、「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律」(環境配慮契約法)が施行されました。
また、2007年(平成19年)12月に、環境配慮契約法第5条第1項に基づき、「国及び独立行政法人等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本方針」(基本方針)が定められました。その基本方針に基づき、「環境配慮型プロポーザル方式」の採用が挙げられています。

 

コンペとの違い

プロポーザル方式は、実施しようとするプロジェクトに対して最も適切な技術力や想像力、経験、実績を有する「提案者(人)」を選定する方式です。
一方でコンペ方式は、実施しようとするプロジェクトに対して、最も優れた「提案内容」を選定する方式で、建築物や土木構造物などの分野で比較的多く採用される方式となります。
上記のことから、プロポーザル方式とコンペ方式の違いは、「提案者(人)」か「提案内容」という点にあります。
プロポーザル方式とコンペ方式のメリット・デメリットを下表にまとめます。

プロポーザル方式
(「提案者」を選定)
コンペ方式
(「提案内容」を選定)
メリット
  • 「提案者(人)」を選定しますので、発注者と共同作業でプロジェクトの進捗が可能
  • 応募者の手間や経費を抑えられる傾向
  • 発注者サイドの要望を反映し易いプロジェクトの形成が可能
  • 提案内容を選定するため、選定後の事業実施が円滑に進捗
  • 提案者は、提案内容が優れていれば、過去の実績が無くとも選定の可能性有り
デメリット
  • 実績の無い企業は、参加しにくい
  • 提案内容を選定しないので、提案者の選定方法の公平性・透明性確保に工夫が必要
  • 応募者や発注者の手間や経費がかかる
  • 選定時に専門的知見を要する
  • 応募者の手間や経費がかかり、受注不可であった場合の負担大

 

入札との違い

プロポーザル方式は、「提案者(人)」を選定する方式に対し、入札は「価格」により選定する方式で、発注者からの工事や物品の購入でよく利用される方式です。
工事や物品は工法(工事方法)や規格が統一されていますので、発注者にとって「価格」が最も重要になります。
通常取引の場合、企業の信頼性や購入する物品・サービスの品質を加味することになります。
一方、自治体などの公共ビジネスの場合、「入札参加資格」の有無により企業の信頼性や購入する物品・サービスの品質を点検・確認します。このように、最低限の信頼性や品質を有することを確認した上で、入札により「最も安い価格」の会社を選定するのです。
自治体において入札が多く採用される理由は、価格のメリットと公平性が担保できるからです。住民からの税金で事業が行われますので、公平性・透明性が求められます。
価格で決まる入札と比較すると、プロポーザル方式は利益が出やすいと言えるでしょう。

総合評価落札方式

総合評価落札方式は、入札とプロポーザル方式を合わせた方式で、「提案内容」など総合的な能力で企業の絞り込みを図り、次の段階において「価格」で最終決定する方式です。

 

まとめ

以上、プロポーザル方式の概要や特徴・メリット・注意点、種類、コンペや入札との違いについて解説しました。
プロポーザル方式とコンペ方式との違いは選定対象で、プロポーザル方式と入札方式の違いは選定基準であることが分かったのではないでしょうか。
プロポーザル方式は、提案内容以外にも、企業実績や地域貢献度、技術力、事業実施体制などが評価されるため、一朝一夕に応募できる方式ではありません。
しかし、プロポーザル方式を採用する発注者が公共機関をはじめ民間でも増加傾向にあるため、将来に向けて着々と準備を整える必要があります。
プロポーザル方式は受注できると利益を大きく出せますので、ぜひ挑戦されることをオススメします。

 


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