トンネル工事にはどんな工法がある?作業員におすすめの資格や将来性も解説
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トンネル工事にはどんな工法がある?作業員におすすめの資格や将来性も解説

2022年7月26日

街や郊外をドライブしていると見かける「トンネル」は、道路だけでなく地下にもあり、私たちの生活を日々支えています。身近にあるものの、どのように作られているかあまり知られておらず、「トンネルってどのように造るの?」と工事に興味をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は「トンネル工事」をテーマに、工法やオススメの資格などを紹介します。土木に興味がある方や、トンネル工事の仕事をしたい方は最後までご覧ください。

 


 

トンネル工事の工法

トンネル工事には、「シールド工法」「TBM工法」「山岳工法」「開削工法」「沈埋工法」の5つの工法があります。以下ではそれぞれの特徴を解説します。

シードル工法

シールド工法とは、シールドマシンという機械を使ってトンネルを掘り進めていく工法です。
手順としては、以下の4つを行います。

  1. 土を掘る
  2. 土を運ぶ
  3. リング状の壁(セグメント)を作っていく
  4. コンクリート打設

 
シールドマシンは「セグメント」と呼ばれるリング状の壁を形成しながら掘り進めていきます。そのため、工事現場の周辺環境に左右されにくいというメリットがあります。
都市部での地下鉄や下水道トンネル形成に採用されることが多く、よく使われている工法です。

 

TBM工法

TBMは「トンネル・ボーリング・マシン」の略で、全断面トンネル掘進機(くっしんき)とも呼ばれています。工程としては、先端のカッターヘッドが回転することで、掘削したあとに壁を作りながら掘り進めていきます。
TBMは、山地などにある強固な地盤にトンネルを造るのに向いています。また、作業スピードが早いことも特徴の1つで、発電用導水路トンネルなどでよく使われる工法です。
ただし、機械が高額なことがデメリットで、短距離を掘ることにはあまり向いていないと言えるでしょう。

 

山岳工法

山岳工法は、岩盤など強固な地盤の山地部にトンネルを造るのが得意な工法で、道路トンネルなどでよく使われます。山岳工法は、TBMやシールドマシンといった特殊な機械を使わずに発破し、ドリルのような機械で掘り進めます。

 

開削工法

開削(かいさく)工法は「縦方向」に掘削する工法です。「土留め壁」と呼ばれる壁と「支保工」と呼ばれる支えを設置しながら掘り進めていきます。所定の深さに達したら、コンクリートの内部に地下水が入ってこないように「防水工事」を行い、仕上げにコンクリートを流し込み、トンネル本体ができたら埋め戻して、地上部やトンネル内部を整備して工事終了です。

 

沈埋工法

沈埋(ちんまい)工法とは、沈埋函(ちんまいかん)、またはケーソンと呼ばれる大型のコンクリートや、鋼製の箱を海底で接続していきながらトンネルを造る工法です。「箱」といっても、大きさとしては直径や高さが50mを超える大きさです。
工事の流れとしては下記の通りです。

  1. 沈埋函の製作
  2. 浚渫(しゅんせつ)をして海底を整形
  3. 設置箇所の基礎造り
  4. 沈埋函の曳航(えいこう)&設置
  5. 埋め戻し
  6. 内部構築

 
まずは地上で沈埋函を製作し、沈埋函を設置する水底を浚渫(ヘドロや土砂を取り除くこと)して整形した後に基礎を造ります。そして地上で造った沈埋函を船で引っ張って、規定の位置まで運び設置したら埋め戻します。その後、内部を構築すればトンネルの完成です。

 

シードルマシンとは?

「シールドマシン」とはシールド工法で使われる掘削機です。
ここからは「シールドマシンの仕組み」や「シールドマシンの掘進」など、シールドマシンの詳細について解説していきます。

シードルマシンの仕組み

シールドマシンは「土」や「水」などの圧力に耐えながら掘り進めていくために、頑丈な外枠で覆われています。いわばこの外枠が「シールド(盾)」です。
シードルマシンの仕組みは、まずシールドで守りながら前面にある回転カッターで地盤を削りつつ、壁面も同時に造りながら進んでいきます。壁を造りながら掘り進めることで、地盤が緩いところや水の多いところでもトンネルを造ることが可能です。

 

シードルマシンの掘進

シードルマシンの掘進は、まずカッターヘッドが回転して岩盤などは細かく粉砕され、砕かれた土砂は内部に入っていきます。
内部に入った土砂はスクリューコンベアによって、外部に吐き出されます。また、吐き出された土砂を機関車などで作業員が運びます。トンネル内にはレールが敷かれているので、機関車で行き来が可能です。
そして、セグメントと呼ばれる壁を組み立てながら、組み立てたセグメントにジャッキを当ててジャッキを伸ばすことで進んでいきます。シールドマシンは車のように直接運転するのではなく、少し離れた場所から運転・制御するので、安全に作業できます。

 

トンネル工事の作業員におすすめの資格

トンネル工事の作業員におすすめの資格は以下の通りです。

  • 土木施工管理技士
  • 大型自動車免許
  • 火薬類取扱保安責任者
  • 発破技士

 

土木施工管理技士

「土木施工管理技士」は国家資格の1つで、河川、道路、トンネル、ダム、上下水道など生活に欠かすことのできない、土木工事の施工管理業務を担う上で欠かせない資格です。
土木施工管理技士には1級と2級があり、土木の工事現場には必ず土木施工管理技士の資格保有者を置かなくてはなりません。
日本では、相次ぐ自然災害の復旧工事やインフラ設備の老朽化による工事などもあり、土木施工管理技士の需要は年々高まっています。

 

大型自動車免許

トンネル工事の現場では、トラックやダンプカーなど大型車が活躍する場面が多いです。大型車は普通自動車免許だけでは運転できず、大型自動車免許が必要になります。
また、大型自動車免許を取得しておくことで、重機や建設用の機械の免許や資格などにも派生しやすくなりますので、大型車が活躍するトンネル工事の現場において、大型自動車免許を持っていると重宝されるでしょう。

 

火薬類取扱保安責任者

火薬類取扱保安責任者とは、火薬を扱う現場での保安に関する責任者のための国家資格です。甲種、乙種に分かれており、火薬の取り扱い可能な量に違いがあります。

  • 甲種…年20トン以上、月1トン以上
  • 乙種…年20トン未満、月1トン未満

 
火薬を扱うトンネル工事現場では、火薬類取扱保安責任者を必ず配置しなくてはならず資格所有者は優遇されやすいため、トンネル工事作業員が取っておきたい資格の1つです。

 

発破技士

先ほど紹介した火薬類取扱保安責任者に似ていますが、管轄している場所に違いがあります。

  • 火薬類取扱保安責任者…経済産業省
  • 発破技士…厚生労働省

 
発破技士は、発破業務のせん孔、装填、結線、点火、不発、残薬の点検・処理ができますが、火薬を取り扱うことはできません。
そのため、発破担当であれば「発破技士」はおすすめできますが、トータルで考えると「火薬類取扱保安責任者」を取得する方が良いでしょう。

 

トンネル工事業界の将来性

トンネル工事は特殊な仕事なので「将来性が気になる」という方も多いでしょう。そこで以下では、トンネル工事業界の将来性について解説していきます。

労働時間の是正

国土交通省が定めるトンネル工事の積算基準では、2000年前半まで労働基準法の法定労働時間(週40時間、1日8時間)を超える「1日の労働時間10時間」が基準になっており、長時間労働が当たり前になっていました。
しかし2008年に「4週6休 10時間労働」から「4週8休 8時間労働」に改正され、今では徐々に労働時間が見直されています。

 

適切な給料の支払い

トンネル工事はいつの時代も必要不可欠な工事であり、資格や昼夜2交代制などの現場もあるため給与は比較的高めです。とはいうものの、中には適正な給与水準ではない場合も一部あるでしょう。そのため今後トンネル工事に携わりたいのであれば、業界の平均年収や待遇を調べておくことをおすすめします。

 

AIを駆使した生産性向上

トンネル工事に限らず、さまざまな現場でAIを使った生産性向上の施策が行われています。一昔前では、削岩機やダイナマイトを使用して掘られていたトンネル工事も、今ではトンネル・ボーリング・マシンの登場により驚くほど効率的かつ安全に工事が行えています。
こういったAIによる生産性の向上は、トンネル工事においてもこれからさらに進んでいくことでしょう。

 

まとめ

トンネル工事には様々な工法があり、それに必要なスキルや技術は異なります。また、関係する工事の内容によって必要な資格なども変わるので、まずはどの分野に興味があるのかを考えてみましょう。

 


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