2022年5月19日
道路の舗装工事は全国で行われていますが、そのおかげで流通が隅々まで行きわたり、私たちの日常生活を支えています。今回は、舗装工事の概要や工事の目的、舗装の構造と役割、工事の手順、設計の重要性について解説します。長期間にわたり道路としての機能を果たすために、綿密な設計や工事が行われていることがわかりますのでぜひ最後までご覧ください。
舗装工事は、道路の地盤面下を数層にわたって締固めて自動車荷重などに対する耐力を維持し、表面はアスファルトやコンクリートを敷き固め、人や自動車が安全・スムーズに通行可能とする工事です。
道路下に上下水道管やガス管などを設置するだけでなく、街並みの景観を美しく保つことも求められます。
また、自動車荷重以外にも直射日光や雨、雪などにさらされるため、劣化損傷しにくい耐久性能も求められます。
舗装工事は主に以下などで行われます。
舗装工事の種類には、「アスファルト舗装」「コンクリート舗装」「特殊舗装」の3種類があります。
アスファルト舗装は、アスファルトに砕石・砂などの骨材を混入して過熱し、道路基層の上に敷きならしてローラー転圧を行う舗装です。
アスファルト舗装のメリット・デメリットは、主に以下が挙げられます。
メリット | デメリット |
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コンクリート舗装は、セメントや水、細骨材(砂)、粗骨材(石)を混入して造るコンクリートを道路基層の上に敷き均し、養生しながら強度を出す舗装です。
コンクリート舗装のメリット・デメリットは、主に以下が挙げられます。
メリット | デメリット |
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これまではアスファルト舗装が中心でしたが、耐久性や環境負荷の低さを考慮するため、コンクリート舗装が見直されています。
特殊舗装は、道路や敷地の目的に沿って表層を特殊な舗装にすることです。
(例)
舗装工事を行う目的は、泥沼化や粉塵の防止、安全性の向上、景観の維持・改善などです。
舗装されていない道路や敷地を多数の人や自動車が通行すると、降雨量が多い季節には地盤表面が踏み荒らされ泥沼化します。また、乾燥する季節には粉塵が舞い上がって視界が悪くなり、安全面や健康面にも影響を及ぼします。
そこで、舗装工事を行うことにより季節や天候の影響を受けにくくなり、道路を快適に使用することができます。
舗装されていない道路や敷地を多数の人や自動車が通行すると、地盤表面に凹凸が生じ、足を取られて滑る可能性が高くなります。
そこで、舗装工事を行うことで平坦になり、滑り抵抗を適度に保つことができます。
舗装されていない道路や敷地を多数の人や自動車が通行すると、上記で挙げた泥沼化や粉塵による汚れ・見た目の悪さなどを誘引します。
そこで、舗装工事を行うことにより見た目も良くなり、景観の維持・改善に貢献します。
アスファルト舗装の断面構成は、表層、基層、路盤からなり、路床の上に築かれます。
表層は、舗装の最上部にあり、アスファルトで皮膜します。自動車による摩耗とせん断に抵抗し、表層面を平坦かつ滑りにくくすることで雨水の浸透を防止するため、水密性の高い混合物が使用されます。
一方、表層面上の滞水防止のため、透水機能を有する排水性舗装のように雨水が浸透しやすくする混合物が使用される場合もあります。
基層は、表層に対する自動車などの荷重を均一に路盤に伝えるために不陸を補正し、アスファルト混合物を使用しています。なお、舗装全体の厚さが薄い場合、基層を設けないケースもあります。
路盤は、路盤面に対する荷重を均一に路床に伝える機能があります。道路の交通荷重を分散させて路床にかかる負荷を小さくするクッションの役割を担い、上層路盤と下層路盤に分類されます。
上層路盤には、瀝青安定処理や粒度調整、セメント安定処理、石灰安定処理などの工法が使用され、下層路盤には、現地で経済的に入手可能な材料として切込砂利や切込砕石、再生骨材などが使用されます。
路床は、道路の最下層部にあり、道路全体にかかる荷重を支える役割を担い、約1mの厚さがあります。
舗装工事の手順としては、現場測量、路床工事、路盤工事、基層工事、表層工事の順となります。
発注者から設計図や仕様書などを受取り、現地調査を行いながら設計図と現地との整合性などを点検・確認します。工事する上で不足する情報がある場合は、再度測量して高さや距離などの必要なデータを入手します。
その他にも、障害物の確認や手際のよい工事をするために事前処理しておくことなどを確認し、必要となるマーキングを施し準備をします。
工事はまず、路床工事から始まります。路床は主に土で形成され、図1のように厚さは約1mになります。
モーターグレーダーやブルドーザーといった重機を用いて敷均し、さらにコンバインドローラーなどの重機を用いて締固めます。
道路全体の荷重を支える路床が支持力のベースとなるため、路床が万が一弱い場合、その上部に舗装工事をしても大型車両などが通行すれば、すぐに凹凸が生じてしまいます。
次に、路盤工事を行います。路床の上部に切込砂利や切込砕石、再生骨材などを撒き、モーターグレーダーなどで敷均し、コンバインドローラーなどで締固めます。
路盤工事の次に、基層工事を行います。基層は、アスファルトフィニッシャーという重機を用いてアスファルト混合物(150℃以上)を敷均し、コンバインドローラーなどを用いて均一に締固めます。
最後は表層工事を行います。表層は道路の最上層部にあるため、自動車などの交通荷重と接します。工事内容は基層工事と同じになりますが、用いる材料が異なります。
表層に求められることは、摩耗に強く平坦に仕上がり滑りにくいことや、水に強くひび割れせず変形しないこと、綺麗な仕上がりとなることです。そのため、用いられるアスファルト混合物は密度の高い材料が使用されます。
舗装工事における設計は、次の3段階に大別されます。
設計条件の設定は、舗装の設計に必要な条件を抽出する作業です。
設計条件として主に、設計期間や計画大型交通量、性能指標、基盤条件、環境条件などがあります。
路面設計は、設定された路面の性能指標の数値を満たす車線数や地域特性などの路面条件を考慮し、表層の材料、工法、層厚までを決定する作業です。
使用する材料により、性能に大きく影響するため、設計期間に以下などの路面に求められる性能を確保するための検討を行います。
構造設計は、交通条件や路床条件、気象条件、材料条件および経済性を考慮し、各層が力学的にバランスのとれた構造を決定する作業です。
アスファルト舗装の構造設計方法はTA法による設計を原則とし、構造上これによりがたい場合は理論的設計方法を採用します。主に疲労破壊抵抗性を確保するための検討を行う作業となります。
舗装工事の概要や工事の目的、舗装の構造と役割、工事の手順、設計の重要性について解説しました。
泥沼化や粉塵の防止、安全性の向上、景観の維持・改善などです。それらを実現するために綿密な設計のもと、舗装工事を行います。
その結果、日本の道路は世界一の品質を誇り、様々な条件に適合する道路工事が可能となっています。