設計監理とは?施工管理・工事監理との違いや必要な資格についても解説
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設計監理とは?施工管理・工事監理との違いや必要な資格についても解説

2022年9月8日

建物を建てる際、建築工事を監理するだけにとどまらず、設計段階から行う「設計監理」という仕事があります。
そこで今回は、設計監理の概要や仕事内容、設計監理に関わる資格、費用相場、よくある質問に対して解説していきます。

 


設計監理とは?

設計監理は、建物の設計と工事監理を行う仕事です。
設計とは、建物の意匠設計・構造設計・設備設計を行い、それらを反映した設計図書や仕様書などの作成を指します。
また、工事監理とは、建物が設計図書・仕様書通りに造られているかを主に工事現場にて点検・確認することを指します。
万が一設計図書・仕様書通りに造られていなければ、施工会社の工事管理者に指示を出し、工事を是正させる業務も担います。

 

設計監理の仕事内容

設計の仕事は主に条件整理や役所協議、基本設計、実施設計、確認申請となり、監理の仕事は主に見積精査や施工会社選定、工事監理、検査・引渡しとなります。
そこで、設計監理の仕事内容を下表にまとめました。

設計監理の仕事項目 設計監理の仕事内容
設計 条件整理 建築主の要望や敷地条件、法的規制、建築予算など、様々な条件整理を行います。全ての条件を吟味した上で、建物の規模や構造、デザインなどの概略を割り出し、建築主へ報告します。
役所協議 建築基準法・都市計画法や市区町村ごとの条例を調査し、役所に対する事前調査・事前協議に入ります。
基本設計 建築主との打合せにおいて、建築規模や構造、間取り、設備などの仕様を決めるために図面や資料を作成します。平面図や立面図だけではイメージしにくい部分もあるため、模型やイメージパースなどを作成して提示し、建築主と設計者との認識の共有を図ります。
状況に応じて、構造設計士や設備設計士も打合せに加わります。
実施設計 実施設計により、建物各部の正確な寸法、仕上げ素材などの仕様を決めて図面に反映します。無数のバリエーションの中から素材サンプルを収集し、建築主の要望と合致する組合せを提案しながら決めます。
建物から内部の設備まで、位置図・平面図・立面図・断面図・矩計図・展開図・構造図・設備図などの図面を作成します。規模によっては数十枚から数百枚に及ぶ図面枚数となります。
実施設計図面が完成すると、施工会社へ見積作成依頼をします。
確認申請 建築予定地の市区町村や民間の審査機関に設計図書や仕様書を提出し、開発協議・関係部署協議などを経て各種法律の規定をクリアし、確認申請を通過します。
確認申請は建築主が行いますが、代理で設計者が申請手続きを行います。
監理 見積精査 実施設計図面が完成した段階で、見積作成依頼をした施工会社から見積書を提出してもらい、抜け漏れや重複がないかなど内容の精査に入ります。
見積工事費が予算をオーバーした場合、意匠・構造・設備設計を見直して調整案を作成し、建築主へ提案・協議をします。
施工会社選定 施工会社から提示された見積書や資料に基づき、各施工会社の特性や実績などを考慮しながら、選択・決定します。
工事監理 工事現場において設計図書や仕様書通りに工事が進捗しているか否かの点検・確認を行い、建築主へ定期報告を行います。設計図書や仕様書などと異なる個所がある場合、施工会社の工事管理者に指摘し是正してもらいます。
また、定期的に定例会議(1~2週間に一度)を行い、工程・品質・原価・安全面の確認を行います。問題が発覚した場合、速やかに関係者と連絡を取り解決を図ります。
検査・引渡し 引渡しの前に設計検査を行い、建物・設備などの寸法・強度・性能などの最終確認を行います。その上で役所や審査機関による完了検査を受け、是正点がある場合は施工会社へ改善を指示します。
工事費の最終精査を行った上で建物の引渡しを行い、引渡し後も建築主からの要請がある場合はアフターサービスにも立ち会います。

 

設計監理に関わる資格

設計監理は、主に建築士(一級建築士、二級建築士、木造建築士)が担う業務となります。
以下では、それぞれの資格でどんな建築物の設計監理ができるのかをそれぞれ解説していきます。

一級建築士

一級建築士でなければできない設計監理の対象となる建築物を下表にまとめました。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
建築用途 学校、病院、劇場、映画館、公会堂、百貨店
集会場(オーデイトリアムを有しないものを除く)
延床面積:500㎡超
建築構造 木造 高さ:13m超
軒の高さ:9m超
鉄筋コンクリート造・鉄骨造・石造・煉瓦造、コンクリートブロック造・無筋コンクリート造 延床面積:300㎡超
高さ:13m超
軒の高さ:9m超
上記以外の建築物 延床面積:1,000㎡超かつ
階数:2階以上

 

一級建築士または二級建築士

一級建築士または二級建築士でなければできない設計監理の建築物を下表にまとめました。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
建築構造 木造 延床面積:300㎡超
階数:3階以上
鉄筋コンクリート造・鉄骨造・石造・煉瓦造、コンクリートブロック造・無筋コンクリート造 延床面積:30㎡超
上記以外の建築物 延床面積:100㎡超
階数:3階以上

 

一級建築士、二級建築士または木造建築士

一級建築士、二級建築士または木造建築士でなければできない設計監理の建築物を下表にまとめました。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
建築構造 木造 延床面積:100㎡超
階数:2階以下
鉄筋コンクリート造・鉄骨造・石造・煉瓦造、コンクリートブロック造・無筋コンクリート造 延床面積:30㎡以下
階数:2階以下

 

建築士でなくてもできる設計監理

建築士の資格を有していなくてもできる設計監理の建築物を下表にまとめました。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
建築構造 木造 延床面積:100㎡以下
階数:2階以上
鉄筋コンクリート造・鉄骨造・石造・煉瓦造、コンクリートブロック造・無筋コンクリート造 延床面積:30㎡以下
階数:2階以下

 

設計監理の費用相場

設計監理料の算定方法は以下の通りで、国土交通省告示第15号に記載されています。
設計監理料=直接人件費+直接経費+間接経費+特別経費+技術料等経費+消費税相当

※参考元:「設計・工事監理等の契約を行う際の業務報酬の算定方法等」国土交通省住宅局建築指導課

 

ただし、この算定方法では工事費に対する設計監理料が高くなりすぎる傾向があり、建築設計事務所独自の算定方法がありますので、以下にて例を基に説明します。

例① 工事費に対する割合
例えば、一般提な住宅を建築する際の設計監理料は、工事費の10%前後となります。なお、リフォームや小規模住宅の場合は、設計監理料の工事費に対する割合はもっと高くなります。

 

例② 坪単価で算定する場合
建物の延床面積や施工面積に対して、一律決められた坪単価で設計監理料を算定する建築設計事務所もあり、その際の坪単価は7万円坪~17万円坪となります。

 

設計監理に関してよくある質問

設計監理に関してよくある質問として、「施工管理との違い」「工事監理との違い」などがありますので、以下にて解説していきます。

施工管理との違いは?

施工管理は建設施工会社(ゼネコン・工務店)における現場業務になります。建設施工会社の現場代理人が施工管理者を務め、工程管理・品質管理・原価管理・安全管理などを行いながら設計図書や仕様書通りに工事が進んでいるかを確認し、期限までに建物を完成させて建築主に引き渡すところまで担います。
一方で設計監理は、建築士が建築主側の立場となって建設施工会社の工事を点検・確認・是正する業務を担うため、工事における立場に違いがあります。

 

工事監理との違いは?

工事監理との立場は同じですが、設計監理は工事監理に加えて設計業務も担うため、業務の範囲に違いがあります。

 

まとめ

設計監理の概要や仕事内容、設計監理に関わる資格、費用相場、よくある質問に対して解説しました。
設計監理は、建築主の建物に対する要望のヒアリングから始まり、役所調査、基本設計、実施設計、確定申告、施工会社選定、工事監理、検査・引渡しまでの業務を担うため、工事監理と比較すると業務範囲は広くなります。
また、建築主の信頼を得られないとできない仕事形態となりますので、やりがいは大きい仕事と言えるでしょう。

 


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