改修工事とは?改修と混同される用語や改修工事のメリットについて解説
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改修工事とは?改修と混同される用語や改修工事のメリットについて解説

2022年3月16日

建築物は、新築と同時に経年劣化が始まり、築10年前後になると劣化・損傷が表面化し、修繕や改修が必要になります。しかし、適切な時期に適切な改修工事を行うと居住性や安全性などが向上し、資産価値が向上します。
この記事では、改修工事の概要や種類、混同される用語との違い、具体例について解説します。
改修工事を定期的に実施することが大きなメリットであるということが理解できますので、ぜひ最後までご覧ください。

 


 

改修工事とは?

改修工事とは、例えばマンションの場合、現時点での居住水準や生活水準に見合うように、住戸内の間取りや内装・給排水管などの変更により住宅性能をグレードアップすることをいいます。
建物に求められる居住環境・執務環境・性能・機能は、以下などにより年々高まっています。

  • 住まい方の変化
  • 働き方の変化
  • 設備機器の進歩

 
特に、最近の新築マンションの性能や居住性は著しく向上していますが、一方で築年数の長いマンションは性能や居住性での陳腐化が進行し、資産価値が低下することになります。
また、築年数の長いマンションの質や価値を長持ちさせるためには、性能を回復させるための修繕工事や、現時点での居住水準・生活水準に見合うように居住性能をグレードアップし、住みやすいマンションに進化させるための改良工事が必要です。

改修工事に対する国土交通省の考え方

国土交通省がマンションの大規模修繕工事において、修繕工事や改良工事、改修工事の考え方について触れています。

工事の種類 内容
修繕工事
(リフォーム)
建物各部の性能・機能を新築時の状態に維持・回復を図る工事
改良工事
(グレードアップ)
建物各部の性能・機能を新築時の状態よりもグレードアップする工事
建物を構成する設備や材料を新規格のものに取替え、新たな性能・機能を付加する など
改修工事
(リノベーション)
修繕工事や改良工事により、社会や時代の変化により向上する住環境に合わせて、新築時の状態よりも建物の性能・機能をより高いものに改善する工事

※参考元:「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」国土交通省住宅局

 
つまり、以下のスタンスを採っています。
改修工事(リノベーション)=修繕工事(リフォーム)+改良工事(グレードアップ)

 
改修工事を定期的(築12年、築24年、築36年)に実施することで、建物の老朽化防止・陳腐化防止ができます。
大規模修繕工事において修繕工事だけを行うと新築時の状態を維持するだけとなり、建築後十数年経過した建物としては価値が相対的に下がります。
そのため、改良工事(グレードアップ)を含めた改修工事を行い、建物の価値を時間経過とともに相対的に持続させることが重要です。

※参考元:「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」国土交通省住宅局

 
上記の考え方が国土交通省から公表されて以降、修繕工事(リフォーム)ではなく、改修工事(リノベーション)まで実施するマンションが増加しました。
しかし、大規模修繕工事にかかる費用も増加傾向にあり、毎月徴収される修繕積立金では賄えなくなる傾向にあります。

 

改修工事のメリット

改修工事を行うメリットは、主に以下の通りです。

  • 建物が新築時以上の耐久性を持ち、居住者が安心安全に暮らすことが可能
  • 建物内にバリアフリー機能の付加や宅配ロッカーの設置など利便性が向上
  • 建物を新装し最新の設備・器具に交換することにより、資産価値を維持もしくはアップ可能
  • 賃貸マンションの場合、入居者募集が容易になり空室率の低減に貢献

 

改修工事の種類

改修工事は、以下の3種類に分類されます。

  • 屋根・外壁修繕・防水工事
  • 塗装工事
  • その他工事

 
それぞれ解説していきます。

屋根・外壁修繕・防水工事

屋根・外壁修繕・防水工事は、建物外壁の劣化・損傷個所を修繕する工事です。建物の屋根・外壁は、長期間にわたり雨風にさらされ劣化・損傷が進行し、塗装やタイルが剥がれ落ちやすい状況になります。
万が一剥がれた場合は以下などの可能性があり、居住性・安全性を脅かす事態となります。

  • 屋根の場合:最上階の住戸において雨漏りの発生
  • 外壁の場合:その下を通る通行人や自動車などに直撃

 
対策としては、水の侵入を防ぐ防水工事によるメンテナンスが重要になります。
主な防水工事として、以下などがあります。

  • 浸透性塗膜防水工事
  • 透明外壁防水材加工工事
  • 屋上防水工事

 

塗装工事(塗床工事)

ベランダや共用廊下、階段などの共用部分においても、長期間にわたり雨風にさらされる個所については劣化・損傷が進行し、傷みが大きくなります。
そこで、劣化スピードを緩やかにするために、塗装工事(塗床工事)を施します。定期的に塗装工事を行うことにより、耐水性・耐久性を維持することが可能となり、建物の実質耐用年数を延ばすことに繋がります。

 

その他工事

その他の工事としては、主に設備工事となります。

設備工事の種類 設備工事の内容
給水設備改修工事 屋内・屋外共用給水管、住戸内専用給水管の更生・取替工事、給水装置・給水施設(受水槽)のオーバーホール・劣化・損傷個所の修繕・取替工事
排水工事改修工事 屋内・屋外雑排水設備、汚水設備、雨水排水設備、屋外桝管路の劣化・損傷個所の修繕・取替工事
ガス・空調・換気設備改修工事 ガス管(屋内・屋外共用、住戸内専有)やメーターの劣化・損傷個所の修繕・取替工事、空調設備の劣化・損傷個所の清掃・修繕・取替工事、換気口・換気扇・ダクト類の清掃・修繕・取替工事
消火設備改修工事 屋内消火栓、連結送水管設備の劣化・損傷個所の修繕・取替工事
エレベーター設備改修工事 エレベーターのロープ、モーター、巻上げ機、カゴ、扉、制御盤等の劣化・損傷個所の修繕・取替工事
機械式駐車場改修工事 機械式駐車場の駐車装置、制御盤、検知装置、操作盤、昇降装置、安全装置等の劣化・損傷個所の修繕・取替工事

 

改修と混同される用語とその違い

改めて、「改修」と混同されやすい用語について、その違いを下表にまとめました。

用語 内容
改修 修繕や改良により、社会や時代の変化により向上する住環境に合わせて、新築時の状態よりも建物の性能・機能をより高いものに改善する工事
改良 建物各部の性能・機能を新築時の状態よりもグレードアップする工事。建物を構成する設備や材料を新規格のものに取替え、新たな性能・機能を付加する工事
修繕 建物各部の性能・機能を新築時の状態に維持・回復を図る工事
改装 専有部分の間取りや床面積を変更せず、建物の外装や内装などを新たな装いに変更する工事
改築 建物の一部または全てを取り壊し、建築構造や規模、階数、用途、床面積を変更することなく、建替え・間取り変更を行う工事

 

改修工事の具体例を紹介

改修工事の具体例として、建物の耐震補強工事や間取り変更、住戸数の変更などがあります。

建物の耐震補強工事

旧耐震基準(1981年5月までに確認申請承認)で建築された建物は、震度6以上で倒壊・崩壊する可能性が高いため、その対策として柱や梁、床を補強する耐震補強工事が必要となります。

 

間取り変更

少子高齢化が進んでいる背景により、マンションでは部屋数を減らし部屋を大きくする傾向にあります。
なお、間取りの変更に伴い給排水管の配置変更も必要になります。
<例>
・4LDK→2LDKにする
・3LDK→1LDKにする

 

住戸数の変更

特に賃貸ワンルームマンションで見られる傾向ですが、入居率の向上を図るため、建物全体の住戸数を減らして市場のニーズに合った床面積を確保する住戸に変更するケースがあります。
<例>
・1K2戸→1LDK1戸

 

まとめ

改修工事の概要や種類、混同される用語との違い、具体例について解説しました。
国土交通省が公表する改修工事は以下の通りです。
改修工事(リノベーション)=修繕工事(リフォーム)+改良工事(グレードアップ)

時代のニーズに対して修繕工事のみではなく、改修工事まで行うことがポイントとなります。そうすることで、安心安全な居住性、利便性、資産価値の向上、高い入居率などのメリットが生まれます。
上記のメリットを維持し続けるためにも、定期的な改修工事が必要です。

 

 


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