意匠設計とは?仕事内容や役立つ資格を解説
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意匠設計とは?仕事内容や役立つ資格を解説

2022年1月26日

建築設計には、意匠設計、構造設計、設備設計があります。
意匠設計は、建物などのデザインを担当し、建築設計の中でも花形的な存在であり、構造設計や設備設計と調整を繰り返しながら、基本設計から詳細設計へと進めていく重要な役割を担います。
そこで今回は、意匠設計の概要や仕事内容、構造設計との違い、働く職場、役立つ資格について解説します。

 


 

意匠設計とは

意匠設計は、ビルなどの建築物や土木構造物である橋梁など、様々な構造物に対して美しいデザインを施し、構造力学などによる強度・耐力性なども加味された設計業務で、全ての建築物や土木構造物に対して求められます。
(例)
・公共建造物:市庁舎、美術館・博物館、学校、駅舎、橋梁、水門
・民間建造物:事務所ビル、マンション、百貨店、モール商店街、戸建て住宅

 

意匠設計の仕事内容

意匠設計の仕事内容には、主に基本設計詳細設計があります。

基本設計

基本設計は、発注者となる施主の建築依頼を受け、希望する建築物などを建てるために建築物のデザインや間取り、構造、設備、仕様、建築予算などのヒアリングを行うところから始めます。
(例)
・施主の建築物に対する要望を満たしているか?
・施主の建築予算以内に建築物を完成させることができるか?
・計画する建築物に対して、建築基準法などの法規を全てクリアできるか?

そして、敷地条件や周辺環境から建物配置を決め、外観・階数・高さ・面積・内観・間取りなどの大枠の設計を行います。
(例)住宅設計の場合
施主の家族構成やライフスタイル、ライフプラン、建築予算などをヒアリングし、最適な動線や間取りを計画・提案

 

詳細設計

詳細設計は、基本設計において作成した計画書や設計図書、建築予算に対して施主が合意した場合、建築設計契約を締結した後にかかる設計となり、詳細設計の作業時間は基本設計の作業時間よりも長くなります。
以下において全て決定し図面に記載します。

  • 主要構造部(屋根・柱・壁・梁・基礎・階段)の構造や寸法・強度
  • 屋根・外壁の仕様や強度
  • 部屋の大きさや配置、天井・壁・床材の仕様
  • ドアやサッシの位置や大きさ、仕様
  • 水回りの位置や仕様、容量
  • 空調設備や上下水道設備の仕様・配置
  • コンセントやスイッチの位置や高さ

また、建築・設備・インテリアなどに関する収まりや寸法・仕様なども把握している必要があります。

 

構造設計・設備設計

建築設計には意匠設計の他に、構造設計設備設計があります。

構造設計

構造設計の仕事内容は、以下の通りです。

  • 建築物の主要構造部(屋根・柱・壁・梁・基礎・階段)などの構造解析
  • 構造設計図の作成
  • 建築物の構造や安全性能に関する業務(設計監理や耐震設計、補強設計など)
  • 意匠設計から挙がるデザインや間取りの確認・フィードバック・調整
  • 設備設計から挙がる様々な設備・器具などの荷重や上下水道・ダクトなどの配管調整

 

設備設計

設備設計の仕事内容は、主に上下水道や空調、音響などの環境計画です。上下水道設備や空調設備、衛生設備、電気設備などの設計を行い、機械の配置や配管の位置などを、意匠設計、構造設計と調整しながら仕事を進めます。

 

意匠設計・構造設計・設備設計の関係性

これまで、意匠設計→構造設計→設備設計という一方通行の業務体制が主流でした。しかし、構造技術の発展・高度化により複雑なデザインを有する建築物が多くなっているため、最近では意匠設計の初期段階から構造設計者も加わり、意匠と構造が両立する設計を実施しています。
また、BIM(Building Information Management)の発展・普及により、設備設計担当者も意匠設計・構造設計の段階からオンライン上にて設計内容を閲覧することが可能となっています。
したがって、相互にフィードバックしながら、設計初期段階で構造や設備の問題点を解消し、業務を進めることが可能な設計環境になりつつあるのです。

 

意匠設計者が働く職場

意匠設計者が働く職場としては、主にハウスメーカーやゼネコン、設計事務所などがあります。職場により、扱う建築物の用途や規模に違いがあります。

ハウスメーカー

主なハウスメーカーとして、ダイワハウスや積水ハウス、セキスイハイム、一条工務店などがあります。
戸建て住宅からアパート・マンションなどの共同住宅を扱うことが多く間取りやデザインなどをモデル化している商品が多いため、意匠の独創性という点では発揮しにくい職場環境と言えるでしょう。
設計者は、多数の施主を抱えるケースが多くなり、同時並行で仕事をこなす能力が必要になります。
また、ZEH化が標準となったため、エネルギーやITテクノロジーの知識も必須です。

 

ゼネコン

建設会社においても設計業務を受注し、建設まで一気通貫で業務をこなすケースがあります。また、大手建設会社になると、自らがオフィスビルや商業施設に出資し、オーナーになるケースもあります。
設計部署では、様々な建築物を設計から建設まで担当する機会が多くなりますので、施工技術もある程度身に着けることができる点は強みと言えるでしょう。

 

設計事務所

100人~1,000人を有する大手設計事務所になると、官公庁舎や博物館、美術館、学校、オフィスビル、タワーマンションなどの大規模建築物を扱うことが多いため、意匠の独創性という点では発揮しやすい職場環境と言えるでしょう。
建築知識以外にも、建築物が必要とする専門的な知識も習得する必要があります。

  • 博物館・美術館であれば展示方法の技術やノウハウ
  • コンサートホールであれば、音響技術
  • 研究所であれば、各専門分野の基礎知識 など

また、今後はVR、AR技術の浸透や高度なセキュリティ技術の導入など、ITテクノロジーの導入は必須となるため、IT知識も必要となるでしょう。

 

意匠設計に役立つ資格

意匠設計に役立つ資格のひとつとして、建築士を挙げます。
建築士は、建築士試験に合格し、国家資格を取得した人だけが名乗れる職業です。建築士を取得した場合、建築物の設計・工事監理などに従事できることが「建築士法」で規定されています。

第1条(目的)
この法律は、建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定めて、その業務の適正をはかり、もつて建築物の質の向上に寄与させることを目的とする。


第2条(定義)
この法律で「建築士」とは、一級建築士、二級建築士及び木造建築士をいう。

  1. この法律で「一級建築士」とは、国土交通大臣の免許を受け、一級建築士の名称を用いて、建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう。
  2. この法律で「二級建築士」とは、都道府県知事の免許を受け、二級建築士の名称を用いて、建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう。
  3. この法律で「木造建築士」とは、都道府県知事の免許を受け、木造建築士の名称を用いて、木造の建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう。

※参考元:「建築士法」e-GOV 法令検索

 
● 一級建築士
一級建築士は、全ての建築物の設計・工事監理などが可能です。

 
● 二級建築士
二級建築士は、延べ面積300㎡以下、高さ13mかつ軒高9m以下の建築物の設計・工事監理などが可能です。

 
● 木造建築士
木造建築士は、延べ面積300㎡以下、2階建て以下の木造建築物の設計・工事監理などが可能です。

 

一級建築士、二級建築士、木造建築士の業務範囲を下表にまとめます。

延床面積S(㎡) 木造 木造以外 全ての構造
高さ≦13mかつ軒高≦9m 高さ≦13mかつ軒高≦9m 高さ>13m又は軒高>9m
階数1 階数2 階数3以上 階数2以下 階数3以上
S≦30 A C A
30<S≦100
100<S≦300 B
300<S≦500 D
500<S≦1,000 一般
特定
1,000<S 一般 C
特定

※参考元:「建築士の種類と業務範囲」公益財団法人建築技術教育普及センター

 
A:誰でもできる
B:一級建築士、二級建築士、木造建築士でなければできない
C:一級建築士、二級建築士でなければできない
D:一級建築士でなければできない


*:特定とは、学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、オーディトリアムを有する集会場、百貨店をいう。

 

まとめ

以上、意匠設計の概要や仕事内容、構造設計との違い、働く職場、役立つ資格について解説しました。
意匠設計は、建築物全体を計画・設計し、全体をまとめる役割を担います。そのためには、施主の希望を反映させる必要がありますし、予算管理も必要になります。
また、構造設計や設備設計との調整も欠かせません。それだけに、建築物が完成した際には、大きなやりがいを感じることができる仕事と言えるでしょう。
意匠設計を検討されている方は、スキルアップ・キャリアアップを目指して挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

 


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