設備設計とは?仕事内容や求められるスキルを解説
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設備設計とは?仕事内容や求められるスキルを解説

2022年1月27日

設備設計は、商業施設やオフィスビル、マンション、公共施設など、建築物の用途に限らず、建物として機能するために必要な電気・空調・給排水設備などを適正に計画・設計する仕事です。
最近は、地球環境への社会的関心が高まる中、省エネルギー・省資源に加え、度重なる震災による節電要求からの効率運転の実現が、設備設計に求められています。
そこでこの記事では、設備設計の概要や役割、仕事内容、役立つスキルについて解説します。

 


 

設備設計とは

建築設計には、意匠設計、構造設計、設備設計があります。
設備設計は、主に空調、電気、給排水、昇降機、インターネット設備などの設計を担います。
具体的な設備設計の内容としては、以下などです。

  • 空調配管設備設計
  • 上下水道処理施設設計
  • 電気設備設計
  • FA(ファクトリーオートメーション)設備設計
  • 排煙脱硫装置設計

 
多種多様な設備があるため、設備設計は分野ごとに異なったノウハウ・スキルを要します。各種設備の配置や配管、荷重などが意匠設計や構造設計にも影響を与えるため、設備設計が設計初期段階から加わるケースもあります。

 

設備設計の役割

設備設計の役割としては、建築物のインフラ整備デザインと機能の両立コストの最適化があります。

建築物のインフラ整備

設備設計の役割で重要なことは、建築物のインフラ整備の最適化を図ることです。建築物を利用する人たちが快適な時間を過ごせるように、様々な設備機器の配置や配管・配電を計画します。
その際、建築物の収容人数に応じた空調・換気・給排水・照明などのシステムが必要になります。
(例)

空調設備の場合 どの様な方式で暖かい空気や冷たい空気を各部屋へ送風するのかを検討・計画
給排水設備の場合 給水管の圧力だけで可能なのか、ポンプアップが必要なのかを検討・計画
照明設備の場合 自然光をどこまで採り入れるか、人工照明はどれだけ必要かを検討・計画

 

デザインと機能の両立

建築物を計画する際、室内に大規模な空間などを設けるケースがあります。
しかし、空調や換気などの検討を軽視すると空間内に暑い箇所と寒い箇所が生じて結露が発生するなど、温熱環境が異常となるケースがあります。
また、光熱費が高騰して維持管理費が当初計画していたものより大幅にオーバーするケースもあります。
そのため、デザインと機能を両立させるために、意匠設計で計画した大空間において以下などを事前に点検・確認する必要があります。

  • 空調・換気能力に見合う設備機器の配置スペースを確保できるのか
  • 採光や照明により、昼夜関係なく快適な視界を確保できるのか
  • 光熱費などの維持管理費が高騰しないか

 
それらを綿密に調整しながら意匠設計・構造設計・設備設計を進めていくことで、大胆なデザインを可能にするのです。

 

コストの最適化

建築物を新築してから、運用、廃棄・解体されるまでにかかる費用をライフサイクルコスト(以下、LCC)といいます。

ライフサイクルコスト(LCC)=建設コスト+運用コスト+解体コスト
運用コスト=水道光熱費+メンテナンス費+修繕費


LCCは建設コストの4倍といわれており、運用コスト(水道光熱費+メンテナンス費+修繕費)が大半を占めます。この運用コストに大きく影響するのが、設備設計です。
更新しやすい設備機器やシステムなどを提案し、運用コストの最適化(最小化)を図るのも設備設計の大きな役割です。
施主の希望に応じて建築コストを抑えても、それ以上に運用コストがかかれば元も子もありません。建築コストの提示と共にLCCの提示と解説が重要になります。

 

設備設計の仕事内容

ここでは、設備設計の仕事内容仕事の流れ求められる能力について解説します。

仕事内容

設備設計の主な仕事内容として、電気設備設計空気調和設備設計給排水衛生設備設計などがあります。

< 電気設備設計 >

電気設備設計は、建物利用者が便利で安全に使用できるように、照明や受変電などの電気に関わる設備設計をいいます。
【例】発電、受発電、幹線・動力、照明、LAN、誘導支援、映像・音響、セキュリティ、防災など

< 空気調和設備設計 >

空気調和設備設計は、建物内の温度・湿度などの室内環境を快適に保ち、建物利用者が健康的・快適に過ごせる設備設計をいいます。
【例】空調、換気、排煙など

< 給排水衛生設備設計 >

給排水衛生設備設計は、建物利用者が快適に過ごせるように、環境を最大限に考慮した給水・給湯、排水に関わる設備設計をいいます。
【例】給水、給湯、排水、ガス、消火など

 

仕事の流れ

設備設計の仕事の流れを下表にまとめます。

STEP 作業項目 作業内容
1 企画構想 施主や建物利用者などがどのような環境を要望しているのか、予算に応じながらヒアリングを行い、細かな要望も確認します。
2 基本計画 施主や建物利用者などからの要望に基づき計画します。
以下を計画し、基本計画として提案します。
・LCCに配慮した省エネルギーや設備コスト・運用コスト
・快適性などを考慮したシステム
3 基本設計 意匠設計・構造設計の段階から、建物や各部屋の用途に応じた設備機器の容量の設定や配置検討、予算作成などを行います。
4 実施設計 基本計画・基本設計で提案したシステムを図面化します。
設備機器の仕様を決定します。
5 積算 「設備機器のコストがどれ位かかるのか」「それに伴う配管や建材・資材にどれ位かかるのか」を見積書作成します。その見積書が、工事発注予算に反映されます。
6 確認申請 確認申請を行い、確認検査機関から法的な承認を得ます。
7 施工管理 工事施工会社に対して、設計概要を説明します。
設備機器の仕様や数量などの点検・確認を行います。
工事着手後は、工程管理・品質管理・安全管理を行います。
8 竣工検査 工事完了後、竣工検査を行います。基本計画・基本設計において決められた機能を発揮できるか否かの点検・確認を行います。
発揮できない場合、原因究明・やり直し工事などを行い、当初計画した機能確保を図ります。
9 運用・改修 運用実績の分析などから設備機器の修理・更新を行います。
更なる省エネルギー・機能性向上・運用コスト削減のため、改修提案を行います。

 

求められる能力

設備設計に求められる能力として、他部署間との調整能力想定能力が挙げられます。

● 調整能力

排煙ダクトスペースを設置する場合を例に挙げます。火災が発生した場合、煙を屋外に排出する空間の設置義務があります。その際、意匠設計の立場では建物端部に設置したいと考えますが、設備設計の立場では効率よく排煙したいがために、建物中央に設置したいと考えます。また、構造設計の立場では、排煙ダクトの位置により、柱・梁の追加・補強などを解析結果から導き出し、経済性の比較を提示する必要があります。
このように、意匠設計、構造設計、設備設計の各立場により設計に対する考え方が異なりますが、それぞれの主張を調整し、建物としてバランス良く機能する設計に仕上げることが重要になります。

 

● 想定能力

設備設計の段階において、事前に起こりうる事態を想定できる能力が必要です。
例えば大規模空間を設計する場合、空間内に暑い箇所と寒い箇所が生じて結露が発生するなど、温熱環境が異常となるケースがあります。そのことを事前に想定し対応する設備設計を行いますが、対応できなければ意匠設計に改善を求める必要があります。
もし想定できずに設計を進めると、建物が完成してから気づくことになり、完成してからの改善となるとコストも膨れ上がります。
そのため、室内環境を最適化し、経済性を図る上でも想定能力は重要といえるでしょう。

 

設備設計に役立つスキル

設備設計に役立つスキル・資格として、建築士設備設計一級建築士建築設備士などがあります。

建築士

建築士は、建築士試験に合格し国家資格を取得した人だけが名乗れる職業です。建築士を取得した場合、建築物の設計・工事監理などに従事できることが建築士法で規定されています。
建築士の資格は、以下の3種類に分類されています。

  • 一級建築士:全ての建築物を扱うことが可能
  • 二級建築士:延べ面積300㎡以下、高さ13mかつ軒高9m以下の建築物を扱うことが可能
  • 木造建築士:延べ面積300㎡以下、2階建て以下の木造建築物を扱うことが可能

 
一級建築士を取得すると、上位資格である設備設計一級建築士の受験資格を得ることができます。

 

設備設計一級建築士

設備設計一級建築士は、設備設計のスペシャリストです。一級建築士の上位資格であり、一級建築士の資格保持者でなければ、受験することもできません。
平成18年、建築士法の改正により、3階以上、床面積の合計:5,000㎡以上の建築物の設計については、設計設備一級建築士が必要となりました。

 

建築設備士

建築設備士は、建築設備全般における知識かつ技能を有し、高度化・複雑化した建築設備の設計・工事監理における適切なアドバイスを建築士に対して行える資格者です。

 

まとめ

設備設計の概要や役割、仕事内容、役立つスキルについて解説しました。
設備技術の進歩は著しいです。太陽光発電、コージェネレーションシステム、LED照明などは、既に標準設備となり、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)がトレンドになっています。今後は、建物と自動車のよる電気のやり取りや、AI技術、IoT技術などが建物に導入され、それらは全て設備設計の範疇になるでしょう。
設備設計の役割・割合は増加傾向にあり、今後の需要が益々見込まれますので、設備設計を検討されている方は、ぜひ挑戦されてみてはいかがでしょうか。

 

 


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