フルハーネス安全帯とは?義務化や特別教育について分かりやすく解説
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フルハーネス安全帯とは?義務化や特別教育について分かりやすく解説

2023年2月28日

「安全帯」とは、高いところで作業を行う際に作業者を墜落から防止する保護具のことです。安全帯には大きく分けて「フルハーネス型安全帯」と「胴ベルト型」があります。建設業では、ある要件に達している現場では安全帯の着用が義務付けられており、時には種類の指定までなされます。そこで今回は、安全帯の中でも「フルハーネス安全帯」に着目して解説します。

 


 

フルハーネス安全帯とは

フルハーネス安全帯とは、墜落を防止するための器具です。腰を起点に支える胴型ベルトとは異なり、肩、腰、太腿を支えて、身体をしっかりサポートする機能が備わっています。
フルハーネス安全帯の良さは、複数箇所で身体を支えるため安全度が高く、かつ作業中の圧迫感が少ないという点が挙げられます。2019年(平成31年)1月からは、一定水準以上の高所作業現場におけるフルハーネス安全帯の使用が義務づけられています。

フルハーネス安全帯の必要性

上記でも触れた通り、2019年1月より一定水準以上の高所作業ではフルハーネス安全帯の着用が義務付けられています。それ以前は胴型ベルトの着用も認められていましたが、高所作業において使用される胴型ベルトは、墜落時に内臓の損傷や胸部等の圧迫による危険性がありました。国内でも胴ベルト型の使用に関わる災害が確認されており、作業員の安全を守るためにも国際規格であるフルハーネス型の着用が義務付けられています。

 

フルハーネス安全帯のデメリット

フルハーネス安全帯のデメリットは、足場の高さによっては「機能しない可能性がある」ということです。足場の高さがない状態でフルハーネスを着用すると、ランヤード(合成繊維製のロープまたはストラップ)の距離だけで、ショックアブソーバー(墜落時の衝撃を緩衝する構造)が作動しない状態で地面に到達する可能性が非常に高くなります。
つまり、足場の高さがそこまで高くない場合は、着用していても機能しない可能性があるため、そのような場合は胴型ベルトの使用をオススメします。

 

フルハーネス安全帯は義務なのか

続いて、フルハーネス安全帯の着用について解説します。建設現場において、ある一定水準以上の高所作業現場ではフルハーネス安全帯の使用が義務づけられています。

何メートルから必要か

高さ2m以上の作業床等のない高所作業ではフルハーネス型を着用することが原則となりますが、ガイドラインによると一般的な建設作業では5m以上、その他の作業では6.75m以上を超える作業ではフルハーネス型の着用をすることになっています。

 

耐用年数はあるのか

墜落制止用器具の主要構成部品(ベルト・ロープ)は合成繊維製のため、使用していくうちに摩耗や紫外線の影響を受け性能は劣化します。フルハーネスおよびランヤードの交換時期は使い方によって異なるものの、フルハーネスは使用開始から3年ランヤードは使用開始から2年を目安とすると良いでしょう。

 

安全帯の点検頻度

点検は、日常点検のほか、一定期間ごとに定期点検を行いましょう。定期点検の間隔は半年を超えないように注意が必要です。ランヤードのロープ等は摩耗の進行が速いため、少なくとも1年以上使用しているものについては、短い間隔で定期的に目視点検を行いましょう。また、一度でも大きな衝撃を受けた墜落制止用器具は外観に変化がなくても再使用しないように注意してください。

 

守らないとどうなるか

2019年(平成31年)2月1日以降に安全衛生特別教育を修了せずに、高所で作業をする人が業務を続けると法令違反となり、事業者は6ヶ月以下の「懲役」又は50万円以下の「罰金」の対象になります。また、2022年(令和4年)1月2日以降は新しい規格のフルハーネス型安全帯を使うことが必要になりました。これらは作業員の命を守るための措置なので、事業者は必ず作業員に指導しなければなりません。

 

フルハーネス型墜落制止用器具取扱特別教育とは

フルハーネス特別教育は、2m以上かつ作業床が設置困難な場所でフルハーネス型墜落制止用器具を着用する作業をする作業員が、受講・修了を義務付けられている講習です。2019年より始まり、該当する作業員は必ず受けなければなりません。

特別教育の対象となる作業例

高所作業を行う作業員のうち、「高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業を行う場合」は特別教育の受講・修了が義務化されています。また、一連の作業の過程において、一部作業床を設けることが困難な箇所があり、フルハーネス型を使用する場合にも、特別教育の対象となります。

 

具体的な作業例

下記のような高所作業が発生する場合は、フルハーネス型の着用が必要です。

【作業例】

  • 建築鉄骨や鉄塔の組み立て、解体、または変更作業
  • 柱上作業(電気、通信柱など)
  • 木造家屋など低層住宅における作業
  • 屋根面を作業床をみなされない急勾配(勾配6/10以上)または滑りやすい材料の屋根下地であって、屋根足場を設けることができない屋根上作業
  • 梁、母屋、桁上、垂木上での作業
  • 作業床を設けることができない一側足場(抱き足場)での作業
  • 足場の組立て解体または変更作業において、つり棚足場の足場板の設置または撤去などの作業や、単管上に足を乗せて作業床の設置または撤去等の作業
  • 鉄筋コンクリート(RC)造解体作業において、梁上から鉄筋などを切断する作業
  • スレート屋根上作業で踏み抜きによる墜落防止対策のために、歩み板を設置または撤去する作業
  • 送電線架線作業

※参考元:「フルハーネス型安全帯(墜落制止用器具)特別教育」一般社団法人 労働技能講習協会

 

受けないとどうなるか

この講習を受けないと、作業員として現場入場ができない可能性が高いです。もし現場入場できたとしても、該当する高所作業は担当できないため、現場の進捗が遅れたり大きな支障をきたすでしょう。該当する可能性のある方は早めに受講することをオススメします。

 

講習内容

フルハーネス特別教育は計6時間で、4.5時間の学科と1.5時間の実技を行います。学科では、作業に関する知識を始め、墜落制止用器具(フルハーネス型)に関する知識や労働災害の防止に関する知識、関係法令について学びます。また、実技では、墜落制止用器具の使用方法等という科目で、範囲はフルハーネス装着方法や点検・整備の方法の範囲を学びます。

 

講習にかかる費用

講習にかかる費用は下記の通りです。

  • 日本語:9,900円/税込(受講料 + テキスト代)
  • ベトナム語:10,900円/税込(受講料 + テキスト代)

 

まとめ

フルハーネス安全帯は、高所作業を行う作業員にとって自身の命を守る重要なアイテムです。ただしその「正しい使い方」を知らなければ、かえって危険な目に合うことも予測できます。現場での作業を安全に進めるためにも、各事業者は「フルハーネス型墜落制止用器具取扱特別教育」を従業員に積極的に受講させる必要があります。また、作業員の方は学んだ知識を忘れずに現場で生かすようにしましょう。

 


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