2023年7月14日
建設作業では、脚立や仮設足場を使った高所作業が多々あります。高所作業は転倒や落下などの事故の恐れがあるため、作業の際は然るべき装備を着用して行わなければなりません。その中でも「高所作業車」は、脚立や足場では届かないような高い位置の作業が可能になる重機であり、操作するためには免許が必要になります。そこで当記事では、高所作業車の資格について詳しく解説いたします。建設現場に従事している方や、今後転職予定のある方は最後までご覧ください。
高所作業車とは、作業用バスケットが2m以上の高さに上昇できる能力を持ち、昇降装置や走行装置によって構成される自走式機械です。これに対して、自走しない機械は高所作業台と呼ばれます。高所作業車は、建設現場やガラス清掃、電球交換などのメンテナンス用、照明器具や舞台装置の設営やセッティングなど、様々な場面で利用されており、建設現場にとって欠かせない存在です。
高所作業車を操作するためには、高所作業車の「技能講習修了者」もしくは「特別教育修了者」である必要があります。なお、特別教育修了者の場合、高さ10m未満の高所作業車の運転しか許可されていないため、10m以上の高所作業車を運転する場合は、技能講習修了者である必要があります。
次に高所作業車の資格・免許について紹介します。高所作業車の資格には「技能講習修了者」と「特別教育修了者」の2種類があります。
高所作業車の「技能講習修了者」とは、高所作業車の運転や操作に必要な知識や技能を修得し、関連する法令や安全規定に基づいて適切に作業できることを認定された人のことです。具体的には、高所作業車の操作方法や安全確保のための手順、異常状況への対処方法などについての講習を受け、修了証を取得した人が該当します。この修了証を持つことが、高所作業車の運転や操作に必要な資格となります。
また、次に紹介する「特別教育修了者」との違いは、作業可能な高さにあります。特別教育修了者の場合、作業床の高さが10m未満の高所作業車しか運転できませんが、技能講習修了者の場合、作業床高さ10m以上も運転できます。これは、高所作業車運転技能講習(安衛則第83条、高所作業車運転技能講習規程)にて学科11時間と実技6時間の講習を受けることで取得できます。
高所作業車の「特別教育修了者」は、技能講習修了者と同じく高所作業車を運転する上での特別な知識や技能、安全確保のための手順や異常状況への対処方法などの高度な技能を身につけた者を指します。この資格を取得するためには、高所作業車の運転の業務に係る特別教育(安衛則第36条第10号の5)の 学科を6時間、実技3時間を受講する必要があります。技能講習修了者よりも講習時間が短い分、操作できる高所作業車は「作業床高さ10m未満」と制限されています。
現場によっては、特別教育修了者の資格があれば実務を十分行えます。自身のケースに合わせて選択すると良いでしょう。
上記の技能講習や特別教育をすべて終了した際には「修了証」が発行されます。この修了証には有効期限がなく、更新の手続きも必要ありません。 ただし、修了証に記載されている氏名が変わった場合は、書き換え手続きが必要になるので申請が必要です。
修了証を破損・紛失した場合は、再発行の手続きを行うことができます。高所作業車の運転を行う際には修了証が必要になるので、破損・紛失した際は早めに届け出るようにしましょう。再発行の申請は、取得したセンターまでお問い合わせください。
技能講習の概要について紹介します。技能講習を修了すると、作業床の高さが10m以上に及ぶすべての作業車を扱うことができます。
学科は全11時間あり、下記の講習を受講します。
高所作業車の作業に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識 | 5時間 |
原動機に関する知識 | 3時間 |
高所作業車の運転に必要な一般的事項に関する知識 | 2時間 |
関係法令 | 1時間 |
これらの講習を行い、最後に学科試験を行います。ただし、下記の免許を取得していると講習が一部免除になることがあります。受講費も安くなることがあるのでセンターまでお問い合わせください。
<免除(省略)対象>
実技は下記の講習を行います。
高所作業車の作業のための装置の操作 | 6時間 |
受講費用は36,000円〜45,000円ほどで、受講資格は満18歳以上です。受験費用の詳細は受講するセンターで確認ください。
続いて、特別教育の概要について紹介します。特別教育を修了すると、作業床の高さが10m未満の作業車を扱うことができます。
学科は全6時間あり、下記の講習を受講します。
高所作業車の作業に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識 | 3時間 |
原動機に関する知識 | 1時間 |
高所作業車の運転に必要な一般的事項に関する知識 | 1時間 |
関係法令 | 1時間 |
技能講習と同じく、所有している資格によって講習が一部免除になることもあります。
実技は下記の講習を行います。
高所作業車の作業のための装置の操作 | 3時間 |
特別教育の受講費用は36,000円〜45,000円ほどで、受講資格は満18歳以上です。受験費用の詳細は受講するセンターで確認ください。
高所作業車の走行装置を紹介します。主に「トラック式」「ホイール式」「クローラ式」の3種類があります。
トラック式とは、貨物トラックの上に作業装置を架装したタイプを指します。作業現場まで公道を走って自由に移動できるため、利便性が高く最も使用頻度の高い種類です。トラックシャシーに高所作業のための装置を後付けして作業を行います。工期が短い場合や、公道での作業などでよく活躍するタイプです。
ホイール式とは、車輪のついた専用台車に作業装置を取り付けたタイプを指します。トラック式とは異なり、公道を走れないというデメリットがあるものの、現場の範囲内をゆっくり移動しながら作業するには効率的に行うことができます。また、路面も傷つきにくいタイプなので、建物内での作業などに向いています。
クローラ式とは、ホイールの代わりにクローラを備えたタイプを指します。凸凹の多い土地や、軟らかい地盤での走行が可能で、作業範囲内をゆっくり移動させることもできます。建物内の設備工事や軟弱な地盤での作業に向いている種類です。
最後に高所作業車の作業装置について紹介します。作業装置は主に「伸縮ブーム型」「屈折ブーム型」「混合ブーム型」「垂直昇降型」の4種類あります。
伸縮ブーム型とは、作業床を取り付けるブームが直線に伸びるタイプです。作業床の位置を決めやすく、広大な場所での作業性が高いという特徴があります。
屈折ブーム型とは、作業床を取り付けるブームが折れ曲がるタイプです。ブームが屈折するため、現場の奥深くまで作業床を入れることができます。また、障害物をかわしながら作業できるため、小回りがききやすいという特徴もあります。
混合ブーム型とは、伸縮ブームと屈折ブームの両機能を備えたタイプです。作業床の移動可能範囲が広いため、広範囲の作業に最適です。建設工事や保守管理作業の現場で活躍する種類です。
垂直昇降型とは、作業床を垂直に上下させるタイプを垂直昇降型といいます。細かな調整はできませんが、小さな高所作業車なので比較的狭いスペースでも対応可能です。倉庫内の作業や建設現場の内装工事などで活躍します。
高所作業車は、作業用バスケットが2m以上の高さに上昇でき、昇降装置や走行装置によって構成される自走式機械です。操作をするためには「技能講習」か「特別教育」の受講が必要で、この資格を有していると現場作業などの仕事に従事する際、重宝される存在になります。また、現在建設関係に勤めている方もこの資格を取得すると、転職やスキルアップに有利になります。現場作業が多い方は受講してみてはいかがでしょうか。