2023年4月12日
内装関係の工事では、責任区分を明確にするために「A工事」「B工事」「C工事」の3種類があります。工事業者はもちろんのこと、建物のオーナーや場所を借りて事業を始める方は知っておかなければならない知識です。そこで今回は「A工事」「B工事」「C工事」の違いをはじめ、業者の選定方法などを詳しく解説します。内装業界への転職を検討している方は最後までご覧ください。
そもそもテナントは、入退去時に内装工事や原状回復工事が発生します。その工事を誰が行い、どのような内容で実施するかを定めているのが「工事区分」です。テナントには、オーナーや管理会社、そしてテナントの賃借人がいます。それぞれの工事区分を明確にすることで、原状回復のルールや費用負担などを決めています。
この工事区分は「A工事」「B工事」「C工事」の3種類があり、それぞれの工事業者を選定する決定権や工事費用の負担先などが異なります。そのため、テナントオーナーや内装工事を検討しているテナント賃借人は、これらの工事区分を具体的に把握しておかなければなりません。「A工事」「B工事」「C工事」の区分の詳細は建物によって異なります。以下では、大まかな区分について解説します。
A工事は、主にビルの躯体(くたい)部分、共用施設に関わる部分を担当する工事です。工事業者の発注権限はビルのオーナーにあり、費用負担先もオーナーになります。
B工事は、テナント側の要望を受けて、オーナー権限で行う工事です。空調や防災設備など、テナント内の専有部分で建物全体に影響を及ぼすものが該当します。建物全体に関わる部分なので、借主側の要望でも工事業者の発注権限はビルのオーナーにありますが、費用負担先はその時々によって異なります。基本はテナント側が負担しなければいけない工事ですが、場合によってはオーナー負担になることもあります。テナントを借りる前に、工事区分をしっかり確認するようにしましょう。
C工事は、内装工事など、テナント側が業者を選定し発注して行う工事です。店舗の内装工事や照明器具の設置、什器の設置などが該当します。C工事は復旧対象になることがほとんどなので、現状復旧の費用を抑えるためにシンプルな内装にするケースも多々あります。また業者はテナント側で選定できるので、コスト調整もスムーズになることが多いです。
同じ場所を工事するのにも関わらず、なぜ工事区分が分かれているのか。それは責任区分と費用負担先を明確にするためです。そこで以下では、「A工事」「B工事」「C工事」の違いについて解説します。
まずは対象となる工事です。それぞれの区分では対象となる工事が異なります。
それぞれの工事の費用負担は、下記の通りです。
ただし、上記に該当しないケースもあります。例えば、テナント側の不注意でオーナー資産を破損してしまった場合(エレベーター内にある鏡を割ってしまったなど)は、オーナー指定の業者で工事を行い、工事費用をテナントへ請求となるケースがほとんどです。
費用負担に関してはその時々で変更となる場合が多いので、工事を行う前に確認するようにしましょう。
それぞれの業者選定の決定権は、下記の通りです。
少し特殊なのが「B工事」です。A工事とC工事はそれぞれの費用負担のもと自由に業者を選定できますが、B工事の場合、支払いは「テナント負担」で業者の選定は「オーナー権限」のケースがほとんどです。これは、B工事の工事内容が関係してきます。B工事は空調や防災設備など、建物全体と関連する工事がほとんどなので、指定された業者がまとめて行った方がスムーズだからです。業者が決まっている分、費用の調整が難しいのが難点として挙げられます。
それぞれの工事には、オーナーまたはテナント賃借主の権限で設計施工の業者を選定します。以下ではどのように決めていくのか、選定方法について解説します。
オーナー負担の工事である「A工事」「B工事」は、建物の構造に関わる部分はゼネコンや建築全般を得意とする業者に依頼することが多いです。その一方で電気設備や給排水衛生設備・空調設備などは専門の会社が担当しています。テナントや時期ごとに変えることはなく、基本的には建物全体の工事を管理することが多いです。
テナント負担の工事である「C工事」は、テナントがふだん依頼している工事業者が多いです。ただし大型ショッピングモールや高層ビルなどの場合は、A工事業者がC工事業者を管理しやすくするために「指定業者制度」を行うことがあります。この指定業者制度は、名前の通り、指定された業者のみが元請として受注できる制度です。その場合テナント賃借主は、指定された業者に発注しなければいけないというルールがあるので注意しましょう。このようなルールもビルによって異なるので、入居前の契約の際に事前に確認しておくとよいでしょう。
最後に、工事を行う上での注意点を解説していきます。「A工事」「B工事」「C工事」それぞれの工事内容は異なるものの、注意すべきポイントは同じです。テナントの賃借主やビルオーナー、そして工事業者はしっかり確認しましょう。
一つ目は「テナントごとに工事区分をきちんと確認する」ことです。ショッピングモールのような商業施設の場合、基本の工事区分が定められていますが、実はテナントによって異なる場合があります。これはオーナー側がテナントに「入居してほしい」というときに条件交渉のひとつとして、B工事やC工事の工事費用を一部負担することがあるからです。そのためテナントによっては、工事対象エリアや費用区分が異なるケースがあることを覚えておきましょう。なお、工事区分はテナントごとに確認が必要です。
二つ目は「それぞれの責任区分を図面で明確にする」ことです。自分たちが行う工事と他の工事が絡む場合は、大体の場合打ち合わせを行って「誰が行うか」を決定していきます。そのときに決まったことは口頭で終わらせるのではなく、竣工図面に記録しておくことが大切です。そうしておくと現場中のトラブルを防ぐことはもちろん、原状回復工事の際にも役に立ちます。原状回復工事は数年後〜数十年後に行うことがほとんどなので、誰が施工したかを図面に記録しておきましょう。
三つ目は「依頼する施工業者と工事区分を確認する」ことです。ビルによっては工事区分だけでなく「施工方法」を指定される場合があります。また、施工経験の浅い業者に依頼してしまうと、工程通りに工事を進められなかったり、誤った判断から材料や人件費に無駄が生じたりしてしまったりします。施工業者に丸投げするのではなく、状況の整理は施工業者と一緒に確認しましょう。
「A工事」「B工事」「C工事」は工事区分を表す言葉で、その工事を誰が行い、どのような内容で実施するかを定めています。この区分は建物によって内容が異なり、工事費用にも影響します。そのため、テナントを借りる方や工事関係者の方は工事前に確認することが大切です。