建設業において、現場の作業員を管理する「作業員名簿」は非常に重要な書類です。現場に入る際には必ず提出を求められ、作成する機会が多い書類のひとつでもあります。しかし、現場経験の少ない方や建設業界で働いたことのない方であれば「作業員名簿の書き方が分からない」というお悩みをお持ちの方も多いはずです。
そこで今回は「作業員名簿とは?」と題して、名簿の書き方や作成する際の注意点などを詳しく解説します。建設業界にお勤めの方や、転職を検討中の方は最後までご覧ください。

作業員名簿とは?
そもそも「作業員名簿」とは、現場で作業にあたる人員をすべて明らかにし、その雇用管理状況を把握するために必要な書類です。労務安全のための書類で、主に現場で労災が発生したときの緊急連絡先などを把握するために作成しています。また、建設現場では作業員の出入りが激しいため、誰がいつ現場で作業するのかということを把握するためにも役立っています。
さらに、令和2年10月1日に改正建設業法が施行されたことで、作業員名簿の作成が実質的に義務化されました。そのため、作業員名簿を作成する必要のある一次下請以降の協力会社は、現場入場までに書類を作成しなければなりません。
建設業法施行規則 施工体制台帳の記載事項等
第十四条の二
法第二十四条の八第一項の国土交通省令で定める事項は、次のとおりとする。
第十四条の二の四
建設工事に従事する者に関する次に掲げる事項(氏名、生年月日、年齢、職種、社会保険の加入状況等)
上記にある通り、現場作業員の氏名や生年月日など、様々な情報を記入する必要があります。なお、書類の管理は元請会社が行うことになっています。
作業員名簿の書き方
続いて、作業員名簿の書き方について解説します。記入漏れなどがあると書類不備として差し戻されるため、細かい部分をチェックして漏れがないように作成しましょう。
欄外部分の項目
まずは欄外の部分を記入します。現場担当者もしくは責任者が記入しましょう。
事業所の名称
まずは「作業所名」「工事名称」を記入します。これらは元請会社から指示があるので、間違えないように注意しましょう。名称が異なると、書類が受領されないケースがあります。万が一指定がない場合は元請会社に確認をし、名称の指示をもらうことをオススメします。
所長名
続いて「所長名」を記入します。所長とは、工事現場の総監督や責任者を指します。そのためこの欄は、自身の会社の代表者ではなく元請会社の現場代理人の名前を記入しましょう。また、ここに記載する所長は現場単位の代表者(元請会社の現場代理人)になります。元請会社に確認をして漢字などの記入ミスがないように注意しましょう。
作成日
作成した日付を記載しましょう。
提出日
提出日が確定している場合はその日付を記入します。もしも日付が確定していない場合は、空欄にして提出時に追記します。
一次会社名・事業者ID
作業員名簿を提出する一次請けが「建設キャリアアップシステム」に登録している場合には、「事業者ID」を記入します。また、会社名の代わりに一次会社の現場代理人の名前を記入しても問題ありません。
二次会社名
作業員名簿を提出する会社名を記入します。先ほどと同様、会社名の代わりに自社の現場代理人の名前を記入しても構いません。
欄内部分の項目
続いて欄内の部分を記入します。これは作業員ひとりずつに記入してもらう必要があります。
氏名・技能者ID
身分証明書と一致するように、正確に記入しましょう。作業員が建設キャリアアップシステムに登録している場合は、「技能者ID」も必要です。
職種
その作業員の該当職種を記入します。例えば「左官工」「塗装工」「大工」など、自分の工種がわかるように書きましょう。
特記事項
作業員名簿には、
特記事項を記載する欄があります。略称が記載されているので、意味を把握して該当する部分は記入しましょう。
- 現…現場代理人
- 作…作業主任者
- 女…女性作業員
- 未…18歳未満の作業員
- 主…主任技術者
- 職…職長
- 安…安全衛生責任者
- 能…能力向上教育
- 再…危険有害業務・再発防止教育
- 習…外国人技能実習生
- 就…外国人建設就労者
- 1特…1号特定技能外国人
生年月日
生年月日を記入します。和暦・西暦についてはどちらでも問題ありませんが、会社で揃えて記載した方が読みやすくて親切です。
年齢
ご自身の年齢を記載しましょう。18歳以上であれば年齢を記入するだけで問題ありませんが、18歳未満の場合は、元請に年齢証明書(住民票記載事項証明書)などを見せる必要があります。
雇入年月日
企業がその作業員を雇用した年月日を記入します。
経験年数
該当工種における経験年数を記入します。企業の勤続年数ではなく、その工種の経験年数なので間違いがないように注意しましょう。
現住所・電話番号
作業員の現住所と電話番号を記入します。
家族の連絡先
作業員に万が一のことがあった場合に連絡がとれるよう、家族や親族の連絡先を記入します。
血圧
作業員の最低血圧と最高血圧を記入します。
血液型
作業員の血液型を記入します。万が一の場合に重要な情報なので、詳細までしっかり書きましょう。
最近の健康診断日
雇用時および年1回の健康診断が義務付けられています。最新の健康診断の年月日を記載しましょう。
特殊健康診断日と種類
有害業務従事者の場合、半年に1回のペースで特殊健康診断を受けることが義務付けられています。該当しない場合は空欄で問題ありません。
建設業退職金共済制度・中小企業退職金共済制度
加入している場合は◯を記入します。加入していない場合は空欄で問題ありません。
雇入・職長・特別教育
雇入時教育は、すべての作業員に対して行う必要があるので記載が必要になります。その他の職長教育や特別教育は、受けた方のみが記入します。
技能講習
各都道府県の労働局に登録されている教育機関で技能講習を受けた場合は記入します。受講していない場合は未記入で問題ありません。
免許
工事に関連する資格の情報を記入します。電気工や溶接工など、作業を行うために必須資格がある工種は必ず記入しなければなりません。
入場年月日
新規入場者教育を実施した年月日を記入します。
受入教育実施年月日
入場年月日と同じ日付を記入します。
退職金共済手帳の所有の有無
ご自身の状況に合わせて記入します。
- 建退共手帳を所有の方→「建」
- 中退共済手帳を所有の方→「中」
- その他の手帳所有の方→「他」
- 手帳を所有していない方→「無」
作業員名簿を作成する際の注意点
最後に、作業員名簿を作成する際の注意点について解説します。
証明書類の添付を忘れない
一つ目は「証明書類の添付を忘れない」ことです。作業員名簿を提出するときには、記載した資格・免許の写しを添付しなければなりません。運転免許証や作業に関する資格証の添付は欠かさず行いましょう。その都度コピーして提出すると漏れが発生する恐れがあるので、事前に写しをまとめてデータ化しておくことをオススメします。
現時点で不明な項目は空欄にする
二つ目は「不明な項目は空欄にしておく」ことです。作業員名簿は非常に重要な書類であるため、正しい情報をしっかり記入する必要があります。各作業員の情報や履歴書を確認してもわからないときや、元請に確認する必要がある部分に関しては無理に記載しなくて大丈夫です。
書類作成者と作業員が異なる場合は、変更内容の申告を徹底する必要があります。各現場に入る際の作業員名簿の作成前に、作業員に情報の更新などがないか通知して申告してもらうようにしましょう。
作業員名簿は、現場に入る作業員と現場を管理する元請会社にとって非常に重要な書類です。万が一、労災が起きてしまったときに役立つのはもちろんのこと、現場の作業員を管理する上でも必要になります。工事現場に関係する仕事をする方は書き方を把握して、ミスのないように作成しましょう。
まとめ
作業員名簿は、現場に入る作業員と現場を管理する元請会社にとって非常に重要な書類です。万が一、労災が起きてしまったときに役立つのはもちろんのこと、現場の作業員を管理する上でも必要になります。工事現場に関係する仕事をする方は書き方を把握して、ミスのないように作成しましょう。
