2022年3月14日
建設業は、社会資本の創出や、近年増加している災害対策を行うことにより、安心安全なまちづくりを行い、地域経済を支える役割を担っています。安全で住みやすいまちづくりを行うために、建設業は国民生活にとって無くてはならない産業です。
そこで今回は、建設業の概要や役割、抱える課題と対策などについて解説します。
建設業には様々な仕事があり、より魅力的な雇用環境をつくるために様々な対策が施されていることがわかります。
建設業は、人々が生活するために必要なものや、便利な暮らしを可能にする産業です。いわゆる社会インフラといわれる建設物の構築です。
その具体的な対象としては、主に以下の通りです。
建設業は大きく分類すると、建築と土木の2業種となります。
建設業の役割には、社会資本の創出や災害対策、地域経済の発展などがあります。
建設業は、道路や上下水道、河川、海岸、港湾、鉄道、空港などの社会資本の創出を行います。また、住宅や商業施設、オフィスビル、病院、学校などの身近な施設を整備し、便利で快適な空間も創出します。
建設業は、地震・火災・台風・洪水・高潮・津波などの災害に対して対策を施し、安心安全なまちづくりを行います。また、被災した場合、速やかに復旧工事を行い、日常生活を取り戻せるようにします。
建設業は、特に地方においては主力産業となります。地域の雇用を確保し、地域の経済発展に貢献します。
建設業では、多くの専門的な技術者や職人などの技能者が、お互いに協力・連携して仕事を進捗させます。その中から代表的な仕事を挙げます。
施工管理は、建設現場において主に以下の業務を遂行します。
施工管理が担当する建設工事の種類や規模は、所属する建設会社により異なります。
建設工事は天候や交通事情なども関わってくるため、天気予報が狂い、道路渋滞などが発生すると、工事を中断させるなど予想外のトラブルが生じます。
毎日状況が変化するため、臨機応変に対応し、工期や品質を守る必要があります。そのためにも、職人などの作業員や地域住民とのコミュニケーションは欠かせず、協力体制を構築することが重要な仕事となります。
設計は、公共機関や民間の発注者からの要望に基づき、建築物の利用者などに配慮しながら法的な規制を満たしつつ図面作成を行う仕事です。自身のデザイン性や構造力学などの技術力を反映させるだけでなく、発注者の満足感を得ることが設計の仕事の醍醐味となります。
CADオペレーターは、意匠設計者が作成したデザインなどの素案を基にして、CAD(コンピュータ設計支援システム)を利用し図面化する仕事です。
積算は、設計が作成した設計図書や発注者からの要望事項(仕様書など)などに基づき、主に以下を算出する仕事です。
発注者が要望する品質と工期を満たすことと、企業の利益を確保するための最適な予算を算出します。
大工は、木材の加工・組立てを行い、発注者の要望を反映させる仕事です。建設現場での作業は組立てが中心となり、加工は工場で製作する形式が一般的となります。
ただし、現場での組立て工事は、気温や湿度などで木材が微妙に変化する癖を見抜き調整しながらきちんと納まるように組立てる必要がありますので、大工の腕の見せ所となります。
とびは、建設現場において足場や鉄骨、重機を設置することで、他の職人が現場に入ることができるようにする仕事を担うため、高所での作業が多くなります。したがって、建設現場に最初に入り、工事期間中は他の職人の作業を援助し、工事の最後に全てを取り除いて完成を見守る立場になります。
建設現場では、「とびに始まり、とびに終わる」といわれます。
とびにも様々な仕事があり、足場とびや鉄骨とび・橋梁とび、重量とびなど、用途に応じて仕事をこなします。
コンクリート工は、コンクリートをあらかじめ作成された型枠に流し込み、隙間なく十分にコンクリートが行きわたるようにし、養生期間を確保して十分に締固め、必要な強度を確保する仕事です。
コンクリート構造物は、50年~100年に亘り維持することができるため、コンクリート工は社会インフラ構築に無くてはならない仕事と言えるでしょう。
舗装工は、道路の表面部分を強化するために、アスファルトや砕石、砂利など数層にわたって舗装工事を行い、騒音や粉塵の散乱を軽減して安全な道路交通網を維持する仕事です。
一般道路や高速道路など、仕事は全国津々浦々に及びます。舗装工事に伴う様々な工事車両(アスファルトフィニッシャーなど)を駆使しながら、作業員と連携して工事を進捗させる必要があります。
鉄筋工は、コンクリート構造物において構造物の骨格となる柱や床、梁、基礎、屋根、階段部分を鉄筋で組立てる仕事です。
鉄筋径が36mmにもなると、鉄筋1本の重量が100kg前後になることもあります。重労働となるため、身のこなしの良い人が向いている仕事といえます。
左官工は、構造物の仕上げの段階で、主に外壁や内壁などを土・水などを主材料にして塗り、吸放湿性や耐火性などの機能を付加する仕事です。
重機オペレーターは、建設重機・建機を操作し、土砂の掘削やコンクリート打設、鉄骨の組立て、工事現場での資材の水平・垂直移動などを行う仕事です。
建設業が抱える課題とその対策法について解説します。
建設業が抱える課題としては、建設労働者の減少や高齢化などがあります。
建設投資額が平成22年度に底を打つ前後の低迷期において、建設業界の業者数・労働者数ともに減少しました。また、その後の回復基調では、業者数・労働者数ともにさほど回復していないのが現状です。
上表によると、平成9年には約455万人の技能労働者が在籍していたものの、平成22年には331万人まで減少しており、その後もわずかしか増加していないことが分かります。
現在の技能労働者約340万人の中で、60歳以上の層が最も大きな割合を占めており、55歳以上の割合が約34%、29歳以下の割合は約11%となっています。
今後10年間に技能労働者は約110万人減少する見通しとなっており、新規の参入者数の増加はさほど見込めない状況です。
課題への対策として国土交通省が「i-Construction」というプロジェクトを進めています。
そこでは、2つの施策を打ち出しています。
一つ目は、「社会のベース」、「産業別」、「未来型」の3つの分野の生産性向上に取り組み、日本の経済の持続的で力強い成長に貢献することです。
二つ目は、「i-Construction」により、調査・測量・設計・施行・維持管理・更新のあらゆるプロセスにICTを取り入れることで、生産性を大幅に向上することです。
建設業の許可を取得するには、建設業法第7条に規定する4項目の許可要件に該当し、同時に建設業法第8条に規定する欠格要件に該当しないことが必要です。
建設業法 | 要件の内容 | |
---|---|---|
要件1:第7条第1号 | 許可要件 | 経営業務の管理責任者としての経験を有する者が必要 |
要件2:第7条第2号 | 専任技術者の設置 | |
要件3:第7条第3号 | 誠実性 | |
要件4:第7条第4号 | 財産的基礎もしくは金銭的信用 | |
要件5:第8条 | 欠格要件 | 欠格要件に該当しないこと |
※参考元:「許可の要件」国土交通省
ここでは、建設業法第7条に規定する許可要件4項目について解説します。
建設業の経営業務について、一定期間の経験を有する者が最低でも1人は必要であると規定されています。具体的には以下のいずれかに該当する必要があります。
要件 | 詳細 |
---|---|
|
- |
|
|
|
|
営業所ごとに一定の資格もしくは経験を有する者の設置が必要です。また、一般建設業か特定建設業かによっても、必要な資格などが異なります。
下表のいずれかに該当する者が専任技術者になることができます。
要件 | 資格・免許 |
---|---|
|
二級建築士、2級建築施工管理技士、2級土木施工管理技士 など |
|
- |
|
- |
下表のいずれかに該当する者が専任技術者になることができます。
要件 | 資格・免許 |
---|---|
|
一級建築士、1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士 など |
|
- |
|
- |
建設業許可を受けようとする法人、役員、個人事業主、建設業法施行令第3条の使用人などが、請負契約において不正もしくは不誠実な行為をする恐れがないことです。
建設業許可を受けようとする法人、もしくは個人事業主が、請負契約を行うに足りる財産的基礎もしくは金銭的信用を有することです。これも一般建設業と特定建設業とで異なります。
一般建設業 | 特定建設業 |
---|---|
|
|
建設業の概要や役割、主な仕事、抱える課題と対策、建設業の許可要件について解説しました。
建設業は、労働者人口の減少や高齢化など、いくつかの課題を抱えています。しかし、国土交通省による「i-Construction」が起点となり、多くの業務改善を行い、効率化や生産性の向上を図っています。
また、建設業界はDX化の推進により雇用環境も改善傾向にありますので、今後も大きな需要が見込める産業であると言えるでしょう。