躯体工事とはどんな工事?5つの種類や作業の流れも解説
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躯体工事とはどんな工事?5つの種類や作業の流れも解説

2023年5月18日

建物をつくる上で欠かすことのできない躯体工事は、建築物の構造部材(躯体)をつくる工事を指し、鉄骨工事、型枠工事、鉄筋工事、コンクリート工事などが含まれます。建築工事の工期の多くを占める重要な工事で、躯体工事を行う際には豊富な知識や正確な作業が求められます。
そこで今回は「躯体工事」をテーマに、工事の種類や作業の流れについて解説します。建設業界に興味のある方は最後までご覧ください。

 


 

躯体工事(くたいこうじ)とは

そもそも「躯体」とは、建築物の構造体のことです。基礎や柱、壁、土台、床版などを指し、これをつくる工事が「躯体工事」です。建物の構造体は「どの材料」を使うかによって区分分けされ、耐久性・耐震性などの建物の性能が変わってきます。建物の設計内容によっては、「工期全体の70%以上を占める」とも言われている工種で、鉄筋コンクリート造(RC造)の建物では、壁、柱、床、天井、梁などが躯体と呼ばれます。
工事に携わる場合は幅広い知識が必要で、躯体工事は重要性の高い工種と言えるでしょう。施工管理者にはコンクリート、鉄筋、鉄骨など、様々な知識が問われます。
一点補足すると、躯体工事は「鉄骨造」「木造」でも工事があります。建物の主要構造部を作る工事と覚えておくようにしましょう。

 

躯体工事の重要性

躯体工事は全体の70%以上を占めることもあり、どのような建物においても重要な工程です。また、工事の品質がそのまま建物の品質に関わり、ほとんどの場合やり直しができないため、欠陥が許されない工事になります。そのため躯体工事の施工管理は、コンクリート、鉄筋、鉄骨などの材料の知識から、施工方法や法律など高い専門知識と豊富な経験が必要とされています。確実な施工が不可欠であり、工事に携わる職人や管理者のスキルが問われます。

 

躯体工事は2つに分かれる

建物において非常に重要な躯体工事ですが、この躯体工事は「基礎工事」「本体工事」に分かれることをご存知でしょうか。以下では2つの工事について詳しく説明していきます。

基礎工事

基礎工事とは、建物と地面のつなぎ目となる基礎(土台)を作る工事を指します。しっかりとした地盤に鉄筋コンクリートで基礎を作ったり、地盤が弱い場合は地盤改良などで補強する工事をしたりします。基礎工事は耐震補強の効果があり、構造物の耐震性や耐久性を決定する重要な工事になります。地盤の状態や建物の性質に応じて「ベタ基礎」「布基礎」「独立基礎」を使い分けることも大切です。

 

本体工事

本体工事は、建物の骨組みとなる「壁」「梁」「床」「柱」「屋根」などの主要構造部を作る工事です。基礎工事のあとに本体工事を行います。また、施工管理者は現場で工事の立会いや検査を行い、施工図や提出書類の確認を行わなければなりません。この本体工事が完了してはじめて、木工事、塗装工事などの内外装の工事が行えるようになります。

 

躯体工事に対する「仕上げ工事」の意味

躯体工事が完了すると、ある程度建物は使える状態になりますが、快適な空間とは言いにくい状況です。そこで躯体工事が完了した際に、さらに空間を使いやすくする工事を行います。それが「仕上げ工事」です。出来上がった空間をさらに生活しやすいものにするために、給排水設備や空調設備、電気設備などの工事や内外壁などを取り付けます。躯体工事と仕上げ工事の2つの工事が合わさって、ようやく快適な空間が完成するのです。

 

躯体工事5つの種類

続いて、躯体工事の種類について紹介します。躯体工事は主に「鉄筋工事」「型枠工事」「コンクリート打設工事」「鉄骨工事」「木造工事」の5つがあります。

鉄筋工事

鉄筋工事は、建物の骨組みとなる鉄筋を構造図にしたがって組み立てる工事です。躯体の中でも「鉄筋」は、鉄筋コンクリートの骨となる部材になります。主筋やあばら筋、帯筋を組み立てていくことで丈夫な建物を作ります。実際の工事では、図面に従い「ハッカー」という専用工具を使って鉄筋を固定していきます。また、図面から必要な鉄筋の形状・寸法・数量などをまとめる仕事や、工場などで鉄筋を加工する仕事などもあります。

 

型枠工事

型枠工事は、かご状に組み上げられた鉄筋を「型枠」という板で覆い、コンクリートを流し込んで成型していく工事です。図面から「どのような型枠が必要になるか」を読み取る力や、実際に鉄筋のまわりに型枠を組み立てる技術が必要です。また、型枠工事でコンクリートにゆがみが生じると、建物の強度や出来栄えに大きな影響を与える恐れがあります。そのため、職人の技術は正確さが必要とされていて、型枠大工は高い技術と様々なノウハウが必要とされています。

 

コンクリート打設工事

コンクリート打設工事は、生コンクリートを打ち込んでいく工事です。「バイブレーター」と呼ばれる機材を使い、型枠に流し込んだ生コンクリートに気泡が発生しないよう、コンクリートの表面をコテなどを使ってきれいにならします。また、型枠の隅まで満遍なく行き渡らせるように施工します。流し込んだコンクリートが固まると、型枠を外すことが可能になります。建設工事の工程は、塗装工事などの仕上げ工事へと移ります。

 

鉄骨工事

鉄骨工事は、鋼鉄製の部材を用いて、柱や梁などの建物の骨組みを作る工事です。鉄筋工事や型枠工事と異なり、鉄骨工事は単独で躯体を造ることが可能です。柱がない大空間を演出することもできるので、意匠性の高い工事を行う際に用いられます。

 

木造工事

木造工事は、木材を主材料に加工し組み立てて構造を作る工事です。主に戸建て住宅などの一般住宅で多く利用されています。

 

躯体工事の流れ(RC構造の場合)

実際に行う躯体工事の流れはどのようなものなのでしょうか。今回はRC構造に着目して、工事の流れを解説します。

① 墨出し

まずは全ての基準となる「墨出し」を行います。墨出しとは、水平位置や中心位置となる基準線を書き出す作業で、現場では「墨」を基準に位置を測り工事を進めていきます。とくに躯体工事は、まだ建物がない状態から始めていくので、図面と実際の位置関係を把握することが非常に重要になります。 杭の位置を測定して、作業用通路を設置したり、鉄筋や型枠の配置が分かるように墨を打ちます。墨出しが終了したら、事前準備は完了です。

 

② 建築物の位置に沿って配筋

墨出しが完了したら、次は建物の位置に沿って配筋を行います。先ほど「鉄筋工事」にて解説した通り、構造図にしたがって、建物の骨組みを鉄筋で組んでいきます。鉄筋工事が完了したら、コンクリートを流し込む前に検査を行います。検査に問題がないと判断された場合は次の工程に進み、是正箇所があった場合は直ちに修正を行います。

 

③ 枠組みの組み立て

鉄筋工事が完了した後は、枠組の組み立てを行います。鉄筋を挟むように型枠をつくり、そこにコンクリートを流し込んで壁などを作っていきます。型枠は、図面から寸法や形状を読み取って作成した加工図をもとに、ベニヤなどを使用して作ります。多くは工場で加工したものを現場に運び込んで、鉄筋の周りに組み立てることが多いですが、場合によっては再利用性の高い鋼製型枠を使うこともあります。

 

④ 梁・床の配筋

大体の枠組みが完了したら、梁や床の配筋を行います。配筋については②と同様です。

 

⑤ 電気やガス・水道配管の確認

さらに電気やガス、水道配管などの確認も行います。コンクリートを打設してしまうと、これらの配管の調整ができなくなってしまうので、打設前に問題ないかどうかを確認することが大切です。隠蔽物の施工は写真などに収めておくようにしましょう。

 

⑥ コンクリートの打設

上記が完了して、ようやくコンクリートの打設に移ります。生コンクリートを型枠の中に流し込み、構造の強度を高くします。生コンクリートは練り混ぜ、流し込んだだけでは強固なコンクリートはできないため、流し込む際の打ち込みの高さや打ち重ね時間などに注意しましょう。また、コンクリートは時間とともに硬化するため、打ち重ね時間がかかりすぎてしまうと品質を損なう恐れがあります。的確な作業時間のもとコンクリートを流し、そのあとは型枠の隅々まで隙間がないようにコンクリートを充填させるために締固め作業を行います。
コンクリートの打設は、天候や気温、型枠の設計の整合性など様々な点に注意する必要があるため、事前準備をしっかり行った上で実施するようにしましょう。

 

⑦ 養生をして型枠を解体

コンクリートが固まった後は、型枠を解体して終了です。躯体工事終了後の工程は、仕上げ工事へと移ります。

 

躯体工事の費用目安

躯体工事は構造によって費用が異なります。目安としては、木造の場合は坪3~5万円、軽量鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造の場合は坪2~8万円と言われています。 ただしこの費用は依頼する工事規模や、会社の規模、工事の時期などによっても大きく異なります。また、地盤の調査を行い、補強などが必要と判断された場合はさらに費用が必要になることもあるので、工事を検討する場合は早めに見積もりを依頼するようにしましょう。

 

躯体工事にかかる期間

躯体工事の工期は、建物の規模によって大きく異なります。例えばマンションの場合、躯体工事は階数の増加に合わせて、工事期間が1ヶ月延びると言われています。 その理由は、コンクリートが固まり、一定の強度になるまでに必要な期間が1ヶ月弱ほど必要になるからです。 そのため、コンクリートが固まるまでは次の工程に進むことはできず、待機時間が長くなります。また、繁忙期などに工事が重なると、さらに後期が伸びることもあります。見積もりと同様、工程に関しても早めに相談することをオススメします。

また、工期を短縮する方法として、プレキャスト工法やコンクリート型枠の活用はオススメです。プレキャスト工法とは、壁などの運搬可能な大きさに成形しておき、建設現場で組み立てていく工法です。コンクリート部材を現場で組み立てるだけなので、一般的な工法よりも工期を短縮できます。
コンクリート型枠とはコンクリートを流し込む際に使用する型枠を指しますが、この型枠を再利用することができれば、型枠組み立ての作業が短縮できます。このように工期を短縮できると、稼働する人件費が抑えられるので、建設コストを抑えることができます。施工会社はいかに効率化を測り、ムダなく工事が進められるかどうかが試されます。

 

まとめ

躯体工事とは、基礎や柱、壁、土台、床版などをつくる工事を指します。躯体工事は全体の70%以上を占めることもあり、どのような建物においても重要な工程です。工事の品質がそのまま建物の品質に関わるため、躯体工事の施工管理にはコンクリート、鉄筋、鉄骨などの様々な知識が問われます。躯体工事に関係する仕事に転職希望の際は、これらの知識をつけてから転職することをオススメします。

 


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