2021年11月12日
「電気工事施工管理技士」の資格は、電気工事に携わる方にとって重要な資格のひとつです。しかし電気工事施工管理技士は1級と2級に分かれており「どの資格をとれば、いいのかわからない」という方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、電気工事施工管理技士の仕事内容や資格について詳しく解説します。資格取得を検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも「電気工事施工管理技士」とは、電気工事の施工管理を行うための資格です。施工管理ときくと、建築や土木といった様々な工種を束ねるイメージがあるかもしれません。しかし電気工事は、建築や土木とは異なる専門知識が必要です。そのため、電気工事の管理者は「電気工事施工管理技士」の資格が重要になります。
また、この資格は「建築施工管理技士」と同じく、国家資格のひとつです。難易度の高い仕事ができるようになり、さらに転職の際にはスキルをアピールする材料にもなります。電気工事の施工管理としてキャリアを積む方は、取得すべき資格といえるでしょう。
電気工事の資格には「電気工事施工管理技士」の他にも「電気工事士」がありますが、これらの資格はまったく別なので、混同しないようにしましょう。
「電気工事施工管理技士」は、電気工事の施工管理を行うための資格(管理者向け)ですが、「電気工事士」は電気工事を行うための資格(作業員向け)です。つまり電気工事施工管理技士の資格を有していても、「電気工事士」の資格がなければ実際の作業はできません。作業員としても活躍したい場合は、必ず「電気工事士」の資格も合わせて取得しましょう。
では実際の「電気工事施工管理技士」の仕事内容について説明します。電気工事施工管理技士は、電気工事を中心とした施工管理が主な仕事です。そのため以下の3つの業務が発生します。
工程管理:工事スケジュールの調整、詳細工程の検討
品質管理:完成物の仕上がりチェック、是正の指示など
安全管理:職人の健康管理や、安全な現場状況の整備
電気工事施工管理技士は、建築や内装の施工管理者と一緒に現場を行う場合が多いです。そのため建築や内装にあわせた「工程管理」が必要になります。とくに配線・配管工事は全体工程との取り合いを考えて、適切なタイミングで施工しなければなりません。
また電気工事は隠ぺい物が多いので、細かい「品質管理」が必要になります。使用ケーブルや部材、施工方法のチェックは欠かさず行いましょう。
そして作業員の「安全管理」も重要です。電気工事は高所作業が多いため、危険性の高い工種です。そのため施工管理者は作業員が正しい手順で施工しているかどうかを確認しなければなりません。
他にも「原価管理」や「書類対応」など、様々な業務があります。現場チームによって業務範囲が異なるので、その都度チェックしましょう。
ここでは、電気工事施工管理技士の資格の特徴を解説します。
電気工事施工管理技士は1級と2級に分かれており、それぞれ役割が異なります。ご自身の経験や理想のキャリアにあわせて受験しましょう。
1級2級どちらも、電気工事の施工管理者として活躍できる資格です。しかし1級と2級では、担当できる業務の幅が異なります。
1級電気工事施工管理技士 | 2級電気工事施工管理技士 |
---|---|
特定建設業の営業所ごとに配置が義務付けられている。 また専任技術者・主任技術者・監理技術者として業務に携わることができる。 |
一般建設業の事業所に配置が義務付けられている。 また、専任技術者・主任技術者として業務に携わることができる。 |
2級では主任技術者として現場に携わる一方、1級は監理技術者としても現場に携わることができます。
主任技術者とは、外注総額税込4000万円未満の元請業者や下請に入る建設業者が、現場に配置しなければならない技術者です。
その一方で監理技術者は、外注総額税込4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の現場の管理者を指します。大規模な工事を任されるチャンスが増えるので、大型案件を担当したい方は1級の取得を目指しましょう。
1級電気工事施工管理技士の試験には「第一次検定」と「第二次検定」があり、両方の試験で合格することで、1級の資格が授与されます。なお試験概要は以下の通りです。
– 受験資格:実務経験3年以上
– 試験回数:年1回
– 試験内容:第一次検定・第二次検定
– 資格取得後:主任技術者・監理技術者として現場配置可能
受験資格は「最終学歴」によって異なります。指定学科の学部を卒業した方は実務経験3年以上ですが、最終学歴によって必要経験年数が異なります。まずは受験資格を確認するようにしましょう。
https://www.fcip-shiken.jp/den1/
また、1級電気工事施工管理技士の試験内容は以下の通りです。
試験時間 | 計4時間半 |
---|---|
解答形式 | 全問 四肢択一式 |
出題数・解答数 | 出題数92問、うち60問を選択して解答 |
合格基準 | 正答率60%以上 |
出題基準 | 電気工学:15問中10問を選択 電気設備:33問中15問を選択 関連分野:8問中5問を選択 設計・契約関係:2問 工事施工:9問中6問を選択 施工管理:12問 法規:13問中10問 |
1級電気工事施工管理技士の第一次検定は、電気工学や施工管理法、法規が中心で、マークシート方式の試験です。92問中60問を選択して回答します。ふだん現場では使わない専門知識も問われるので、試験対策は念入りに行いましょう。
合格率は※38.1%(令和2年度)です。実務経験が豊富な方でも、試験対策は必要になります。
※:https://www.fcip-shiken.jp/about/lastyear.html
試験時間 | 計4時間半 |
---|---|
解答形式 | 記述式 |
出題数・解答数 | 5問 |
合格基準 | 正答率60%以上 |
出題基準 | 施工経験記述について:1問 施工管理について:2問 電気設備全般:1問 法規:1問 |
1級電気工事施工管理技士の第二次検定は、経験が問われる記述式問題がメインになります。物件概要や施工のポイントなど、事前に準備しておきましょう。
合格率は※72.7%(令和2年度)と、比較的高めの傾向にあります。事前対策を行うことで、合格率も高まります。
※:https://www.fcip-shiken.jp/about/lastyear.html
2級電気工事施工管理技士の試験も1級と同じく「第一次検定」と「第二次検定」があり、両方の試験で合格すると2級の資格が授与されます。なお試験概要は以下の通りです。
– 受験資格:実務経験1年以上
– 試験回数:年2回(前期:学科のみ、後期:学科・実地)
– 試験内容:学科試験・実地試験(後期受験であれば学科実地同時受験が可能)
– 資格取得後:主任技術者として現場配置可能
指定学科の学部を卒業した方は、実務経験1年以上で受験可能です。経験年数が少ない方でも受験できるので、まずは2級から挑戦してみましょう。
なお最終学歴によって、必要な経験年数が異なります。必ず確認しましょう。
https://www.fcip-shiken.jp/den2/
また、2級電気工事施工管理技士の試験内容は以下の通りです。
試験時間 | 計2時間半 |
---|---|
解答形式 | 全問 四肢択一式 |
出題数・解答数 | 出題数64問、うち40問を選択して解答 |
合格基準 | 正答率60%以上 |
出題基準 | 電気工学:12問中8問を選択 電気設備:20問中11問を選択 関連分野:6問中3問を選択 設計・契約関係:1問 施工管理:13問中9問 法規:12問中8問 |
2級電気工事施工管理技士の第一次試験は、電気工学や電気設備、施工管理、法規などが中心の試験です。マークシート方式で40問を選択して回答します。
第一次試験の合格率は※58.5%(令和2年度)と、1級よりもやや高めです。1級と比較すると難易度は低いので、独学での取得も十分に狙えるでしょう。
※:https://www.fcip-shiken.jp/about/lastyear.html
試験時間 | 計2時間 |
---|---|
解答形式 | 記述式 |
出題数・解答数 | 5問 |
合格基準 | 正答率60%以上 |
出題基準 | 施工経験記述について:1問 施工管理について:2問 電気設備全般:1問 法規:1問 |
2級電気工事施工管理技士の第二次検定も1級と同じく、経験が問われる記述式問題が中心となります。合格率は※45.0%(令和2年度)と高めです。制限時間があるので、限られた時間で的確に答えられるように、事前準備を行いましょう。
※:https://www.fcip-shiken.jp/about/lastyear.html
電気工事施工管理技士の資格を取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下では5つのメリットを紹介します。
一つ目は「中規模・大規模の工事に携われる」ことです。電気工事の施工管理は資格がなくともできます。しかし無資格者の場合は、経験年数が少ないと現場の雑務や調整業務が主な仕事になります。つまり重要なポジションにつくことはないでしょう。
しかし電気工事施工管理技士の資格を有していると、監理技術者や主任技術者として現場に配置されます。中規模・大規模の工事に関わることで、様々な経験を積むことが可能です。
二つ目は「昇進・昇給のきっかけになる」ことです。建設業界では年功序列の企業も多く、若手社員がステップアップするためには様々な経験が必要になります。しかし施工管理技士の資格を有していることで、若手社員でも昇進や昇給のチャンスが巡ります。
施工管理者として、キャリアアップを目指している方は、取得することをオススメします。
三つ目は「転職に有利になる」ことです。「施工管理」として同業他社へ転職する際にはもちろんのこと、別の職種へ転職する際にも有利になります。照明のメーカーや施設管理など、様々な分野で電気工事の知識が役立つからです。
別のキャリアであっても「電気工事施工管理技士」の資格は、転職に有利です。実務経験があるうちに取得を目指しましょう。
四つ目は「周囲からの信頼が高まる」ことです。電気工事施工管理技士は、国家資格のひとつです。そのため資格を有していることで、クライアントや作業員からの信頼が高まります。
施工管理はスキルの証明が難しいからこそ、このような資格を取得していると「この人にまかせて大丈夫」という安心感を与えられるのです。
五つ目は「スキルの証明になる」ことです。電気工事施工管理技士を有していると「どのような知識を持っている人なのか」が把握しやすくなります。
現場での経験と様々な知識を兼ね備えた管理者は多くありません。資格を取得すると、ご自身の理想とするキャリアに一歩近づけるといえるでしょう。
電気工事施工管理技士の試験に向けて、3つの勉強法を紹介します。独学で受験する方や一発合格を狙う方にオススメです。
一つ目は「参考書」や「過去問」を使った勉強法です。参考書は出来るだけ新しいものを選び、まずはインプット中心の勉強を行いましょう。
実務経験がある方も、ふだん現場では聞かない専門用語を覚える必要があります。いきなり過去問に挑戦すると、混乱する可能性があるため、まずは参考書を中心に勉強を進め、慣れてきたら過去問に挑戦しましょう。
また、過去問は問題の傾向を知ることのできるツールです。必ず過去問もあわせて学習を進めましょう。
二つ目は「得意分野の集中的な学習」です。第一次検定では1級2級ともに、回答する問題を選択できます。つまり分からない問題があっても、確実に答えられる問題が多ければ合格できるのです。そのためまずは「得意分野」にフォーカスして勉強しましょう。
さらに出題数の傾向にあわせて、回答数の多い分野も集中して取り組むことをオススメします。とくに数値を問われる問題は間違いやすいので、注意が必要です。
三つ目は「動画を活用した勉強」です。テキストではわかりにくい部分は、動画を使って理解を深めましょう。
動画教材であれば講義形式で勉強が進められるため、継続しやすい方が多いです。最近では動画だけでなくオンライン勉強会など、様々な勉強方法があります。ご自身にあわせた勉強方法を探してみましょう。
電気工事施工管理技士の資格は、スキルアップや昇給・昇進のきっかけになります。
またこの資格を取得すると、作業員やクライアントからの信頼も高まります。電気工事の施工管理者としてステップアップを考えている方は、ぜひ受験してみてはいかがでしょうか。