土木施工管理技士とは?仕事内容や資格について解説
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土木施工管理技士とは?仕事内容や資格について解説

2021年12月21日

建設業界における建設投資額は、国土交通省による公表データ(2020年度)によると以下の通りです。
・2010年から2019年まで増加(2010年:41.9兆円→2019年:65.4兆円、56.1%増加)
・2020年に減少(2020年:63.2兆円、コロナ禍が原因)

※参考元:一般社団法人日本建設業連合会 ※1

 
その様な状況下で、土木施工管理技士に対する需要は益々増加傾向にあります。

そこで今回は、土木施工管理技士の概要や仕事内容、資格内容、転職先について解説します。

 

土木施工管理技士とは

土木施工管理技士は、土木工事の施工管理における国家資格(建設業法27条による規定)であり、7種類ある施工管理技士の資格のうちの一つです。
実務経験を積み、検定試験に合格することで、取得できる資格です。公共工事において、建設工事現場に必置となる主任技術者や監理技術者になるための必須資格です。

土木工事の施工管理は、社会インフラとなる以下の公共工事・民間工事が対象となります。
・道路工事:舗装工事、橋梁工事、トンネル工事、擁壁工事、サービス施設の建築工事など
・鉄道工事:レール施設工事、駅舎工事、橋梁工事、トンネル工事、擁壁工事、など
・河川工事:堤防工事、ダム工事、水門工事、水路工事、など
・海岸工事:防潮堤工事、防潮門工事、護岸工事、など
・宅地開発工事:切土・盛土工事、上下水道工事、擁壁工事、など
・災害復旧工事:破損した公共建設物の修繕、改築など

 

土木施工管理技士の仕事内容

土木施工管理技士の仕事内容は、建設現場における工程管理、品質管理、原価管理、安全管理など、多岐に亘ります。

工程管理

工程管理は、建設工事の決められた工期(納期)を守るために、スケジュール管理を行う仕事です。
建設工事には、「工期」と呼ばれる建造物完成期限が決められており、発注者との間で工期内に建造物を完成させる契約が交わされます。
各専門工事の工期を調整しつつ、工事全体の工期を守り完成させるため、数多くの作業員が関わる建設現場を、効率よく進捗させる必要があります。
そのため、各工事の作業ごとに日程調整を行う能力が土木施工管理技士に求められます。

また、工程管理は工程管理表を作成して行われます。
工程管理表には、「全体工程表」「月間工程表」「週間工程表」などがあり、一定期間ごとに作成されます。
他にも、「横線式工程表」や「ネットワーク工程表」などがあります。

工程表の種類 工程表の内容
横線式工程表 左列に工事業者を縦に列記し、工事業者欄の右側に日付ごとの工程が記載された表。
工事業者が、いつからいつまで担当工事を担うのかを一目で把握できる。
ネットワーク工程表 各工事の作業の繋がりを記載した表。(丸印と矢印で表記)
各工事の期限が一目で把握できる。

 

品質管理

品質管理は、建造物が設計図書や仕様書通りに造られているかの監理を行う仕事です。
具体的には、主に以下などを点検・確認します。
・建造物が、設計図書に記載されている寸法・形状通りに造られているか
・建造物が、仕様書に記載されている強度や機能・材質通りに造られているか

点検・確認する手段として、評価対象ごとに決められた試験方法や点検方法により確認を行い、品質を確保します。
また、品質保持を証明するために施工写真を撮影し、記録に残すなどの施工記録を作成します。万が一、建造物が設計図書や仕様書通りに造られていないことが発覚した場合、速やかにやり直しを命じ、工程や原価とも調整しながら、品質を確保する必要があります。と同時に、ミスが発生した原因を追究し関係者に周知徹底を行い、ミスの再発防止に努めることも必要です。

 

原価管理

原価管理は、以下を管理し利益計上できるように管理する仕事です。
・「実行予算」:施工計画に基づき算出した金額
・「原価」 :建設工事現場での実際の工事において発生する金額

実行予算よりも原価が増えた場合、利益計上ができなくなります。
現場責任者は、施工計画の見直しや工程表の調整、下請け工事業者の変更などを行い、実行予算と原価を調整しながら、利益計上できるように管理します。

一般的な土木工事における原価構成と割合の目安を下表にまとめます。

費用項目 割合 費用内容
直接業務費 直接労務費 50% 職人などの作業員に対する賃金やその他の現場運営費
外注費 15% 外部の専門工事会社に工事を発注する際に発生する外注費用
建材費 10% 建設資材などの材料費
一般管理費・販売費 15% 一般管理費は本社経費、販売費は営業費用
粗利益 10% 税引前利益

 

安全管理

安全管理は、建設現場において安全な環境で作業を行えるように整備し、事故を起こさないように管理する仕事です。
その対策として、主に以下などが挙げられます。
・KYK:危険余地活動
・SS運動:整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)
・ヒヤリハット運動

それらを徹底させるために、工事作業開始前などに下請け業者や職人などの作業員を集め、安全対策としての知識や意識向上のために、準備・点検・確認を毎日行い、事故を未然に防ぐようにします。

 

土木施工管理技士の資格

土木施工管理技士は、1級と2級に分類されます。
建設現場の規模で見ると、以下の通りです。
・1級土木施工管理技士は、大規模な土木工事の施工管理
・2級土木施工管理技士は、小規模な土木工事の施工管理

また、建設現場の役職で見ると、以下の通りです。
・1級土木施工管理技士は、主任技術者・監理技術者
・2級土木施工管理技士は、主任技術者

ここで、「主任技術者」「監理技術者」の違いを下表にまとめます。

比較項目 主任技術者 監理技術者
必要な国家資格 ・2級土木施工管理技士
・2級建築施工管理技士
・二級級建築士


などの有資格者(一般建設業許可の専任技術者要件と同一)
・1級土木施工管理技士
・1級建築施工管理技士
・一級建築士


などの有資格者


・監理技術者講習修了者
(特定建設業許可の専任技術者要件と同一)
発注者からの工事
1件当たりの下請への発注額
土木一式工事など 4,000万円未満(税込み) 4,000万円以上(税込み)
建築一式工事 6,000万円未満(税込み) 6,000万円以上(税込み)
資格証の携帯、提示義務 携帯・提示義務有 公共工事において専任で配置すべき工事の場合、携帯・提示義務有

 
次に、1級と2級の資格試験の違いについて解説します。

1級土木施工管理技士

1級土木施工管理技士は、土木工事のあらゆる分野において、主任技術者もしくは監理技術者になることができます。
以下にて、1級土木施工管理技士の受験資格・受験料・検定形式・合格率について解説します。

●受験資格

受験資格を、第1次検定第2次検定に分けて解説します。

【第1次検定の受験資格】

第1次検定の受験資格者は、下表のイ、ロ、ハ、ニのいずれかに該当する者となります。

区分 学歴または資格 土木施工に関する実務経験年数
指定学科 指定学科以外
大学卒業者
専門学校卒業者(「高度専門士」に限る)
卒業後3年以上 卒業後4年6ヶ月以上
短期大学卒業者
高等専門学校卒業者
専門学校卒業者(「専門士」に限る)
卒業後5年以上 卒業後7年6ヶ月以上
高等学校・中等教育学校卒業者
専門学校卒業者
(「高度専門士」「専門士」を除く)
卒業後10年以上 卒業後11年6ヶ月以上
その他 15年以上
高等学校卒業者
中等教育学校卒業者
専門学校卒業者
(「高度専門士」「専門士」)を除く
卒業後8年以上の実務経験(その実務経験に指導監督的実務経験を含み、かつ、5年以上の実務経験の後、専任の監理技術者のよる指導を受けた実務経験2年以上を含む)
専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 高等学校卒業者
中等教育学校卒業者
専門学校卒業者
(「高度専門士」「専門士」を除く)
卒業後8年以上 卒業後9年6ヶ月以上
その他 13年以上
2級合格者
※参考元:一般社団法人全国建設研修センター ※2

 
※2:「1級土木施工管理技術検定」 一般社団法人全国建設研修センター

 
【第2次検定の受験資格】
第2次検定の受験資格者は、下記のイ、ロ、ハのいずれかに該当する者となります。

 1級土木施工管理技術検定:第1次検定合格者(ただし、2級合格者として受験した者を除く)
 1級土木施工管理技術検定:第1次検定において2級合格者として受験した合格者のうち上表のイ、ロ、ハもしくは下表のⅰ、ⅱのいずれかに該当する者となります。

区分 学歴または資格 土木施工に関する実務経験年数
指定学科 指定学科以外
2級合格者3年以上の者 合格後1年以上の指導監督的実務経験及び専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む3年以上
2級合格者5年以上の者 合格後5年以上
2級合格後5年未満の者 高等学校卒業者
中等教育学校卒業者
専門学校卒業者(「高度専門士」「専門士」を除く)
卒業後9年以上 卒業後10年6ヶ月以上
その他 14年以上
専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 2級合格者 合格後3年以上の者 合格後1年以上の専任の主任技術者実務経験を含む3年以上
合格後3年未満の者 短期大学卒業者
高等専門学校卒業者
専門学校卒業者
(「専門士」に限る)
卒業後7年以上
高等学校卒業者
中等教育学校卒業者
専門学校卒業者
(「高度専門士」「専門士」を除く)
卒業後7年以上 卒業後8年6ヶ月以上
その他 12年以上
※参考元:一般社団法人全国建設研修センター ※2

 
 第1次検定免除者

 
※2:「1級土木施工管理技術検定」 一般社団法人全国建設研修センター

 

●受験料

受験手数料は、以下の通りです。
・第1次検定:10,500円
・第2次検定:10,500円

 

●試験形式

試験形式は、以下の通りです。
・第1次検定:四肢択一式マークシート方式
 出題科目:土木一般、専門土木、法規、共通工学、施工管理法

・第2次検定:記述式
 必須問題:担当した土木工事における施工管理経験を記述
 選択問題:施工管理、工程管理、品質管理、安全管理、環境対策 など

 

●合格率

1級土木施工管理技術検定の近年の合格率は下表の通りです。

第1次検定 第2次検定
受験者数 合格者数 合格率 受験者数 合格者数 合格率
平成29年 34,629人 22,930人 66.2% 31,414人 9,424人 30.0%
平成30年 28,512人 16,117人 56.5% 27,581人 9,521人 34.5%
令和元年 33,036人 18,076人 54.7% 24,688人 11,190人 45.3%
令和2年 29,745人 17,885人 60.1% 24,204人 7,499人 31.0%
令和3年 37,726人 22,851人 60.6%
※参考元:総合資格学院 ※3

 
※3:「1級土木施工管理技士 試験の合格率」 総合資格学院

 

2級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士は、「土木」「薬液注入」「鋼構造物塗装」に分類され、各試験で合格した分類内容の主任技術者になることができます。

以下、2級土木施工管理技士の受験資格・受験料・検定形式・合格率について解説します。

●受験資格

受験資格を、第1次検定と第2次検定に分けて解説します。

【第1次検定の受験資格】
令和4年度の第1次検定の受験資格は、令和4年度の末日における年齢が17歳以上の者(平成17年4月1日以前に生まれた者)

 
【第2次検定の受験資格】
第2次検定の受験資格は、下記のイ、ロのいずれかに該当する者となります。

 2級土木施工管理技術検定・第1次検定の合格者で、下表のいずれかに該当する者

学歴 土木施工に関する実務経験年数
指定学科 指定学科以外
大学卒業者
専門学校卒業者(「高度専門士」に限る)
卒業後1年以上 卒業後1年6ヶ月以上
短期大学卒業者
高等専門学校卒業者
専門学校卒業者(「専門士」に限る)
卒業後2年以上 卒業後3年以上
高等学校卒業者
中等教育学校卒業者
専門学校卒業者(「高度専門士」「専門士」を除く)
卒業後3年以上 卒業後4年6ヶ月以上
その他 8年以上
※参考元:一般社団法人 全国建設研修センター ※4

 
 第1次検定免除者

 
※4:「2級土木施工管理技術検定」 一般社団法人全国建設研修センター

 

●受験料

受験手数料は、以下の通りです。
・第1次検定・第2次検定・同日試験の場合:10,500円
・第1次検定・第2次検定・別日試験の場合:各5,250円

 

●試験形式

試験形式は、以下の通りです。
・第1次検定:四肢択一式マークシート方式
 出題科目:土木一般、専門土木、法規、共通工学、施工管理法

・第2次検定:記述式
 必須問題:担当した土木工事における施工管理経験を記述
 選択問題:施工管理、工程管理、品質管理、安全管理、環境対策、など

 

●合格率

2級土木施工管理技術検定の近年の合格率は下表の通りです。

第1次検定 第2次検定
受験者数 合格者数 合格率 受験者数 合格者数 合格率
平成29年
第1回1次検定試験
7,618人 4,398人 57.7%
平成29年
1次・2次検定試験
29,644人 21,239人 71.6% 34,365人 11,782人 34.3%
平成29年
第2回2次検定試験
4,770人 2,788人 58.4%
平成30年
前期1次検定試験
7,747人 3,894人 50.3%
平成30年
後期1次検定試験
7,990人 4,695人 58.8%
平成30年
1次・2次検定試験
19,365人 12,274人 63.4% 33,399人 11,698人 35.0%
令和元年
前期1次検定試験
12,156人 7,528人 61.9%
令和元年
後期1次検定試験
8,114人 4,606人 56.6%
令和元年
1次・2次検定試験
18,825人 12,626人 67.1% 31,729人 12,621人 39.7%
令和2年
前期1次検定試験
中止 中止 中止
令和2年
後期1次検定試験
13,214人 8,858人 67.0%
令和2年
1次・2次検定試験
19,968人 14,488人 72.6% 30,437人 12,852人 42.2%
令和3年
前期1次検定試験
14,557人 10,229人 70.3%
※参考元:総合資格学院 ※5

 
※5:「2級土木施工管理技士 試験の合格率」 総合資格学院

 

土木施工管理技士の転職先

土木施工管理技士は土木工事を行う現場においてとても必要とされているため、需要が高いのが現状です。特に、人手不足や高齢化の進んでいる建設業界において、土木施工管理技士は不足気味といえます。

主な転職先

土木施工管理技士の主な転職先としては、以下の通りです。
・大手ゼネコン
・準大手ゼネコン
・中堅ゼネコン
・地場コン:地方都市などに本社を構える地元密着型の建設会社
・専門工事会社:道路会社、橋梁会社、トンネル会社、マリコン、など

その中でも特に以下のような企業の求人が多くなります。
・マリコン:海洋関係の土木工事、港湾施設、建築を中心とする建設会社(主なマリコンとして、五洋建設、東亜建設工業、東洋建設など)
・道路会社:道路の新設工事、定期的なメンテナンス、災害復旧工事を中心とする建設会社(主な道路会社として、NIPPO、前田道路、日本道路など)

 

資格所有の効果

土木施工管理技士を取得することにより、公的に一定水準以上の施工技術を有することが認定されます。
建設業法により、下記の措置が取られます。

建設業法による許可要件

土木施工管理技士は、建設業法に規定される許可の要件として以下の資格を満たす者として扱われます。
・営業所に配置される専任技術者 :1級・2級保持者
・工事現場に配置される主任技術者:1級・2級保持者
・工事現場に配置される監理技術者:1級保持者のみ

 

経営事項審査

公共工事を元請として受注する際、必須の審査となるのが経営事項審査(経審)となります。
・1級土木施工管理技士:+5点
・2級土木施工管理技士:+2点

建設会社としても、土木施工管理技士を保持する現場監督を配置していることで公共工事の受注なども見込みやすくなるため、有資格者は以下のようなメリットがあります。
・自身のスキルを活かせる建設会社に転職しやすい
・資格手当の支給による年収アップ

 

土木施工管理技士に向いている人

土木施工管理技士に向いている人は、主に以下が挙げられます。
・コミュニケーション能力
・リーダーシップ
・危機管理能力

 

まとめ

土木施工管理技士の概要や仕事内容、資格内容、転職先について解説しました。
土木施工管理技術検定は、建設現場での実務経験年数が受験資格に関わってきますが、増加する建設現場においては大変需要の高い資格といえますので、資格取得に向けてぜひ挑戦することをオススメします。

 

 


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