法面工事とは?重要性や主な施工方法について解説!
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法面工事とは?重要性や主な施工方法について解説!

2022年8月3日

日本国土の大半は山間地が占めており、そこで住宅開発や道路工事、鉄道工事を行うと必ず法面が発生します。雨や地震などが原因で地すべりなどの土砂災害を引き起こさないよう、家屋や通行車両、鉄道車両の安全性を確保するには法面の安全性を確保する必要があります。そこで今回は、法面工事の概要や重要性、主な工法について解説します。

 


 

法面工事とは?

そもそも「法面」とは、盛土もしくは切土して造られた人工的傾斜面のことを指します。
「法面工事」は、人工的傾斜面や自然斜面が崩壊・落石しないように、保護・強化・安定化を図る工事になります。

法面工事の種類

法面工事には、「植生工」「構造物工」「排水工」の3種類があります。

法面工事の種類 法面工事の種類ごとの工法
植生工 植生基材吹付工、種子散布工、植生マット工、客土吹付工、厚層基材吹付
構造物工 吹付法枠工、モルタル吹付工、鉄筋挿入工、グランドアンカー工、雪崩防止工、抑止工
排水工 法面排水工
表1:法面工事の種類と各種工法

 

● 植生工

「植生工」は、植物の種子や肥料、水などを練り混ぜた基材を撒くことや苗木を植えて植物を繁殖させることで、法面表層部の保護・安定化を図る工事です。
植生工の特徴は、植物が成長して法面を覆い風雨による法面の浸食を防御し、風化も抑制する点です。また、植物の根が法面の土としっかり絡み合い、土砂崩れを防御する役割もあります。
植生工のメリットは、景観や自然環境の保全、温暖化対策にも有効な点です。また、他の工法と組み合わせることにより、お互いの特徴を活かしあうこともできます。
植生工には、表1にも挙げたように、植生基材吹付工、種子散布工、植生マット工、客土吹付工、厚層基材吹付などの工法があり、土質・地質や自然景観、周辺環境、気候、施工時期などを鑑みて、最も適した工法が選択されます。

● 構造物工

「構造物工」は、モルタル・コンクリート、板柵、籠などを使用して法面の保護・強化・安定化を図る工事です。
法面のある地山の地質が土砂や軟岩などで形成されている場合、風雨による風化の影響を受けるため、構造物による防御が必要となります。
また、法面表層部の防御だけではなく、表層部から地中深い部分における崩壊や崩落の防御も求められます。その場合は、表1にも挙げたグランドアンカー工などによりアンカーを地中深くまで挿入し、法面の保護・強化・安定化を図ります。

● 排水工

「排水工」は、法面の風化・浸食・崩壊の原因となる降雨などの地表水や浸透水を排水する工事です。

 

法面工事の注意点

法面工事現場では、作業員などがロープでぶら下がりながら作業をする場合が多く危険と隣り合わせの業務となるため、安全衛生管理の徹底が要求される工事となります。
法面工事は1現場に数名のチームで作業する場合が多く、チームリーダーの手腕や統率力も重要になります。
また、法面の亀裂の変化や水の出方から、法面が崩壊する前兆を見抜く危険察知能力も作業員の安全を確保する意味で重要と言えるでしょう。

 

法面工事の重要性

日本の国土は山間地が多く、傾斜地が多い特性があります。そのため、道路工事や鉄道工事、宅地造成工事などの開発行為により、必ず法面が発生します。
しかし、降雨量が多い日本では、法面表層部に降った雨水が以下などを発生させかねない環境化にあります。

  • 地表を流れることによる浸食
  • 地中に浸透することによる崩壊

 
浸食や崩壊、落石などを防御し、法面下部にある道路の通行車両や鉄道車両、住宅地の家屋などの安全性確保のためにも、法面工事は必要不可欠と言えるでしょう。

 

法面工事の主な工法

法面は崩壊するリスクが常に伴っており、法面表面の風雨による浸食や落石、崩壊などを防ぐために法面の保護や補強などの工事が必要となります。
法面工事には様々な工法がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあるため、法面の状況や周囲の環境、気候条件などを加味しながら、工法を選択する必要があります。
主な法面工事の工法を以下にて解説していきます。

植生基材吹付工

「植生基材吹付工」は、法面の整形や清掃を行った後、ラス金網を一面に張り付け、その上部に所定の厚さ(3cm~10cm)を保ちながら植生基材を一度に吹き付ける工法です。
植生基材は、基盤材、種子、肥料、接着剤から成り、それらを吹付機に投入し撹拌装置内で均等に練り混ぜ、コンプレッサーの圧縮空気により搬送して法面の表面に吹き付けます。

 

種子散布工

「種子散布工」は、法面上に種子などを均一に吹付ける工法です。吹付け材は、種子、水、高度化成肥料、木質繊維(ファイバー)、接合材から成り、それらをタンクに投入して撹拌し、コンプレッサーの圧縮空気を併用した吹付車によりホースをのばし吹き付けます。
メリットとしては、短時間に大面積の施工が可能であり経済的である点が挙げられ、デメリットとしては、急勾配の法面や硬い地盤には適さない点が挙げられます。

 

吹付法枠工

「吹付法枠工」は、法面上に格子状のコンクリート構造物を建設し、その自重により法面の安定化を保持する工法です。
比較的安定した法面においては、傾斜の急な法面や高所にある法面や凹凸面のある法面に対しても有効な工法です。また、法面の浸食防止や表層崩壊の防止、緑化の基礎工とする場合にも有効です。
さらに、グランドアンカー工と組み合わせて、地中深くのすべりに対する安定を図る目的にも用いられます。

 

モルタル吹付工

「モルタル吹付工」は、法面上にラス金網を一面に張り付け、その上部にモルタル・コンクリートを10cmほどの厚さを保ちながら吹付ける工法で、法面全体の被覆や法枠、水路など幅広い用途で利用されます。
厚さは、現場条件や凍結深等の立地条件を加味しながら決定します。
工事の効果としては以下などが挙げられます。

  • 崩壊の発生防止・緩和
  • 雨水などが地山への浸透による浸食防止
  • 小規模な落石防止
  • 岩盤の風化防止

 
適用される法面としては以下などです。

  • 湧水が少なく、崩壊の危険性も少ないが風化しやすい岩盤
  • 風化して崩落する可能性がある岩盤

 

植生マット工

「植生マット工」は、植生マットを法面の高所から低所へ等間隔で敷き詰める工法です。植生マットとは、土壌改良資材、肥料、保水材などを充填した大型の植生基材袋を30cm~40cm間隔で装着した薄綿付のマットです。
植生マット工の特徴は、マットによる被覆効果により通年の施工が可能な点です。また、硬質土や強風化軟岩地においても長期間安定した緑化をもたらし、さらに海岸地帯の風衝地に対しても基盤が剥離しにくくなり効果的です。

 

客土吹付工

「客土吹付工」は、法面表層部にラス金網もしくはネットを張り付けた後、吹付け材を吹付ける工法です。
吹付け材は種子・肥料・土などから成り、吹付け材が比較的硬練りの状態で泥上の混合物をスクイズポンプなどで圧送し、ノズルの先端で圧搾空気を混合し吹付けます。

 

鉄筋挿入工(ロックボルト工)

「鉄筋挿入工」は、急な斜面に鉄筋やロックボルトなどの短い棒状補強材を多数挿入する工法です。斜面と補強材の相互作用により、斜面上の岩塊や移動土壌などを安定化させる効果があります。
上記の法面工と併用することで補強材と法面工とが結合され一体となり、補強効果が増します。補強材の長さがアンカー工よりも短くなるため、崩壊規模の小さい斜面に適用される工法です。

 

厚層基材吹付

「厚層基材吹付」は、圧搾空気により基材を法面表層部に厚さ数cm以上を保ちながら一度に吹付ける工法です。
基材は、種子、肥料、接合材などの有機質を主体とし、岩石地などの無土壌法面に対して肥沃で耐食性に優れた基盤を形成することができます。

 

グランドアンカー工

「グランドアンカー工」は、法面表層部からボーリングマシンにより地中に孔を開け引張材を挿入し、グラウト(モルタルなどの注入)することにより、地中の岩盤と地表の構造物を力学的に連結する工法です。
アンカーは、プレストレス(圧縮応力)を導入することにより地山が変動する前に抑止効果を与える役割を担います。

 

雪崩防止工

「雪崩防止工」は、雪崩が生じやすい法面表層部に突起物(凸型ブロック)を配置して、全層雪崩の防御を図る工法です。

 

抑止工

「抑止工」は、法面が存する地質や形状、勾配などの内部要因の他にも、風雨、湧水、凍上凍結などの外部要因で形状が変化したことにより、背面土圧や座屈などを力学的に防御する工法です。
例えば、擁壁やアンカー工などがあります。

 

法面排水工

「法面排水工」は、法面表層部に生じる降雨などの地表水や浸透水、地中の地下水などを排水し、法面の保護・強化・安定化を図る工法です。
法面排水工は、表面排水工と地下排水工に分類されます。水がどこから発生するかにより、施工方法を選定します。

 

まとめ

法面工事の概要や重要性、主な工法について解説しました。
法面の保護・強化・安定化を図るために一番考慮しなければならないことは、地震に対する揺れへの対策や、地表水や浸透水、地下水などの水に関する対策です。
道路工事や橋梁工事などの土木工事と比較すると地味なイメージで縁の下の力持ち的な工事といえますが、法面下部にある家屋や通行車両、鉄道車両などを守る重要な工事となります。危険と隣合わせの工事でもありますので、安全第一での施工を心がけることが法面工事において重要と言えるでしょう。

 


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