高所作業とは?作業内容や労働安全衛生法についても解説
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高所作業とは?作業内容や労働安全衛生法についても解説

2021年10月6日

建設現場では、足場を使い「高所作業」を行うことが多々あります。この作業は現場事故につながる危険性が高いため、正しい手順や危険回避方法を理解しておくことが重要です。高所作業に関する知識は作業員だけでなく、施工管理者こそ知らなければなりません。
そこで当記事では、正しい作業や労働安全衛生法について詳しく紹介します。現場関係者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

 


高所作業とは

そもそも「高所作業」とは、2メートル以上の高さで行う作業を指します。この高さは労働安全衛生法などによって定められている数字で、2メートル以上の高さで作業を行う際には安全措置を取らなければなりません。なぜ高所作業が危険視されているかというと、2メートル以上の高さから転落した場合、重大な災害に繋がってしまうからです。
建設業においては足場や脚立を使った作業が多く、高所作業が多々発生します。そのため労働安全衛生法の規定に合わせ、現場環境を整え、作業員を指導しなければならないのです。具体的には、規定を満たす強度の命綱や安全帯の着用、作業床を設ける場合に手すりや囲いで転落を防止する、などの措置が必要です。
つまり「作業員の安全管理は、施工管理の重要な仕事である」という自覚を持ち、細部まで気を配らなければなりません。そのためにもまずは「高所作業の種類」を把握し、どんな危険が発生するか予知することから始めましょう。

 

高所作業の種類

高所作業は様々な工種やシチュエーションで発生します。以下では代表的な高所作業について確認しましょう。

足場を用いた建設工事や解体工事

まず一つ目は「足場を使った建設工事」です。
建築の外壁工事や内装の天井工事など、高い部分の作業では様々な足場を使用します。馴染みのある「脚立」やキャスターがついた「移動式足場」、さらには「枠くみ足場」など作業内容に応じて足場を選定します。
作業に適した足場を選び、無理の発生しない作業環境を整えましょう。

 

天井内の点検業務

次に二つ目は「天井内」の作業です。
電気工事や空調・給排水設備工事の場合、施工状況を確かめるために天井内へ潜ることがあります。その際は天井についている点検口から、天井内に行かなければなりません。その際に発生する足場作業は、高所作業に含まれます。

 

高層ビルの窓の清掃業務

さらに三つ目は「高層ビルの清掃作業」です。
オフィスビルで窓を清掃する作業員を見かけることがあると思います。このとき作業員は作業用のゴンドラに乗っています。屋外上部の窓を清掃するためには、高所作業は欠かせません。

 

屋外設備の保守点検

そして四つ目は「屋外設備の保守点検」です。
街には風力発電用の風車や電波塔など、高さのある屋外設備がたくさんあります。これらの点検を行う際には、適切な足場を選び作業を行います。
屋外設備の保守では、高所作業車や建設足場などが使用されています。

先ほど記載した通り、高所作業は「2メートル以上の作業」です。上記以外にも様々なシチュエーションがあるので、どんな作業が発生するか考えてみるとよいでしょう。

 

労働安全衛生法による定義

労働安全衛生法とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた法律です。その中でも、高所作業に関する考え方は下記のように定義されています。

労働安全衛生法令では、墜落による労働者の危険を防止する措置として、高さ2メートル以上の箇所で作業を行う場合には、作業床を設け、その作業床の端や開口部等には囲い、手すり、覆い等を設けて墜落自体を防止することが原則。

引用:「労働安全衛生法令における墜落防止措置と安全帯の使用に係る主な規定」厚生労働省 安全衛生部安全課 建設安全対策室

 
しかしこうした措置が困難な場合は、労働者に安全帯を使用させるなどの代替の墜落防止措置が認められています。つまり安全帯よりも「作業床の設置」と「周辺環境の整備」が重要なのです。
また、労働安全衛生法第42条※に基づき「安全帯の規格」(平成14年厚生労働省告示第38号)が定められています。この規格をクリアしていない安全帯は、現場で使用してはいけません。高所作業を行う作業員の安全帯は、施工管理者が必ずチェックしましょう。

 

高所作業で発生しやすい事故

続いて、高所作業で発生しやすい事故について解説します。
施工管理者として、安全管理は重要な業務になります。まずは高所作業で起こりうる事故を把握し、対策を検討してみましょう。

脚立からの転落

【想定されるシーン】
・バランスを崩して転落
・不安定な面に設置
・脚立から別の脚立に乗り移る

上記は脚立からの転落事故で多いパターンです。この中でも「脚立から別の脚立に乗り移る」行為は、悪意のある危険行為になります。このような行動をする作業員は、現場入場を制限すべきです。
他にも、バランスを崩しそうな場所に設置している場合や、グラつきのある脚立を使用している作業員がいた場合は必ず指導しましょう。脚立からの転落は人命に関わる大事故に繋がりますので、作業員まかせにしてはいけません。

 

道具や材料の落下

【想定されるシーン】
・作業床3メートルから、使用予定の角材が落下
・ビス留め作業中に、ビス箱が落下
・長さを計測するスケール(コンベックス)を落下

高所足場などから物が落下する場合、物の大小に関わらず「凶器」へと変化します。とくに外壁工事中に物を落下させてしまい、作業員や通行人が怪我をしてしまう事故は現在も発生しています。
そのため、道具や材料は作業床には置かず腰袋に入れ、落下防止措置をとるようにしましょう。工具にワイヤーをつけたり、必ず2名体制で作業に着くなど工夫が必要です。

 

足場の不適正な操作・利用

【想定されるシーン】
・移動式足場の固定未対応
・高所作業車の操縦ミス

他にも、足場を正しく使用していない場合も事故が起こりやすいです。
たとえばキャスターがついている移動式足場の場合、必ずストッパーを固定してから作業をしなければなりません。そのストッパーが固定できていないまま作業をすると事故が起きてしまいます。
他にも、高所作業の操縦を誤り、電線や屋外設備に衝突してしまうことも想定できます。この中でも高所作業車は操縦するための免許が必要です。この場合は事前に免許の確認を行いましょう。

 

高所作業に関する安全講習

高所作業は「作業における正しい知識」が重要であるため、様々な講習が設けられています。以下では高所作業に必要な安全講習を説明します。

フルハーネス特別教育

「フルハーネス特別教育」は、高所作業で墜落事故防止のための器具を正しく安全に使用するための教育です。一定条件で高所作業をする際は、従来の安全帯からフルハーネス型の墜落制止用器具を着用しなければなりません。
フルハーネス特別教育とは、作業者が正しい使用方法を理解するための教育です。この教育は、建設業関連の一般社団法人や財団法人などが主催し、全国各地で開催されています。団体によって申し込み方法が異なるため、注意が必要です。

 

ロープ高所作業特別教育

「ロープ高所作業特別教育」は、足場が使えない現場でロープにぶら下がりながら高所作業を行う際に必要な知識を得るための教育です。ロープ高所作業では、ロープのほどけや切断、または身体を保持していた器具が外れるなど、作業者が墜落する事故が発生しています。そのため事故を未然に防ぐためにも、ロープ高所作業を行う場合は事前にこの教育を受講する必要があるのです。
この講習は各団体で開催しています。ぜひお近くの会場を探してみてください。

 

高所作業車運転特別教育

「高所作業車運転特別教育」は、高所作業車の運転知識を得るための教育です。作業床の高さが10m未満の高所作業車を操作するには、高所作業車運転特別教育を修了することが義務付けられております。
この「高所作業車」とは、作業床が昇降装置やその他の装置により上昇、下降等をする設備のうち、動力を用い、かつ不特定の場所に自走することができる機械です。
そのため操作方法や注意点などを事前に理解しておく必要があります。この教育では、実際の作業で役立つ様々な情報を得ることができます。

 

高所作業車運転技能講習

「高所作業車運転技能講習」は、上記と同じく高所作業車の運転知識を得るための講習です。異なる点は「作業床の高さ」で、作業床の高さが10m以上の高所作業車を操作する際に受講が義務付けられています。この資格を取得すると、特別教育で操作できる10m未満の操作も可能となります。
10m以上の作業が発生する可能性がある場合は「高所作業車運転技能講習」を受講することをオススメします。

 

まとめ

高所作業は、落下・転落事故につながる危険度の高い作業です。この作業を管理する施工管理者は、これらのルールを把握した上で危険予知を行いましょう。
これらの事故は人命に関わる重大な事故です。安全な現場環境をつくるためにも意識しましょう。

 


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