2021年10月6日
建設業界は、好景気が続いています。その様な状況下において、施工管理の職業に関心を寄せられる方も多いと思われます。
そこでこの記事では、施工管理の概要や仕事内容、おすすめの資格、やりがい、向いている人の特徴について解説します。
施工管理は建設工事現場において、以下のような工事に関わる全てを管理する業務を担います。
・工事全般のスケジュール管理や予算、安全面での管理
・役所への届け出などの手続き、書類作成
・工事関係者との連絡・調整・案内:発注者、勤務先、下請け業者、近隣住民など
・建設資材などの手配、搬入・搬出管理
施工管理の仕事内容としては、「4大管理」といわれる工程管理や安全管理、品質管理、原価管理があります。
工程管理は、建設工事の決められた工期(納期)を守るために、スケジュール管理を行う業務です。
建設工事には、「工期」と呼ばれる建設構造物の完成期限が設けられています。建設工事の発注者と受注者との間においては、工期内に建設構造物を完成させ、引渡しを行う工事請負契約が交わされるため、各工事の工期を調整しながら全体の工期を守り、工事を完成させ引渡す必要があります。
数多くの職人などの作業員が建設工事に関わるため、効率よく工事を進捗させる必要があります。そのため、各工事の作業ごとに日程調整を行う能力が施工管理者に求められます。
工程管理は工程管理表を作成して行われます。工程管理表には様々な種類があり、主に以下の通りです。
・全体工程表
・月間工程表
・週間工程表
また、以下のような工程表もあります。
・横線式工程表:工事業者(下請業者)の工程管理に使用
・ネットワーク工程表:各種工事の工程管理に使用
工程表の種類 | 工程表の内容 |
---|---|
横線式工程表 |
|
ネットワーク工程表 |
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安全管理は、建設現場において安全な環境で工事を行えるように整備し、事故を起こさないように管理する業務です。
その対策として、主に以下を行います。
・KYK:危険予知活動
・SS運動:整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)
・ヒヤリハット運動
また、工事開始前などに下請け業者や職人などの作業員を集め、安全対策としての知識や意識向上のために準備・点検・確認を毎日行い、事故を未然に防ぐようにします。
品質管理は、建設構造物が設計図書や仕様書通りに造られているか否かの管理を行う業務です。評価対象ごとに決められた試験方法や点検方法などで確認を行い、品質を確保します。
具体的には、主に以下について点検・確認します。
・設計図書に記載されている寸法通りに、建設構造物が造られているか
・仕様書に記載されている通りの強度や機能・材質に、建設構造物が造られているか
また、品質保持を証明するために、施工写真を撮影して記録に残すなどの施工記録の作成も業務の一環になります。
原価管理は、施工計画などに基づき算出した「実行予算」と建設現場での実際の工事において発生する「原価」とを比較し、利益計上できるように管理を行う業務です。
仮に実行予算よりも原価が増加する傾向にある場合、利益計上することが危うくなります。その対策として、施工管理者は主に以下を行い、実行予算と原価を調整しながら、利益計上できるように管理を行います。
・施工計画の見直し
・下請け工事業者の変更
一般的な建設工事における原価構成と割合の目安を下表にまとめます。
費用項目 | 割合 | 費用内容 | |
---|---|---|---|
直接業務費 | 直接労務費 | 50% | 職人などの作業員に対する賃金やその他の現場運営費 |
外注費 | 15% | 外部の専門工事会社に工事を依頼する際に発生する外注費用 | |
建材費 | 10% | 建設資材などの材料費 | |
一般管理費・販売費 | 15% | 一般管理費は本社経費、販売費は営業費用 | |
粗利益 | 10% | 税引き前利益 |
施工管理におすすめの資格として、「施工管理技士」が挙げられます。「施工管理技士」は、建設業法第27条第1項に基づいて、国土交通大臣が実施する国家資格です。※1
※1:「建設業法」e-GOV 法令検索
施工管理技士の資格は7種類ありますが、それぞれ1級と2級がありますので、合計14階級あります。
1級の方が2級よりも難易度が高いため、2施工管理技士を取得後、1級施工管理技士を取得するケースが多くなります。
それぞれの施工管理技術検定試験に合格すると、例えば「1級建築施工管理技士」というように、資格種目、階級、技士の称号を使用できます。
施工管理技士は国家資格となりますので、施工技術が一定水準以上のレベルを有することが公的に認証されます。
また、建設業法に規定される「専任技術者(建設業許可の際必要)」、「主任技術者・監理技術者(建設工事現場での常駐義務)」としての資格が与えられます。
特に、特定建設業7業種である建築・土木・鋼構造物・舗装・管工事・電気工事・造園工事を扱うには、営業所ごとに主任技術者や監理技術者が必要です。したがって、施工管理技士の資格取得者は、建設会社にとってとても重要な人材となるのです。
以下では、施工管理技士の資格7つについてそれぞれ解説していきます。
建築施工管理技士の概要を下表にまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
概要 | 建築施工管理技士は、マンション・オフィス・商業施設・学校などの建設工事現場において、主任技術者・監理技術者になるための資格です。 施工計画を作成し、工程・品質・原価・安全などの施工管理を行いながら、建築物の完成を目指します。 |
検定機関 | 一般財団法人 建設業振興基金 |
検定形式 | 1級建築施工管理技士 第一次検定:四肢択一式(一部:五肢択一式)、第二次検定:五肢択一式、記述式 2級建築施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 |
土木施工管理技士の概要を下表にまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
概要 | 土木施工管理技士は、道路・鉄道・河川・海岸・港湾・上下水道などの土木工事現場において、主任技術者・監理技術者になるための資格です。 施工計画を作成し、工程・品質・原価・安全などの施工管理を行いながら、土木構造物の完成を目指します。 |
検定機関 | 一般財団法人 全国建設研修センター |
検定形式 | 1級土木施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 2級土木施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 |
管工事施工管理技士の概要を下表にまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
概要 | 管工事施工管理技士は、上下水道の配管やダクト、冷暖房設備、浄化槽などの管工事に関する工事現場において、主任技術者・監理技術者になるための資格です。 |
検定機関 | 一般財団法人 全国建設研修センター |
検定形式 | 1級管工事施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 2級管工事施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 |
電気工事施工管理技士の概要を下表にまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
概要 | 電気工事施工管理技士は、照明・変電設備・送電設備・信号・配線などの電気工事において、主任技術者・監理技術者になるための資格です。 電気工事を伴う工事現場において、電気工学の知識や電気法規・施工管理法を把握していることが必要です。 |
検定機関 | 一般財団法人 建設業振興基金 |
検定形式 | 1級電気工事施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 2級電気工事施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 |
電気通信工事施工管理技士の概要を下表にまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
概要 | 電気通信工事施工管理技士は、インターネットや携帯電話のアンテナ基地などの電気通信工事において、主任技術者・監理技術者になるための資格で、2019年に新設されました。 |
検定機関 | 一般財団法人 全国建設研修センター |
検定形式 | 1級電気通信工事施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 2級電気通信工事施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 |
造園施工管理技士の概要を下表にまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
概要 | 造園施工管理技士は、公園や庭園、建物の屋上緑化、道路の緑化工事などの工事現場において、主任技術者・監理技術者になるための資格です。 |
検定機関 | 一般財団法人 全国建設研修センター |
検定形式 | 1級造園施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 2級造園施工管理技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:記述式 |
建設機械施工技士の概要を下表にまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
概要 | 建設機械施工技士は、ブルドーザーや油圧ショベル(バックホウ)、モータ・グレーダ、ロードローラ、クレーンなど、建設現場で稼働する機械を操作するスペシャリストを証明する資格で、施工管理技士の中では最も古い資格です。 |
検定機関 | 一般社団法人 日本建設機械施工協会 |
検定形式 | 1級建設機械施工技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:実技(操作施工法) 2級建設機械施工技士 第一次検定:四肢択一式、第二次検定:実技(操作施工法) |
施工管理のやりがいとしては、主に以下が挙げられます。これらを達成・獲得することで、高いモチベーションを維持することができます。
・工程管理により工期に間に合わせた充実感
・建設構造物が自身の作品・実績として残る
・高い年収と成果報酬
施工管理は、様々な専門工事を同時並行で進行させる管理能力が必要になります。建設工事現場の大小により異なりますが、専門工事ごとの問題点などを解決しながら、工事と工事のジョイント部分について、時間の空隙なく進捗させる必要があります。
毎日工事全体の進捗度合の点検・確認をしながら工事の完成を目指しますので、建設構造物の完成・引渡しを工期通りに行った際の充実感は、何物にも代えがたいやりがいを感じるでしょう。
建設構造物は自身の施工管理による作品になり、実績にもなります。さらに、発注者の希望通りの建設構造物が完成した際、喜んでいただけることに対してやりがいを感じることができるでしょう。
施工管理は、建設業の中でもスキルやコミュニケーション能力、リーダーシップを求められ、責任の大きな業務となりますので、比較的高い年収を得られるという特徴があります。
また、以下などを達成することで所属する企業からも高い評価を得ることができるため、結果として高い報酬も得られ、やりがいにもつながっていくと言えます。
・工程管理能力による工期の遵守
・安全管理能力による事故件数ゼロを達成
・品質管理能力による各種品質検査の一発合格
・原価管理能力による高い利益計上
施工管理に向いている人の特徴としては、主に「コミュニケーション能力」「リーダーシップ」「危機管理能力」のある人と言えるでしょう。
施工管理者は、
・職人などの作業者や専門工事業者
・発注者であるクライアント
・勤務先の建設会社
・建設工事現場の近隣住民
などと協議・連絡を行うなど、コミュニケーション能力が必要になります。
建設工事現場での技術上の問題点や安全管理上の課題などをくみ取りながら、社内調整を取ったうえで解決を図り、クライアントの了解を取り付けるなどの作業が日常的に発生します。
その際、調整に時間を要してしまうと工事の進捗に影響し、工期にも影響を及ぼしかねませんので、スピーディーな対応力も必要になります。
施工管理者は建設工事現場において、下請け業者や職人などに指揮・指導を行うため、強いリーダーシップが必要になります。
指揮・指導が十分に行えない場合、現場の士気にも影響し、思わぬ事故やトラブルの原因になりかねません。そのため、率先して工事現場に赴き、現場の作業員に声をかけ、問題点の早期把握・解決を試みながら全体の士気を高めるリーダーシップのある人が施工管理者に向いていると言えるでしょう。
建設工事現場では様々な建設機械や建設資材が現場内を行き交いますので、至るところに危険が潜んでいます。
施工管理者は、事前の事故防止対策を施しながら工事現場内を隈なく点検・確認し、事故が想定される箇所を素早く察知する能力が必要となります。
日ごろから事故に対する油断のない姿勢が工事現場の事故ゼロへとつながるため、危機管理能力のある人は施工管理者として向いているでしょう。
以上、施工管理の概要や仕事内容、おすすめの資格、やりがい、向いている人の特徴について解説しました。
施工管理は、コミュニケーション能力やリーダーシップ、危機管理能力のある人が向いている職業と言えますが、最初から全て備わっていなくても、実践しながら身につけていくこともできます。
施工管理にやりがいを見出せそうな方や建設業界に興味のある方は、ぜひ挑戦されることをオススメします。