モーメントとはどういう意味?モーメントの種類や計算方法も解説
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モーメントとはどういう意味?モーメントの種類や計算方法も解説

2023年1月23日

建物の設計や施工に関係している方は「モーメント」という言葉を頻繁に耳にするのではないでしょうか。「物体に対する力のことかな…?」と何となく理解していても、それを説明するのは難しいですよね。
そこで今回は、モーメントの言葉の意味と、モーメントの種類や計算方法などを詳しく解説します。建設業界や設計に関するお仕事の方は、ぜひ最後までご覧ください。

 


モーメントとは?

そもそも「モーメント」とは、支点にかかる力で物体を回転させる作用を指します。力には、押したり引いたりする一方向のものとは別に「ねじる力」があります。それが「モーメント」です。呼び方は他にも、回転力、トルク、力の能率、回す力、ねじる力、などとも呼ばれています。

モーメントは支点からの距離とかかる力で作られており、この二つを掛けたもので表します。支点が固定されている状態で力を与えると、部材を曲げることになり、曲げモーメントが加わります。モーメントは距離に比例する力なので、回転したときに軸となる部材にかかる力と捉えましょう。

 

モーメントの種類

モーメントには主に「力のモーメント」「曲げのモーメント」「偶力のモーメント」「断面二次モーメント」があります。以下では、これら4つのモーメントを順番に解説していきます。

力のモーメント

力のモーメントとは、「物体を回転させようとする力の働き」として定義されています。
もう少し説明すると、物体をある軸または点のまわりに回転させようとする力の働きを表す量が「力のモーメント」なのです。これは、力の大きさとその点から力の作用線までの距離との積で表されます。

力のモーメントの存在に必要なのは、物体の2種類の運動である、「並進運動」「回転運動」です。並進運動は物体そのものが真っすぐ動く運動を指し、回転運動は物体が回転する運動を指します。
「並進運動」は、力が作用した向きに物体のすべての点が同じ運動をするのに対し、「回転運動」は同じ物体の異なる点では異なる運動をします。つまり、作用する力の大きさ、向きだけではなく、作用位置も物体の運動に影響するということです。
「並進運動」では、力の働きが力そのものによってもたらされるのに対して、「回転運動」では力そのものでなく、力のモーメントとして物体にもたらされているのです。

 

曲げモーメント

曲げモーメントとは「物体を曲げようとする働き」として定義されています。これは、力と距離の積によって表されるもので、単位はkNm、Nmです。例えば、建築物の梁などに負荷がかかって曲がる力が加わっている場所には曲げモーメントが発生しており、その場所は破損の可能性が高い場所であることがわかります。

よく力のモーメントと混同されがちですが、力のモーメントは「物体に作用する外力による物体の運動、変形等を対象」としているのに対して、曲げモーメントは「外力を受ける物体の内部に発生している内力を対象」として算出される値です。
力のモーメントは「外力」で、曲げモーメントは「内力」を指すため異なるモーメントであることを押さえておきましょう。

 

偶力のモーメント

偶力(ぐうりょく)のモーメントとは「偶力による物体を回転させようとする値」として定義されています。そもそも偶力とは、物体の特に剛体に加わる力で、和が0で力のモーメントが0でないものを指します。
例えば、車のハンドルを回すときなどにも偶力が働いています。ハンドルを右に回すとき右手は下方向に下げて、左手は上方向にあげることによってハンドルを回しますよね。このように、向かい合った平行状態で同じ力が働いているときに偶力が働きます。この偶力のモーメントは「偶力の大きさと偶力の垂直間距離の積」で求めます。

 

断面二次モーメント

断面二次モーメントとは「曲げにくさ(曲げる力への抵抗性)を示す値」として定義されています。曲げに対する強さ(曲げ剛性)は、断面の形や材料の性質で決まります。例えば、ゴムよりも木の方が曲げにくいですし、木よりも鉄の方が曲げにくいです。それに加えて部材の形状(H型やI型など)によっても異なります。
この断面二次モーメントは、曲げモーメントにどの程度耐えられるかを判断する値です。また、部材の剛性を計算するとき、振動特性・座屈などあらゆる場面で活躍します。材料の曲げにくさが数値化されるので、特にたわみの計算等を行うときに重要になります。

 

モーメントの単位と計算方法

最後に、モーメントの単位と計算方法について紹介します。

力のモーメント

モーメント荷重とは回転軸を傾ける(曲げる)、回転軸に角度を与える荷重のことを意味する力のモーメントです。
力のモーメントの主な単位は「Nm(ニュートンメートル)」「kNm(キロニュートンメートル)」です。また、力のモーメントは垂直に力が向いている場合は「力のモーメント=力×長さ」となります。

 

曲げモーメント

部材を曲げようとする力を指すモーメントで、曲げモーメントの単位は「Nm(ニュートンメートル)」「kNm(ニュートンキロメートル)」です。また、曲げモーメントは基本的には「曲げモーメント=力×長さ」によって導き出すことができます。

 

偶力のモーメント

偶力による物体を回転させようとする値として定められているモーメントです。偶力のモーメントは「偶力の大きさと偶力の垂直間距離の積」で求めます。

M=P×L[N・m,kN・mなど]
P…一方の力の大きさ[N,kNなど]
L…2力間の垂直距離[mm,mなど]

 

断面二次モーメント

曲げにくさ(曲げる力への抵抗性)を示す値として定義されているのが、断面二次モーメントです。断面二次モーメントの単位は「cm4」「mm4」で表します。
断面二次モーメントの計算式は以下のとおりです。

I[m^4]=面積[㎡]×距離y[m]^2
※「^(ハット)」は乗数を示す記号。二乗は「^2」と書きます。

 

まとめ

建設業界でよく耳にする「モーメント」。これは、支点にかかる力で物体を回転させる作用を指します。一言でモーメントといっても「力のモーメント」「曲げのモーメント」「偶力のモーメント」「断面二次モーメント」など様々な種類があります。構造設計や施工に関わる方は、それぞれの指す意味をしっかり押さえておくとよいでしょう。

 


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