2022年5月10日
技術士は、技術系資格の中で最高峰といわれる資格の一つです。試験の難易度は高く、技術士の資格を取得することにより、スキルアップ・キャリアアップ・年収アップを図ることができます。
そこで今回は、技術士の概要や資格概要、年収・就職先について解説します。建設分野における技術士に焦点を当てて解説していきますので、これから就職を考えている方は必見です。
技術士法に「技術士」と「技術士補」の定義が記載されていますので引用します。
※引用元:「技術士法」e-GOV 法令検索
技術士は、科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価またはこれらに関する指導の業務を担います。
また、技術士補は技術士となるのに必要な技能を習得するため、技術士の業務を補助する者を指します。
建設分野における技術士の仕事は、建設コンサルタントとして土木に関する計画、研究、設計、分析、試験、評価に関する指導となります。
主な仕事内容としては、公共事業(土木分野:河川・交通・上下水道・都市計画など)の以下などを担います。
技術士試験は一次試験と二次試験がありますが、技術士は両方に合格することで取得できます。
なお、技術士補は一次試験のみを合格することで取得できます。
一次試験は受験資格がなく誰でも受験できるため、一次試験に合格してから技術士補として実務経験を積み、技術士の資格を取ることが一般的です。
技術士の資格において、受験資格や試験概要、合格率について解説します。
技術士の受験資格では、国籍・年齢・学歴・職歴などは問われません。
一次試験の受験資格は実務経験も不要ですが、一次試験に合格したあと二次試験を受験するにあたり、実務経験年数が必要になりますので注意が必要です。
必要な実務経験年数は、以下の通りです。
上記期間の実務経験があれば、二次試験を受験することができます。実務経験には、大学院等の在学期間も2年を限度として参入することができます。
技術士試験の一次試験と二次試験についてそれぞれ解説していきます。
一次試験は、基礎科目、適正科目、専門科目の3科目に分かれています。試験方法は筆記形式で全科目択一式です。
試験科目 | 試験内容 | 解答時間 | 配点 |
---|---|---|---|
試験科目 | 科学技術全般に亘る基礎知識を問う問題
(4年制大学の自然科学系学部の専門教育課程修了程度) |
1時間 | 15点満点 |
適性科目 | 技術士法第4章の規定の遵守に関する適性を問う問題 | 1時間 | 15点満点 |
専門科目 | 当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識を問う問題 (4年制大学の自然科学系学部の専門教育課程修了程度) |
2時間 | 50点満点 |
※参考元:「技術士第一次試験実施大綱」公益社団法人日本技術士会
専門科目は、技術士の「総合技術監理部門」を除く20部門から1部門を選択します。
機械 | 船舶・海洋 | 航空・宇宙 | 電気電子 | 化学 |
繊維 | 金属 | 資源工学 | 建設 | 上下水道 |
衛生工学 | 農業 | 森林 | 水産 | 経営工学 |
情報工学 | 応用理学 | 生物工学 | 環境 | 原子力・放射線 |
二次試験は、筆記試験(必須科目、選択科目)と口頭試験があります。なお、口頭試験は筆記試験の合格者に対してのみ行われます。
【総合技術監理部門を除く技術部門】
筆記試験内容と口頭試験内容を下表にまとめます。
<筆記試験科目>
試験科目 | 試験内容 | 解答時間 | 配点 |
---|---|---|---|
必須科目 | 「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの | 2時間 | 40点満点 |
選択科目 | 「選択科目」についての専門知識及び応用能力に関するもの | 3時間30分 | 30点満点 |
「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの | 30点満点 |
<口頭試験科目>
試問事項 | 試問時間 | 配点 | |
---|---|---|---|
技術士としての実務能力 | コミュニケーション、リーダーシップ | 20分 | 30点満点 |
評価、マネジメント | 30点満点 | ||
技術士としての適格性 | 技術者倫理 | 20点満点 | |
継続研鑽 | 20点満点 |
※参考元:「技術士第二次試験実施大綱」公益社団法人日本技術士会
【総合技術監理部門】
筆記試験内容と口頭試験内容を下表にまとめます。
<筆記試験科目>
試験科目 | 試験内容 | 解答時間 | 配点 | |
---|---|---|---|---|
必須科目 | 「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力 | 択一式 | 2時間 | 50点満点 |
記述式 | 3時間30分 | 50点満点 | ||
選択科目 | 他の20の技術部門の必須科目及び対応する選択科目のうちあらかじめ選択する1科目 | |||
選択した「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの | 2時間 | 40点満点 | ||
選択した技術部門に対応する「選択科目」についての専門知識及び応用能力に関するもの | 3時間30分 | 30点満点 | ||
選択した技術部門に対応する「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの | 30点満点 |
<口頭試験科目>
試問事項 | 解答時間 | 配点 | ||
---|---|---|---|---|
必須科目に対応 | 必要な専門知識 及び応用能力 |
経歴及び応用能力 | 20分 | 60点満点 |
体系的専門知識 | 40点満点 | |||
選択科目に対応 | 技術士としての 実務能力 |
コミュニケーション、リーダーシップ | 20分 | 30点満点 |
評価、マネジメント | 30点満点 | |||
技術士としての 適格性 |
技術者倫理 | 20点満点 | ||
継続研鑽 | 20点満点 |
※参考元:「技術士第二次試験実施大綱」公益社団法人日本技術士会
一次試験と二次試験の合格率の推移を見てみます。
直近5年間の一次試験の受験者数、合格者数、合格率の推移を下表にまとめます。
試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成28年度 | 17,561人 | 8,600人 | 49.0% |
平成29年度 | 17,739人 | 8,658人 | 48.8% |
平成30年度 | 16,676人 | 6,302人 | 37.8% |
令和元年度 | 13,266人 | 6,819人 | 51.4% |
令和2年度 | 14,594人 | 6,380人 | 43.7% |
※参考元:「技術士第一次試験 統計情報」公益社団法人日本技術士会
直近5年間の平均合格率は46.1%です。
直近5年間の二次試験の受験者数、合格者数、合格率の推移を下表にまとめます。
試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成28年度 | 25,032人 | 3,648人 | 14.6% |
平成29年度 | 26,253人 | 3,501人 | 13.3% |
平成30年度 | 25,914人 | 2,355人 | 9.1% |
令和元年度 | 24,326人 | 2,819人 | 11.6% |
令和2年度 | 20,365人 | 2,415人 | 11.9% |
※参考元:「技術士第二次試験 統計情報」公益社団法人日本技術士会
直近5年間の平均合格率は12.1%です。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、技術士の平均年収は男性で約630万円、女性で約540万円となっています。
また、建設分野における技術士の主な就職先は、建設コンサルタント会社や建設会社、官公庁となります。
※参考元:「賃金構造基本統計調査」厚生労働省
国内の主な建設コンサルタント会社5社を下表にまとめます。
建設コンサルタント会社名 | 売上高 | 従業員数 | 平均年収 |
---|---|---|---|
日本工営株式会社 | 1,126億400万円 | 5,702人 | 715.5万円 |
株式会社建設技術研究所 | 626億4,900万円 | 3,012人 | 842万円 |
株式会社オリエンタルコンサルタンツ | 628億8,092万円 | 2,981人 | 716万円 |
応用地質株式会社 | 538億8,300万円 | 2,235人 | 656万円 |
株式会社長大 | 309億5,400万円 | 1,530人 | 800万円 |
技術士の概要や資格概要、年収・就職先について解説しました。技術士の資格を保有していると、経営事項審査(経審)において5点の評価が加算されますので、会社にとっても公共事業を受注する上では、技術士は無くてはならない貴重な存在と言えます。また、技術士の資格を取得することで年収アップ・スキルアップ・キャリアアップも十分図ることができますので、ぜひ挑戦してみてください。