2022年11月15日
積算業務は、建設需要の増加に伴い今後も需要が高まる魅力的な業務です。
そこで今回は、積算の概要ややりがい、計算方法、必要な資格、向いている人について解説します。
積算業務は建設会社において重要な役割を果たし、やりがいのある業務であることがわかりますので、建設業界でキャリアチェンジを検討されている方やこれから建設業界にチャレンジされる方はぜひ最後までご覧ください。
積算は、建築物や土木構造物の設計図・仕様書から必要な人材や材料、建設車両・機械などの数量を算出し、建設費の工事費見積額の根拠となる金額を算出する業務で、建設業界特有の業務となります。
そのため積算業務では、建設資材やその相場、建設工事の工程、建設工法、建設車両・機械、職人などの専門知識が必要になります。
積算の業務内容は、主に公共工事と民間工事に分類されます。
官公庁が発注する公共工事では税金が使われることもあり、公平性・公正性に重点が置かれて工事業者が選定されます。そのため、複数の工事業者による提示価格を競わせる「競争入札」により決定されるため、工事業者が公共工事を受注するためには、正確な積算に基づき、戦略的に提示価格を決定して入札に参加する必要があります。
公共工事の積算は、国土交通省や都道府県、市区町村などが監修している積算基準や積算要領・積算単価に基づき行います。そのため、入札に臨む工事業者の積算担当者は、工事の公告資料などを読み込んで積算を行う必要があるのです。
民間工事においても入札があります。積算担当者は、設計図書や仕様書に基づき、見積書の基となる工事費の算定を行います。民間工事の入札は、公共工事の入札と比較して厳格な決まりはなく、発注者が自由に業者の選定を行うことが可能です。それだけに、見積提示額の基礎となる質の高い積算が重要になります。
積算は、建設工事に要する費用を算出し、工事全体の費用を明確にする業務です。
積算を行うためには、設計図や仕様書などから建設工事に要する建設資材や人工などの数量を算出し、積み上げ方式で計算する必要があります。
一方、見積りは発注者に提示する金額となり、積算した金額に利益が上乗せされた金額です。
したがって、積算と見積りの関係は以下のようになります。
見積り金額 = 積算金額 + 利益額
よって、見積り金額を明確にするには積算金額を明確にする必要があるため、積算金額を明確にできた段階で利益額を決めることができます。
積算金額を根拠なく算出してしまうと抜け漏れ工事項目が発覚し、利益が想定よりも少ない場合や赤字になる場合もあるため、それだけに、積算業務は建設工事において重要な業務であるということが分かります。
結論を言うと、積算業務は未経験でも挑戦することができます。積算業務の求人欄に「未経験OK」と掲載する会社もありますので、挑戦したい方は応募してみるのも良策です。
ただし、積算業務は建築や土木に関する専門性の高い業務となり、求められるスキルも多くなります。そのため、設計図・仕様書の解読や建築・土木に関する専門知識が必須になりますので、入社してから積算業務に関する知識習得は時間をかけて取り組むのがよいでしょう。
積算業務のやりがいは、主に以下などが挙げられます。
積算した金額が建設工事見積書として反映し発注者に提示されますので、工事を受注できるか否かに直結します。つまり、会社の売上げや利益に直結する業務といえます。
発注者の要望通りに工事を進捗させると、工事予算をオーバーし会社の利益を出せなくなります。工事予算内で建設物を完成させるためには、アイデアや建設工事に関する最新情報の把握、知識の蓄積が求められます。
そのため、様々な工夫を凝らした末に予算内で建設物を完成させた場合、積算を担う者としては冥利に尽きる瞬間といえるでしょう。
関わった建物が完成し、現場において建物を見た時、やりがいを感じるという積算担当者の声が多数挙がっています。公共工事などの社会インフラ形成に貢献する業務となりますので、経験を積めば積むほどその思いは強く感じることができるでしょう。
様々な建築物や土木構造物などの図面・仕様書を見て積算するため、建築施工や土木施工などについて幅広く勉強する必要があります。特に、積算業務に携わって間もない頃はわからないことが多く、都度調べながら業務を進めることも多いです。その度に新たな専門知識が身に付きますので、スキルやキャリアの向上を感じることができるでしょう。
例えば、以下などです。
積算は、下記のステップを踏むことにより算出することができます。
積算するにあたり、最初に算出する必要があるのは工事に必要な人材の数(人工)です。
人材の数を算出するためには、設計図や仕様書などから工事の施工条件を確認し、必要とする職種や資格を明確にしてそれぞれの数を割り出す必要があります。
例えば、工事期間中に雨天が続くと、作業員が稼働できず人材の数量に影響を及ぼす場合があります。それらを見込んで現場監督と調整しながら工程表の作成にも関わります。
また、夏場であれば熱中症対策費用の計上が必要となり、冬場であれば特に積雪地域は除雪作業費用の計上が必要となるため注意を要します。
次に算出が必要なのは、建設資材などの必要な材料です。
材料の数量を算出するためには、設計図や仕様書などから必要な材料の数量を積み上げる必要があります。
建設工法の違いにより同じ材料を使用しても必要な材料の数量が異なるため、抜け漏れなどが起きないように慎重に算出する必要があります。
特に、安全管理のための環境整備や、工事に伴い発生する生資源やスクラップなどの建設副産物の処理も必要になりますので、注意が必要です。
次に算出が必要なのは、建設車両・機械です。主に以下などの数量を算出します。
特に運搬車両の場合、工事現場周辺の道路状況によって大型車両などの進入ができない現場もあります。
その場合は小型車両による運搬に頼らざるを得ず、その分運搬回数が増えるため、運搬費用も割高となります。
必要な人材・必要な材料・必要な建設車両・機械を算出した後、単価を乗せて合計すると、工事費用を算出することができます。
なお、工事により単価は異なるため、以下などを参考にして決めるとよいでしょう。
工事費が算出できたら、積算の過程を明確にする内訳明細書などの必要書類を作成します。
内訳明細書は、ツリー式に内訳書・明細書・仕訳表が記載され、記載内容が徐々に細かくなる明細書です。
作成する必要書類の項目に沿って、人材・材料の規格・数量・単価などを入力します。入力間違いなどのミスがないかを確認し、問題無ければ印刷・製本します。
積算が完了したら、会社の利益を上乗せして見積書として提示します。
積算基準は、簡単に言うと積算時のルールブックです。工事費に記載する項目の定義や、具体的な金額を算出する方法などが記載されています。
積算は法律で規定されておらず、業者が算出した積算に基づき予算確保や落札上限価格が設定されます。
したがって、積算基準を設定することで積算の不正を防止し建設業界の公平性を維持することができるのです。
積算に必要な資格はありませんが、役立つスキルや資格はありますのでご紹介します。
役立つスキルとしては、主に以下などが挙げられます。
また、発注者だけでなく、工事現場を担っている現場監督との工程・原価管理などの調整や、建設資材を扱う業者や設備工事の請負業者との価格交渉などが必要になるため、コミュニケーション能力も必須といえるでしょう。
役立つ資格としては、主に以下などが挙げられます。
上記の資格保有者は、公共工事などを受注する際に勤務する会社の評価点が上がるため、資格手当が出る可能性が高くなります。
発注者に納得していただく見積額を提示するためには、明確な根拠のある積算による金額が基礎になります。
そのため、積算業務に向いている人は、「細かい作業が得意な人」「勉強熱心な人」「数字に強い人」などが挙げられます。
積算業務には、細かい作業が得意な人が向いています。
不明点があった場合はそのまま放置することなく、設計者や現場監督などに確認するなどの配慮が必要になります。細かい作業でも一つ一つ根拠を明確にし、わかりやすい見積書を作成することにより、その努力が発注者や工事関係者に伝わります。
そのため、関係者と調整を図りながら、細かい作業でも丁寧に行うことが得意な人が積算業務に向いているといえるでしょう。
建築や土木の分野に対する専門知識に対して、興味を持って学ぼうとする意欲の強い人は積算業務に向いているでしょう。
最新の施工技術を把握することにより、工程の短期化や工事の質の向上、低価格化などに貢献することができます。その分、積算の質を向上させることもできるため、入札時に最適な見積書を提出できる可能性や受注できる可能性が高まります。
高い専門性を活かし、長期間にわたり働き続けられるのが、積算業務の特徴です。積算業務を行う上で、常にスキルアップを怠らず、キャリアアップを図りながら知識の向上に努める姿勢が大切です。
積算業務は、発注者に対して根拠ある見積額を提示するために、数字に強い人が向いているといえます。
根拠の無い見積額を提示してしまうと発注者の信用を損なうことになり、金額のトラブルにもつながりかねません。
積算の概要や、やりがい、計算方法、必要な資格、向いている人について解説しました。
積算業務は、会社の利益に直結し、関わった建物が形として数十年~数百年以上残りますので、とてもやりがいのある業務といえます。
上記で紹介した「積算業務に向いている人」の特徴に当てはまる方はぜひ積算業務にチャレンジされてみてはいかがでしょうか。