プラント施工管理とは?仕事内容や種類、資格を解説
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プラント施工管理とは?仕事内容や種類、資格を解説

2021年12月17日

プラント建設の特徴は、通常の建築物や土木構造物の建設と比較して、大規模・多様性・特殊性を有しているため、建築・土木・電気技術以外にもプラントの種類により、金属・化学・衛生・エネルギー・機械・食品・医療などの専門技術を有した人材が必要となります。
そこで今回は、プラント施工管理の概要やプラントの種類、プラント施工管理の種類、役立つ資格について解説します。
プラント施工管理は一般的な、施工管理と比較してスキルアップ・キャリア形成・年収アップを図りやすい仕事といえますので、目指す方はぜひ最後までご覧ください。

 


 

プラント施工管理とは

プラントは以下のように、エネルギーや身の回りの物を精製・製造する工場です。
・石油化学プラント:原油を精製して合成樹脂製品などを製造する施設
・製鉄プラント:主原料である鉄鉱石・石炭・石灰石などにより、各種鉄鋼製品を製造する施設
・発電プラント:原子力発電所・石炭火力発電所など、電気をつくる発電所
・食品プラント:加工食品や飲料などを生産する施設
・ごみ焼却プラント:ごみを焼却炉に投入し、安全に効率よくごみ処理する施設

また、プラント建設の特徴は主に以下の通りです。
・大規模:予算が数百億円から1兆円まで様々な規模のプラントが存在
・多様性:建築・土木以外にも電気・機械・化学・衛生などの専門知識が必要
・特殊性:専門的な機械や部品が生産ラインに沿って数多く配置

プラント施工管理は、プラントの新築・増築・改築の際、計画通りにプロジェクトを進捗させるために、以下の4大管理が主な業務となります。
・工程管理:決められた工期までに完成・運転開始
・品質管理:完成した施設が、基準を超える安定した生産
・原価管理:適切な人材や資材を、適正な人件費や価格で配置・仕入れ
・安全管理:作業上で起こりうるリスクを事前に想定

大規模プラントの建設舞台は、東南アジアや中東、南米などの新興国を中心として展開されています。

 

プラントの種類

プラントの主な種類として、産業系・化学系・環境系プラントに分類されます。

産業系

産業系プラントは、食品や飲料品、医薬品など、生活に身近な製品を生産するプラントで、衛生面に配慮した環境づくりが必要です。
産業系プラントには、主に以下などがあります。
・食品プラント:肉や魚介、野菜、卵、チーズなどを使用した加工食品の製造施設
・飲料品プラント:ミネラルウォーターや清涼飲料水などの生産施設
・医療品プラント:医療器具・レントゲン機器・薬品などの製造・生産施設

産業系プラントで業務を行う場合、電気系・機械系・土木系技術以外にも主に以下などの資格を有していると、スキル向上・キャリア形成・年収アップなどに有利にはたらきます。
・管理栄養士
・薬剤師
・臨床工学技士
・診療放射線技師
・臨床検査技師

 

化学系

化学系プラントは、石油・天然ガスなどの原料から、化学製品を生産するプラントです。
化学系プラントには、主に以下などがあります。
・石油化学プラント:合成樹脂製品などの製造
・天然ガスプラント:ガス田から生産された天然ガスを-162℃まで冷却・液化し、出荷する施設
・発電プラント:原子力発電所・石炭火力発電所・LNG火力発電所などの発電施設

また、化学系プラントの施工管理の業務内容は主に以下の通りです。
・化学系業務:生産プロセス構築
・機械系業務:プラント内の基本設計
・電気系業務:電気制御システムを構築

化学系プラントで扱う物質には、引火性や爆発性、毒性などの危険な要素が含まれます。
事故が発生すると、作業員の死傷者発生や近隣住民の避難活動、周辺地域の環境汚染など大きな災害となりますので、運転には安全管理を徹底させるなどの注意が必要です。

化学系プラントで業務を行う場合、電気系・機械系・土木系技術以外にも主に以下などの資格を有していると、スキル向上・キャリア形成・年収アップなどに有利にはたらきます。
・高圧ガス製造保管責任者(甲種)
・危険物取扱者(甲種)
・エネルギー管理士
・消防設備士

 

環境系

環境系プラントは、主に以下の通りです。
・新エネルギー発電プラント:太陽光発電・風力発電・バイオマス発電・地熱発電など
・ごみ焼却プラント:焼却炉の中に空気を送る送風機やごみ焼却による熱エネルギーを回収する廃熱ボイラー、焼却の際に発生する有毒ガスを無害化するバグフィルターなど、様々な設備を配置
・水道供給プラント:河川などから水を取水し、飲料用として水質処理する施設
・下水処理プラント:周辺環境に悪影響を与えない水質にして排水処理する施設

また、環境系プラントは施工管理業務以外にも、試運転や工事計画、メンテナンス計画などが主な業務となります。環境系プラントで業務を行う場合、電気系・機械系・土木系技術以外にも主に以下などの資格を有していると、スキル向上・キャリア形成・年収アップなどに有利にはたらきます。
・公害防止管理者
・作業環境測定士(1種)
・環境計量士
・技術士(環境部門)

プラント施工管理の仕事内容

プラント施工管理の仕事内容としては、主に以下の通りです。

基本的な建設業務

基本的な建設業務の施工管理は、工期内・予算内でプラント建設を行う工程管理と原価管理が重要になります。
また、発注者の要望(設計書・仕様書など)を満足させる品質管理も重要になります。

 

スケジュール管理

プラント施工管理は、予定通りに工場が生産を開始し、製品供給を可能にすることが求められます。単に生産ラインの完成だけでなく、そこで生産される原料やエネルギーの供給が遅れると、関連する産業の生産計画すべてが狂う結果となります。したがって、びっしりとスケジューリングされているため、工期の遅延は許されない状況下にあります。
また、工事中においても常に建設現場を巡回し、工程に影響のある現象が生じていないかを早期に発見し、対処する必要があります。仮に遅延する現象が生じた場合、人員の増員や配置転換など、遅延を取り戻す対策を早期に立て、元の工程通りに工事が進むことが重要です。

 

プラントの設計や製造

プラント設計は建物の建築設計と異なり、生産ラインが中心となりますので、建築設計・土木設計・電気設計以外にも多様な専門的知識を要するため、エンジニアとのコミュニケーションも重要になります。

 

品質検査

設計図書・仕様書通りに以下のような品質検査を行います。
・建物が完成しているか
・生産ライン上に配置された数々の機械が正常に作動するか
・配電や配管などに不備はないか
・生産される原料やエネルギー、商品が基準を超えるものになっているか

 

設備のメンテナンス

品質検査を行った後に試運転を開始し、機械が仕様書通りに稼働するか否かを点検・確認します。
試運転が基準を満たし成功するか否かは、施工管理者として重要な任務です。
試運転が、納期直前に行われる事態になると、不備が生じた場合、納期が遅れ、現場における焦りやストレスにより、不備を見逃すリスクにつながりやすくなります。
本格稼働を開始してから不備を発見するという最悪の事態に陥るため、プラント施工管理者は、試運転の際に不備が生じるものと想定して工程を組む必要があるのです。

 

プラント施工管理に役立つ資格

プラント施工管理の業務に必須となる資格はありません。しかし、スキル向上・キャリア形成・年収アップを図りたいのであれば、資格を有することが役立ちます。
プラント施工管理に役立つ資格としては主に以下の通りです。
・一級建築士
・技術士
・電気主任技術者
・1級電気工事施工管理技士
・1級管工事施工管理技士

一級建築士

建築士は、商業ビルやオフィスビル、高層マンション、一般住宅などの建物の設計・施工管理などを行い、国家資格になります。
建築士法で規定されている建築士は、一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があります。
一級建築士は、全ての建築物の設計・工事監理が可能なだけでなく、国内の公共工事を入札する上で、一級建築士1人につき評価点5点がプラスされ、一級建築士が在籍している企業にとっても有利になるため、高い需要があります。

難易度

ここでは、一級建築士の直近3年間の試験結果を下表にまとめます。

平成30年 令和元年 令和2年
実受験者数 合格率 実受験者数 合格率 実受験者数 合格率
合格者数 合格者数 合格者数
学科 25,878人 18.3% 25,132人 22.8% 30,409人 20.7%
4,272人 5,729人 6,295人
製図 9,251人 41.1% 10,151人 35.2% 11,035人 34.4%
3,827人 3,827人 3,796人
総合合格率 12.5% 12.0% 10.6%
※参考元:公益財団法人建築技術教育普及センター ※1

 
受験資格がある上に、合格率も10%~12%となりますので、難易度は高いといえるでしょう。

※1:「一級建築士試験結果」 公益財団法人建築技術教育普及センター

 

技術士

技術士は、主に以下を備えた技術者で、公益社団法人日本技術士会が認定する国家資格です。
・科学技術に関する技術的専門知識
・高度な専門的応用能力
・豊富な実務経験
・高い技術者倫理

プラントにおいては、インフラ施設の技術調査・設計・工事監理など、監理業務を担当する役割を担います。技術士法で規定されている技術士には、技術士補、技術士の2種類があります。
国内の公共工事を入札する上で、技術士1人につき評価点5点がプラスされ、技術士が在籍している企業にとっても有利になるため、高い需要があります。

技術士試験の技術部門

文部科学省令で規定する技術部門は、下表の通りです。

機械部門 船舶・海洋部門 航空・宇宙部門 電気電子部門
化学部門 繊維部門 金属部門 資源工学部門
建設部門 上下水道部門 衛生工学部門 農業部門
森林部門 水産部門 経営工学部門 情報工学部門
応用理学部門 生物工学部門 環境部門 原子力・放射線部門
総合技術監理部門(第二次試験のみ実施、第一次試験は当分の間実施されません。)
※参考元:公益社団法人日本技術士会 ※2

 
※2:「技術士になるには」 公益社団法人 日本技術士会

 

難易度

ここでは、技術士の直近5年間の試験結果を下表にまとめます。

年度 受験申込者数 受験者数 合格者数 合格率
平成28年 31,635人 25,032人 3,648人 11.5%
平成29年 32,947人 26,253人 3,501人 10.6%
平成30年 32,744人 25,914人 2,355人 7.2%
令和元年 30,690人 24,326人 2,819人 9.2%
令和2年 25,603人 20,365人 2,423人 9.5%
※参考元:公益社団法人日本技術士会 ※3

 
最近3年間の合格率は7%~9%のため、難関試験といえるでしょう。

※3:「技術士第二次試験結果一覧表(昭和33年度~令和2年度)」公益社団法人 日本技術士会

 

電気主任技術者

電気主任技術者は、発電所や変電所、工場、ビルなどの受電設備や配電設備の保安監督に従事することができ、社会的評価が高い資格です。
電気設備を設置している事業主は、工事・保守や運用などの保安の監督者として、電気主任技術者を選任する必要があるということが法令で規定されています。
電気主任技術者の資格は、取り扱う電圧により、第一種、第二種、第三種に分類されています。

種別 内容
第一種電気主任技術者 全ての事業用電気工作物
第二種電気主任技術者 電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物
第三種電気主任技術者 電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5,000kw以上の発電所を除く)
※参考元:一般財団法人電気技術者試験センター ※4

 
※4:「電気主賓技術者って何だろう」 一般財団法人 電気技術者試験センター

難易度

ここでは、第一種電気主任技術者試験の最近5年間の合格者推移を下表にまとめます。

試験年度 一次試験 二次試験
受験者 合格者 合格率 受験者 合格者 合格率
平成28年度 1,519人 331人 21.8% 581人 75人 12.9%
平成29年度 1,567人 363人 23.2% 569人 86人 15.1%
平成30年度 1,566人 378人 24.1% 615人 84人 13.7%
令和元年度 1,566人 379人 24.2% 598人 103人 17.2%
令和2年度 1,508人 759人 50.3% 933人 134人 14.4%
※参考元:一般財団法人電気技術者試験センター ※4

 
※4:「電気主賓技術者って何だろう」 一般財団法人 電気技術者試験センター

 

1級電気工事施工管理技士

電気工事施工管理技士は、照明・変電設備・送電設備・信号・配線などの電気工事において、主任技術者もしくは監理技術者になるための国家資格です。
電気工事を伴う工事現場において、電気工学の知識や電気法規・施工管理法を把握している必要があります。

難易度

ここでは、1級電気工事施工管理検定の最近5年間の合格者推移を下表にまとめます。

試験開催年度 1次検定(学科) 2次検定(実地)
平成28年度 46.0% 69.1%
平成29年度 48.0% 62.5%
平成30年度 56.1% 73.7%
令和元年度 40.7% 66.3%
令和2年度 38.1% 72.7%
※参考元:一般財団法人建設業振興基金 ※5

 
※5:一般財団法人 建設業振興基金

 

1級管工事施工管理技士

管工事施工管理技士は、上下水道の配管やダクト、冷暖房設備、浄化槽などの管工事に関する工事現場において、主任技術者もしくは監理技術者になるための国家資格です。

難易度

ここでは、1級管工事施工管理技士試験の最近5年間の合格者推移を下表にまとめます。

試験開催年度 1次検定(学科) 2次検定(実地)
平成28年度 49.0% 61.0%
平成29年度 44.2% 63.2%
平成30年度 33.2% 52.7%
令和元年度 52.1% 52.7%
令和2年度 35.0% 61.1%
※参考元:一般財団法人全国建設研修センター ※6

 
※6:一般財団法人 全国建設研修センター

 

まとめ

以上、プラント施工管理の概要やプラントの種類、プラント施工管理の種類、役立つ資格について解説しました。
プラント施工管理の仕事の種類は、主に以下とあります。
・基本的な建設業務
・スケジュール管理
・プラントの設計や製造
・品質検査
・設備のメンテナンス

これらをそつなくこなすことができれば、一流のプラント施工管理者といえるでしょう。今後益々需要が見込める業務のため、プラント施工管理への挑戦をオススメします。

 

 


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