2022年8月2日
土木施工管理技士の有資格者は、主任技術者や監理技術者などの需要の高い立場に携わることができますが、近年建設需要に対して土木施工管理技士などの有資格者の不足が長期にわたり続いている状況です。
そこで今回は、土木施工管理技士の試験概要や合格率、勉強方法や資格を取得するメリットについて解説します。
建設業界におけるスキルアップ・キャリアアップ・年収アップに有利な資格であることがわかりますので、資格取得を検討されている方はぜひ最後までご覧ください。
土木施工管理技士は、国家資格である7種類の施工管理技士の資格の一つで、土木工事現場に責任者として配属される主任技術者や監理技術者に就任するためにも必要な資格になります。
土木施工管理技士は土木施工分野のスペシャリストとして、土木工事現場(河川、道路、鉄道、港湾など)全体の管理を担います。
土木施工管理技士には、1級と2級があります。
1級は、土木工事全般において主任技術者、監理技術者に選任され、施工管理業務を担うことができます。
2級は試験内容が「土木」「鋼構造物塗装」「薬液注入」の3種類に分類されており、その中で合格した分野において主任技術者に選任され、施工管理業務を担うことができます。
監理技術者 | 下請け契約の工事代金総額が4,000万円以上(建築一式工事:6,000万円以上)の建設現場に配置する義務がある |
主任技術者 | 下請け契約の工事代金総額が4,000万円未満(建築一式工事:6,000万円未満)の建設現場に配置する義務がある |
土木施工管理技士は、主に以下の工事における施工管理業務を担います。
施工管理の主な業務内容は「5大管理」といわれる工程管理、品質管理、安全管理、原価管理、環境管理です。
工程管理は、土木工事の決められた工期を守るためにスケジュール管理を行うことです。
工事には、「工期」と呼ばれる構造物の完成期限が設けられています。そのため、各工事の工期を調整しながら全体の工期を管理・調整し、工事を完成させる必要があります。
数多くの作業員が土木工事に関わるため、効率良く工事を進捗させるための調整力が施工管理者には求められます。
品質管理は、土木構造物が設計図書や仕様書通りに造られているかの管理を行うことです。
具体的には以下を点検・確認します。
評価対象ごとに決められた試験方法や点検方法などで確認を行い、品質を確保します。
また、品質保持を証明するために、施工写真を撮影して記録に残すなどの施工記録の作成も必要になります。
安全管理は、安全な環境で作業を行えるように現場を整備し、事故が起きないように管理することです。
対策としては以下などを行います。
また、下請業者や職人などの作業員を集め、安全対策としての知識や意識向上のために、準備・点検・確認を毎日行います。
原価管理は、施工計画などに基づき算出した「実行予算」と建設現場での実際の工事において発生する「原価」を比較し、利益を計上できるように管理を行うことです。
実行予算よりも原価が増える傾向にある場合は利益を計上できなくなってしまうため、施工管理者は施工計画の見直しや下請工事業者の変更などを行い、実行予算と原価を調整しながら利益を計上できるように管理を行います。
環境管理は、以下3つの要素をもとに現場や現場周辺の環境を管理することです。
建設現場周辺の地盤や土壌、空気、水などの環境に対して考慮しながら工事を行うこと。
建設現場周辺の住民に対して、重機の排気ガスや振動、騒音や粉塵などによる迷惑がかからないように考慮しながら工事を行うこと。
現場の作業員が働きやすい環境になるように現場の環境を整えるための対策を行うこと。
建設現場周辺の環境や自然環境は現場の立地やその日の工事内容によって優先順位が変わってきます。そのため、施工管理者は各現場でどの環境を重視すべきかを見極めることが求められるため、建設現場の周辺環境を十分に調査し、対策を考えることが重要になります。
また、職場環境を整えるために作業員としっかりコミュニケーションをとり、信頼関係を築いて働きやすい職場を作り上げることも重要な業務です。
土木施工管理技士の主な転職先は、以下の通りです。
官公庁 | 国土交通省、各都道府県の土木部、各市区町村の土木部 など |
---|---|
ゼネコン | 大手ゼネコン、準大手ゼネコン、中小ゼネコン(地場コン)など |
専門工事会社 | 道路会社、上下水道会社 など |
建設コンサルタント | 道路設計、橋梁設計 など |
土木施工管理技士の資格を取得するメリットは、以下などが挙げられます。
ゼネコンや専門工事会社としては、土木工事現場に土木施工管理技士を配置する義務があります。
建設業界は土木施工管理技士が不足していることもあり、1級土木施工管理技士に限らず2級土木施工管理技士に対しても需要が高い傾向にあります。特に様々な建設現場を経験している技術者の需要は十分高いため、土木施工管理技士の資格を取得し現場経験を積んでおくことで、転職にも有利な経歴となるでしょう。
土木施工管理技士の資格を取得することで、公的に一定水準以上の施工技術を有することが客観的に証明できます。
勤務する建設会社にとっても、土木施工管理技士の資格所有者はメリットが大きいため、昇給や昇進に有利と言えるでしょう。
資格を取得することにより、より大規模で高度な建設現場を担うことができるため、自身のスキルアップ・キャリアアップを図ることができ、取り組むことができる仕事の幅も広げることができます。
1・2級土木施工管理技士の試験内容や試験日程・試験地、受検資格、受験料、合格率、難易度について解説します。
1・2級土木施工管理技士の試験内容は下表の通りです。
検定 | 1級土木施工管理技士 | 2級土木施工管理技士 | ||
---|---|---|---|---|
第一次検定 | 検定科目 | 土木工学等、施工管理法、法規 (択一式でマークシート方式) |
土木 | 土木工学等、法規、施工管理法 |
鋼構造物塗装 | 土木工学等、法規、鋼構造物塗装施工管理法 | |||
薬液注入 | 土木工学等、法規、薬液注入施工管理法 | |||
択一式でマークシート方式 | ||||
合格基準 |
|
得点が60%以上 | ||
第二次検定 | 検定科目 | 施工管理法 (記述式による筆記試験) |
施工管理法 (記述式による筆記試験) |
|
合格基準 | 得点が60%以上 | 得点が60%以上 |
※参照元:「令和4年度 1級土木施工管理技術検定 受験の手引き」一般財団法人全国建設研修センター
2022年の1級・2級土木施工管理技士の試験日程・試験地は、下表の通りです。
検定 | 試験日 | 合格発表日 | 試験地 |
---|---|---|---|
第一次検定 | 2022年7月2日(日) | 2022年8月18日(木) | 札幌、釧路、青森、仙台、東京、新潟、名古屋、大阪、岡山、広島、高松、福岡、那覇の13地区 |
第二次検定 | 2022年10月2日(日) | 2023年1月13日(金) |
※参照元:「令和4年度 1級土木施工管理技術検定の実施について」一般財団法人全国建設研修センター
検定 | 試験日 | 合格発表日 | 試験地 | |
---|---|---|---|---|
第一次検定 | 前期 (土木のみ) |
2022年6月5日(日) | 2022年7月5日(火) | 札幌、仙台、東京、新潟、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、那覇の10地区 |
後期 | 2022年10月23日(日) | 2023年1月13日(金) | 札幌、釧路、青森、仙台、秋田、東京、新潟、富山、静岡、名古屋、大阪、松江、岡山、広島、高松、高知、福岡、鹿児島、那覇の19地区 | |
第二次検定 | 2022年10月23日(日) | 2023年2月1日(水) | ||
第一次・第二次検定 | 2022年10月23日(日) | 2023年2月1日(水) |
※参照元:「令和4年度 2級土木施工管理技術検定の実施について」一般財団法人全国建設研修センター
*なお、第一次検定(後期)の試験地については上記試験地に熊本が追加されます。
鋼構造物塗装及び薬液注入は札幌、東京、大阪、福岡の4地区で実施。
1・2級土木施工管理技士の受験資格について解説します。
第一次検定、第二次検定の受験資格は下記の通りです。
<第一次検定>
次のイ、ロ、ハ、ニのいずれかに該当する者
区分 | 学歴または資格 | 土木施工に関する実務経験年数 | ||
---|---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |||
イ | 大学卒業者 専門学校卒業者(「高度専門士」に限る) |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 | |
短期大学卒業者 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者(「専門士」に限る) |
卒業後5年以上 | 卒業後7年6ヶ月以上 | ||
高等学校・中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後10年以上 | 卒業後11年6ヶ月以上 | ||
その他 | 卒業後15年以上 | |||
ロ | 高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後8年以上の実務経験(その実務経験に指導監督的実務経験を含み、かつ、5年以上の実務経験の後専任の監督技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む) | - | |
ハ | 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 | 高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後8年以上 | 卒業後9年6ヶ月以上 |
その他 | 卒業後13年以上 | |||
ニ | 2級合格者 |
※参照元:「令和4年度 1級土木施工管理技術検定の実施について」一般財団法人全国建設研修センター
<第二次検定>
次のイ、ロ、ハのいずれかに該当する者
イ 1級土木施工管理技術検定・第一次検定の合格者(ただし、2級合格者として受験した者を除く)
ロ 1級土木施工管理技術検定・第一次検定において、2級合格者として受験した合格者のうち、表4のイ、ロ、ハまたは表5のⅰ、ⅱのいずれかに該当する者
区分 | 学歴または資格 | 土木施工に関する実務経験年数 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |||||
ⅰ | 2級合格後3年以上の者 | 合格後1年以上の指導監督的実務経験及び専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む3年以上 | ||||
2級合格後5年以上の者 | 合格後5年以上 | |||||
2級合格後5年未満の者 | 高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後9年以上 | 卒業後10年6ヶ月以上 | |||
その他 | 卒業後14年以上 | |||||
ⅱ | 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 | 2級合格者 | 合格後3年以上の者 | 合格後1年以上の専任の主任技術者実務経験を含む3年以上 | ||
合格後3年未満の者 | 短期大学卒業者 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者(「専門士」に限る) |
- | 卒業後7年以上 | |||
高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後7年以上 | 卒業後8年6ヶ月以上 | ||||
その他 | 卒業後12年以上 |
※参照元:「令和4年度 1級土木施工管理技術検定の実施について」一般財団法人全国建設研修センター
ハ 第一次検定免除者
詳細については、一般財団法人全国建設研修センター発行の「受験の手引き」を参照
第一次検定、第二次検定の受験資格は下記の通りです。
<第一次検定>
令和4年度の末日における年齢が17歳以上の者(平成18年4月1日以前に生まれた者)
<第二次検定>
次のイ、ロのいずれかに該当する者
イ 2級土木施工管理技術検定・第一次検定の合格者で、次のいずれかに該当する者
学歴 | 土木施工に関する実務経験年数 | |
---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |
大学卒業者 専門学校卒業者(「高度専門士に限る」) |
卒業後1年以上 | 卒業後1年6ヶ月以上 |
短期大学卒業者 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者(「専門士」に限る) |
卒業後2年以上 | 卒業後3年以上 |
高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 |
その他 | 8年以上 |
※参照元:「令和4年度 2級土木施工管理技術検定の実施について」一般財団法人全国建設研修センター
ロ 第一次検定免除者
詳細については、一般財団法人全国建設研修センター発行の「受験の手引き」を参照
1・2級土木施工管理技士の受験料は、下表の通りです。
検定 | 1級土木施工管理技士 | 2級土木施工管理技士 |
---|---|---|
第一次検定 | 10,500円 | 5,250円 |
第二次検定 | 10,500円 | 5,250円 |
第一次検定・第二次検定 | - | 10,500円 |
※参照元:「令和4年度 1級土木施工管理技術検定の実施について」一般財団法人全国建設研修センター
※参照元:「令和4年度 2級土木施工管理技術検定の実施について」一般財団法人全国建設研修センター
1・2級土木施工管理技士の2017年~2021年における合格率は、下表の通りです。
試験年度 | 1級土木施工管理技士 | 2級土木施工管理技士 | ||
---|---|---|---|---|
第一次検定 | 第二次検定 | 第一次検定 | 第二次検定 | |
2017年 | 66.2% | 30.0% | 67.6% | 34.3% |
2018年 | 56.5% | 34.5% | 59.4% | 35.0% |
2019年 | 54.7% | 45.3% | 63.3% | 39.7% |
2020年 | 60.1% | 31.0% | 70.4% | 42.2% |
2021年 | 60.6% | 36.6% | 72.1% | 35.7% |
1級土木施工管理技士の場合、表8を見ると2017年~2022年の合格率は以下の通りで、平均合格率は第一次検定が約60%、第二次検定が約35%となっています。
同様に、2級土木施工管理技士の場合は以下の通りで、平均合格率は第一次検定が約67%、第二次検定が約37%となっています。
土木施工管理技士の勉強方法には主に以下などがあります。
それぞれの学習方法のメリット・デメリットを下表にまとめました。
学習方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
参考書などで独学 |
|
|
動画を利用し独学 (WEBサイト、DVDなど) |
|
|
専門学校・通信教育 |
|
|
どの勉強方法を選択するかは、自身の好みや性格、確保できる勉強時間などと照らし合わせて、最も効果の上がりそうな方法を実施すると良いでしょう。
合格に必要な勉強時間の目安は以下の通りです。
目安として半年間は勉強時間として確保し、スケジュールを立てる必要があります。
平日に勉強時間を確保しにくい場合は、休日にまとまった時間を確保し、通勤時間帯を勉強時間に充てるなどの工夫・調整が必要になります。
過去問やテキストで独学する方法は、一番コストがかからないというメリットがあります。
自身の学習レベルを客観的・定期的に把握でき、苦手分野をカバーできる人の場合、テキストによる勉強方法はおすすめです。
また、残業時間が長くなる場合など、立てた学習スケジュールに乱れが生じても、必要な時期までに学習時間を補充するだけの調整能力がある人もおすすめの勉強方法と言えるでしょう。
過去問は出題傾向が大きく変化することはないため、数年分の問題を完全に解けるように準備しておくことが大切です。
表8を見てもわかるように、第一次検定は比較的合格しやすいですが、第二次検定は約3分の1の合格率となり、第二次検定(実地試験)への対策がより重要になります。
まずは自身の工事経歴の洗い出しを行い、出題に対して要点をわかりやすく説明できるように事前に何度も記述練習をしておく必要があります。
土木施工管理技士の概要や仕事内容、主な転職先、資格を取得するメリット、試験概要、勉強方法について解説しました。
土木施工管理技士試験は、スケジュールをきちんと立てて自分に合った方法できちんと勉強ができれば合格できる資格と言えるでしょう。
自身のスキルアップ・キャリアアップ・年収アップのためにも、土木施工管理技士の試験にぜひ挑戦してみてください。