時代別にみる西洋建築の特徴とメリット・デメリット!日本建築との違いも解説
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時代別にみる西洋建築の特徴とメリット・デメリット!日本建築との違いも解説

2023年9月1日

日本と海外では、気候や文化・価値観など、さまざまな点が異なります。建築もそのなかの一つで、日本の建物と西洋の建物では、使用している素材や工法などあらゆる部分が違います。
今回の記事では「西洋建築」に着目し、日本建築と西洋建築の特徴や、それぞれの違いについて解説します。時代背景も踏まえて建築の歴史を知ると、建物の見え方が変わってくるかもしれません。建物がお好きな方や建築業界に携わっている方はぜひ最後までご覧ください。

 


 

【時代別】西洋建築の特徴

以下では、西洋建築の特徴について時代別に紹介します。

古代の西洋建築(〜5世紀)

古代の西洋建築は、古代ギリシャと古代ローマの建築スタイルが基盤とされており、古代ギリシャの影響により、円柱や三角形のピリオン(山形の屋根)が重要とされていました。また、古代ローマでは、アーチを平行に押し出した形状(かまぼこ型)を特徴とする天井様式「ヴォールト」の技術が発展したこともあり、多く使用されています。例えば、ローマ市内のマルス広場に建造された神殿である「パンテオン」や、闘技場などはアーチや柱が中心となってデザインされています。

5世紀までの西洋建築では鉄筋コンクリートは使用されておらず、主な建築材料としては石、レンガ、木材が使用されました。特に、寺院や劇場などの公共建築物が盛んに建設されており、これらの建築は大規模なスケールと美しさが特徴で、後の西洋建築に大きな影響を与えています。

 

中世の西洋建築(6世紀〜15世紀)

6世紀から15世紀までの西洋建築は、中世の時代として知られています。この時期の西洋建築には、以下のような特徴があります。

【ロマネスク様式】
まず、11世紀から12世紀にかけてのロマネスク様式では、主に先祖の霊をまつった建物(霊廟:れいびょう)や修道院などの宗教建築が築かれました。これらの建物は厚い壁と小さな窓、力強いアーチやドームなどのシンプルな装飾が特徴として挙げられます。

 

【ゴシック様式】
次に、12世紀から15世紀のゴシック様式では、主に「教会建築」が中心となりました。ゴシック建築は垂直的な特徴と細身の形状が目立ち、尖塔や細長い窓、飛び出したバットレスが特徴として挙げられます。ヴォールトやリブ構造を使った天井装飾が重要な要素とされ、ステンドグラスの導入により豪華な色彩も取り入れられるようになりました。

 
他にも都市部の「防衛面」が重視され、城壁や城郭が築かれました。城壁には門や塔が設けられ、防御と美的な要素が組み合わされ、貴族や王侯のための宮殿や館も豪華に建造されました。広大な敷地や庭園、装飾的な彫刻、高い天井、大理石の柱などが特徴として挙げられます。
さらに商業の発展に伴い、市場や商業施設の建設も増加しました。これらの建物は広い空間とアーケード(アーチの連続)が特徴で、商業の中心地としての役割を担っていました。このときの建築の特徴としては、都市部では狭い敷地に多くの建物が密集したため「木組み建築」が一般的で、木材を組み合わせた構造や斜めに傾いた壁などが挙げられます。

 

近代・現代の西洋建築(16世紀以降)

16世紀以降の西洋建築は、ルネサンスからバロック、そして新古典主義へと進化しました。これらの時期の西洋建築の特徴は以下の通りです。

【ルネサンス様式】
ルネサンス様式は、古代ローマや古代ギリシャの建築に対する復興と模倣を追求した建築です。プロポーションの調和や古典的な要素が重視され、対称性とバランスが重要な要素となりました。ドームやアーチ、コリント式やイオニア式の柱など、古代の影響を建物の外観や内部装飾に見ることができます。

 

【バロック様式】
バロック様式は、17世紀から18世紀初頭にかけて主流となったスタイルです。豪華さと劇的な表現が特徴で、宗教建築や宮殿、劇場などで頻繁に見られました。複雑な形状や曲線、装飾的な要素が用いられ、光と影の効果を追求しました。壮麗なスケールと豪華な彫刻が特徴で、対称性よりも運動感やドラマチックな効果が重視されています。

 

【新古典主義様式】
新古典主義様式は、18世紀後半から19世紀にかけて主流になったスタイルです。再び古代ギリシャや古代ローマの建築に注目し、そのシンプルで均整の取れた形態を模倣しています。直線的なデザインとクラシカルな要素が特徴で、円柱、ピラミッド型の屋根などに取り入れられました。無駄を排除したシンプルで美しいデザインは、公共建築や政府施設などで広く採用されました。

 
19世紀以降もさまざまなスタイルが登場し、建築の多様性が広がり、現代へと継承されていきます。

 

西洋建築のメリット・デメリット

シンプルで美しいデザインが多い、西洋建築。以下では、西洋建築のメリットとデメリットについて解説します。

メリット:広々とした空間
西洋建築は、庭やリビングの開口部を広くとる間取りが多く、広々とした開放的な空間になります。 大きい開口部からは外の風景が眺められて気持ちよく過ごすことができます。また、プロポーションや対称性、バランスの取れたデザインが特徴なので、空間全体に統一感が生まれて、美しい外観や内部空間を創り出すことができる点もメリットの一つです。

 

メリット:独特な重厚感がある
西洋建築では、古代から建物の素材として石材が使われてきており、木造建築にはない独特な重厚感があります。また石材をベースとした建築は強固で、寒さから身を守ったり外からの防御ができるといったメリットも挙げられます。

 

メリット:文化の違いを感じられる
木造が多い日本建築とは異なり、西洋建築は使用する素材や工法、デザインが大きく異なります。西洋建築の空間にいるだけで文化の違いに触れることができ、非日常の体験ができるでしょう。また、西洋建築にはルネサンス、バロック、新古典主義など、さまざまなスタイルや様式があるので、時代や地域に応じた多様な建築スタイルを通して時代の変化なども体感できるでしょう。

 

デメリット:似たようなデザインが多い
西洋建築は、外観やスタイルが定着してしまっているため、大きな変更が難しく、似たようなデザインが多い傾向にあります。実は建築自体にさまざまなルールがあり、そのルールを厳密に守らないと西洋建築にはなりません。西洋建築を検討する場合は、使用素材だけでなく建築方法もチェックするようにしましょう。

 

デメリット:コストが高くなる
西洋建築の場合、主に使用する材料は石であり、材料費や人件費、作業工数などが木造建築よりもかかってしまいます。そのため、建築費が高くなりやすく、複雑なデザインや大規模な建築物の場合は、膨大な建設費用がかかることもあります。建築範囲すべてを西洋デザインにするのは難しい場合は、部分的に意匠を部分的に取り入れるなどの工夫が必要です。

 

西洋建築と比較した日本建築の特徴

ここまでは、西洋建築に着目をして解説をしてきました。以下では、西洋建築と比較した日本建築の特徴を解説します。

材料は木材が主流

日本建築の主な材料は「木材」です。日本の伝統的な建物をみると、構造物に木を使っている建物がほとんどです。これは、日本の気候が関係していると言われています。日本をはじめとする東洋は、西洋と比較すると温暖な気候です。木造建築は、暑さをしのぐことができる構造が多く、日本の気候にあっている素材といえます。

 

柱や梁を軸にした住宅設計

石やレンガなど、建物の構造を「壁」が支える文化である西洋建築に対し、日本の木造建築は、柱や梁が建物の骨格を支えています。柱や梁を軸にして構造を設計することで、様々な間取りを実現することができます。

 

日本の風土に合った空間づくりが可能

木を使った空間は、他の素材にはない温もりがあります。そのため、日本人の生活文化にあった建築様式と言えるでしょう。たとえば、床に直接座る「畳」の文化や、空間がフレキシブルに変化できる「ふすま」など、その時々に合わせて多様な使い方ができるのが日本建築の特徴です。

 

まとめ

西洋建築は、古代・中世・近代の時代背景で特徴が異なります。ロマネスク様式・ゴシック様式・ルネサンス様式・バロック様式・新古典主義などを経て、近代の建築へと変化していきました。また、今回ご紹介した通り、西洋建築と日本建築では、使われている資材や様式に大きな違いがあります。文化や気候などが大きく関係しているので、それぞれの違いを理解して建築をみると、建物の見え方が変わり、新たな視点を持って建築物に触れられるでしょう。

 


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