大規模修繕工事とは?「改修」との違いや工事内容、主な流れについて解説
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大規模修繕工事とは?「改修」との違いや工事内容、主な流れについて解説

2022年4月8日

建物や設備は年月とともに様々な場所が劣化します。戸建てや小さなアパートの場合、定期的にメンテナンスを行うこともありますが、大きなマンションやビルの場合は工事範囲が広いため、頻繁に実施できません。その代わりビルやマンションでは「大規模修繕工事」を行い、建物の状態を保っています。そこで今回は「大規模修繕工事」をテーマに、工事内容や主な流れについて解説します。

 


 

大規模修繕工事とは?

大規模修繕工事とは、ビルやマンションの経年劣化にあわせて実施する、計画的な修繕工事です。
たとえば分譲マンションの場合、建物や設備の老朽化に備えて長期修繕計画を立てています。家賃とは別に「修繕積立金(管理費)」を支払うケースがほとんどですが、そのお金はこのような大規模修繕工事の積立金になっています。

大規模修繕工事の内容は多岐に渡りますが、工事期間が長期かつ高額であることが多く、主に足場を必要とする外壁塗装工事や外壁タイルの張り替え工事、他にも防水工事や給排水設備工事なども挙げられます。

「改修」「修繕」「補修」の違い

大規模修繕工事と混同してしまうのが「改修工事」や「補修工事」です。この3つの工事は内容が異なりますので、それぞれの特徴をおさえておきましょう。

● 改修

改修は、機能の維持・回復に加えて、建物自体をグレードアップさせる工事も含まれます。
たとえば共用スペースのエントランス部分を再デザインすることや、廊下の証明計画を変更することも改修工事になります。これは建物全体の機能・性能面をさらに進化させ、建物の価値を向上させることが目的です。とくに分譲マンションの場合、エントランスや共用スペースのデザイン性が高いと、建物全体の価値が向上します。
このように、機能・性能の向上を目的とする工事は「改修」にあたります。

● 修繕

修繕とは、経年劣化やその他の外的要因によって不具合が発生した場合に回復させる工事です。つまり修繕の目的は、問題部分の性能や機能を元通りに戻すことです。
建物自体をグレードアップさせる「改修」とは異なり、修繕は問題箇所を建設当初の水準にまで戻すために工事します。その中でも大規模修繕は費用と時間がかかるため、計画的に行われます。費用を事前に把握できるので、余裕をもった資金調達も可能です。

● 補修

補修とは、突発的に発生した問題箇所を修理する工事です。修繕工事とは異なり、小さな工事が多々あります。扉の破損やガラスのひび割れなどは補修工事に含まれます。

 

大規模修繕工事のメリット

大規模改修工事を行うメリットは、以下の3点です。

✓ 建物の老朽化を防ぐ

まず一つ目は「建物の老朽化を防ぐことができる」点です。建物はどんなに手入れをしても、年月とともに劣化していきます。その状態を放置していると建物は老朽化し、莫大な工事費用が必要となるでしょう。
だからこそ大切なのは、建物が老朽化する前にメンテナンスを行うことです。修繕工事を事前に計画しておくことで、老朽化を防ぐことができます。

✓ 住民や利用者の満足度を高めることができる

次に二つ目は「住民や利用者の満足度の向上」です。定期的にメンテナンスが行われる建物とそうでない建物の場合、どちらが満足できるかといえば一目瞭然です。やはり、修繕工事が計画的に行われる建物の方が安心して利用できます。
利用者の満足度を高めるためにも、大型マンションやビルは定期的に修繕工事を行う必要があります。

✓ 工事をまとめることで通常よりも費用が抑えられる

そして三つ目は「工事費用を抑えることができる」点です。工事をまとめると、職人さんの人件費や会社経費が抑えられるため、工事費用が抑えられます。マンションの修繕箇所は日を重ねるごとに増えていきます。緊急メンテナンスが必要な場合を除き、修繕箇所はまとめて依頼しましょう。

 

工事期間や費用

続いて大規模修繕工事の工事期間や費用について解説します。

【工事期間】

工事規模や内容によって変動しますが、計画から着工までに1〜2年ほど必要な場合が多く、工事着手後の期間の目安は3ヶ月〜半年ほどです。なお、住民の同意が必要なときはさらに時間を要する場合もあります。

【工事費用】

費用も工事規模や内容によって大きく変動しますが、小さなマンションでも100万円ほどはかかるでしょう。大規模マンションの場合は数千万円ほど必要な場合もあります。

 

大規模修繕工事の内容

大規模修繕工事の内容について、簡単に解説します。

仮設工事

工事に必要な資材・環境を準備します。 仮囲いや足場、養生、工事用電力・用水などを設置し、工事環境を整えます。

 

足場設置工事

外壁工事や天井工事など、高所作業を行う際の足場を設置します。住民や利用者に危険が及ばないように配慮した計画が必要です。

 

下地・タイル補修

破損したタイルなどの交換工事を行います。部分補修の場合はポイントで交換になりますが、全部張り替える際には解体工事も発生します。粉塵が飛ばないように注意が必要です。

 

シーリング打ち替え工事

外壁部分などにあるシーリングを打ち直します。とくに外部のシーリングは劣化して割れてしまっている箇所があるので、細かなチェックが必要です。

 

塗装工事(外壁・鉄部)

色褪せてしまった塗装を修繕する工事です。同じ塗料で塗り直すことが多いですが、コーティング材の塗布し汚れにくくする工事を行うこともあります。

 

大規模修繕工事の主な流れ

大規模修繕の主な流れは下記の通りです。

  • 修繕箇所のヒアリング
  • 現地調査
  • 見積もり・契約
  • 協力会社との現場打ち合わせ
  • 近隣挨拶
  • 工事準備(足場設置、養生など)
  • 工事
  • 引き渡し

 
通常の工事と異なるのは「近隣挨拶」があることです。マンションやオフィスビルなど、工事場所に人がいる場合は挨拶が必要です。お知らせをポスティングしたり、一軒ずつ訪問したりなど様々な方法があります。施主と相談して、適切な方法を選択しましょう。

 

大規模修繕工事での注意点

最後に、大規模修繕での注意点を解説します。

  • 近隣への配慮を怠らない
  • 騒音作業を行う日を事前に調整する
  • 粉塵対策を徹底する

 
上記で挙げた注意点はすべて、トラブルとして起こりやすいポイントです。とくに騒音作業や粉塵作業はクレームになりやすいため、作業する日程を施主側へ確認しましょう。
クレームが入ってしまうと、工事を中断させなければなりません。追加費用がかかる場合もあるので、慎重に計画しましょう。

 

まとめ

大規模修繕工事とは、経年劣化やその他の外的要因によって不具合が発生した場合に回復させる工事です。計画的に実施することで、費用を抑えながら建物の老朽化を防ぐことができます。建物の状態が良いと、住民や利用者の満足度は高まります。定期的に修繕工事を行い、建物の状態を保つことが大切です。

 


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