2022年9月29日
CADは「Computer Aided Design」の略称で、作図の際に使われるソフトを指します。建設業界で設計や施工に携わる方にとってはCADのスキルは重要ですが、転職などでCADスキルを証明するのは難しいでしょう。
そんな時に役立つのが「建築CAD検定」です。建築CAD検定とは、CADソフトを使用して建築図面を作図する試験で、合格すると自身のスキルを客観的に証明しやすくなります。
そこで今回は「建築CAD検定とは?」と題して、検定の概要や合格率などを詳しく解説します。受験を検討されている方は必見です。
そもそも「建築CAD検定」とは、CADを使い建築図面の作図を行う実践型の資格試験で、国内初の建築CADの民間資格試験です。
実はCADには「建築・土木業界」の他にも、「機械・家電業界」「アパレル業界」など様々な業種で導入されており、CAD関連の資格にも色々な種類があります。その中でも建築CAD検定は建築関連で必要なスキルが求められるため、建築設計で必要な知識量やスキルを図ることができます。
建築士のような、取得することで業務範囲が広がる資格ではありませんが、自身のキャリアアップに役に立ったり転職時のアピールポイントとして活用できるでしょう。
なお、建築CAD検定は准1級・2級・3級・4級に分かれており、年に2回実施されています。受験する級によって回数や受験条件などが異なるので、詳しくは一般財団法人全国建築CAD検定試験のホームページをご確認ください。
建築CAD検定の受験方法には「一般受験」と「団体受験」の2種類があります。そこで以下では、それぞれの受験方法について解説します。
一般受験とは、団体受験する機会のない社会人の方や当連盟の試験認定校以外の学生の方々のために用意された受験方法で、全国に用意された一般受験会場で受験します。ただし、受験会場は毎回異なります。願書受付開始に合わせてホームページで発表されるので、チェックするようにしましょう。
一方で団体受験とは、CADを教えている学校が自らの学生に対してその学校を会場として試験を実施するものです。慣れた場所で試験が受けられるので、リラックスした状態で挑戦できるでしょう。
以下では、建築CAD検定の試験概要について説明していきます。
建築CAD検定は准1級・2級・3級・4級の4階級に分かれているため、階級別に試験内容を解説していきます。
4級試験は、建築CAD検定の中で最も易しい試験になります。試験の内容は、CADソフトの基礎的な能力が試されます。建築図面を書くときに最低限必要な線分や円、四角形などの基本的な作図能力が必要です。他にも基本的な操作が求められる問題が出題されるので、初歩的なCAD操作は覚えておきましょう。
試験では作図の初歩的な知識や操作方法を問われるので、将来建築に関する業界を考えている学生や未経験者の方におすすめです。
試験料 | 3,100円(税込) |
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試験時間 | 2時間 |
試験内容 | 実技試験 3問 課題となる建築図面を正しくトレースする知識・技術を問う問題が出題されます。建築図面の要素を取り出した参考図をもとに、時間内に完成図を作図します。 |
合否判断基準 | 200点満点中 130~140点が目安 |
3級試験は、4級同様に与えられた建築図面を、CADシステムを使って正しくトレースする実力を問う試験です。4級よりも難易度の高い試験になるので、より実務に役立つスキルと言えるでしょう。
試験では、建築図面の要素を取り出して作成した参考図をもとに、完成図を一定時間内に作成します。図面のトレース技術を証明できる資格なので、転職や昇給などのキャリアアップにも有利な資格です。建設業界でCADオペレーターを目指す方や、CADに携わる仕事をする方にはオススメです。
試験料 | 10,500円(税込) |
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試験時間 | 2時間 |
試験内容 | 実技試験 4問 課題となる建築図面を正しくトレースする知識・技術を問う問題が出題されます。建築図面の要素を取り出した参考図をもとに、時間内に完成図を作図します。 |
合否判断基準 | 200点満点中140~150点が目安 |
2級は、複数の図面を正確に読み取る「平面詳細図」と「立面図」の課題が出題されます。
平面詳細図とは、平面の細部にわたり、寸法・仕上げなどの詳細な情報を盛り込んだ図面を指します。 一般的に平面図よりも縮尺が大きく、施工で最も重要な図面です。作図するには建築図面への理解度と、CAD操作についての高い知識と能力が問われるため、3級よりも難易度の高い試験と言えるでしょう。
また、立面図ではいくつかの2次元図面からその建物の形状を理解・想像する能力が必要になります。
他にも、住宅工法として有名な「2×4(ツーバイフォー)工法」に関する問題も出題されます。ツーバイフォーで作られた木造住宅の図面で、平面図を元に平面詳細図を作成するほか、平面・断面・屋根伏図などのいくつかの図面を元に立面図を作成するという問題も度々出題されています。こちらの試験は、CADオペレーターとして既にお仕事をされている方や建設業界でCAD経験のある方にオススメです。
試験料 | 10,500円(税込) |
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試験時間 | 5時間 |
試験内容 | 実技試験 4問 CADシステムを使って建築図面を作成する実力を問う問題。作図スキルに加えて、建築に関する知識が必要とされます。一定時間内に課題となる建築一般図を作成します。図面のラフスケッチから一般建築図を描く能力が必要です。 |
合否判断基準 | 200点満点中140~150点が目安 |
准1級は、建築CAD検定の試験の中で最も難易度の高い試験になります。幅広いCADスキルと建築に関する知識が必要になり、さらには自身の経験で培った対応力が問われる試験です。
また、准1級の試験の特徴は試験時間にあります。准1級の試験は時間配分が決められており、試験時間4時間10分に対して「CADシステムの設定」が10分、「課題図面の読み取り」が30分、「作図」が3時間30分と決まっています。
最初に行うCADシステムの設定では、ショートカットキーの設定や作業効率を考えたCAD環境の設定を行います。その間に試験問題を開くことは禁止されているので気をつけましょう。そのあとは課題図面の読み取り・入力計画を行います。課題図面を読み取り、作図方法を検討します。各図面の全体を意識し、効率的に作図を行う必要があります。そしてその後がいよいよ課題の作図です。課題図面では、柱や壁の位置などの必要最低限の寸法しか指示がないので、それ以外の部分は受験者が判断して作図を行います。
試験料 | 14,700円(税込) |
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試験時間 | 4時間10分 |
試験内容 | 実技試験 課題となる建築図面を建造物の特性を踏まえて適切な判断をし、トレースを行なって作図を行います。 図面は、配置図、1階平面図、外構(S=1/200)、2階平面図(S=1/200)、基準階平面図(S=1/200)、断面図(S=1/200)などを作成します。 |
合否判断基準 | 4図面すべてが完成して合格 |
試験は4月、10月(年2回)に行われます。詳しい日程は、一般財団法人全国建築CAD検定試験のホームページをご確認ください。
受験資格は必要ないので、どなたでも受験できます。ただし、2級と准1級の試験は経験者レベルになるため、必要な知識や経験を身につけてから受験することをオススメいたします。
受験開催場所は毎年異なります。2022年10月の一般受験の開催場所は、一般財団法人全国建築CAD検定試験サイトの「一般受験会場一覧」からご確認いただけます。
4級、3級、2級は200点満点の点数制で合否が分かれます。准1級に関しては、詳しい基準は発表されておらず、作図の内容で合格が決定します。
2017年度〜2021年度の合格率は下記の通りです。
級が若くなるほど難易度が上がり、合格率が下がる傾向が伺えます。
年度\級 | 准1級 | 2級 | 3級 | 4級 |
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2021年度 | 14.1% | 60.3% | 61.5% | 93.3% |
2020年度 | 2.0% | 67.7% | 64.8% | 92.5% |
2019年度 | 24.5% | 58.6% | 71.7% | 89.8% |
2018年度 | 2.4% | 52.1% | 67.3% | 90.1% |
2017年度 | 30.3% | 51.7% | 73.8% | 91.4% |
最後に、建築CAD検定試験の勉強方法について紹介します。
建築CAD検定は民間の試験であり、受験資格は特に定められておりません。つまり試験に必要な知識を有していればどなたでも受験できるため、その知識を個人で学べるのであれば独学でも合格は可能です。
ただし独学の場合、勉強効率が上がらず勉強時間が必要になることもあるので、受験対策用のテキストを購入することをオススメします。
受験級に合わせたテキストを購入し、何度も繰り返して勉強しましょう。建築CAD検定ではどの級でも時間制限があるため、作図スピードは重要になります。試験の問題に慣れていない場合、作図に至るまでの構想で時間を要することもあるので、まずは問題に慣れるために反復練習をオススメします。
テキストや過去問を反復勉強した後は、模擬試験を受験し試験の感覚を掴むようにしましょう。模擬試験を受けると、テストの緊張感や時間感覚を養えるので、テキストで勉強を行った後に挑戦すると効果的です。場所によっては講師の方にフィードバックをもらえることもあるので、客観的なアドバイスを踏まえて試験対策を行いましょう。
職業訓練校とは、求職者向けに新たな仕事に就けるよう様々な訓練を通じて就職をサポートする場です。業務に必要な知識・スキルを身に付けられるようなコースがあり、その中に用意されているCADスキルを身につけるコースを受講して勉強する方法があります。詳しくは職業訓練校を運営している自治体に確認しましょう。
建築CAD検定では、CADを使い建築図面の作図を行う実践型の資格試験で、建築CADに特化した民間試験です。建設業界でCADオペレーターとして活躍したい方、もしくは建設業界でステップアップしたい方にオススメの試験です。転職時の条件交渉などでも有利に働くので、転職を検討されている方は挑戦してみてはいかがでしょうか。