2022年7月1日
管工事施工管理技士の資格には1級と2級があり、2級は1級よりも試験難易度が易しく設定されています。実務経験の浅い方でも受験しやすく、合格率も比較的高い試験です。
そこで当記事では「2級管工事施工管理技士」について、試験の内容や難易度を解説します。管工事施工管理技士を目指している方は、ぜひ最後までご覧ください。
管工事施工管理技士とは、配管工事の施工管理に関わる高い技術と知識を持つ専門家として認められる国家資格です。
管工事には冷暖房設備や空調設備、上下水道設備、吸排気ダクト、ガス管、浄化槽などがあり、これらの施工管理を担うのが管工事施工管理者です。管工事そのものは無資格でも従事できますが、工事現場の責任者として施工の工程や品質、安全を管理する業務には管工事施工管理技士の資格が必要になります。
また、管工事は建物の規模や施工条件によって、臨機応変な対応が求められる業種です。管工事に関する知識はもちろん、幅広い業種の知識も頭に入れておかなければなりません。管工事における配管ミスや施工不良は、漏水などの大きな問題に発展する恐れがあるため、国家資格を有した施工管理者が詳細な施工計画を立てて、工事を管理する必要があるのです。
あらゆる建築物にはこれらの管工事が密接に関わっており、国家資格を有した管理者は常に必要とされていますので、管工事施工管理技士を目指している方は難易度が比較的低い2級から挑戦してみると良いでしょう。
以下では、管工事施工管理技士の仕事内容について紹介します。管工事施工管理技士は、配管工事を中心とした施工管理が主な仕事になります。
工程管理:工事のスケジュールを調整し、作業員を手配する
品質管理:工事内容のチェック、是正の指示などを行う
安全管理:職人の健康管理や、安全な現場状況の整備
原価管理:協力会社との金額調整
書類作成などの雑務
管工事は建築との取り合いが多いため、ゼネコンや工務店と密に打ち合わせを行い、工事の段取りを組みます。そのため、工程管理では現場の状況に合わせて臨機応変に対応しなければなりません。
また、配管などは工事完了の際には隠ぺいされてしまう可能性もあるので、適切なタイミングで検査を行い、必要に応じて早急に是正する必要があります。使用している部材や工法、配管のルートなどを写真に記録して、工事を進めなければなりません。
さらに、作業員の安全管理を行い、怪我のないような作業環境を整えることも大切です。危険な作業をしている場合は直ちに作業を停止したり、作業員を教育したりすることも施工管理の仕事になります。
他にも協力会社との工事金額の調整や、工事書類の作成なども重要な業務です。施工管理と聞くと「現場」のイメージが強いですが、このようなデスクワークも多々あります。
同じ「管工事施工管理技士」といっても、1級と2級では担当できる業務の範囲が異なります。1級管工事施工管理技士は、大規模な建設工事にあたる特定建設業やそれ以外の一般建設業において、専任技術者・主任技術者・監理技術者として配置できます。
その一方で2級管工事施工管理技士は一般建設業の専任技術者・主任技術者を務めることが可能です。全ての役割を務められる1級に対し、2級は「専任技術者」「主任技術者」のみとなるため、大きな業務に携わりたい方は2級だけでなく1級も目指す必要があります。
ただし1級の場合、試験を受験するための要件がやや厳しいので、現場経験が浅い方はまず2級の資格取得を目指しましょう。
「1級よりも担当できる物件の範囲が狭い…」とネガティブに考えた方もいるかもしれませんが、実は2級管工事施工管理技士の資格を取得すると、様々なメリットが得られます。
以下では、2級管工事施工管理技士の資格を取得するメリットについて紹介します。
一つ目は「転職に有利になる」ことです。管工事の施工管理としての転職はもちろん、別の職種へ転職する際も有利になることが多いです。例えば、商業施設の管理部署や店舗の開発チームなどが挙げられます。建設分野の中でも管工事は特殊な業種で、知見のある人はあまり多くありません。今後別のキャリアに就職を検討されている方でも、資格を持っておくと転職に有利に働くでしょう。
二つ目は「経験を証明できる」ことです。施工管理は無資格でも行えますが、重要な業務は施工管理技士しか担当できません。2級施工管理技士は国家資格なので、資格を有していると「どんな経験をしているか」が把握しやすくなります。設計者やクライアントなど、周囲からの信頼も厚く、コミュニケーションがさらに円滑になるでしょう。
三つ目は「専任技術者になれる」ことです。専任技術者になると、発注者と技術的な内容の交渉を行い、工事の見積書を担当することができます。工事の裏側を知ることができると現場の見方が大きく変わりますので、視野や知見が広がるきっかけになるでしょう。
2級管工事施工管理技士は、1級と比べると合格率の高い試験になります。専門的な知識は必要になりますが、試験の全容を把握して対策を行えば合格が狙えます。
そこで以下では、2級施工管理技士の試験内容について、さらに詳しく解説します。
2級管工事施工管理技士の受験資格は、最終学歴と経験年数によって異なります。
大学卒業者もしくは高度専門士を有した専門学校卒業者は、1年もしくは1年6ヶ月以上の実務経験を経て受験資格を得られます。大学卒業者の場合、指定学科卒業者は1年以上の実務経験で受験可能ですが、それ以外の学科卒業者の場合は1年6ヶ月以上の実務経験が必要です。
また、短期大学卒業者や高等専門学校卒業専門者、もしくは専門学校を卒業し「専門士」の場合、2年もしくは3年以上の実務経験で受験資格を得られます。この場合も上記と同じく、卒業した学科によって必要年数が異なります。
2級管工事施工管理技士の試験を受けるためには、最低でも1年以上の実務経験が必要になります。必要な学歴および指定学科の詳細は、一般財団法人全国建設研修センターのホームページをご覧ください。
2級管工事施工管理技士の試験は、1級と同様に一次検定と二次検定に分かれています。一次検定はマークシート方式の学科試験で、二次検定は記述式試験です。
以下ではそれぞれの試験内容について紹介します。
一次検定は、四肢択一のマークシート方式です。合格基準は「全体の得点60%以上」となります。問題数は52問で、そのうちの40問を選択して回答します。
なお、受験内容は以下の通りです。
【試験時間】2時間10分
科目 | 内容 | 出題数 | 解答数 | 解答形式 |
---|---|---|---|---|
機械工学等 | 原論 | 4問 | 4問(必須) | 四肢択一 |
電気工学 | 1問 | 1問(必須) | ||
建築学 | 1問 | 1問(必須) | ||
空調・衛生 | 17問 | 9問(選択) | ||
設備 | 4問 | 4問(必須) | ||
設計図書 | 1問 | 1問(必須) | ||
施工管理法 | 施工管理法 | 10問 | 8問(選択) | |
法規 | 法規 | 10問 | 8問(選択) | |
施工管理法(基礎的な能力) | 施工管理法 | 4問 | 4問(必須) |
二次検定はすべて記述式問題となります。6問中4問を回答し、正答60%で合格です。自身の経験や数値、用語を交えてわかりやすく記述することが大切です。
【試験時間】2時間
内容 | 出題数 | 解答数 | 解答形式 |
---|---|---|---|
設備全般 | 1問 | 1問(必須) | 記述 |
設備全般 | 1問(選択) | ||
工程管理 | 1問(選択) | ||
法規 | 1問(選択) | ||
施工経験記述 | 1問(必須) |
2級管工事施工管理技士の令和3年の合格率は一次試験が24%ほど、二次試験が73.3%でした。一次試験の合格率が低く感じますが、出題の傾向を理解し対策をしっかり行えば合格は十分に可能です。
二次試験も事前に対策をしていれば焦る内容ではないでしょう。受験する際は必要な勉強時間を確保し、余裕をもった勉強スケジュールを計画しましょう。
参考:https://www.cic-ct.co.jp/course/piping
2級管工事施工管理技士の試験に向けて、3つの勉強法を紹介します。独学で受験する方や一発合格を狙う方にオススメです。
まずは、過去問やテキストを使って独学する方法です。2級管工事施工管理技士は国家資格なのでやや難しい試験にはなりますが、事前準備をきちんと行えば独学でも合格は狙えます。
テキストは最新のものを選び、まずはテキストの順番通りに勉強を始めてみましょう。最新のテキストは過去の試験問題を踏まえて対策されているものが多いので、過去に受験したことのある人も買い替えることをオススメします。
また、過去問は問題の傾向を知ることのできるツールなので、テキストが一通り終わったら過去問も進めていきましょう。
「独学は不安…」という方や「効率よく勉強したい」という方は、講習や通信講座を活用しましょう。最近ではオンライン講座なども増えてきており、自宅や職場から勉強できる環境が整っています。
いくら実務経験があるからといって、普段使わない専門的な数値や用語も多々あります。講習や講座を受講すると講師に質問ができるので、わからない部分を素早く解決することができます。コースの期間は様々なので、ご自身にあったものを選びましょう。
ある程度問題を進めたら、今度は得意な分野や比重の大きい分野を中心にもう一度勉強し直しましょう。一次試験、二次試験ともに選択制の問題も多々あるので、苦手な部分を克服するよりも得意な分野にフォーカスした方が合格率も高まります。問題の傾向を意識した上で、得意な分野を伸ばすようにしましょう。
勉強時間の必要最低限の目安は、2級で2時間以上を1ヶ月続ける必要があるとされています。とはいうものの、業務が多忙な日に勉強をしても頭に入らず、効率が下がってしまいますので、1日2時間を必ずというよりはご自身にとって無理のないスケジュールを計画し、勉強を続けていきましょう。
また、実務経験や知見によって学習時間には個人差が生じます。まずはご自身の状態を理解して、勉強時間を調整しましょう。
2級管工事施工管理技士は担当できる物件の規模が1級よりも小さくなりますが、その分試験の難易度は易しく、経験年数が浅い方でも挑戦が可能です。
また、管工事施工管理技士は国家資格なので、資格を取得すると昇進や転職などキャリアアップの後押しにもなります。設備関係の仕事でステップアップしたい方は、ぜひ挑戦してみると良いでしょう。