一級建築士とは?仕事内容や資格、年収について解説
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一級建築士とは?仕事内容や資格、年収について解説

2022年2月28日

建築物の計画から竣工までの設計業務を担当する建築士の中でも、「一級建築士」は建築設計の資格の中で最高クラスに位置します。
今回は、一級建築士の仕事内容や資格について解説します。一級建築士を目指している方や将来設計士になりたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

 


 

一級建築士の仕事内容は?

一級建築士の主な仕事は「設計業務」「監理業務」です。建築物の計画から竣工までの長期間携わることが多く、仕事内容は工事が始まる前の「設計」と、工事中の「監理」のフェーズに分かれています。そこで2つの業務の内容を解説します。

設計業務

設計業務の主な仕事は下記の通りです。

  • 建築物のコンセプト考案
  • デザイン考案
  • 図面作成
  • クライアント打ち合わせ
  • 各種手続き
  • 工事会社選定・見積もり精査など

 
建物の基本コンセプトや建物の構造検証、仕上げのマテリアル検討など、設計に関するすべての業務を行います。建築士が行う業務の中で最も稼働時間が長い業務内容になります。
設計には「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3種類があり、建築物の構想にはこれらすべての設計が必要です。
また、クライアントの想いをヒアリングし、それをコンセプトとして落とし込む作業や、設計上問題がないかどうか確認する「建築確認申請」などの手続きも仕事のひとつです。
依頼内容によっては工事会社の選定や工事見積もりの精査なども発生します。

 

監理業務

監理業務の主な仕事は下記の通りです。

  • 工事業者との打ち合わせ
  • 別途工事業者との打ち合わせ
  • 現地調査
  • 中間検査・引き渡し検査
  • 竣工図面の取りまとめ

 
監理業務では、工事の準備から竣工までの期間の工程を監理します。現地調査を通じてわかった不具合などに対して、解決策を考えます。中間検査や引き渡し検査では、図面通りに仕上がっているかどうかを確認し、必要に応じて是正指示を行います。
また、別途工事業者との打ち合わせを行い、プランを調整することもあるでしょう。
この監理業務は、計画を実行に移す重要な期間に発生する業務になります。工事関係者と密に連絡をとり、できる限り調整を行いましょう。

 

二級建築士、木造建築士との違いとは?

建築設計の国家資格として有名な「一級建築士」ですが、他にも「二級建築士」や「木造建築士」という資格もあります。
そこで以下では、これらの資格と「一級建築士」との違いについて解説します。

二級建築士との違い

二級建築士は、一級建築士よりも設計できる範囲が限られています。
二級建築士が設計できる建築物は、主に戸建住宅などの小規模な建造物のみです。規定には「鉄筋コンクリート造・もしくは鉄骨造であり、延べ床面積が30㎡〜1000㎡の建物。高さが13mもしくは軒の高さが9mを越えない建物」と定められており、家屋や住宅がメインになります。
商業施設などの高層ビルは設計できないため、その場合は一級建築士が設計を担当します。

 

木造建築士との違い

木造建築士も同じく、一級建築士よりも設計できる範囲に限りがあります。
木造建築士が設計できる建築物は、主に住宅や小規模の木造建築物です。規定には「階数が2階建て以下かつ延べ床面積300㎡以下」と定められており、寺社仏閣などの大規模な改修に携わるためには一級建築士の資格が必要です。
ただし上記の規定内の木造建築物であれば、携わることができます。

 

一級建築士の勤務先・転職先や年収

一級建築士の資格を取得すると、様々な職種に転職ができます。そこで以下では、一級建築士の勤務先や年収について紹介します。

一級建築士の勤務先・転職先

一級建築士の資格を取得した方の多くは、以下のような職場に勤めています。

  • 総合建築事務所
  • アトリエ系の設計事務所
  • ゼネコン
  • デベロッパー
  • 官公庁や一般企業の施設管理部など

 
一級建築士になると、様々な業界でスキルを発揮できます。多くの方は総合建築事務所やゼネコンのように、設計を総合的に行う企業へ就職します。その一方で、意匠に特化したアトリエ系の事務所や、独立して活動する方も多いです。
また、設計に関する専門知識を活かし、管理に携わる方もいます。デベロッパーや官公庁・一般企業の施設管理部では、設計に関する知識が役立ちます。
このように、就職先の幅が広いので、ご自身の希望する業界に挑戦しましょう。

 

一級建築士の年収

一級建築士の年収は、就職・転職する企業によって大きく異なります。なお、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」にて、1級建築士の年収は600万前後と言われています。
建設業界の中でも一級建築士は重宝される存在なので、資格を取得することで年収アップも期待できるでしょう。

参考:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10701000-Daijinkanboutoukeijouhoubu-Kikakuka/shiryo2-9.pdf

 

一級建築士の試験内容や受験資格、難易度について

続いて、一級建築士の試験内容や受験資格、難易度について解説します。

試験内容

一級建築士の試験には「学科試験」「設計製図試験」があります。
学科試験は四肢択一式で、下記の出題科目があります。

  • 学科I(計画):20問
  • 学科II(環境・設備):20問
  • 学科III(法規):30問
  • 学科IV(構造):30問
  • 学科V(施工):25問

 
設計製図試験では、事前に公表する1つの課題に関して設計製図を行います。

試験時間は学科試験・設計製図試験ともに長く、それぞれ半日がかりで行います。出題難易度が高いので、あらかじめ対策を行いましょう。

参考:https://www.jaeic.or.jp/shiken/1k/question_subjects.html

 

受験資格

一級建築士の受験資格は以下の通りです。

大学、短期大学、高等専門学校
  • 入学年が平成21年度以降:指定科目を修めて卒業した者
  • 入学年が平成20年度以前:建築または土木の課程を修めて卒業した者
上記以外
  • 二級建築士の資格保有者
  • 国土交通大臣が、上記の二者と同等以上の知識及び技能を有すると認める者
  • 建築設備士の資格保有者

 
令和2年より受験資格が大幅に変更されました。実務経験がなくても受験可能になったため、従来よりも挑戦しやすくなったと言えるでしょう。
ただし、免許登録の際には実務経験が必要ですので注意が必要です。

 

難易度

一級建築士は難易度の高い試験です。合格率は学科試験で20%前後、製図試験で40%程度とされています。その他の設計資格よりも合格率が低いので、事前対策を行った上で受験することをオススメします。

参考:https://www.jaeic.or.jp/shiken/1k/1k-data.html

 

一級建築士の資格取得のメリットとは?

最後に、一級建築士の資格を取得すると得られるメリットについて解説します。

✓ 幅広い設計業務に携われる

一つ目は「幅広い設計業務に携われる」ことです。二級建築士や木造建築士の場合、設計できる構造物に制限がありますが、一級建築士の場合はこれらの制限がありません。そのため、商業ビルや住宅など幅広い設計業務への従事が可能です。
大規模物件の設計に挑戦したい方は、取得すべき資格のひとつと言えるでしょう。

 

✓ 周囲とのコミュニケーションが円滑になる

二つ目は「周囲とのコミュニケーションが円滑になる」ことです。一級建築士は、設計に関する幅広い知識を持つエキスパートと言えます。そのため、クライアントや協力会社とのコミュニケーションがスムーズになり、プロジェクトを円滑に進めやすくなります。
設計業務は知識が重要なので、有資格者になると頼りになる存在として重宝されるでしょう。

 

✓ 転職が有利になる

三つ目は「転職が有利になる」ことです。本記事でも紹介した通り、一級建築士は様々な職種・分野で活躍しています。
また、難易度の高い資格なので、一級建築士の資格を取得すると転職時の条件交渉が有利になるでしょう。

 

まとめ

一級建築士の資格を取得すると、幅広いジャンルの設計業務に携われます。だからこそ、設計スキルの向上や転職を検討されている方はぜひ挑戦してみることをオススメします。
ただし、一級建築士の試験を受けるためには「実務経験」が必要です。経験年数が足りない方は、まず設計事務所に転職をして、実際に手を動かすところから始めましょう。

 

 


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