配筋とは?建物の安全性にかかわる配筋の役割や工法について解説
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配筋とは?建物の安全性にかかわる配筋の役割や工法について解説

2023年7月18日

「配筋」は、建物の安全性に関わる構造部材のひとつです。建築物の構造は木造や鉄筋コンクリート造・鉄骨造など様々ですが、基礎躯体の多くは鉄筋コンクリートでつくられていて、配筋が使われています。とはいうものの「配筋」は専門用語なので、建設業界に馴染みのある人でなければあまり耳にしない言葉でしょう。そこで今回は、配筋について詳しく紹介します。建築に興味のある方や建設業界に就職を検討している方は最後までご覧ください。

 


 

そもそも配筋とは?

そもそも「配筋」とは、コンクリート構造物において、鉄筋を適切な位置や量で配置することを指します。鉄筋はコンクリート構造物に強度や耐久性を与えるために使われている部材で、建築基準法などの法律や設計者が指定した基準に基づいて計画されます。配筋を決定する際には、鉄筋の種類やサイズ、配置方法、量、間隔などを検討します。正確な配筋の実施は、建造物の安全性や耐久性に大きく関わってくるため、非常に重要な部材と言えるでしょう。

配筋に使う鉄筋の種類は?

使用される鉄筋の種類は、主に下記の2つがあります。

  • SR(丸鋼)
  • SD(異形棒鋼)

 
SDは表面にリブという節が加工されており、コンクリートへの付着力が強い特徴があります。

建物の各部位にかかる力の大きさによって適切な種類・太さが選定され、構造設計されています。また、材料に含まれる成分によって強度などが異なるため、使用する鉄筋を選定する際は、使用するサイズや種類を指定する必要があります。

 

鉄筋以外の材料(結束線・スペーサー)

配筋を行う際には、鉄筋以外にも下記の部材を使用します。

  • 結束線
  • スペーサー

 
結束線は、鉄筋同士を結束して組み立てた鉄筋の形状を保持するために使用される鉄の線で、ハッカーと呼ばれる工具で縛ります。また、スペーサーは鉄筋を適切な位置に保持するための部材で、モルタル製・鋼製・プラスチック製など様々な種類があります。主に、側面の鉄筋かぶりを保持するものを指し、断熱材などの柔らかい材料への沈み込みを防止する目的で使用します。

 

鉄筋の名称と役割

続いて、鉄筋の名称と役割について解説します。

主筋

主筋とは、物体を曲げる方向に作用するモーメントを負担する鉄筋です。配筋の中でも主要な鉄筋を指し、柱や梁、基礎やスラブの荷重を負担します。柱や梁の主筋は、部材の軸方向に配置されるので、「軸方向筋」ともいいます。

 

帯筋

帯筋とは、主筋に対して固定するような形で、一定の間隔で水平方向に巻かれる鉄筋のことです。柱に作用するせん断力に対して抵抗する役割があります。また、帯筋は他にも「フープ」と呼ばれることもあります。

 

あばら筋

あばら筋は、鉄筋コンクリート構造で 梁のせん断破壊を防ぐために入れる補強筋のことです。そのため、せん断力の大きくなる梁の端部ほど、あばら筋は高い密度で配置されます。

 

配筋の具体的な工法

続いて、配筋の具体的な工法についてお伝えします。

シングル配筋

シングル配筋とは、コンクリート構造物の補強に使用される鉄筋の配置方法の一つで、主に一本の筋を単独で配置する方法を指します。シングル配筋は、鉄筋の本数が少なく施工が簡単なため、比較的小規模なコンクリート構造物や、耐力壁などの壁材によく使われます。ただし、大きな荷重や振動がかかるような構造物には、シングル配筋だけでなく、複数本の鉄筋を組み合わせたダブル配筋などを用いることが多いです。

 

ダブル配筋

ダブル配筋は、主に2本の鉄筋を並列に配置する方法を指します。鉄筋を縦方向に2本配置するため、シングル配筋よりも強度が増します。そのため、大きな荷重や振動にも耐えることができる点がメリットです。さらに、コンクリート構造物の形状やサイズに合わせて、必要な数の鉄筋を配置できるため、幅広い用途に適用することができます。
ただし、ダブル配筋を使う場合は、シングル配筋に比べて鉄筋の本数が多くなるため、施工に時間とコストがかかる場合があります。また、構造物全体に対して均等に鉄筋を配置することが重要であり、適切な設計と施工が必要です。

 

千鳥配筋

千鳥配筋は、交互に斜めに配置した鉄筋を、上下や左右に交差させる工法を指します。交差した鉄筋が千鳥の足跡のように見えることから「千鳥配筋」と呼ばれます。千鳥配筋は、斜めに交差する鉄筋により、コンクリート構造物に加わる荷重に対して均等に応力を分散させることができます。また、鉄筋の本数が多くなるため、強度が高くなり、大きな荷重にも耐えることができます。特に梁や床版などの広い面積を持つコンクリート構造物に適していますが、鉄筋の配置に注意を払う必要があり、正確な施工が必要になります。

 

配筋工事までの流れ

配筋工事までの流れは下記の通りです。

① 施工計画書の作成

まずは、設計図の内容を元に施工計画書を作成します。工事条件や現場状況を整理して、工事の手順や工程、進捗管理や安全管理の方法など、工事を行うにあたって把握・管理すべきすべての内容をまとめます。この計画書を元に工事計画を詰めていくため、情報は出来るだけ詳しく書くようにしましょう。

 

② 施工図・鉄筋加工図の作成

施工計画書を元に、施工図や鉄筋加工図を作成します。施工図には使用する鉄筋の品番や配置を正確に記して、施工前に準備を行います。この図面では配筋検査を実施するため、修正箇所は工事前に必ず反映することが大切です。

 

③ 鉄筋の加工

鉄筋加工図を元に、使用する鉄筋の加工を行います。これは現場ではなく鉄筋工事業者の工場で行います。工場で行うことで、図面通りのサイズで加工ができ、現場での加工手間を削減できます。また、鉄筋そのものは元請や協力会社から鉄筋材メーカーへ発注し、工事業者の加工場へ納入します。

 

④ 鉄筋を工事現場へ搬入

加工が済んだ鉄筋は、工事現場に搬入します。工事の規模にもよりますが、かなりの数になるため搬入日は計画し、現場の邪魔にならないように配慮しましょう。また、現場内へ搬入した鉄筋は組み立てる前に必ず材料検収を行い、図面通りの部材・必要な加工が済んでいることを確認する必要があります。
この確認作業は必ず工事写真として記録しておくことが大切です。これを行わずに誤った鋼材を使ってしまうと、是正工事が発生してしまいます。工期に影響を及ぼすため、使用前に必ず検査をするようにしましょう。

 

配筋検査とは

最後に、配筋検査のタイミングとポイントについて紹介します。

実施のタイミング

配筋検査は、コンクリートの打設前に行います。コンクリートを打設する前に、建築工事で鉄筋が配置図通りに配置されているかを確認します。配筋検査は、第三者機関によって行われ、瑕疵保険会社が担当する場合もあるので、実施のタイミングは早めに決定しましょう。

 

検査のポイント

検査のポイントは下記の通りです。

  • 部材符号、断面状況(鉄筋種類・径・本数・ピッチ)
  • 部材の位置やかぶり厚
  • 配筋基準や詳細図と合致しているか(先端形状、定着長さ、各種補強筋状況)

 
上記の検査内容は、記録に残るようにチェックシートと施工写真を用いて検査を行います。検査内容は竣工後も保管しておくようにしましょう。

 

まとめ

配筋とは、建物の安全性に関わる構造部材のひとつで、コンクリート構造物において、鉄筋を適切な位置や量で配置することを指します。適切に配筋を行うことで、建造物の安全性や耐久性は格段に向上します。建設業界や住宅業界に携わる方は覚えておきましょう。

 


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