2021年12月10日
「施工管理」と聞くと、ビルの新装工事やマンションの大型改修工事を想像する方も多いでしょう。
建設業界では様々な物件を施工しており、大規模な工事が日々行われています。しかし、すべての施工管理者がこのような大規模工事を行っているわけではありません。施工管理の中でも小規模な改修工事を担当する「リフォーム施工管理」という仕事があります。
そこで当記事では「リフォーム施工管理」に着目し、仕事内容や向いている人の特徴などを解説します。
施工管理の仕事に興味のある方や、建設業界に転職希望の方は最後までご覧ください。
リフォーム施工管理とは、リフォーム案件の施工管理を行う人を指します。
建物や内装は年数を重ねるたびに経年劣化をして老朽化します。リフォーム施工管理は、老朽化した建物を修繕するためのフローを管理する仕事です。「リフォーム」と聞くと、壁紙の張り替えや塗装の塗り直しなど、軽微な仕事を想像する方が多いかもしれません。
しかし、リフォームの中には壁の撤去などの解体作業も多く、建物のオーナーとの調整が必要になるのです。そのためリフォーム施工管理は、このような調整業務や届出の対応なども行います。
現場に関する知識はもちろんのこと、関係者を統率するマネジメント能力やスケジュール管理能力が重要になります。
また、リフォームの場合、工事条件によってはクライアントが求める仕上がりと予算が一致しないことがあります。
新装工事であれば下地制作から行うため、きれいな仕上がりが実現できるでしょう。しかしリフォームの場合は予算削減のため、下地工事を行わず表層のみをやり直すこともあります。その場合、クライアントが想像していた仕上がりを保証できないこともあるので、工事前に懸念点を説明する必要があるのです。
懸念点を事前に説明できていないとトラブルの原因になりかねません。通常の工事よりも、事前打ち合わせを入念に行うようにしましょう。
以下では、リフォーム施工管理の特徴について解説します。
まず一つ目は「臨機応変な対応が求められる」ことです。リフォームの現場では、様々なアクシデントが起こります。計画していたプランでは工事が進まず、新たに計画を練り直さなければならないこともあるでしょう。そんなときこそ施工管理者として、臨機応変な対応が必要になります。クライアントの要望と実際の現場状況を考慮して、最善の方法を考えましょう。
通常の工事でも起こりうることですが、リフォーム工事の方がこのような事態が起こりやすいです。施工管理者として、どんなときでも冷静に対処できる判断力が重要です。
次に二つ目は「周辺への気配りが必要になる」ことです。マンションのリフォームを例に出すと、新装工事であれば周囲に住人がいないので騒音工事なども問題なく行えます。
しかし一室のリフォーム工事であれば、隣に住む方々へ配慮をした工程を組まなければなりません。周辺の方々がどのような生活をしているかを意識し「どんな工程を組めばストレスなく工事できるか」を考えることが大切です。
工事中のトラブルは、クライアントにも迷惑がかかります。事前あいさつなどを行い、よい関係を築くようにしましょう。
そして三つ目は「クライアントの要望を正確に理解する必要がある」ことです。新装工事の場合、予算に余裕のあるクライアントが多いでしょう。
しかしリフォームの場合は予算が限られていることが多く、その予算内でクライアントの要望を満たさなければなりません。「新装のときのようにきれいにしたい!」という場合もあれば、「今よりもマシになればよい」という考えもあります。クライアントの温度感を確認し、適切なプランを提案しましょう。
続いて、リフォーム施工管理の業務内容を解説します。リフォーム施工管理の仕事は、主に以下の6つです。
一つ目は「リフォーム内容のヒアリング」です。クライアントから修繕箇所をヒアリングし「どのような工事が発生するのか」を説明します。電話やメールで行うと、お互いの認識にズレが生じることがあるので、必ず現場で行いましょう。
また、必要に応じて協力会社に同席してもらうと、打ち合わせがスムーズに進みます。ヒアリング内容は必ず議事録に残し、依頼内容を正確に把握しましょう。
二つ目は「現場調査」です。依頼内容に最適なプランが現場で行えるのか、再度確認しましょう。とくに造作物の寸法確認や搬出入ルートの確認など、実際の現場でしか行えないことが多々あります。どのような確認が必要になるかを事前にリストアップし、漏れのないようにしましょう。
軽微な工事であれば現場調査は不要ですが、多くのリフォーム工事では必要な工程です。
三つ目は「見積書の作成」です。依頼内容のヒアリングと現場調査が完了した後は、見積書を作成します。リフォームの場合、クライアントの予算が決まっていることが多いので、初回打ち合わせの際に予算感をヒアリングしておくとスムーズに進みます。
なお、見積もりが予算を超過している場合は、VE(コスト削減)案を準備しておくことをオススメします。
また、解体を伴うリフォームの場合、着工後にトラブルが発生することも多々あります。追加工事が発生する可能性も伝えておきましょう。
四つ目は「工事計画の作成・調整」です。工事金額や内容の合意が出た後は、実際の工事計画を行います。工程表を作成し、着工前の届出を作成しましょう。
なお、近隣住民がいるリフォームの場合は、事前あいさつが必要になります。工事のお知らせ作成やあいさつ回りなども計画しましょう。
五つ目は「協力会社との打ち合わせ」です。実際に工事を行う業者と最終打ち合わせを行います。工程や施工手順、搬出入ルートなどを細かく打ち合わせをしましょう。
リフォーム工事はタイトな工期が多いので、当日のトラブルが命取りになることもあります。懸念事項があれば、事前に対策を考えておきましょう。
六つ目は「現場管理」です。工事中の現場管理はもちろんのこと、工事現場の養生やあいさつ対応なども入念に行いましょう。
実はリフォーム工事で多いトラブルが「騒音」と「ほこり」です。クレームが入ると工程に支障をきたすので、事前の対策をオススメします。
リフォーム施工管理の仕事の流れを解説します。事務仕事だけを行う日もありますが、現場作業のある日は以下のような仕事を行います。
まずは作業を行う前に、近隣住民へあいさつをします。あいさつが事前に済んでいる場合も、念のために再度声かけをしましょう。
事前のあいさつができていないと、クレームの原因となり工事が止まることもあります。クライアントに迷惑をかけないためにも丁寧な対応を心がけましょう。
次に作業員の管理を行います。作業員の人数を確認し、現場ルールの説明や必要書類の確認を行います。
また、溶接工や電気工などの特殊な工事の場合は資格証の確認も必要のため、コピーを入手し本人確認を行いましょう。
作業員が揃い次第、全体朝礼で作業の確認を行いましょう。各工種の作業員は「他の工種がどんな工事をするか」まで把握していないことが多いです。そのため全体の工事内容や、作業中の注意点などの細かい説明が必要となります。とくに、危険な作業がある場合は他の作業員にも周知させ、適切な対応を心がけましょう。
朝礼終了後は、工事に移ります。実際に作業を行う前は、床や壁の現場養生を行いましょう。
とくに解体のほこりは飛散しやすく、トラブルの原因になります。近隣住民に迷惑をかけないためにも、徹底した養生をオススメします。この際の様子なども、工事写真として記録しておきましょう。
マンションなどのリフォームの場合は、一般の方が使用するエレベーターを使って搬出入をします。一般の方に迷惑がかからないように、搬出入時は施工管理者の立ち会いが必要です。
なお、車の停車位置や搬入経路などは、事前の打ち合わせでクライアントに確認しましょう。
実際に作業が開始したら、現場内の安全管理を行います。定期的に現場巡回をして、作業員が安全に作業をしているかをチェックしましょう。
現場が狭い場合や、複数の工種が同じエリアを工事する場合は、作業がしやすいように調整しなければなりません。事故や災害を防ぐためにも、細心の注意を払い管理しましょう。
長時間作業をすると集中力が低下し、品質の低下や事故の原因になりかねません。定期的に休憩をとり、作業員の作業環境を整えましょう。
日中作業の場合は、10時・12時・15時に休憩をとることが多いです。
作業中は定期的に施工チェックや品質チェックを行いましょう。とくに下地工事は、その後の工事の仕上がりに大きく影響します。
施工手順や使用部材、仕上がりに問題ないかどうかを確認して、工事写真に収めるようにしましょう。
日中に職長と打ち合わせを行い、工事の進捗を共有します。当日の作業状況や明日の予定などを伝えると、職長が全体の様子を把握しやすくなります。工事が数日に及ぶ際には、必ず実施しましょう。
1日の作業が概ね終了したら、作業報告書を作成しましょう。工事写真や管理内容をまとめることで、現場に常駐していない工事関係者とスムーズにやりとりできます。
リアルタイムで共有すると、工事に不備があった場合、即座に対応できます。まとめて報告するよりも、作業ごとに報告することをオススメします。
作業終了後は、工事関係者全員で清掃を行います。現場清掃はもちろんのこと、工具や足場の片付けも重要です。
次の日に気持ちよく作業をスタートするためにも、終了時の清掃は徹底して行いましょう。
工事が1日で完了する場合は、工事当日に引き渡しすることもあり、その際は引き渡し書類の作成や検査などを行います。クライアントの立ち合いが必要なので、事前に日程を決めておきましょう。
最後に、リフォーム施工管理に向いている人の特徴を5つ紹介します。
一つ目は「コミュニケーション能力が高い人」です。通常の施工管理であれば、クライアント窓口は営業が行います。しかし、リフォームの場合は工事規模が小さいことが多く、クライアント対応から現場管理までひとりで行うことが多いです。
そのため、コミュニケーション能力が高く、多くの関係者を統率できる人が向いています。懸念事項を的確に伝える力や、場が和むような雑談力も必要です。
二つ目は「相手の考えを汲み取れる人」です。リフォーム工事は通常の新装工事よりも短期間で打ち合わせを行い、工事に移ります。
つまりクライアントの要望を短期間で理解し、形にしなければなりません。相手の悩みに寄り添い、的確な提案ができる人はリフォーム施工管理に向いている人と言えるでしょう。
三つ目は「ホスピタリティ精神がある人」です。クライアントから頼まれたことだけをやるのではなく、自分から率先して行動できる人が好まれます。
たとえば「依頼個所ではない部分で破損があれば一緒に修理する」「補修用の材料を用意して渡す」などを行うと、クライアントとの関係性が築きやすくなるでしょう。リフォーム施工管理にとって、相手に喜んでもらう工夫は重要です。
四つ目は「現場知識の豊富な人」です。業界経験を不問としている企業が多いものの、リフォーム施工管理として活躍するためには知識や経験は必要です。
とくに現場でトラブルが生じた際には、自身の経験を基に解決策を提案しなければなりません。建築やリフォームに関する知識や経験が豊富な人は、リフォーム施工管理に向いている人と言えるでしょう。
五つ目は「臨機応変な対応ができる人」です。現場は計画通りに進まないことも多々あり、そのたびに最善の判断を選択しなければなりません。「計画ではこうだった……」と過去のプランに囚われてしまうと、現場が止まってしまいます。計画内容を軸にして、柔軟な対応を行える方にオススメの仕事と言えるでしょう。
リフォーム施工管理は、現場知識や工事経験だけでなく、トラブル時に適切な処置ができる判断力や対応力が重要になるでしょう。