2022年4月28日
消防設備士は、地震・水害・火災などの災害による非常時や日常生活の平常時においても、防災を支えている仕事の一つです。
そこで今回は、消防設備士の概要や資格概要、資格取得のメリット、需要・将来性について解説します。消防設備士の仕事は消防法で規定された業務独占資格であり、その需要は益々拡大していくことがわかります。
消防設備士は、一定以上の規模を有する商業施設やホテル、劇場などの消防用設備や警備設備の点検整備・設置工事の独占業務に携わることができ、消防法で規定された国家資格です。
1965年の消防法改正により制定されました。
消防設備士の仕事内容は、資格区分により異なります。資格区分は、「甲種」6種類、「乙種」7種類に分かれています。
消防設備士が取り扱う消防用設備は以下のように多岐にわたり、取得する資格の種類によって取り扱える消防用設備は異なります。
消防設備士の資格を保有していると、主に以下などの企業に就職することができます。
消防法により規定されている消防用設備や特殊消防用設備などの工事・整備は、消防設備士の資格保持者しか取り扱えない業務です。そのため、消防設備の整備・点検業務や設置工事を行うには、消防設備士の資格が必須となるのです。
また、消防設備士は、資格取得後も定期講習を受講する必要があります。
消防設備士は人命に携わる業務であり、社会情勢や技術発展により消防法や消防設備が変化するため、
定期講習が義務付けされています。
消防設備士には、「乙種」とその上位資格である「甲種」の分類があります。
乙種は1類から7類、甲種は1類から5類と特類に分類されます。
区分 | 内容 |
---|---|
甲種 | 消防設備の点検・整備・設置・交換工事を行います。特類~5類まであります。 |
乙種 | 消防設備の点検・整備を行います。1類~7類まであります。 |
消防設備とは、病院・ホテル・事務所などの建物内の消防に関する設備、器材を指します。
消防設備は以下の通りに分類されています。
類別 | 消防用設備等 |
---|---|
特類 | 特殊消防用設備等 |
第1類 | 屋内消火栓設備、屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備 |
第2類 | 泡消火設備 |
第3類 | 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備 |
第4類 | 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備 |
第5類 | 金属製避難はしご、救助袋、緩降機 |
第6類 | 消火器 |
第7類 | 漏電火災警報器 |
※参考元:「消防設備士について」一般財団法人消防試験研究センター
上表に甲種・乙種で取り扱えるものを当てはめると、下表の通りです。
甲種 | 乙種 | 類別 | 消防用設備等 |
---|---|---|---|
〇 | - | 特類 | 特殊消防用設備等 |
〇 | 〇 | 第1類 | 屋内消火栓設備、屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備 |
〇 | 〇 | 第2類 | 泡消火設備 |
〇 | 〇 | 第3類 | 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備 |
〇 | 〇 | 第4類 | 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備 |
〇 | 〇 | 第5類 | 金属製避難はしご、救助袋、緩降機 |
- | 〇 | 第6類 | 消火器 |
- | 〇 | 第7類 | 漏電火災警報器 |
※参考元:「消防設備士について」一般財団法人消防試験研究センター
受験資格は、乙種と甲種で異なります。
乙種は受験資格がなく誰もが受けられますが、甲種は国家資格の取得、現場での実務経験、学歴といった制限があります。それらをまとめると、下表の通りです。
分類項目 | 内容 |
---|---|
資格実務経験 |
|
学歴 |
|
※参考元:「消防設備士について」一般財団法人消防試験研究センター
甲種と乙種の試験科目や問題数、試験形式を解説します。
甲種と乙種の試験科目と問題数を下表にまとめます。
種類 | 試験科目 | 類別 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
特類 | 1類 | 2類 | 3類 | 4類 | 5類 | 6類 | 7類 | |||
甲種 | 筆記 | 工事設備対象設備類の構造・機能・工事・設備 | 15 | - | - | |||||
火災及び防火 | 15 | |||||||||
消防関係法令 | 15 | 15 | ||||||||
基礎的知識 | - | 10 | ||||||||
消防用設備等の構造・機能・工事・整備 | 20 | |||||||||
計 | 45 | 45 | ||||||||
実技 | - | 7 | ||||||||
乙種 | 筆記 | 消防関係法令 | - | 10 | ||||||
基礎的知識 | 5 | |||||||||
構造・機能・整備 | 15 | |||||||||
計 | 30 | |||||||||
実技 | 5 |
※参考元:「消防設備士について」一般財団法人消防試験研究センター
試験形式を下表にまとめます。
マーク・カードを使う筆記試験 | 全種/四肢択一式 |
---|---|
実技試験 | 写真・イラスト・図面等による記述式 |
試験時間 | 甲種特類:2時間45分 甲種(特類以外):3時間15分 乙種:1時間45分 |
※参考元:「消防設備士について」一般財団法人消防試験研究センター
消防設備士の合格基準は、以下の通りです。
甲種と乙種の合格率の推移を下表にまとめます。
資格区分 | 受験年度 | |||
---|---|---|---|---|
令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | ||
甲種 | 特類 | 21.3% | 24.6% | 29.8% |
第1類 | 26.3% | 31.2% | 29.2% | |
第2類 | 36.2% | 33.6% | 36.4% | |
第3類 | 38.3% | 36.5% | 39.2% | |
第4類 | 33.6% | 38.0% | 38.7% | |
第5類 | 34.1% | 35.6% | 38.1% | |
乙種 | 第1類 | 26.3% | 29.9% | 35.0% |
第2類 | 37.3% | 40.1% | 32.6% | |
第3類 | 27.5% | 36.5% | 37.2% | |
第4類 | 33.0% | 37.2% | 35.8% | |
第5類 | 35.9% | 40.8% | 38.4% | |
第6類 | 38.3% | 42.5% | 39.8% | |
第7類 | 57.4% | 58.2% | 57.1% |
※参考元:「消防設備士について」一般財団法人消防試験研究センター
甲種の合格率は20%~40%、乙種の合格率は25%~60%となります。
受験の申請方法は、「書面申請」と「電子申請」があり、現住所・勤務地にかかわらず希望する都道府県において受験可能です。
受験する試験の種類ごとに必要な書類を揃えた上で、受付期間内に申請します。
申請手続きもしくは受験会場等の詳細は、一般財団法人消防試験研究センターの公式サイトで確認できます。
https://www.shoubo-shiken.or.jp/
下記の一般財団法人消防試験研究センターの公式サイトから申込みできます。
https://www.shoubo-shiken.or.jp/
消防設備士を取得するメリットは、主に以下の通りです。
大半の建築物が消防設備の定期的な点検やメンテナンスを規定しているため、消防設備士は資格を活かして活躍できる現場が多くなります。ただし、一般的な住宅は除外されます。
また、市町村長が指定する「延長50mを超えるアーケード」「総務省令で規定する船舶や車両」「山林」などの建築物以外の施設や設備、自然なども防火対象としています。
このように、消防設備士は多種多様な現場で仕事をすることができ、需要も高いのがメリットの一つです。
IT技術の著しい発展により、機械でできる仕事やAIで判断・識別できる仕事は徐々に増えてきています。人手による業務が無くなり、業界によっては既に消滅している場合も少なからずあるでしょう。
しかし消防設備士は、法律により規定された国家資格であり、安全・安心に直結する特殊な業務ということもあり、今後も無くなる可能性は低いといえます。
消防設備士の業務内容は独占業務となりますので、これからも需要が高くなり未経験者での採用も増えてくるでしょう。現場業務においても危険な作業が少ないので、女性の消防設備士を積極的に採用する会社もあります。
また、近年多くの災害や事故により、防災に関する意識が高まっています。それに伴い、消防設備士の需要は将来において益々拡大していくものと予想されます。
特に不特定多数の人が集まる公共施設においては、防火設備の作動や防火管理上の問題点の有無など、定期的な点検・確認の報告が義務付けられています。
これらの業務はすべて人命に関わりますので、特に正義感の強い性格の人が求められるでしょう。