二級建築士とはどんな資格?試験の難易度や合格率も解説!
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二級建築士とはどんな資格?試験の難易度や合格率も解説!

2022年6月3日

建物を設計する「建築士」になるためには、国家資格が必要です。建築分野の資格の中でも難易度が高く、相応の学歴要件や実務経験が求められます。そんな建築士ですが、資格には一級と二級があり、中でも「二級建築士」の資格は一級よりも難易度が比較的低く設定されています。
そこで今回は、二級建築士の試験の難易度や合格率を解説します。建築士を目指している方や建設業界に興味のある方はぜひ最後までご覧ください。

 


 

二級建築士とは?

「建築士」には、一級建築士、二級建築士、木造建築士の3つの資格があります。その中でも取得しておくべきなのが「一級建築士」と「二級建築士」です。

そもそも建築士とは、建築物の設計や工事監理を行う人を指します。そして級が異なると、担当できる「物件規模」と「構造」が異なります。
一級建築士は二級建築士の上位資格であり、担当可能な物件に制限がありません。そのため商業ビルや高層マンションなどの設計が可能です。
一方で二級建築士には、設計できる物件の規模と構造に制限があります。簡単にまとめると、戸建住宅などの小規模な建造物は可能ですが、マンションやビルといった大規模物件は設計できません。一般的な住宅や小規模物件が主な業務となるため、二級建築士の資格保有者は住宅業界の設計に多く従事しています。

【二級建築士の設計範囲】

  • 建物の構造:木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れんが造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造(学校や病院などの公共施設は、延べ面積500㎡以下のもの)
  • 木工建築物の規模:高さ13mかつ軒の高さが9m以下、2・3階では延べ面積1,000㎡以下
  • 木造以外の建物の規模:高さ13mかつ軒の高さが9m以下、延べ面積30~300㎡以内
  • その他の構造の建築物(木造以外):延べ面積1,000㎡以下

 
とはいうものの、一級建築士と二級建築士の実際の業務内容はあまり差がなく、業務の流れは概ね同じです。そのため、一級建築士を目指している方でもまずは二級建築士を取得し、経験を積む人が多いでしょう。

一級建築士と二級建築士の共通点は、上記でも触れた通り実際の業務内容です。物件規模によって必要な申請などは異なりますが、実際の業務フローはあまり変わりません。
そこで以下では、一級建築士と二級建築士の仕事内容について紹介します。

建築士の業務内容

一級建築士と二級建築士の仕事内容は、主に「設計業務」「工事監理業務」です。

● 設計業務

設計業務は、建物のコンセプトや構造、仕上げ材など建築物に関わるすべての設計を行います。設計と聞くと「作図」の印象を持たれる方も多いですが、建築士になると作図のような細かな作業よりも、建築物のコンセプトの考案や、クライアントとの打ち合わせなどがメインになります。
また、工事会社を決定するための精査なども業務のひとつになるため、業務内容が多岐にわたります。

● 工事監理業務

実際に工事が進むと、工事監理業務が発生します。この工事監理業務とは、工事を始める準備から竣工までの期間の工程を管理する仕事です。現場確認を行い、現場の問題点を洗い出し、さらに設計的アプローチをもとに解決策を考案します。細かな業務が増えてくるので、スケジュール管理が重要になります。
また、工事監理では協力会社や施設管理の担当者との打ち合わせが増えます。設計に関する知識に加え施工に関する知識も必要になるため、建築士は幅広い知識を身につけておくべき仕事になります。

 

二級建築士の資格を取得するメリット

以下では、二級建築士の資格を取得するメリットを3つ紹介します。

転職に有利になる

一つ目は「転職に有利になる」ことです。二級建築士は難易度の高い国家資格で、設計以外の分野からも評価されています。設計としての転職はもちろん、施工管理やデベロッパーなど、幅広い分野の業界へ転職が可能です。
また、転職後のコミュニケーションが円滑になるだけではなく、転職時の条件交渉も有利になります。設計業務に携わっている方は今までの経験を証明できるので、未取得の方はぜひ取得することをオススメします。

 

一級建築士への土台になる

二つ目は「一級建築士への土台になる」ことです。上記でも説明した通り、一級建築士は二級建築士の上位資格であるため、受験のハードルが高く難易度も高いのが特徴です。
その反面二級建築士は一級建築士よりも合格率が高く、挑戦しやすい資格です。まずは二級建築士の資格を取得し小・中規模の案件で実績を積むことで、大規模案件を学ぶ基礎づくりができるでしょう。

 

会社からの評価アップにつながる

三つ目は「会社からの評価アップにつながる」ことです。建築系の試験の中でも高難度の試験である建築士の資格取得者になると、幅広い知識を有したエキスパートとして高い評価が得られます。顧客からの信頼につながり、会社からの評価も高くなるでしょう。
また、企業によっては資格を所有すると特別賞与をもらえる場合もあります。もちろん昇給や昇進につながるポイントでもあるので、資格取得は大きなメリットといえます。

 

二級建築士の年収

二級建築士になると、設計や施工管理はもちろんのこと、デベロッパーや施設管理など様々な仕事に携われます。そのため年収の幅も広いですが、平均をみると「年収500万円ほど」と言われています。やはり国家資格保有者となると、他と比較しても年収が高いことがわかります。
なお、一級建築士の平均年収は650万円ほどで二級建築士よりも高くなりますので、年収アップを望んでいる方は、まず二級建築士を取得し経験を積み、そこから一級建築士を目指すとよいでしょう。

 

一級建築士と二級建築士の試験の違い

一級建築士と二級建築士は同じ「建築士」の試験ですが、内容は異なります。以下では、試験の違いについて解説します。

受験資格

一級建築士と二級建築士の受験資格は以下の通りです。

【一級建築士】

  • 大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等において指定科目を修めて卒業した者
  • 二級建築士
  • 建築設備士
  • その他国土交通大臣が特に認める者(外国大学を卒業した者等)

※入学年が平成21年度以降の場合、指定科目を修めて卒業した者が対象です。入学年が平成20年度以前の場合、建築または土木の課程を修めて卒業した者が対象です。

【二級建築士】

  • 大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者<実務経験:最短0年>
  • 建築設備士<実務経験:最短0年>
  • その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等)<実務経験:所定の年数以上>
  • 建築に関する学歴なし<7年以上>

 
一級建築士同様「学歴」は学校の入学年が「平成21年度以降の者」と「平成20年度以前の者」とでは要件が異なります。また、二級建築士の場合は受験時に「実務経験」が必要になりますので注意が必要です。
それぞれの詳細は、公益財団法人建築技術教育普及センターのホームページにてご確認ください。

https://www.jaeic.or.jp/index.html

 

資格の発行元

一級建築士と二級建築士は、免許の発行元が異なります。それぞれの発行元は以下の通りです。

  • 一級建築士:国土交通省
  • 二級建築士:都道府県

一級建築士は国、二級は都道府県が発行します。発行元の違いからも、一級の方が専門性の高い資格であることがわかります。

 

試験内容

一級建築士と二級建築士の試験概要は以下の通りです。

【一級建築士】

一級建築士の試験には「学科試験」と「設計製図試験」があります。学科試験は四肢択一式で、下記の出題科目があります。

  • 学科I(計画):20問
  • 学科II(環境・設備):20問
  • 学科III(法規):30問
  • 学科IV(構造):30問
  • 学科V(施工):25問

設計製図試験では、事前に公表される課題に関して設計製図を行います。なお、出題数は1問です。

【二級建築士】

一級建築士の試験には「学科試験」と「設計製図試験」があります。学科試験は四肢択一式で、下記の出題科目があります。

  • 学科I(計画):25問
  • 学科II(法規):25問
  • 学科III(構造):25問
  • 学科IV(施工):25問

設計製図試験では、事前に公表される課題に関して設計製図を行います。なお、出題数は1級と同じく1問です。

 

合格率

一級建築士と二級建築士の合格率は以下の通りです。

【一級建築士】

  • 学科合格率:20%前後
  • 製図合格率:40%前後

試験全体の合格率は10%前後です。非常に難易度の高い試験と言えるでしょう。

【二級建築士】

  • 学科合格率:30%前後
  • 製図合格率:50%前後

試験全体の合格率は20%前後です。難易度の高い試験であることには変わりませんが、一級よりも合格率は高い傾向にあります。

 

二級建築士の勉強方法

最後に、二級建築士の「試験対策」について解説します。難易度の高い試験だからこそ、事前の準備は重要です。以下を参考に勉強計画を考えてみましょう。

過去問や参考書で独学

一つ目は、過去問や参考書を使った独学です。二級建築士の教材は毎年発行されているので、去年の試験の傾向を踏まえて勉強ができます。とくに初めて受験する方は、まず参考書を購入して問題の傾向になれるようにしましょう。
二級建築士は様々な分野から出題されるので、普段の業務で耳にしない言葉もたくさんあるでしょう。知識や経験が豊富な方でも、参考書を使って勉強することをオススメします。
また、参考書を使って一通り勉強したら、過去問を使って勉強しましょう。まずは時間を気にせず問題を解いてみて、慣れてきたら試験時間を測りながら挑戦すると、本番の対策になります。

 

通信講座を受ける

二つ目は「通信講座を受ける」ことです。近年オンライン化が進んでいることもあり、通信講座の質が向上しています。学校に行く暇がない方や、スキマ時間を有効活用したい方は積極的に受講してみるとよいでしょう。開催企業によっては模擬試験を実施している場合もあるので、独学よりも効率的に勉強できます。
また、講座の方がわからないことが質問できるので、独学よりも勉強の理解度が高まります。「独学では挫折しそう…」という方にオススメです。

 

資格学校に通う

三つ目は「資格学校に通う」ことです。資格取得の費用を負担してくれる企業や金銭的に余裕がある場合は、資格学校へ通うこともオススメです。学校に通うメリットは、勉強時間が確実に確保できる点と、効率的に勉強ができる点にあります。効率的に勉強を進めるのは独学では難しいですが、学校であれば出題傾向などを把握しながら試験対策ができます。ある程度の知識を持っている方であれば、学校に通った方がよいでしょう。
また、学校に通うと一緒に勉強する仲間ができてモチベーションアップにつながります。困ったときも誰かに質問できる環境があると、安心して試験勉強ができるはずです。

 

受かるために必要な学習時間は?

二級建築士は、一級建築士と比べると難易度は下がるものの、合格率は20%前後と決して簡単な試験ではありません。
そのため勉強時間は、初学者の場合は700時間ほど、経験者の場合は500時間ほどを目安にするとよいでしょう。もちろん本人の経験値によって勉強時間は異なるので、短縮することは可能です。
とはいうものの、難易度の高い試験であることには変わりないため、上記の時間を確保する勢いで勉強することをオススメします。平日2時間を目安に、足りない分は土日でカバーするとよいでしょう。

 

まとめ

二級建築士は設計できる範囲が限られていますが、一級建築士の試験よりも難易度は低く設定されています。中規模以下の設計を行いたい方や、一級建築士になる準備として取得される方が多いです。資格を取得すると転職活動にも有利に働くため、実務経験をお持ちの方は挑戦してみてはいかがでしょうか。

 


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